AIが進化した。
カメラも速くなった。
画像処理も昔とは比べものにならない。
それでも、外観検査の自動化は相変わらず難しい。
むしろ期待が大きくなった分、
「なぜできないのか」
が分かりにくくなっている気がします。
今回は、私たちが現場で感じている
「外観検査自動化の難しさ」
について書いてみます。
技術の問題ではない
外観検査が難しい理由を聞かれると、
「AIの性能ですか?」
「カメラの性能ですか?」
と言われることがあります。
もちろん技術的な課題はあります。
しかし実際には、
技術だけが問題ではありません。
私たちが現場で感じているのは、
もっと構造的な難しさです。
壁その1 コスト
外観検査は、製品そのものの価値を上げる工程ではありません。
品質を守るために必要な工程ですが、
直接利益を生むわけではない。
だから投資には限界があります。
一方で自動化には、
設備費
開発費
調整費
運用費
保守費
が必要です。
理想的な検査を作ろうとすると、
かけられるコストと必要なコストが合わなくなる。
ここが最初の壁です。
壁その2 多様性
製造現場では、
同じように見える製品でも、
実際には少しずつ違います。
品種が多い。
材料が違う。
設備が違う。
照明環境が違う。
不良の出方も違う。
つまり、
同じ仕組みを横展開しにくい。
一つの現場で成功した方法が、
そのまま別の現場で通用するとは限りません。
だから外観検査は、
今でも一品一様になりやすいのです。
壁その3 主観
さらに難しいのが、
品質基準そのものです。
傷がある。
汚れがある。
色が違う。
しかし、
どこからが不良なのか。
どこまでは良品なのか。
ここには必ず人の判断が入ります。
検査員によって違う。
工場によって違う。
会社によって違う。
つまり、
正解そのものが固定されていない。
ここが外観検査の本質的な難しさです。
AIで解決するのか
AIは強力な技術です。
私たちも実際に活用しています。
しかし、
AIが解決するのは
「判定」
の一部です。
コストの壁。
多様性の壁。
主観の壁。
これらはAIだけでは消えません。
だから、
AIを入れれば解決する。
という話にはなりません。
それでも自動化に挑戦する理由
では、自動化は無意味なのでしょうか。
そうではありません。
人手不足は確実に進んでいます。
品質要求も上がっています。
だから私たちは、
100点の自動化を目指すのではなく、
現場で成立する自動化を考えています。
人がやったほうが良いことは人がやる。
機械が得意なことは機械に任せる。
現場全体で最適化する。
それが現実的な答えだと思っています。
魔法ではなく、工程を作る
私たちは、
画像処理を作る会社ではありません。
AIを売る会社でもありません。
現場で使い続けられる工程を作る会社です。
外観検査に魔法はありません。
だからこそ、
現場を理解し、
制約を理解し、
できないことはできないと言い、
条件を変えればできる道を探す。
そんな地道な仕事が必要になります。
派手ではありません。
でも、それが現場で本当に役に立つ技術だと考えています。