「洗濯機を届けたい」と言うと、たいてい笑われる。
アフリカでビジネスをやっていると言えば、農業、教育、医療——そういう答えを期待される。でも私が選んだのは、洗濯だった。
始まりは、ビジネスではなかった。
きっかけは、日本にいるときに出会った一人の青年だった。
モザンビーク出身の彼は、「自分の国にコインランドリーを開きたい」と話していた。熱量のある人だった。話を聞くうちに、「一緒にやれることがあるかもしれない」という感覚が生まれた。
ただ、正直なところ最初は半信半疑だった。
「アフリカでは大きく稼げないのでは」「そもそも需要があるのか」——そういうステレオタイプが自分の中にもあった。だからはじめは、ビジネスとして本腰を入れるというより、ボランティア的な関わりでもいいと思って動き始めた。
転機は、実際に現地へ行ったことだった。
人々の生活を見て、困っている姿を目の前にしたとき、感覚が変わった。「支援として関わる」から「事業として本気でやらなければ届かない」へ。それは学習というより、確信に近い変化だった。現地を知ることが、スピードを持って動く理由になった。
現地の生活事情。
母親たちは、週6日働いている。家計を支えるために、外に出て働く。
唯一の休みである日曜日。キリスト教の文化が根付く地域では、午前中は教会に行くのが当たり前だ。地域のつながりの核であり、欠かすことはできない。
そして帰宅すると、洗濯が待っている。
一家分をまとめて手洗いすれば、6〜8時間はかかる。子どもたちもその場にいる。手伝いをしながら、日曜日が過ぎていく。
サッカーをしたかった。友達と遊びたかった。勉強する時間もあればよかった。でも洗濯が終わらないうちは、そこに行けない。
気づけば1日が終わっている。
想像できますか?
少し立ち止まって考えてみてほしい。
日本の日曜日を思い浮かべてほしい。午後をどう使うか、夕方まで何をするか。それを自分で決められることを、どれだけ当たり前だと思っているか。
子どもの頃の日曜日はどうだっただろう。友達と遊んだり、好きな本を読んだり、ぼんやりテレビを見たり。その時間が、まるごとなかったとしたら?
毎週、ずっと。
それが「普通」として積み重なっていく。
これは「不便」じゃない。
最初は「不便だな」と思っていた。でも言葉の解像度が変わってきた。
「不便」というのは、あったほうがいいものがない状態だ。でも唯一の休日が洗濯で埋まる構造の中では、そもそも「別の選択をする」という発想が生まれにくい。時間を奪われているというより、時間がある前提で生きていない。
問題は「洗濯機がない」ことではなく、「洗濯という作業が、その人の1週間をまるごと決めてしまっている」ことだと気づいた。
"便利"を届けたいわけじゃない。
だから私が目指しているのは、「便利にする」ことじゃない。
洗濯を外に出すことで生まれるのは、時間だ。その時間を何に使うかは、その人が決めればいい。勉強でも、仕事でも、子どもとの時間でも、ただ休むことでも。
**私たちが届けたいのは「洗濯が終わった後の時間」であり、もっと正確に言えば、「何かを選べる状態」だ。**
便利という言葉は、どこか上から目線な気がして好きじゃない。私たちがやりたいのは、選択肢を渡すことだ。
だから、洗濯だ。
「なぜ洗濯なのか」と聞かれたら、私はこう答える。
洗濯は、時間の問題だから。そしてその時間は、子どもたちの日曜日の話だから。
ビジネスとしての再現性や社会的インパクトはある。でも原点は、現地で聞いた小さな話だ。週に一度の休日、6〜8時間。教会から帰ってきたら洗濯で1日が終わる。
**その1日を、返したい。**
それがアフリカ全54カ国を視野に入れながら、私たちが展開を続けている理由だ。一国ずつではなく、大陸全体に届く仕組みをつくるために。
株式会社ライフブリーズ / Life Breeze Inc.
モザンビーク・ケニアで実店舗展開中。リベリア・ガボン・マダガスカルへの展開準備中。
目指すのは、アフリカ54カ国——大陸全体に届く仕組みをつくるために。