2025年9月にGO株式会社からスピンオフして誕生したGOジョブ株式会社。
事業全体の戦略から、AIによる組織設計、プロダクト開発までを牽引する執行役員・落坂秀樹さんに、事業の現在地と組織への思い、そして新しく入る仲間への期待を聞きました。
これからの時代のキャリアの築き方を模索している方にとって、ヒントの多い記事になっていると思います。
落坂秀樹(おちさか ひでき)
執行役員
GO株式会社にて複数のコアプロジェクトや事業戦略に従事。2025年9月、同社からのスピンオフに伴いGOジョブ株式会社の執行役員に就任。現在は事業全体の戦略立案、組織づくりに加え、AIを活用した社内業務の再設計からプロダクト開発(PoC)を自らエンジニアリングも含めて牽引している。
目次
「正解のない文化づくり」に向き合う
なぜ今、ドライバー領域に踏み込むのか
AIネイティブな組織を、自分の手で実証する
私たちがチームでやりきる理由
5年後、複数事業で社会課題に挑む
入ってくれた人の成長機会を、本気で作る
市場価値を上げる環境を、仕組みとして約束する
「正解のない文化づくり」に向き合う
——まずは簡単に自己紹介をお願いします。
GOジョブ株式会社で執行役員を務めている、落坂です。事業全体の戦略と、組織づくりを担当しています。GOジョブは2025年9月、GO株式会社からスピンオフして立ち上がった会社です。
ドライバー特化の採用プラットフォームを運営していますが、それと同じ重さで取り組んでいるのが、この事業を通じて「AIを前提に設計された組織」を作ることなんです。
事業を回しながら、社内の業務をAIで再設計する仕組みも、自分で手を動かして進めています。事業と組織とAI、この三つを一体で動かしている立場から、今のGOジョブについてお話しできればと思います。
——立ち上げ当初は、社内でも大きな変化を感じる時期だったと思います。当時を振り返って、どんな局面が一番大変でしたか?
一番きつかったのは、分社化のフェーズ変化と、組織の在り方や文化を自分たちで作っていく局面ですね。
GOジョブは何を大事にする組織なのか、どう意思決定するのか、人と人がどう関わるのか。こういう目に見えないものを、言葉にして、行動で示し続けなければならない。
技術的な課題や数字の課題は、検証手段があるのでアプローチしやすいですが、文化や組織の在り方には、正解がない。ここが一番難しかったです。
——正解のない中で判断し続ける状態は、外から見る以上にプレッシャーが大きかったと思います。何が支えになっていましたか?
結局のところ、目の前で一緒に働いてくれているメンバーの存在でした。文化は一人で作るものではないし、私が完璧な答えを持っている必要もない。ただ、ここにいる人たちと一緒にいい会社を作りたい。その気持ちが、判断に迷ったときの軸になっています。
立ち上げ期の組織って、毎日が選択の連続なんですよ。前例がないから、誰かの決断を待つこともできない。だから、自分が信じられる軸を持っているかどうかが、すべてを決めます。私にとってのその軸は、「目の前のメンバー」でした。
なぜ今、ドライバー領域に踏み込むのか
——ドライバー特化型の採用プラットフォームというと、一見アナログで労働集約的な領域です。ここに本気で取り組もうと考えた背景を教えてください。
ドライバー不足は、データで見れば1995年のドライバー人口をピークに減少が続いています。原因は人口動態、産業構造、労働環境など複合的なもので、私たちだけで全体を解決できるとは思っていません。ただ、「採用」という切り口からこの問題に関わる意味は、今この瞬間がいちばん大きいと考えています。
ドライバーの採用現場と求職者の間には、言葉になっていない、データ化されていない情報が大量に存在しているんです。求職者が本当に求めている潜在的なニーズ、企業側が言語化できていない現場の実態、職場の空気感。
こうした「非構造の情報」こそが、キャリアアドバイザーや営業が日々下している判断の質を決めているのに、ここに手を入れる手段がこれまで存在しなかった。それが、AIの登場で、ようやく現実的になりました。
ここでやりたいのは、業務の自動化ではなく、判断の支援です。キャリアアドバイザーが「この求職者にどの企業を提案するか」と判断するとき、営業が「この事業者は何を本当に求めているか」を読み解くとき、求職者が「自分のキャリアを選ぶ」とき。
人材紹介のあらゆる場面は、最終的に「人が判断する」ことで成り立っています。その判断の隣にAIがいる構造を作りたい。マッチングの精度を上げることも、その応用のひとつではあります。ただ、本質はもっと手前にあって、人が考えるプロセスそのものをAIで支援する構造を組織として持つことだと思っています。
——「現場を理解する」とは具体的にどういうことでしょうか?
