全国で年間4万棟の古民家が姿を消していると言われています。
価値あるはずの文化財が、次々に姿を消していく現実。 でも、ただ「守る」だけでは、続かない。
そんな課題に真正面から向き合い、地域文化を未来に“活かす”ことでまちを再生しようとしているのが、私たちnarrative(ナラティブ)です。
私たちは奈良を拠点に、全国各地の地域と伴走しながら文化財や古民家の保存・再生・活用を軸としたまちづくりの新しいモデルをつくることに挑戦してきました。
私たちが行っていることはただの建物再生ではありません。 設計、資金調達、運営に至るまで。 すべてのプロセスを一貫して担うことで、地域に根ざした新たな経済循環を生み出してきました。地域企業や金融機関と一体となって、持続可能な観光地域経営を具現化してきました。
そして今、これまでの経験を活かしながらも、さらに大きな挑戦を見据えた複数の新規プロジェクトが動き出しています。
本記事では、それらのプロジェクトの一部をご紹介します。 “地域経営”の最前線にご関心がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
社会が変わる中、narrativeが向き合っていること
観光需要の変動、インバウンドの急増、人口減少、若者の田舎離れ、気候変動——。 地域が直面する課題や機会は、かつてないスピードで変化しています。
特に近年は、訪日観光客の回復・増加によって地方の魅力が再評価されつつある一方で、 地域に住み、働く若者の数は減少の一途をたどっています。narrativeは、こうした動きをただ「背景」として受け止めるのではなく、まちづくりそのものをアップデートする好機だと捉えています。
単に古民家を保存するのではなく、地域の暮らしや文化、経済を巻き込んだ「事業」として再構築する。
そのために私たちは、
- 持続可能な運営体制の設計
- 地域住民や企業との共創
- 金融機関との連携による資金調達スキームの構築
- 歴史的建造物のリノベーション
- インバウンドも視野に入れた多言語対応・国際的な価値訴求
などを包括的に組み合わせ、“文化財の事業化”による持続可能な地域経営を追求してきました。
今回ご紹介する新規プロジェクトの数々は、まさにその集大成とも言えるもの。
地域の課題に対する「答えの一つ」として、私たちは新たな挑戦を始めています。
なぜnarrativeが選ばれるのか
文化財の保存やまちづくりには、多くの関係者が関わります。 ただ、その全体をまとめ、計画から運営まで一貫して支える役割を担える存在は、そう多くありません。
私たちはこれまで、設計や企画だけでなく、資金調達、運営に至るまでを実践的に組み合わせながら、地域ごとに最適なスキームをつくってきました。その結果として、地元の企業や金融機関、自治体、省庁など、さまざまな方々から声をかけていただくようになりました。
どのプロジェクトにも「これが正解」という形はなく、常に試行錯誤の連続です。
それでも、地域の人たちと一緒に考え、一緒に汗をかきながら前に進んでいく。 そうした姿勢を大切にしながら、私たちは取り組みを続けています。
プロジェクト紹介
①:文豪たちの記憶を宿す「東京・鳳明館」再生プロジェクト
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【鳳明館とは】
東京都文京区にある「鳳明館(ほうめいかん)」は、明治時代から続く老舗旅館。
多くの文豪たちが滞在した歴史ある場所であり、修学旅行の受け入れ先としても長年親しまれてきました。
【プロジェクト概要】
現在narrativeが取り組んでいるのは、この鳳明館のリノベーション・再生プロジェクトです。プロジェクトの起点となったのは、ある設計士の方からの相談。「東京で唯一とも言える大型古民家旅館が、このままでは廃れてしまうかもしれない」という声が、私たちに届いたのが始まりでした。
【課題】
鳳明館は、時代の流れとともに運営の難しさや施設の老朽化など、さまざまな課題を抱えていました。また、保存だけでなく新しい活用法を見出す必要があり、単なる宿泊施設ではなく、地域や時代にあった形への転換が求められていました。
【取り組みの特徴】
再生のコンセプトとして掲げたのは、“東京の水先案内人”。これは、鳳明館がかつて「東京で初めて泊まる場所」として、多くの人の旅の始まりを支えてきた存在だったことに由来します。
“水先案内人”とは、船の進路を岩礁にぶつからないように導く専門職。 東京という大都市に、初めて触れる人の案内役になるような宿を目指して、リノベーションを進めています。
今回は、そうした歴史的価値を引き継ぎながら、高級感と親しみやすさを両立させる空間づくりを目指しています。一泊20万円の特別なお部屋も用意される一方で、修学旅行生や海外からのゲストも受け入れる設計とし、さまざまな人にとっての東京の入り口になることを目指しています。
【未来像】
このプロジェクトは、総工費は数十億円にもなるなど、民間主体の古民家開発プロジェクトにおいても、また、narrativeが関与するプロジェクトとしても過去最大規模になります。
