外観検査の世界では、
「属人化が問題だ」
という言葉をよく聞きます。
検査員によって判定が違う。
熟練者しか判断できない。
だから自動化しよう。
AIを導入しよう。
そんな説明を見かけることも少なくありません。
確かに、目視検査の属人化は存在します。
しかし私は、
もう一つの属人化があると思っています。
それは、
外観検査自動化そのものの属人化です。
自動化もまた属人的である
外観検査の自動化は、
装置を買って終わりではありません。
照明を選ぶ。
カメラを選ぶ。
光学系を設計する。
検査アルゴリズムを考える。
品質基準を整理する。
現場に合わせて調整する。
どこまでを良品とするか決める。
そのすべてに、
人の経験と判断が入っています。
つまり、
検査の属人化を解決しようとしている自動化そのものが、
非常に属人的な技術なのです。
なぜ属人的になるのか
理由は単純です。
外観検査は一品一様だからです。
対象が違う。
不良が違う。
環境が違う。
求められる品質も違う。
第2回で書いたように、
外観検査には
- コストの壁
- 多様性の壁
- 主観の壁
があります。
だから、
マニュアル通りに進めれば解決する仕事ではありません。
経験が必要になります。
現場を見る力が必要になります。
判断する力が必要になります。
優秀なエンジニアほど、
属人的になるのは自然なことです。
属人化そのものは悪ではない
私は、
属人化そのものをなくせるとも思っていません。
なくすべきだとも思っていません。
なぜなら、
お客様が本当に困っている問題を解決するのは、
最後は人の判断だからです。
現場を理解し、
制約を理解し、
できないことはできないと言い、
条件を変えればできる道を探す。
それはAIではなく、
エンジニアの仕事です。
属人性とは、
経験の蓄積でもあります。
技術者が成長した結果でもあります。
だから私は、
属人性そのものを否定する気はありません。
本当の問題は孤立化である
問題は別のところにあります。
それは、
属人的な知識や経験が、
個人の中に閉じてしまうことです。
優秀な人ほど、
一人で戦っています。
会社の中で一人。
地域で一人。
業界の中で一人。
相談相手もいない。
失敗を共有する相手もいない。
同じ苦労を、
それぞれが繰り返している。
これが本当にもったいないと思うのです。
私は、
問題は属人化ではなく、
孤立化だと思っています。
実績を資産にする
だからこそ、
実績を資産にする必要があります。
ソフトウェア。
良品データ。
設計ノウハウ。
失敗事例。
現場で得られた知見。
そうしたものを共有し、
次の案件に生かす。
次のエンジニアに残す。
毎回ゼロから作らない。
そうやって、
一品一様の経験を資産へ変えていく。
それが、
外観検査自動化の未来だと思っています。
強い個人がつながる
私は、
強い個人が必要だと思っています。
現場を理解し、
判断し、
責任を持つ。
そういう技術者がいなければ、
外観検査は成立しません。
しかし、
強い個人が孤立する必要はありません。
経験を共有する。
得意分野を持ち寄る。
困ったときに相談できる。
そうした関係があれば、
個人の力はさらに大きくなります。
最後に
私たちは、
画像処理を売る会社ではありません。
AIを売る会社でもありません。
現場で使い続けられる工程を作る会社です。
そして、
そうした工程を作れる技術者が、
孤立せずに活躍できる業界になってほしいと思っています。
属人性は価値です。
経験は資産です。
問題は、
それが個人の中に閉じてしまうことです。
強い個人がつながり、
経験が資産として残る。
そんな未来を、
私たちは目指しています。