私たちが言う「現場理解」は、ふたつの方向があります。
ひとつは、私たちが向き合う事業者やドライバーの方々の現場です。明日人が来なければ事業が止まる切迫した状況にいる事業者がどんな声をあげているか。現場でハンドルを握る方々が、どんな働き方や条件を本当に求めているか。数字だけでは見えない、生の声や行動の文脈まで掘り下げて理解する。これがひとつ目です。
もうひとつは、社内の業務オペレーションの現場です。私たちの社内では、キャリアアドバイザーや営業が日々求職者・事業者と向き合っています。その業務の中で「何が引っかかっているか」「どんな判断に時間を取られているか」が、私たちが作る仕組みの設計のすべてを決めます。机上で「こういうAIツールがあれば便利だろう」と考えて作るのではなく、現場の業務に張り付いて、本当に効くポイントを見極めてから設計する。
クライアント側の現場と、自社のオペレーション現場。この二つを両方とも深く理解することが、テクノロジーをただの効率化ツールで終わらせず、業界の労働力構造に効くインフラに育てる前提だと考えています。
AIネイティブな組織を、自分の手で実証する
——いま、社内ではどんなことに取り組まれていますか?
私たちが1〜2年で実現したいマイルストーンがあって、「AIネイティブに組織を運営している会社の代表例」として、世の中から語られる状態を作ること。これに向けて今、自分自身が手を動かしている段階です。
人材紹介は、オペレーションが今でも属人的で労働集約な領域です。キャリアアドバイザーが求職者と話して、企業に提案して、面談調整して、というようにほぼ個人技で回ってきました。特にドライバーのような非ホワイトカラー領域では、本格的にテクノロジーで業務を再設計するプレイヤーがまだほとんどいません。その事例を、まず自社で証明することが目標です。
具体的には、社内向けにいくつかの内製ツールをPoC(実証実験)として開発しています。キャリアアドバイザーが求人を選ぶ判断を支えるマップツール、経営陣が現場の状況を読み解く判断を支えるKPIレポーティング、個人目標を経営戦略に紐づける判断を支えるダッシュボード、新しいメンバーの立ち上がりを支える研修支援。
社内では「クエストシリーズ」と呼んでいて、ゲーミフィケーション要素を入れて、現場が「使いたくなる」設計を意識しています。
それぞれ機能はバラバラに見えますが、共通しているのは「人が考えて判断する場面に、AIが一緒に考える形で入っている」こと。ここがクエストシリーズの設計思想です。
3ヶ月で10個以上のツールをPoCとして形にしました。外注すれば30人月、数千万〜1億円規模のシステム群です。今はテスト環境下で現場のメンバーに触ってもらいながら、実用性が確認できそうなところは順次本運用に向けた準備を進めています。フィードバックを受けて改善のサイクルを回し続けているという状態です。
ただ、これ自体には大した意味はないと思っていて。AIを使いこなせば、いずれ多くの人がここに到達するからです。重要なのは、人の判断にAIが入る構造を組織として持っていることと、現場の業務に張り付いて検証し、何が効いて何が効かないかを理解できていることだと思っています。
——その仕組みを社内で広げていくにあたって、いま組織として足りないと感じているのはどんなところですか?
率直に言うと、スピード感と勢いです。PoCはひとまず形になりましたが、これを本運用に乗せて、現場の業務に組み込んで、組織の当たり前として根付かせていくのは、ここからの勝負だと思っています。
AIネイティブな組織って、誰かが作ったツールを使うことじゃなくて、全員がその前提で動く文化のことなんですよね。だから、文化として根付かせるところまで一気に持っていきたい。
そのスピードを一緒に作ってくれる仲間が必要です。
「自分の業務領域でAIをどう使うか、自分で考えて手を動かせる人」
「現場側から『ここをこう変えるべきだ』と提案してくれる人」
「ゼロから仕組みを作るプロセスを楽しめる人」
こうした方々と一緒に、GOジョブの新しい文化を作っていきたい。ここからの数年は、GOジョブが「AIネイティブな組織」として完成形に向かう、たぶん一番面白いフェーズです。
——どんな人と一緒に働きたいと考えていますか?
