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「レガシー産業である建設業界の負を解決する」アビームコンサル→起業を経たCOOが語る、積算代行サービスを展開する理由とは

建設業界特有の「積算」という業務をご存知でしょうか?

積算とは、設計図や仕様書から必要な材料や数量を算出し、工事全体で必要な費用を算出する非常に重要な業務です。積算を行うには、工事の流れや工法、用語などの専門知識が必要なだけでなく、できる限り無駄を省くための高い計算力、論理的思考力などが求められます。

そんな積算業務の代行サービスを提供しているのがCORDER。今回は共同創業者であるCOOの柿澤さんに、なぜレガシー産業と呼ばれる建設業界でニッチ領域とも言える積算代行サービスを展開することにしたのかを、これまでのキャリアとともに伺いました。

柿澤 隼斗 / COO

2017年明治大学を卒業し、 アビームコンサルティング株式会社に入社。 大手金融向けに業務プロセスの改善、RPA導入支援。 その他ERP導入、COMツール等DX推進を行う。2021年2月、株式会社CORDERを共同創業。

ビジネスパーソンとしての地肩を固めるために、コンサルティング業界へ

ーー1社目にアビームコンサルティングを選ばれたのはどのような理由からですか?

マインドやスキルといったどんな仕事でも必要とされる、ビジネスパーソンとしての地肩が身につく企業に入社することを就活の軸にしていました。その地肩を固められると思ったのがコンサルティングファームだったんです。若手のうちに現場に立ち、様々なプロジェクトを任せてもらえるという点もありましたが、同じ未来を見つめ、同じ成功を喜び合える「リアルパートナー」という会社のスタンスにも非常に共感できたため、アビームコンサルティングを選びました。

ーーアビームコンサルティングでの業務内容を教えてください。

入社してから2年半はコンサルタント職で、金融会社のバックオフィスの業務プロセス改善を行っていました。バックオフィスと一口に言っても、人事や総務などさまざまな領域があります。それをひとつひとつ棚卸しし、工数削減につながるように課題を洗い出し、ソリューションを提示、実行までを担当していました。専門用語で言うと、BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)という業務です。

BPRのスキーム

引用:https://www.nttdata-tohoku.co.jp/solution/common/bpr.html

ソリューションの具体例を言えば、形骸化した業務の廃止、複数業務の統合、アウトソーシング、RPA(ロボディック・プロセス・オートメーション)など。工数が多く、関わっている人が多い無駄な部分、いわゆる削減余地が大きい部分から優先して、実行していきました。

年間24万時間の工数削減をする、5年単位の大規模プロジェクトでした。

ーー次はどのようなプロジェクトを担当されることになったんですか?

次に担当していたのは、エネルギー系企業のERP(基幹系情報システム)導入支援のプロジェクトです。このプロジェクトではPM(プロジェクトマネジメント)という役割で参画したため、立ち上げ / 計画 / 人材確保 / スケジュール管理 /課題管理 / クライアントや外部との折衝まで全て行っていました。

また、導入対象が発電所で、そこで働く方々がシステムを使いこなせるように教育を行う必要もあり、育成文脈の組織マネジメントも任せてもらっていました。アビームコンサルティングメンバーだけでも30-40人ほど稼働しており、割と大きめなプロジェクトでそこにPMとして参画できたのは今の仕事にも活きる良い経験だったと感じています。

「憑依するレベルでユーザーを理解する」課題解決能力やマネジメント力を会得

ーー計4年間アビームコンサルティングで働かれていたんですね。学べたことや得られたことはどのようなものでしょうか?

