先月、私たちは会社としてはじめての自社サービスを公開しました。公開ボタンを押す前の数日は、抜けている確認事項がまだあるのではないかと、何度も見返していました。
名前は「トモハタ」。特定技能の制度を使って外国人を採用したい企業に向けた情報サイトです。
主軸の事業はシステムエンジニアリングサービスで、これまで手がけてきたのは業務提携先のシステムばかりでした。企画からデータベース設計、公開後の運用まで自社で通しでやりきったのは、創業してはじめての経験になります。
なぜ畑違いのHR領域でサービスを作ったのか、正直なところ最初は自分たちでも半信半疑でした。SESの仕事は目の前のクライアントに向き合う仕事ですが、今回は会ったこともない誰かのために、最初から最後まで自分たちで仕様を決める仕事です。勝手のわからないことばかりで、迷った場面も多くありました。
それでも動いた経緯と、公開してからの1か月で見えてきたことを、ここに書いておきます。
■ 何を作ったのか
トモハタは、特定技能で外国人を採用したい企業向けの情報サイトです。制度の仕組みや費用の目安、分野ごとの受け入れ要件を解説する記事を60本以上そろえています。採用担当者が検索してたどり着き、必要な知識をひととおり読める状態を目指しました。読んだ人が次に何をすればいいか迷わないよう、記事の最後には診断や相談への案内を必ず添えています。
中心にあるのは無料の採用診断です。採用したい人数や時期、社内で対応できる支援体制など7つの質問に答えると、受け入れの可否の目安と次にやるべきことがわかります。何十ページもの制度資料を読み込まなくても、自社の状況が今どのあたりにあるのかが数分でつかめる作りです。診断は匿名で答えられるようにしていて、答えた内容がそのまま営業の電話につながるような設計にはしていません。
診断の結果に応じて、条件に合う登録支援機関や人材紹介会社を無料で紹介するところまでを担っています。ここで気をつけたのは、特定の1社を強く推すような書き方をしないことです。あくまで情報を整理して、条件に合う先を紹介する立場に徹しています。紹介先は1社だけではなく、複数の提携先の中から条件に合う先へつなぐ形にしていて、企業ごとの事情に応じて選び方を変えられるようにしています。
書類の作成や在留資格の申請そのものは行政書士など専門家の領域なので、私たちがそこに踏み込むことはありません。相談の入り口を整えることと、専門家につなぐことが自分たちの役割だと決めています。
解説記事は、制度の全体像から費用の相場、分野ごとの要件、登録支援機関の選び方まで幅広く扱っています。読む人によって知りたい入り口が違うので、検索から来ても迷わずたどり着けるよう、記事同士のつながり方にもかなり時間をかけました。
サイトは https://tomohata.jp で公開しています。よければ一度見てもらえたらうれしいです。
■ なぜこの領域だったのか
特定技能は受け入れ対象になる分野が少しずつ広がっていて、外国人採用に関心を持つ企業は着実に増えています。一方で、企業側から見て制度をわかりやすく整理した情報はまだ多くありません。何から手をつければいいかわからず止まってしまう企業の話を、営業活動の合間に何度も耳にしたのが最初のきっかけでした。
SESの仕事を通じて、業種も規模もさまざまな企業と接点を持ってきました。人手が足りずに困っている経営者の話を聞くたびに、エンジニアリングの力を使ってできることがまだ他にもあるはずだと感じていたことも、今回の後押しになっています。
正直に言うと、私たちは外国人採用の当事者ではありません。受け入れの現場に立ったこともなければ、登録支援機関を経営してきたわけでもない立場です。門外漢がいきなり情報サイトを作ると聞くと、危なっかしく感じる人もいると思いますし、自分自身も企画の途中でその不安を何度も感じました。
だからこそ、記事に載せる数値や制度の解釈は出入国在留管理庁の公式情報まで必ず戻って確認しましたし、書いていいことと書いてはいけないことの線引きには相当な時間をかけました。行政書士法や職業安定法、景品表示法に触れかねない領域だという緊張感は、開発の最初から今も持ち続けています。
たとえばサイト内の案内は、紹介の仕組みであることを正直に名乗る書き方に統一していて、ボタンで約束したことと実際の対応にずれが出ないようにしています。詳しくない領域だからこそ、雑には扱えないという感覚が強くありました。
制度の数値は変わることがあるので、公開の前には必ず公式情報に戻って確認し直すという手順を決めごとにしています。思い込みで書き進めないための手順を、先に決めておく必要がありました。
■ どう作ったのか
技術選定の出発点は「無料枠を最大化する」という制約でした。常時起動のサーバーを持たず、コストをかけずに運用し続けられる構成にすると先に決めてから、設計を進めています。制約を先に固定したことで、選べる技術の幅はむしろ絞られ、判断が早くなった面もありました。何にでも使える構成を目指すより、この制約の中でどこまで実用に耐えるものを作れるかを楽しむ気持ちで臨んでいます。
