今回お話を伺ったのは、2022年にCORDERへジョインされた菅さん。大学卒業後に大分県の自治体に就職し、20年以上に渡って建築業界に携わっていらっしゃいます。
「建築業界に不合理な部分はたくさんあります」と語る菅さん。どんな部分に不合理を感じていたのか、なぜCORDERに転職をすることにしたのか、詳しく話していただきました。
菅 陽一 / 積算BPOサービス管理者
大学卒業後、大分県の自治体に就職。公共施設の建築と修繕を行う営繕業務に従事。2022年に24年間勤めた自治体を退職し、株式会社CORERへジョイン。積算BPOサービス管理者として品質管理を行っている。
入社してすぐに20億円規模の案件を担当。手探り状態からのスタート
ーー新卒で大分県の自治体に就職されたと伺っています。どのような業務を担当されていたんですか?
営繕業務といって、建築物の新築、増築、模様替え、修繕などの設計から施工管理までの業務を一括して担っていました。設計事務所やゼネコンと担当部署の橋渡しをするような役割ですね。扱う建築物は庁舎や学校、病院など、ほとんどが公共施設でした。
公共施設は何十億円も予算をかけて作り、完成すれば多くの人に使われることになる建築物です。それに一回建てたら、何十年も残り続ける。だから設計段階から関わって、実際に建物ができたときは、なんとも言えない喜びがあって。非常にやりがいのある仕事でした。
ーーとはいえ、それほど大規模な建築物を扱うわけなので、苦労も多かったのではないでしょうか?
入社して間もない頃が一番大変だったかもしれません。前任者が退職してしまい、私以外の担当がいなかったので。「建築学科専攻ならわかるでしょ」と周りからは言われていたのですが、わからないことばかりでした。
そんな状態であったにもかかわらず、最初に担当したのが20億円規模の中学校の新築だったんですよ。ゼネコンや設計事務所の話を聞いて、言われていたことをとにかくやるみたいな。そんなところからのスタートでした。
ーーそこから経験を積んで、徐々に力をつけていかれた。
そうですね。何億円規模の案件はもう数え切れないほど経験しています。過去に担当した案件の中で最大規模だったのは、40億円ほどの総合病院の新築でした。
ただどれだけ経験しても大変だなと感じていたのは、予算とスケジュールの折り合いをつけることです。クライアントからは「これだけの予算で、この期日までにできないと困る」と依頼をされるのですが、なかなかの無茶振りで。
そうなると設計事務所や施工会社にも無理を言ってお願いするしかないんですね。それが毎回心苦しかった。
人手不足や高齢化。20年以上関わる中で感じた、建築業界の不合理
ーー業界の不合理な部分を感じていらっしゃったと。
だから人間関係をとにかく大切にするようにしていました。特に設計事務所や施工会社の職人たち。現場に足を運んで、休憩時間に雑談をしたり、何かトラブルがあれば相談に乗って一緒に解決策を考えたり。とにかく丸投げにしないように心がけていました。
人間関係が築けていると、条件が厳しい依頼でも「しょうがないな」と言って、許してくれることもあったんですよ。公共施設のような大規模な工事には本当にたくさんの人が関わるので、信頼関係がないといい建築物は出来上がらないんです。
ーー不合理な部分を人柄でカバーされていた。
とはいえ、やっぱりまだまだ建築業界には不合理な部分はたくさんあります。一番大きな問題は人手不足と高齢化ですね。
特に地方の工事をしているような地場ゼネコンでは明らかに高齢化が進み、人が足りていません。例えば私がいる九州エリアでは、現在熊本に大規模な半導体工場を建築しようとしています。さらに福岡市の中心街では再開発が進められています。
そういう状況下なので、九州では建築に関わる人が全く足りておらず、本州から人を集めて、工事に着手しています。一方で、2025年には大阪万博が開催される予定です。多くの建築物を建てようとしているのですが、そのための人員も今不足しているんです。
要するに、もともと母数が少ない建築業に関わる人々を大事業が取り合っているような状況が今後も続いていきます。だから地方で行われるような中小規模の工事には、全く人が足りていない。さらに言えば、ウクライナの戦争で材料も足りていないと言われています。
ーーこのままだと地方の中小規模の工事ができなくなってしまうと。
このままだと時間の問題かと思います。あと建築業の仕事は、基本的に専門知識が必要なんですよね。一人前になるまでに時間がかかる。それに退職率も高い。
だから高度な技術が必要とされる工事には、定年を超えた高齢者の職人しか対応できない場合が多いんです。地場のゼネコンでは、70歳から80歳ぐらいの職人がまだ働いているような状況です。
私は40代半ばですが、現場に行くと若者扱いされますね。
ーー人手不足と高齢化は積算領域にも言えることですよね。
そうですね。地場ゼネコンだとそもそも積算関係の部署がなく、施工管理職や事務職の方が兼任している場合もあります。そうすると、本来注力すべき業務に注力しきれないし、属人化してしまう。後進が育たないわけです。
さらに積算の仕事は、工事を行う前に絶対に必要になる工程で、そこに時間がかかると工事自体が遅れてしまいます。だから納期も短納期である場合が多い。兼任で行うには責任も負担も大きすぎるんです。
だから積算領域に課題を抱えている企業は非常に多いと思います。こういった業界の不合理さみたいなものは、これまでずっと感じ続けてきました。
「経常収支まで見せてもらった」大きなビジョンの実現可能性に納得しCORDERへ
ーーその課題を解消しようとしているのがCORDERだったわけですよね。そもそも転職を考えたのはどのような理由からだったんですか?
