カジュアル面談の終盤、「何か質問はありますか」と聞かれて、当たり障りのないことだけ聞いて終わってしまう。そんな経験、ありませんか。
私は採用する側として面談に出ることが多いのですが、逆質問の中身を見ていると、その人がどれだけ真剣に転職と向き合っているかが、けっこう伝わってきます。同時に、それは私自身が問われている時間でもあります。エンジニアからの質問に、こちらがどう答えるか。その答え方に、会社の素が出るからです。
転職は、入ってみないと分からない部分が多い。求人票やスカウト文を何度読んでも、実際の現場の空気までは見えません。口コミサイトを見ても、書いた人の状況が自分と同じとは限らない。結局、自分の目で確かめられる数少ない機会が、面談なんです。だからこそ、その短い時間で、相手の会社を少しでも確かめてほしいと思っています。
今日は、採用する立場の私が「これを聞かれると会社の本当のところが出るな」と感じる逆質問を、いくつか具体的に共有します。質問そのものより、それに会社がどう答えるかを見てほしい。そこが今日の話の軸です。転職を考えているエンジニアの、判断材料になればうれしいです。
逆質問は「評価される場」じゃない
まず大前提として、逆質問は試験ではありません。気の利いた質問をして加点を狙う場、ではない。
私は、逆質問を「お互いがミスマッチを避けるための時間」だと思っています。会社が候補者を見るのと同じくらい、候補者が会社を見ていい。むしろ、見てくれたほうが、入社後にお互い困りません。遠慮して何も聞かずに入社して、半年後に「思っていたのと違った」となるのが、双方にとって一番つらい結末です。せっかく縁があって入ってもらったのに、ボタンの掛け違いで離れていく。これは採用する側にとっても本当にこたえます。
だから、聞きたいことは聞いてほしい。条件のことも、現場のことも、うまくいっていないことも。それに会社がどう向き合うかを見れば、入社後の景色がだいぶ想像できるようになります。質問の数が多いほど評価が上がる、という単純な話ではありません。一つでもいいから、自分が本当に確かめたいことを聞く。そのほうが、得られるものは大きいはずです。
「入社して最初の3か月、何を期待しますか」
これは、聞かれると私がうれしくなる質問のひとつです。
理由は単純で、入社後の働き方を具体的にイメージしようとしている人にしか、この質問は出てこないからです。今の自分のスキルで何ができて、何が足りないのか。それを入社後にどう埋めていくのか。そこまで考えている人は、入ってからの立ち上がりも早い。そして会社側も、ここで答えに詰まるようだと少し危ない。受け入れる体制を考えていない証拠だからです。
答えがやたら抽象的だったり、「とにかく頑張ってほしい」みたいな精神論で返ってきたら、入社後の立ち上がりは自力でなんとかするしかない会社かもしれません。逆に、「最初の1か月はこういう案件に入ってもらって、慣れてきたら少しずつ任せる範囲を広げていく」といった具体的な道筋が返ってくるなら、その会社は人の育て方をちゃんと考えています。
似た質問として、「これまで入った人は、どのくらいで慣れていきましたか」も効きます。実例で答えられるかどうかで、会社が一人ひとりの立ち上がりを見ているかが分かります。
もう一つ、「入ってすぐの頃、困ったときは誰に相談すればいいですか」も聞いてみてください。相談先がはっきり決まっている会社は、新しく入った人が孤立しないよう気を配っています。離れた現場で働くことが多いなら、なおさら大事な点です。私はこういう質問をされたら、できるだけ具体的に答えるようにしています。曖昧に濁すのは、相手にも自分にも不誠実だと思うからです。
案件や現場の話は、具体度で誠実さが出る
エンジニアの転職で、現場の話は避けて通れません。とくに客先に常駐する働き方の場合、どんな案件に入るのか、どこまで選べるのか、契約はどうなっているのかは、入社後の生活を大きく左右します。
ここで聞いてほしいのは、「どんな案件がありますか」という大きな質問だけでなく、もう一歩踏み込んだ問いです。たとえば、「希望と違う案件を打診されたとき、断ることはできますか」。あるいは、「今いるメンバーは、どういう経緯で今の現場に入っているんですか」。さらに、「契約が切れたあと、次の現場が決まるまではどう過ごすんですか」。このあたりは、働く本人にとっては死活問題なのに、求人票にはまず書いていません。
こういう質問に、具体的なエピソードで答えられる会社は、現場とちゃんと向き合っています。逆に、案件の話になると急に歯切れが悪くなったり、「会ってみないと分からない」を繰り返す会社は、正直なところ注意したほうがいい。エンジニアを案件にあてはめる発想が強くて、一人ひとりの希望を見ていない可能性があります。
契約のかたちを聞いておくのも大事です。客先で働くといっても、準委任なのか、派遣なのかで、指示の出方も責任の範囲も変わります。そこまで踏み込んで説明してくれるかどうかも、会社の姿勢が出るところです。聞いても言葉を濁すなら、自分たちでも整理できていないのかもしれません。
私たちはまだ小さな会社なので、誰がどの現場にいて、どんな経緯でそうなったかを全部具体的に話せます。希望と違う打診をしたときに、その人が何を考えてどう返してきたかも覚えています。これは規模が小さいうちの、数少ない強みかもしれません。
