CORDERでは現在、建設業の中でも特に長年変革がなかった見積領域の不合理を解消するため「積算BPO」サービスを展開しております。サービス開始1年で顧客数60社、スタッフ数120名、総案件200件以上と急激なスピードで成長しています。
そして、CORDERでは積算BPOの事業に止まらず「今後の事業展開の3ステップ」が設計されており、建設業で働く人々を不合理から解放し、全てのプレイヤーが自分の力を最大限発揮できる世界を目指して、巨大レガシー産業の変革に挑みます。
創業わずか一年強で一億円以上の資金調達も完了しました。今回は田邊代表に、なぜ積算BPOサービスから着手し始めたのか、今後どのような事業を計画しているのか詳しく伺いました。
田邊 健人 / CEO
2017年青山学院大学を卒業し、 株式会社ベイカレントコンサルティングに入社。大手金融企業にてIT投資施策支援に従事した後、 ビッグデータ・BI・ERP等、大企業向けのDX推進を行う。 2021年2月、株式会社CORDERを共同創業。
「建設業で働く人々を不合理から解放する」ための3ステップ
ーーCORDERの経営理念は「建設業で働く人々を不合理から解放する」ですよね。ここに込められた想いを教えてください。
建設業界には「高齢化」「3Kのイメージによる労働者離れ」「劣悪な労働環境」などの深刻な課題があり、現場では責任や業務の押し付け合い、理不尽な要求に対する対応など不合理な仕組みが残っています。
一方で、日本の建設業界の技術力は高く、優秀な方々が数多く従事しているのも事実です。そのような方々が自分の力を最大限発揮できる世界を作りたいという思いから、「建設業で働く人々を不合理から解放する」という理念を掲げました。
ーーどのようにして理念を達成しようとお考えですか?
現時点では、3つのステップを構想しております。1つ目が「積算代行」、2つ目が「積算ツール(概算)」、3つ目が「調達領域」です。とはいえ、もちろんこの3つだけで建設業界にある不合理が全て解消できるとは考えておりません。必要になれば、4つ目、5つ目とどんどん業界にある不合理な部分に着手していく予定です。
ステップ1「積算代行」|建設業で働く人々がポテンシャルを最大限発揮できるように
ーーまず1つ目の「積算代行」について詳しく伺えればと思います。現在も積算BPOを展開されていると思いますが、なぜこの領域から着手しようと思われたのでしょうか?
建設業界でどのようなサービスを立ち上げるべきか検討しているときに、100人ほどの建設業従事者の方々にヒアリングをして、すべての業務を洗い出す作業を実施しました。そこから積算代行にしようと思ったのには、2つの理由があります。
1つ目は「積算領域に課題を持っている」という声が多く、お悩みが深かったこと。多くの方が悩まれている部分なのであれば、まずはそこに着手すべきと判断しました。
2つ目は、積算は調達領域の中でも最上流の工程であること。調達領域というのは「見積→受発注→搬入管理→物流→納品」という一連の流れを指し、いわゆる設計と施工の橋渡しをするような領域です。調達領域一連の流れには、責任や業務の押し付け合いなど多くの不合理が存在しており、それらを変革するには、まずは最上流から変えていく必要があると思い、見積から着手しようと考えました。
ーーヒアリングをしてみて、積算業務にはどのような不合理があると思われたのでしょうか?
積算業務は誰でもできるような業務ではなく、専門知識が必要です。また利益に直結するような責任の重い業務でもあります。
しかし給料が安かったり、人手不足で劣悪な労働環境で働かなければならなかったりと、不合理な環境が残ってしまっているのです。
もちろん専任のご担当者の方がいらっしゃることもありますが、施工管理職の方や経営者の方が兼務している場合もあります。そうなると、本来注力すべき業務に集中できなくなってしまいます。
そのため我々が積算業務を代行することで、不合理な環境や押し付け合いがなくなり、本来注力すべき業務に集中して、自身のポテンシャルを最大限発揮できる人々が増えるのではないかと考えました。
ーーステップ2の「積算ツール(概算)」に本格的に着手する段階を100%とすると、ステップ1の「積算代行」はいまどれくらいの進捗になりますか?