ひとる強調しておきたいんですが、私たちが集めたいのは「AIで何か面白いものを作りたい人」ではなく、「目の前の課題を解決したい人」です。AIはあくまで、目的を達成するための手段でしかありません。本質は、私たちが向き合っているドライバーの方々や人手不足に苦しんでいる事業者の課題を、どう根本から解くか?にあります。
「この課題を解決したい」という動機が先にあって、その手段を探した結果としてAIを掴みに行く。この順番でなければ、AIネイティブな組織は成立しません。
だから、現時点でAIの知識が深くなくても問題ないんです。むしろ「課題に対してちゃんと向き合えるか」のほうが、何倍も重要だと思っています。
私たちがチームでやりきる理由
——GOジョブには「チームでやりきる。」「じぶんごと。」「まずやってみる。」「みんなのよしをつくる。」という4つのバリューがありますよね。
多くの会社にとって、バリューはオフィスの壁に貼ってあるスローガンになりがちですよね。でも、私たちのバリューは、AIネイティブな組織を成立させるための必要条件なんです。
「ここから先は自分の役割ではない」と線を引かないこと。目の前のどんなに小さな課題でも、自分のものとして引き受けること。
完璧な計画ができあがるのを待つ前に、まず手を動かしてみること。
自分の短期的な成果だけでなく、求職者・事業者・チーム全員にとっての「よし」を取りに行くこと。
そして個人プレーで終わらせず、最後はチームでやりきる。
なぜこれが不可欠かというと、AIによって定型業務や情報共有のスピードが効率化された組織において、人間がやるべきことは「役割の隙間に落ちている課題を拾いに行くこと」になるからです。境界線を越えて課題を取りに行く人間がいなければ、AIをいくら導入しても、組織の力は何も変わりません。逆に、この4つを体現できる人が揃えば、AIをレバレッジにして、少人数でも組織は驚くほど速く動きます。
——メンバーが一番輝く瞬間は、どんな時ですか?
チームで一つの目標を追いかけているときですね。誰かに指示されたからでも、評価のためでもなく、「どうやったら達成できるか」を自分たちで考えて、議論して、手を動かしている。そういう瞬間のメンバーが、一番輝いて見えます。
派手な成果が出た瞬間よりも、答えが見えない状況で必死に頭を使っている姿のほうが、私は好きなんですよ。
バリューの「じぶんごと」と「チームでやりきる」が同時に立ち上がっている状態。
ここがちゃんと機能している限り、組織は前に進むと信じています。
5年後、複数事業で社会課題に挑む
——今後の展望について、直近の1〜2年と、その先の5年後で描いているロードマップを教えてください。
直近の1〜2年は、いま展開しているドライバー領域の採用プラットフォームで「AIネイティブな組織運営の代表例」としての地位を確立する。これが第一のマイルストーンです。その先の5年後は、もっと大きな絵を見ています。ドライバー領域で実証した「AIネイティブな組織運営の方法論」を武器に、複数の事業を立ち上げて、社会課題に多方面から取り組んでいきたい。
これは単なる多角化ではなく、AIによって組織構造そのものが変わっていく時代に、それを前提とした事業ポートフォリオをどう設計するかという話でもあります。AIネイティブな組織運営のノウハウは、業界を選ばず転用できるはずなんです。それを活かして、領域を広げていく。
——組織として、そのとき何を実現していたいですか?
組織の側でいうと、社内で多様なキャリアを提示できる会社にしたいんですよ。最初にドライバー領域のキャリアアドバイザーや営業として入った人が、社内のAIツールを使いこなすうちにデータ系の仕事に移ってもいい。新規事業の立ち上げに行ってもいい。別の社会課題に挑むチームに移ってもいい。
会社を辞めなくても、自社の中で何度でも違うキャリアを試せる環境。それが5年後に作りたい風景です。
入ってくれた人の成長機会を、本気で作る
——この事業を成功させることは、ご自身にとってどんな意味を持ちますか?