2つあります。

1つ目は、業務プロセス改善を通して、ユーザー視点での課題解決能力が身についたこと。憑依するレベルでユーザーやユーザーの業務について理解をし、課題の洗い出しや整理をしていました。また、その課題に対する原因を分析し、仮説を立て、解決策を提案し、実行するという一連の課題解決プロセスを経験できたのは良かったです。

言い換えるとCPF(カスタマープロブレムフィット)検証と言って、スタートアップや新規事業を立ち上げるときによく行う「ユーザーの課題を検証することで、顧客となるユーザーが抱える課題の質を上げる」ことを指します。この経験は、起業の際に非常に活きたなと思っています。

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https://staseon.com/library/article_804/
CPFについて詳しく説明されている記事はこちら

ーー憑依するレベルでユーザーやユーザーの業務を理解するとは具体的にどういうことでしょうか?

例えば実際にユーザーの職場まで行き、ユーザーのことを徹底的に観察していました。それこそパソコンを開いてから、どこをクリックして、何のファイルを開いてどのように業務を行うのかといった一挙手一投足を全て見て、記録していくんです。

そのようにして、ユーザーの動きや業務内容、悩みを徹底的に理解して、課題やその原因、解決策を提案していました。

ーー確かに「憑依」という言葉がしっくりきますね、、、ライブ配信サービスを展開するSHOWROOM代表の前田裕二さんが、秋元康さんに初めてプレゼンをする時に憑依するほど出版物を読み込んだ話を思い出しました。

まさにそれと近い感覚ですね。

2つ目は入社3年目で、プロジェクトマネジメントの業務を担当できたことです。アビームメンバーだけでも30~40人、お客様を合わせると100人規模のプロジェクト管理を行っていました。その規模のプロジェクトをPMという役割で3年目という若いときに経験できたのは、貴重な機会だったと思います。

総括すると、「ユーザー視点を持った課題解決プロセスの経験が積めた」ことと「物事を俯瞰して、ヒトやコトをマネジメントする力」が身についたと感じています。

「社会に大きなインパクトを」レガシー産業の建設業界で起業した理由

ーーお話を伺っていると、学べることも多く、充実した日々を送っていたように感じます。退職された理由は何だったのでしょうか?

仕事は面白かったのですが、ひとつの企業の局所的な課題解決だけではなく、もっとダイナミックな業界全体の課題解決をしたいという思いが芽生えてきて。ただそれをするためにはどのような方法がベストかわからなかったんです。

そこで経営者やフリーランス、コンサルティング会社以外の企業で勤めている会社員など、月に30人ぐらいと会って、話を聞きにいきました。その中で、特に経営者の方々と話をしているときに胸が踊ったんですよね。自分の哲学を持ち、自分で道を切り開いている姿が純粋にかっこいいな、と。

また経営者の方々は自分と同じように業界の負を解決したいというビジョンを持っている人ばかりでした。それで自分も起業をしようと決意が固まったんです。

ーー田邊さんとの共同創業だと伺いましたが、どのような経緯で一緒に起業をすることになったのでしょうか?

田邊は高校の同級生です。彼もベイカレント・コンサルティングというコンサルティングファームで働いていて、担当していた現場も近かったので、よく仕事終わりに飲みに行っていました。

そこでお互いに「やっぱりもう少しダイナミックなことをしたいよね。自分で事業を作ってやっていきたい」という話をしていて、ある日田邊から「こういう事業をやらないか」という提案をもらったんです。

そこから平日の夜と土日を使って、いわゆる草ベンチャーのような感じで、事業検討を始めていきました。同時期に、VCの方との出会いもあって、二人で検討していた事業を提案してみたんです。

最初はもちろん提案は通りませんでしたが、週1で事業計画の壁打ちをさせてもらえることになりました。それこそCPF検証で、「誰の、どのような課題を、どのように解決するか」「競合他社はどの会社で、どのようなサービスを提供しているのか」などを徹底的に調べて、考えていきました。業界の選定やユーザー理解、サービスのアイディア出しなど1年間ぐらいは壁打ちを続けて、どのような事業にするか固めていきました。

ーーVCとの1年間の壁打ちはなかなか本気度が感じられます。ではなぜレガシー産業とも言われる建設業界向けの事業を行うことにしたのでしょうか?