10%ぐらいだと思います。我々の認知度も市場占有率も、まだまだ低い状態ですので。まずは既存のお客様・パートナー様の満足度をしっかりと向上させ、CORDERというサービスをスタンダードに使っていただけるような状況を創りたいと思います。
ーーそれを達成するためには、どのような課題をクリアする必要があるとお考えですか?
積算代行業務をお願いできるパートナーの方々の数が、まだまだ足りていないことです。業界的にもフリーランスや副業といった働き方がまだ浸透していないので、まずは弊社からロールモデルを作っていけたらと考えています。
例えば、副業からCORDERに関わり、経験を積みスキルアップをして独立。前職よりも多くの収入を得て、かつ自由な働き方もでき、積算スキルも磨いていける。そういった積算士の方が適正に評価され健全化された環境を作ることが目下の目標です。
そのような環境を構築することにより、パートナーの方々により満足いただけるプラットフォームとなり、パートナーの方々からの口コミやご紹介で、自然にパートナーの方々が増えていくことが理想的だと考えております。
現在でも収入を増やし、かつ自由な働き方をされているパートナーの方々はいらっしゃいますが、10人中10人がそうであるとはまだ言い切れません。しっかりとメリットを感じていただける環境を構築し、ロールモデルとなるパートナーの方々を増やしていければと考えております。
ステップ2「積算ツール(概算)」|見積業務のスタンダード化
ーーでは次にステップ2「積算ツール(概算)」について伺えればと思います。まず概算とはどういうものでしょうか?
いま代行しているのは積算業務の中でも「精算」部分です。精算とは、最終的に図面もフィックスしており、工事に実際にどれくらいの材料、金額が必要なのかという最終の見積もりを出す積算業務のことです。
一方で「概算」といって、図面がちゃんと揃っていない、まだ設計段階の途中でどれぐらい工事に材料、金額が必要なのかを見積もる作業も積算業務の中にはあります。
ーーでは、なぜ概算のツールを開発しようと計画されているのかを教えてください。
精算業務同様、概算業務にも課題感を感じている企業様が非常に多いからです。具体的には3つの課題を感じている企業が多いと考えております。
1つ目は案件が重なってしまうと手が回らなくなること。2つ目は、概算は短納期であるため、納期に間に合わせるのが難しいですし、それが原因で失注してしまうこともあり、大きな機会損失に繋がってしまうケースがよくあります。
3つ目は、担当者によって品質に差が生まれてしまうということ。精算は図面に正解が全て載っているので、担当者によって品質の差は生まれにくいのですが、概算は図面が出来上がっていない状態で行うので、担当者の経験や感覚で作業をする部分も出てきます。そのため社内で品質を統一することがなかなかできていない会社様が多いんです。
ーーなるほど。なぜこのような課題が生まれてしまうのでしょうか?
この3つの課題が生まれている理由も3つあると考えております。
1つ目は、過去のデータが担当者ごとでバラバラに管理されていること。過去の類似物件を参考にして概算を行うことが多いのですが、そのデータを上手く管理できていない企業様が多いのです。中には紙で保存している企業もあり、探すのが手間になってしまっています。
2つ目は、過去の実績が一切ない案件を請け負うこともあるということ。担当者や企業によって実績は異なり、過去に一度も経験したことがない建物の概算を行うことも出てきます。そうすると1から調べたり、提携企業さんに協力を仰いだりしないといけなくなるため、手間も時間もかかってしまいます。
3つ目は、市場で単価の変動が起こるということ。現在は国際情勢によって、資材の単価が乱高下してしまっています。情報を追いきれなくて、正確な単価を出すことが難しいという課題が出てきています。
ーーそのような課題を解決するためのツールを考えていらっしゃるということ?