人生レベルの大きな意味、というのは正直、語りにくくて。というのも、私はそもそも、大きな旗を掲げるタイプではないんですよ。私がやりたいのは、入社してくれた人に、成長機会をちゃんと提供すること。これがいちばん大事なんです。
事業の話をいろいろしてきましたが、突き詰めると、ここで働いてくれている一人ひとりが、ちゃんと成長して、自分の人生を前に進めていける。これが私にとって一番大事です。AIネイティブな組織を作るというビジョンも、その手段のひとつでしかなくて。
「メンバーが自分の市場価値を高められる環境を作る」という目的があって、初めて方法論として意味を持つんです。
事業を成功させる意味があるとすれば、入ってくれた人たちが、ここでの時間で確実に成長できた、と言える状態を作ること。そこに尽きるかもしれません。
市場価値を上げる環境を、仕組みとして約束する
——新しく入る仲間に、最初の段階でどんなアクションを期待されていますか?
遠慮せずに、ちゃんと聞いてくれる。ちゃんと発信してくれる。これを最初の段階で見せてくれたら、かなり驚きます。新しい環境に入ると、多くの人は最初の数ヶ月、空気を読んで様子を見るんですよね。それ自体が悪いわけではないのですが、その期間が長すぎる人は、結局その後も「言われたことだけやる人」になりがちで。
私が新しい仲間に期待するのは、その逆です。入った瞬間から「これはどういうことですか」「なぜこうなっているんですか」と聞いてくる。あるいは「外から見るとここに違和感があります」「自分はこう思います」と発信してくれる。先ほど話した「なぜを問い続ける」というのは、こういう日常の動きのことなんですよ。
入ったばかりの人だからこそ気づける違和感が、必ずあります。それを遠慮して飲み込んでしまうと、お互いに損なんです。
——GOジョブで働くことで得られる「最高の報酬」は何だと思いますか?
自分の市場価値が、入ったときよりも明確に上がっていること。これに尽きると思います。GOジョブで身につくものは、大きく2つあります。
ひとつは、「なぜ」を問い続けて物事の本質に届く思考力。これはどの会社でも、どの職種でも通用する、一生もののポータブルスキルです。普段の私のコミュニケーションは、メンバーからすると「なぜ?なぜ?」と詰められているように感じるかもしれませんが(笑)。その思考の深さが、長期的にはその人の市場価値を決めると思っています。
私は本気で人材輩出企業をつくることを目指しているので、ここを出るときには、入ったときより一段も二段も視座が高くなっていてほしいんです。
……まあ、本音を言えば、外に出ていかれたら出ていかれたで、それはそれで寂しいんですけどね(笑)。それでも、ここで身につけた思考力でどこに行っても通用する人になってもらいたい、というのが先にあります。
もうひとつは、AIを前提に組織や事業を「設計する側」に立った経験です。これからの時代、どの業界でもAIを前提に組織を再設計する動きが進みます。ツールとして使う人は増えていきますが、組織の構造そのものをAI前提で設計するフェーズに立ち会える機会は、まだ限られています。GOジョブでは、それを実務として積めます。
給与や福利厚生はもちろんきちんと整備していきますが、それ以上に、5年後10年後に自分の市場価値という形で残るもの。それがここで得られる本当の報酬だと思っています。
——最後に、選考に迷っている候補者へ約束できることは?
ひとつ約束できることがあります。「ここで働く時間を、あなたの市場価値が確実に上がる時間にする」これは私が責任を持ってやり切ります。
経営や責任者の仕事は、ビジョンを語ることだと考えている人がいるのですが、私はそれは半分しか合っていないと思っているんです。残りの半分は、そのビジョンを実現するための環境と仕組みを、自分で作ること。考えやすい構造、挑戦できる機会、迷ったときに戻れる軸。こうしたものを設計して整えるのが、責任者の役割だと思っています。
ビジョンを掲げて、あとは現場任せ。これは絶対にやりません。メンバー一人ひとりが思考を深められて、新しい領域に踏み出せて、結果として自分のキャリアが前に進んでいる。そう実感できる状態を作るために、私はこれからも仕組みを作り続けます。