理由は2つです。1つ目が私も田邊も社会に対して大きなインパクトを与えたいという思いがあったこと。前述しましたが、それまではコンサルタントとして局所的な課題解決をしてきたので、今度は業界全体に変革を起こす事業をしたかったんですよね。建設業界の他にも、不動産や医療も検討しましたが、田邊の実家が営んでいる工務店で改善余地の多い現場を目の当たりにしていたので建設業界から検証を進めたんです。100人ほどの建設業界関係者にヒアリングを行った結果、労働環境や複雑なバリューチェーンなどの構造的課題、ユーザペインの深さから建設業界を選定しました。

2つ目はこれまでの経験を活かせると感じたから。DX化が進んでいる一方で、まだまだ旧態依然な働き方、業務オペレーションが残っているレガシー産業だからこそ、これまで学んできた、「業務プロセス改善」というスキルを活かせると思ったんです。

業界内の仕事の大部分がアナログで行われており、私も田邊も顧客の業務プロセス改善を、テクノロジーを駆使して支援してきた経験があったので、デジタル化の推進にも寄与できると考えました。

積算領域にイノベーションを起こすことを目下の目標に

ーー建設業界の業務は多岐に渡ると思います。CORDERでは積算業務代行サービスを提供されていますよね。

そうですね。積算業務は、建設業界の中でもニッチな領域ですが、非常に深い課題があります。

1つ目は1物件の積算をするのにかかる時間が膨大であること。数十~数百枚の図面から一つ一つ細かく算出する必要があり、少なくとも1物件あたり40時間がかかっています。

2つ目は専門的なスキルが必要で、そのスキルを習得するまでに時間がかかるということ。積算業務を行うには、現場で十分な実務経験が必要です。そのため若手がほとんどおらず、高齢化が進んでおり、希少性の高い職種となっています。

3つ目は繁忙期と閑散期で業務量が大幅に変わり、企業側も正社員での採用を慎重に行っていること。その結果、複数の案件が重なった時に対応できないため数千~数億の物件を失注してしまうケースも実態としてあります。

これらの課題を解決するために、現在は副業 / フリーランス人材を活用した積算代行サービスを提供しています。

ーーまずは業界の中でもそのようなニッチ領域の課題から変えていこうとされているんですね。

その通りです。

弊社とは違い、正社員を抱えながら積算業務を請け負っている積算事務所という会社もあります。積算事務所は一番大きな会社でも社員数が200人程度しかいません。そのため、お客様から依頼が来てもリソースが足りず、断っている案件も多々あります。いわゆる需要に対して供給が間に合っていない状況です。

一方で、弊社は正社員ではなく、副業 / フリーランス人材を活用しています。即戦力の副業 / フリーランス人材なら増やし続けることができ、固定費もかからないため、積算事務所よりも圧倒的に多くの案件且つ低コストでサービスの提供ができるという強みがあります。

目下は積算代行サービスをスケールさせていくことに注力する予定ですが、その後は受発注業務や搬入管理などの調達領域に対し、DX推進を行い抜本的な課題を解決していきたいと考えています。

共に挑戦し続けるられる人と一緒に働きたい

ーースケールをさせていく上で、現在抱えている課題はどのようなものでしょうか?

積算は専門的スキルを要する業務のため、今は対応者のスキルに依存してしまう課題があります。これからはさらに即戦力の副業 / フリーランス人材を獲得していくことに加え、品質を標準化する独自の仕組み・体制を創り上げていくことがスケールさせていくポイントになります。

ーー経営者として大切にされていることはありますか?

今後もダイナミックな挑戦を続けていくことを大事にしています。またスタートアップなので、スピード感を持って拡大することも忘れたくないですね。

そのためこれからCORDERで一緒に働く人も、どんどん自分で動いていける、挑戦していける人であってほしいと思います。役員2人とも20代ですので、役職や経歴などは関係なく、会社・事業を成長させるために一緒に前に進んでいけるようなフラットな組織を目指します。

このような想いに共感し、世の中に大きなインパクトを与えたいと考えている方とぜひ一緒にお仕事がしたいです。

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