現時点での構想として、我々としては3つの機能で解決しようとしています。
1つ目は、過去のデータを一元管理する機能です。クラウド上でデータを保存し、すぐに欲しい情報にアクセスできるようにする仕組みを考えております。
2つ目は、概算を自動生成できる機能です。現在弊社では精算の代行業務を展開しているので、さまざまな建物の精緻なデータが貯まってきています。それをベースに、地域や建築用途、建物の大きさなど細かい条件を設定すれば、数量や金額が自動的に生成できる機能を実装していく予定です。
3つ目は、市場単価をリアルタイムで参照できる機能です。サービスとしてはツールを企業様に提供するというよりかは、こちらでツールを使って概算作業を代行し、短期間で納品できるような形で提供しようと考えています。
ーーこのようなサービスはまだ業界にはないのでしょうか?
このような機能が網羅的に提供できているサービスはいまのところありません。そもそも概算を代行してくれる企業すらもほとんど存在していない状況です。
一方で、概算の案件数自体は精算の3倍近くあると見込んでいます。現在精算の代行を依頼してくださっているお客様はもちろん、概算の代行から依頼を受け、さらに精算の代行も一緒にご依頼してもらえるようになれたらなと思います。
精算代行を請け負えば請け負うほど、データは蓄積されていきますので、概算ツールの精度も上がっていくはずです。積算代行と概算ツールの二つのプロダクトで良い循環が生まれることを考えております。
ステップ3「調達領域」|調達プロセスのスタンダード化
ーーでは最後にステップ3「調達領域」について伺えたらと思います。最上流の見積以外の工程にも着手しようと考えていらっしゃるということでしょうか?
「見積→受発注→搬入管理→物流→納品」という調達プロセスのスタンダード化を目指すのがステップ3です。
建設業界の調達プロセスは非常に複雑で、案件ごとに責任や業務の押し付け合いが発生している課題があります。
そのような課題を解決するために、ステップ2「積算ツール(概算)」のシステム上で見積のやりとりや発注作業もできるようにしようと計画しています。また、配送スケジュールやルートの管理も紙ベースだったり、電話確認だったりと古い慣習が残っています。これらもオンライン上で管理できるようなシステムの開発、また最終的には実際の物流機能の保有まで、調達領域に関わる不合理の解消に向けたロードマップを構想しております。
ーー調達領域以外の部分で何か構想を練られていることはあるのでしょうか?
建設業界では、現在BIMという新しい技術が取り入れられ始めています。BIMとは、コンピューター上で現実と同じような建物の立体モデルを生成することができる技術のこと。今後建設業界では、BIMを使うのがスタンダードになっていくでしょう。
しかし、BIMの知識があったり、実際に使えたりする人材はまだまだ多くないのが現状です。ここの人材確保や教育をしていけるような仕組み作りというのもできたらいいなと考えております。
あとは海外進出もやっていきたいことのひとつです。日本で積算サービスがもっと広がっていったら、東南アジアなどで横展開できればと考えています。特に発展途上国では、今後建設需要はどんどん上がっていくと思いますし、日本と同じように見積もり部分で確立できていないことは多々あるはずなので。
ーーなるほど。今後さまざまな可能性があるわけですね。
そのため、一応現状は3つのステップで考えてはいますが、順番は変わるかもしれません。概算ツールの提供を行った後に、海外展開をしていくかもしれませんし、BIMの領域に踏み込んでいくかもしれません。もしくは今考えていない、全く別の道を選ぶ可能性もあるでしょう。
とにかく建設業界の不合理を解消できることであれば、なんでも挑戦していこうと思っています。ただどの道に進んでいくとしても、協力してくれる仲間がもっと必要です。
具体的な直近の数値目標としては2023年に20人、2024年に50人、2025年に100人規模の組織を計画しています。今回ご紹介した事業のどれかひとつにでも興味があれば、ぜひCORDERに飛び込んでいただければと思っております。