これだけの大規模プロジェクトには、当然ながら大きな挑戦とチャンスがつきものです。
現在は企画・設計フェーズですが、今後3年をかけて、現地でのオペレーションにあたる人材の採用・育成も進めていく予定です。日本の中心・東京のど真ん中にある、歴史と可能性が詰まった舞台。 チームとして一緒に鳳明館を動かせる仲間を、これから全国から募っていきたいと思ってます。
②:広域回遊を生み出す「山陰エリア」観光地域経営プロジェクト
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【プロジェクト概要】
本プロジェクトの舞台である山陰エリアは、鳥取県・島根県を中心とした地域です。 出雲大社や鳥取砂丘といった全国的にも知名度の高い観光スポットが点在していますが、それらの場所だけが突出して訪問され、地域全体の活性にはつながっていないという課題を抱えています。
また、関西方面からのアクセスが限定的であることに加え、地域内の交通・宿泊インフラが未整備であるため、観光客が長く滞在しにくい構造となっています。
このプロジェクトでは、山陰エリア全体を一つの観光圏としてとらえ、中長期の滞在価値の創出や高付加価値旅行者に向けた受け入れ拠点整備を一体的に行っていく予定です。
narrativeは、観光庁からに請われる形で、山陰全体の観光地域づくり、つまり観光地経営を行うための法人設立を主導しています。法人の設立に当たっては、鳥取・島根両県、地域金融機関及び地元有力企業と連携しながら地域一体となった観光地経営のビジョンと具体的な戦略を策定しています。まさに、narrativeが今まで培ってきた機能を山陰全体に展開しようとしています。
これまで「点」で存在していた観光資源を「面」としてつなげ、訪問客が地域を周遊しながら多様な体験を享受できる仕組みを構築していくことが、本プロジェクトの柱となっています。
【課題】
現在、山陰エリアでは以下のような複合的な課題を抱えています。
- 「山陰」としての滞在価値の発信不足
- 高付加価値な宿泊施設の不足
- 地元観光事業者の後継者不足と収益性の低下
こうした課題は、観光需要があっても地域経済に還元されにくく、観光業自体が持続可能でなくなっていくという負の連鎖を引き起こしていました。
【取り組みの特徴】
narrativeはこの地域において、単なる施設整備にとどまらず、「地域経営」という視点を持ち込み、観光資源を再編集するプロデュース的な役割も担っています。
- 地域資源を活用した特徴ある宿泊施設の企画・開発・運営
- 三人における唯一無二の旅行コンテンツの造成と情報発信
- 行政側が担う地域プロモーション手法の高度化
- 点在する観光地をつなぐモデルルートの設計や情報発信
- 地元の観光事業者や交通事業者とのパートナーシップ形成
- 空港やJRなどのハブ機能を生かしたアクセスの改善提案
といったアプローチにより、観光地としての受け入れ基盤を根本から見直す動きを進めています。
また、宿泊施設のオペレーションや周辺体験の開発・運営にも関わることで、narrative自体が観光地域経営の“プレイヤー”となり、外からの助言にとどまらない伴走支援を行っています。
【未来像】
このプロジェクトが描く未来は、単に宿泊者数や観光客数の増加ではありません。
山陰エリアに点在する魅力を面的につなぎ、地域に新しい経済の循環を生み出すことで、観光地域づくりのエンジンとして機能することを目指しています。その先にあるのは、地域に住みたい人、働きたい人、戻りたい人が増えるような、持続可能な地域社会の再構築です。
現在はまだ企画フェーズにありますが、構想段階から地域の声や関係者と向き合い、地に足のついたプロジェクトづくりを進めています。
この取り組みに興味を持ってくださった方、私たちの想いや価値観に共感してくださる方と、一緒に山陰の新しい物語をつくっていけたら嬉しいです。
③:湯治文化を未来につなぐ「山口・俵山温泉」再生プロジェクト
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【俵山温泉とは】
山口県長門市に位置する俵山温泉は、「湯治文化」が今もなお色濃く残る全国的にも珍しい温泉地です。静かな山あいに佇むこのまちは、旅館に宿泊しながら共同浴場に通うという独自のスタイルが特徴で、長年にわたり“湯治のまち”として親しまれてきました。
この土地ならではの文化や街並みは非常に貴重である一方、少子高齢化や人口減少、利用者の減少により、温泉街としての活気は失われつつありました。かつての賑わいが、徐々に静けさへと変わってきているのが現状です。
【プロジェクト概要】
narrativeでは、俵山温泉について温泉地全体を再設計するべく、プロジェクトを推進しています。温泉街としての滞在体験を時代の要請に合わせて改めて設計するという新しい温泉地のかたちを提案していきます。
温泉街の中核的施設である外湯の再生に加え、旧旅館のリノベーション、周辺の空き家や店舗の再生など、まちの資源を組み合わせることで、温泉街全体の価値を再構築していくプロジェクトです。