「今、うまくいっていないこと」を聞けるか
少し勇気がいる質問かもしれませんが、私は「今、会社としてうまくいっていないことは何ですか」と聞かれると、むしろ信頼します。
完璧な会社なんてありません。とくに創業して間もない会社なら、課題だらけです。それを隠す会社と、正直に話せる会社では、入社後の距離感がまったく変わってきます。課題を共有してもらえる前提で入った人は、多少のことでは驚きません。逆に、いいことしか聞かされずに入った人は、小さなつまずきでも「騙された」と感じてしまう。
私はこの質問をされたら、隠さず話します。たとえば、受託開発の事業をこれから立ち上げようとしているけれど、まだ体制が整いきっていないこと。少人数で動いているので、一人が抜けると影響が大きいこと。仕組みとして整えたいのに、まだ手が回っていない部分があること。そういう、できれば見せたくない部分も含めて伝えます。それを聞いたうえで「むしろ面白そう」と思ってくれる人と働きたいからです。
いいことしか言わない会社は、入ってからギャップに苦しみます。課題を話さないのは、隠しているか、見えていないか、どちらかです。どちらにしても、入社後に困るのは自分です。だから、あえて聞きにくいことを聞いてみてください。その答え方に、会社の誠実さが出ます。
条件や待遇のことは、遠慮せず聞いていい
「お金の話を面談で聞くと、印象が悪くなるのでは」と心配する人がいます。私は、まったくそんなことはないと思っています。
働く以上、条件は大事です。それを確認するのは当然の権利だし、聞かれて気を悪くするような会社なら、そっちのほうが問題です。待遇のこと、評価の仕組み、昇給がどう決まるのか、残業や稼働の実態はどうか。気になることは率直に聞いていい。生活がかかっているのだから、後回しにする理由はありません。
ここでも、答えの「具体度」を見てください。評価の話になったときに、「ちゃんと見ています」だけで終わる会社と、「こういうタイミングで、こういう観点で話し合って決める」と説明できる会社では、入社後の納得感がまるで違います。仕組みを言葉にできるかどうかは、会社がそこを真剣に考えてきたかの証拠です。誰が、いつ、何を見て決めるのか。そこまで聞いて、初めて見えてくるものがあります。
私自身、ここはまだ整備の途中です。だからこそ、聞かれたら「今はこう、これからこう整えたい」と、現状と方針を分けて正直に伝えるようにしています。今ある制度を立派に見せるより、これからどうするかを一緒に話せる人と働きたいからです。
聞く前に、自分の「これだけは譲れない」を決めておく
いい逆質問は、その場のひらめきから生まれるわけではありません。面談の前に、自分が何を大事にしたいかを整理しておくと、質問は自然と具体的になります。
たとえば、「どんな技術を触りたいか」より先に、「どんな働き方なら自分は続けられるか」を考えてみてください。家庭の事情で稼働を調整したいのか。腰を据えて一つの現場に長くいたいのか、いろいろな現場を見て幅を広げたいのか。リモートと出社のバランスはどうしたいのか。ここがはっきりしていれば、面談での質問は「自分の譲れない条件が、この会社で満たせるか」を確かめる方向に絞れます。
逆に、自分の軸が曖昧なまま面談に臨むと、会社の説明をなんとなく聞いて、なんとなく良さそうだと感じて終わってしまう。それで入社すると、たいてい後からズレが出ます。私は面談で、その人が何を大事にしているかが伝わってくると、こちらも具体的に答えられます。お互いにとって、いい時間になります。
全部を満たす会社はありません。だからこそ、何を優先して、何は妥協できるのか。その順番を自分の中で持っておくと、複数の会社を比べるときにも迷いにくくなります。
逆質問に「正解」はない。ただ、答え方は会社を映す
ここまでいくつか質問の例を挙げてきましたが、結局のところ、聞くべき完璧な質問のリストがあるわけではありません。
大事なのは、自分が本当に気になっていることを、自分の言葉で聞くことです。借りてきた質問は、相手にも伝わります。それより、「自分はこういう働き方をしたい。この会社でそれは叶うのか」を、素直にぶつけてみてください。少し不格好でも、そのほうがずっと伝わります。
そして、その答え方を見てください。具体的に話せるか。都合の悪いことも隠さないか。あなたの質問を、面倒くさがらずに受け止めるか。会社の規模や知名度では分からない、その会社の素の部分が、逆質問への答え方に出ます。
面談は、選ばれる場であると同時に、選ぶ場でもあります。短い時間だからこそ、遠慮せずに確かめてほしい。それで「合わない」と分かったなら、それも大事な収穫です。お互いの時間を守ることになります。納得して入った人は、強い。だから私は、しっかり見極めてもらうことを、こわいとは思っていません。
もし、いま会社選びで迷っているなら
私たちは創業して1年目の小さな会社です。整っていないことも多いし、それを面談で隠すつもりもありません。だからこそ、気になることは何でも聞いてほしいと思っています。
もし、自分の働き方や、入ってからの景色をちゃんと確かめたうえで次を選びたいと考えているエンジニアの方がいたら、一度カジュアルに話しませんか。下の募集から、気軽に声をかけてもらえたらうれしいです。話してみて「合わなそう」と感じたら、それはそれで構いません。まずは、お互いを確かめるところから始めましょう。