私が働いている自治体は地元から車で2時間ぐらいかかるところにあって、2、3年ぐらい前に家庭の事情で、もう少し地元に近いところで働きたいなと思ったんです。
はじめは独立してみようかなと考えていました。CORDERが行っているような代行サービスを設計領域でできないかなと。ただ漠然と考えていただけで逡巡していたんです。
しばらく経ってから、とりあえず転職活動をしてみようと思い立ち、求人サイトに登録しました。そしてCORDERからスカウトをもらい、面談を行うことになったんです。
ーースカウトもらって面談をされたとき、どのような印象でしたか?
正直に言えば、最初はあまり惹かれませんでした。サービス自体は自分も同じようなことを考えていたのでいいなと思っていたのですが、経営陣は建築業界未経験でしたし、まだ設立して1年ぐらいの会社でメンバーもいなかったので。
「将来やっていけるのかな。路頭に迷うことになったら困るな」と不安を感じていて、他の企業も見るようにしていました。
だから経営陣2人にいろいろなことをしつこいぐらい何度も聞きましたね。現在の会社業態、今後の事業計画、あと現在の経常収支も見せてもらったこともありました。かなり込み入ったことまで聞いたのですが、お二人とも全部真摯に答えてくれて。
条件面でも完全フルリモートであること、自分が関わりたいことなどをお話して綿密にすり合わせを行っていくうちに、徐々に惹かれていきました。
ーーかなり細かいところまで話し合ったと。最終的な決め手は?
2つあります。1つ目はCORDERが一億円以上の資金調達をしていたこと。スタートアップの中でも、地に足のついた経営をされているのだとわかって。「潰れるかもしれない」という不安が薄らいでいきました。
2つ目は、「建設業で働く人々を不合理から解放する」というビジョンに共感できたことです。前職時代では、この業界の不合理な部分は痛いほど経験しており、もし本当に達成することができれば純粋に素晴らしいなと。非常に大きなビジョンだなと思いつつも、それを実現するために緻密に計画を立て、実行に移している。そんな経営陣のもとでなら、一緒に頑張れそうだなと感じました。
「本当に、建設業界を変えられるかも。」
やっと腹を決めて、入社したといった流れです。
「他の積算事務所では請け負えない案件も全て対応する」サービスを広げて、次なるステップへ
ーー現在の業務内容を教えてください。
品質管理を担当しています。当然ながら、積算パートナーによって持っているスキルや経験は異なるので、なるべく一定の品質を担保できるような仕組みを構築したり、CSでは対応しきれない顧客からの要望をフォローしたりしています。
あと外注スタッフの採用・アサインも私の担当です。過去に行ったことのある積算の制作物を見せていただいて、どの顧客とのマッチ度が高いかを判断し、担当してもらう案件を割り振っています。
ーー自治体では積算業務だけを担っていたわけではありませんでしたよね。品質管理を行う上で支障はありませんか?
確かに自分で1から積算業務を行うことはそれほどありませんでしたが、他の人が積算した制作物をチェックすることは多々あったんですよ。それに建築業界に長くいるので、人一倍知識はあると自負しています。だから支障は特にありません。
また、積算パートナーと一緒に相談しながら、品質の高い納品物を作り上げるのがとても楽しいんですよね。私は積算パートナーのことを下請けの人ではなく、一緒に会社を成長させていく仲間だと思っていますし、積算パートナーもCORDERに貢献しようと考えてくれるいい人ばかりなので。
ーー菅さんから見たCORDERの積算BPOサービスの魅力はどのような点でしょうか?
まだ体制が整いきっていない部分もありますが、「納品スピードが早い」「緊急対応もできる」「品質が一定」という点を実現できるサービスである点。今後体制が整ってくれば、他の積算事務所では断られたという案件にも全て対応できるようになると思います。
現在でも積算パートナーには素晴らしい人材が揃っているのですが、人数が足りていません。人材を確保し、新しく入った積算パートナーでも品質が一定になるような仕組みを作っていくことが直近の課題です。
ーーどんな人と一緒に働きたいと思われていますか?
また、トップダウンではなくボトムアップの組織なので、自分の意見をどんどん言ってくれる方がマッチすると思います。CORDERはいい意味でまだまだ整っていないところがたくさんあり、自分たちで確立していくことができます。あとは理念に共感してくれる方。本気で建築業界を変えたいと思ってくれていると嬉しいですね。
ーー最後に今後の目標を教えてください。
まずはCOEDERの認知度を高めること。そして事業も組織自体も大きくしていくことが当面の目標です。サービスが広く認知され、請け負う案件数が増えていけば、それだけ業界の不合理を解消できると思いますし、CORDERが考えている次なるミッションにも進めるので。そこにみんなで向かっていけるよう、尽力します。