地域の事業者や住民とともに構想段階から丁寧に関わることで、まちの魅力を“外から整備する”のではなく、“中から育てていく”視点を大切にしています。
【課題】
- 湯治文化に基づいた街並みが、現代の観光客が求める快適さ・利便性と乖離している
- 空き家や空き店舗が増加し、街全体の景観や活気が損なわれている
- 担い手不足
これらの課題により、観光資源としてのポテンシャルを持ちながらも、十分に活かしきれていない状態が続いていました。
【取り組みの特徴】
- 湯治の価値を再定義し「新湯治」としての体験価値を再設計すること
- 「新湯治」を体現するために、温泉街に存在する複数の施設整備を伴うこと(拠点となる空間設計+地域全体との接続性を考慮)
- 地域住民や事業者と連携した体験プログラム(湯治文化の再発見、地元食材を活かした食体験など
これにより、俵山でしか味わえない“日常の中の非日常”を生み出し、滞在そのものがまちとの関わりになるような仕組みづくりを目指しています。
また、観光地開発としての表層的なリノベーションではなく、地域経済・文化・暮らしを内包する生活圏としての温泉街を再構築することを目的としています。
【未来像】
温泉という地域資源を核に、まち全体を宿とする新しい観光地モデルを確立することで、地域に暮らす人と訪れる人が自然と交わる場を生み出そうとしています。
- 宿泊者の動線を設計し、商店街や地域コミュニティとの交流機会を創出
- 外からの来訪者が地域の魅力を再発見するきっかけを創る
- 新たな移住・定住や事業創出につながる循環モデルの構築
現在はまだ企画フェーズですが、本プロジェクトに共感いただける方、湯治文化や温泉街の未来に可能性を感じる方とともに、新しい挑戦をかたちにしていきたいと考えています。
文化財(古民家)保存から事業化へ。すべては未来のために
文化財や古民家を「残す」こと自体は、決して難しいことではありません。
適切な修繕を施し、現状を維持するだけであれば、行政の補助金や一時的な資金でどうにかなることもあります。
しかし、それだけでは未来には繋がりません。
narrativeが挑んでいるのは、「保存」の先にある「“活用”と“事業化”」。
文化的価値のある建物を、地域の資源として再定義し、人が集い、働き、価値が生まれる場へと転換していくことです。
例えば、ただ泊まるだけの宿ではなく、地域の暮らしや文化に触れる体験の入り口として再生した旅館。
かつての商店街や空き家をつなぎ、まち全体を“ひとつの宿”に見立てた温泉地。
広域の観光拠点として、点在する資源を面で繋ぎ直し、地域全体を動かしていく仕掛け。
いずれのプロジェクトにも共通するのは、「文化を守るために、経済の循環をつくる」という思想です。
そこには、補助金だけでは支えきれない持続性の課題、担い手不足、地域外への経済流出といった複雑な現実があります。だからこそ、私たちは“まちづくり型ビジネス”という言葉を掲げてきました。
文化財という言葉には、ともすれば“過去のもの”という印象がつきまといます。
ですが私たちは、それらを“未来の担い手”にバトンを渡すための装置”と考えています。
そのバトンを繋ぐには、維持管理するための収益構造が必要です。
その収益が、建物の維持だけでなく、地域の人の雇用や挑戦につながっていくこと。
それが結果として、地域の文化や価値を守り、育てていくことに繋がっていくのです。
保存ではなく、活用へ。
補助ではなく、事業へ。
narrativeが描く「まちづくり型ビジネス」は、その選択の積み重ねによって生まれています。
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一緒に“新しい物語”をつくりませんか?
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これまで私たちが取り組んできたのは、「まちを再生すること」でもあり「文化を未来に繋ぐこと」でもあり、
そして何より、「人の想いが集まる場所をつくること」でした。
narrativeの仕事は、一つとして同じプロジェクトがありません。
地域も、文化も、関わる人も違う。
だからこそ、毎回ゼロから学び、悩み、考え抜いて、少しずつ形にしてきました。
都市の真ん中にある老舗旅館から、温泉街の再生。
広域の観光圏づくりから、まち全体を一つの“宿”として捉える挑戦まで。
どのプロジェクトにも、正解はありません。
でも、地域に真摯に向き合い、関わる人と丁寧に対話しながら、一緒に未来を描いていくことは、変わらないスタンスです。
これからのnarrativeには、もっと多くの場所と人との出会いが待っています。
企画フェーズから伴走できるプロジェクトが増えている今、新しい仲間の力が必要です。
- 地域やまちづくりに興味がある方
- 建築や運営のスキルを社会に活かしたい方
- 歴史・文化・人の営みにワクワクできる方
- 「正解のない問い」にチームで向き合いたい方
私たちと一緒に、「未来につながる物語」をつくりませんか?
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