株式会社Codence代表の西野です。SESエンジニアにとって一番つらいのは、実は技術的な壁ではありません。
私自身がエンジニアとしてSESの現場に出ていた経験から断言できます。技術的な課題は、勉強すればいつか解決する。しかし「技術以外の壁」──孤独感、正当に評価されない焦り、自分の会社への帰属意識の薄さ──これらは、自力では解決しにくい構造的な問題です。
この記事では、SESエンジニアが現場で直面する「技術以外の壁」と、その向き合い方について、経営者とエンジニアの両方の視点から考えます。
壁1:「お客さん」であり続ける孤独
SESエンジニアの最も大きな壁は「孤独」です。
常駐先のクライアント企業に出向して働くSESエンジニアは、物理的にはチームの一員として仕事をしています。しかし心理的には、常にどこか「部外者」の感覚が拭えない。ランチに誘ってもらえない、社内イベントには参加できない、重要な会議から外される──こうした小さな疎外感の積み重ねが、じわじわとメンタルに影響します。
私がエンジニア時代に経験した中で最もつらかったのは、プロジェクトの打ち上げに「SESさんは参加しなくて大丈夫ですよ」と言われた時でした。3ヶ月間、同じ目標に向かって一緒に働いてきたのに、最後の瞬間で「あなたは仲間ではない」と線を引かれた感覚。あの経験は、技術的な挫折よりもずっと心に残っています。
この孤独感は、SESという構造そのものに内在する問題です。常駐先の社員とは契約上の関係であり、どれだけ親しくなっても「同僚」にはなれない。だからこそ、自分が「本当に所属している」と感じられるコミュニティが、SESエンジニアには必要なのです。
壁2:見えない「評価」のブラックボックス
SESエンジニアの2つ目の壁は、評価の不透明さです。
常駐先のクライアントは、エンジニアの働きぶりを日常的に見ています。しかし、その評価がエンジニアの給与や昇進に直接反映されるとは限りません。SES企業の営業担当がクライアントからフィードバックを受け取り、それを社内の人事評価に反映するプロセスは、多くの場合ブラックボックス化しています。
「現場では高い評価を受けているのに、なぜか給料が上がらない」──こんな不満を抱えているSESエンジニアは少なくありません。その原因は、評価情報の伝達経路にボトルネックがあるケースが多い。現場の評価が営業に正確に伝わっていない、営業が人事に適切にフィードバックしていない、そもそも評価基準が曖昧──こうした構造的な問題が、エンジニアのモチベーションを蝕んでいきます。
Codenceでは、この問題に対するアプローチとして、代表である私自身がクライアント先を定期的に訪問し、エンジニアの評価を直接ヒアリングしています。営業任せにするのではなく、経営者が自分の目で「このエンジニアはどう評価されているか」を把握する。小さな会社だからこそできる、人間的なアプローチです。
壁3:薄れていく「帰属意識」
3つ目の壁は、自社への帰属意識の希薄化です。
SESエンジニアは、自社のオフィスよりもクライアント先にいる時間の方が圧倒的に長い。週5日クライアント先で働き、自社のメンバーと顔を合わせるのは月に1回程度──こういう状況では、「自分は何のためにこの会社に所属しているのか」という疑問が自然に湧いてきます。
帰属意識が薄れると、エンジニアは「どの会社に所属しても同じ」と感じるようになります。そうなると、少しでも単価が高い別のSES企業に移ってしまう。SES企業側から見ると「離職率が高い」という問題になりますが、根本原因は「所属する価値」を提供できていないことにあるのです。
この問題に対して、Codenceが取り組んでいるのは「帰る場所」を作ることです。月1回の全体ミーティング、代表との1on1、オンラインでの技術共有会、Slackでの日常的なコミュニケーション──物理的に離れていても、「自分はCodeceのメンバーだ」と感じられる仕組みを意識的に設計しています。
壁4:キャリアの「方向感覚」を失う
SESの現場を転々とする中で、多くのエンジニアが「キャリアの方向感覚」を失います。
金融系の案件の後に通信系の案件、その後にEC系の案件──技術的には多様な経験が積めますが、「自分はどこに向かっているのか」が分からなくなる。スキルは増えていくのに、キャリアとしての一貫性が見えない。これは、転職市場でも不利に働きます。
この問題の本質は、SES企業の多くが「次にどの案件にアサインするか」は考えても、「このエンジニアのキャリア全体をどうデザインするか」は考えていないことにあります。
Codenceでは、メンバーとの1on1で「3年後にどんなエンジニアになりたいか」を定期的に確認し、そこから逆算して案件を選定するプロセスを取っています。金融系のスペシャリストを目指すなら金融系の案件を連続で、フルスタックを目指すなら意図的に領域の異なる案件を経験する──キャリアの「方向感覚」を失わせないための仕組みです。
「壁」を乗り越えるためにSES企業ができること
ここまで挙げた4つの壁は、いずれもSESエンジニア個人の努力だけでは解決しにくい構造的な問題です。だからこそ、SES企業側が意識的に対策を講じる必要があると、経営者として強く感じています。
私たちCodenceが取り組んでいることをまとめると、3つのポイントに集約されます。
1. 「人」として向き合う──エンジニアを「単価」や「スキルシート」ではなく、キャリアと人生を持った一人の人間として扱う。定期的な1on1で、技術の話だけでなく、悩みや不安も含めて対話する。
2. 「帰る場所」を作る──常駐先にいる時間が長くても、「自分はCodenceのメンバーだ」と感じられるコミュニティを維持する。オンライン・オフライン両面でのつながりを意識的に設計する。
3. 「方向性」を一緒に考える──案件の選定をエンジニアのキャリア設計と連動させる。「次はどこに行くか」ではなく「3年後にどうなりたいか」から逆算する。
あなたは一人じゃない
もし今、SESの現場で孤独を感じているなら。評価の不透明さに不満を抱えているなら。自分のキャリアの方向感覚を見失いかけているなら。
それは、あなたの能力不足ではありません。SESという構造そのものが内包する課題に、あなたがぶつかっているだけです。
Codenceは、その課題に正面から向き合っている会社です。完璧ではないかもしれません。まだまだ小さな会社です。でも、エンジニアの「技術以外の壁」を理解し、それを一緒に乗り越えようとする仲間がここにいます。
話を聞きに来るだけでも構いません。あなたが感じている「壁」について、一緒に考えましょう。