記事や診断のページはNext.jsのApp Routerで組み、全ページを静的に書き出してCloudflare Pagesの無料枠でホスティングしています。最初はVercelでのホスティングも検討していましたが、プライベートリポジトリでの商用運用が無料枠の対象外だとわかり、ドメインの管理まで一か所に集約できるCloudflareへ切り替えました。決めていた制約に照らして途中で選択肢を変えたのも、今回らしいところです。記事本文はMDXで書き、テンプレート1枚がすべての記事を描画する仕組みにしたので、記事の本数が増えても表示側のコードは増えません。見た目はTailwind CSSとshadcn/uiでまとめ、ゼロからのデザインには手を出しませんでした。信頼感と読みやすさ、CTAのわかりやすさに時間を使い、装飾に凝ることはしないと早めに割り切っています。長文の記事をスマートフォンで読む人が多いことも意識して、文字の大きさや行間、表示速度は公開前に何度も見直しました。
問い合わせや診断データの保存は、Cloudflare Pages FunctionsからSupabaseの無料枠に書き込む構成です。メールの通知はResendで飛ばし、フォームの送信とデータの保存は別処理にして、片方が失敗してももう片方に影響しないようにしています。ドメインまわりの設定もTerraformでコード化していて、手作業でぽちぽち設定する箇所を極力減らしました。サイトマップやOGP、構造化データといった検索エンジン向けの土台も、公開前にひととおり整えています。効果を見るための計測もはじめから組み込んでいて、どの記事から診断や相談に進んでもらえているかを追えるようにしました。
開発の体制は少人数で、実装の多くをAIコーディングエージェントのClaude Codeと分担しています。機能のコードを書く作業や、定型的な調査、リンク切れのチェックのような繰り返し作業はAIに任せる場面が多くなりました。一方で、どんな設計にするか、どこまで自動化してどこは人の目を通すか、コンプライアンス上どう表現するかといった判断は、最後まで人が持つようにしています。記事を1本公開するときも、内部リンクが切れていないか、ビルドが通るか、外部サービスと連携している値を壊していないかを、公開のたびに人が最終確認しています。テストやビルドの確認をコミットのたびに自動で走らせ、うっかり計測用の値やURLを壊さないようにする仕組みも組み込みました。AIが速く手を動かしてくれるぶん、判断そのものに時間を使えるようになった、というのが実感に近いです。設計のレビューや文章のチェックにかける時間は、むしろ以前より増えました。
■ 公開して1か月でわかったこと
公開してからの1か月で、検索エンジンに記事が少しずつ載り始めているのを確認できました。作って終わりにしないで、検索でどう見られているかのデータを見ながら記事を直し続ける運用のほうが本体なのだと気づいたのが、この1か月でいちばん大きな学びです。公開はゴールではなく、そこからが本番でした。定期的にデータを見返し、直す記事を選び、また公開する。地味な繰り返しですが、この積み重ねがないと記事は増えても届く先が広がらないのだと、身をもって感じています。
一方で、地味な話もあります。診断や記事から集まったデータをどう料理して次の一手に生かすかは、まだ手探りのままです。仕組み自体は用意しましたが、それを定期的に見て記事の優先度を決めるという運用を、習慣として身につけるところから始めています。派手に見える公開という場面の裏側は、こういう地道な繰り返しでできていました。
診断の質問も、言い回しを少し変えるだけで最後まで答えてくれる人の様子が変わる感触があり、細かい調整を今も続けています。一度作って動かして終わりにできる場所は、思っていたよりずっと少なかったです。
検索での見え方は一朝一夕には変わりません。派手な成果よりも、小さな変化を地道に一つずつ積み重ねていく段階です。
社内で使える人手が限られているぶん、優先順位のつけ方には毎週悩んでいます。それでも、検索で記事にたどり着いてくれる人が少しずつ出てきている手応えは、公開前には想像しきれなかったものです。ゼロから作ったものが、会ったこともない誰かの目に触れて役に立っていく実感は、SESだけをしていたころにはなかった感覚です。
■ これからのこと
トモハタは公開して終わりではなく、これからも記事を足し、診断の中身を磨きながら育てていくサービスです。並行して、受託開発の立ち上げにも取り組んでいます。SESで見えてきた業種の広がりと、トモハタで積み上げているデータや運用の経験を、受託の提案にも生かせるはずだと考えています。
SESで培ってきたエンジニアリングの力を、自社サービスや受託の現場でどう形にするか。創業1年目の私たちにとって、トモハタはその最初の実例になりました。企画から設計、実装、公開後の数字の見方まで、一つの仕事を通しで担う経験は、受託の案件だけでは得にくいものだと感じています。https://tomohata.jp から実際のサイトをのぞいてもらえたらうれしいです。
自社サービスを一緒に育てたい人、受託開発の立ち上げから関わりたい人を探しています。設計から運用まで自分の手で通しでやってみたい人には、ちょうどいい環境だと思います。決まった型がまだ少なく、自分で考えて進める場面が多い環境です。興味を持ってもらえたら、募集ページものぞいてみてください。