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限られた時間の中でフレキシブルに働きたい個人と、販売員不足に悩むアパレル店舗のマッチングプラットフォーム『MESHWell』の開発ストーリー

#開発ストーリー #人材マッチング #アパレル

2023.10.03

株式会社メッシュウェル



株式会社メッシュウェルは、限られた時間でフレキシブルに働きたい個人と、販売員不足に悩むアパレル店舗をつなぐマッチングプラットフォーム『MESHWell(メッシュウェル)』を運営しています。


2019年2月のサービス開始以来、都市部の高感度層をターゲットとするブランドを中心に導入店舗が拡大しています。また当社が「タレント」と呼ぶフリーランス販売員の登録者も増え続け、2023年9月時点で登録人数は累計約6,000名に迫っています。


サービス開始から4年が経過した今、MESHWellの軌跡を振り返る開発ストーリーをお伝えします。


導入実績 - MESHWell公式サイトより


MESHWellの着想の原点は、大手アパレル小売企業が直面する課題

当社の代表取締役である窪田光平は、前職の大手アパレル小売企業でEC事業やカスタマーサクセスの推進を行っていた人物です。特にEC事業の拡大に貢献し、EC売上高において業界トップクラスに躍進する基盤を築きました。


この時エンジニアとしてECプロジェクトに参画していたのが、現在当社でCTO兼CPOを務める森陽です。 


窪田のキャリアは一見すると輝かしい実績なのですが、その陰で窪田はアパレル業界が抱える課題を痛感していました。それは慢性的な店舗の販売員不足です。カスタマーサポートに寄せられる「もっと接客してもらいたい」という声に対して、アパレル業界は抜本的な解決策を講じられずにいたのです。

 

その背景には子育てや介護など、ライフスタイルに変化が多い女性が販売職を続けづらい硬直的な勤務形態がありました。多くのアパレル企業はフルタイム勤務を求める実情があり、客が多く訪れる平日夜や週末にシフトに入れない社員はキャリア自体を諦めざるを得ない状況だったのです。


店舗側も客が多く訪れる曜日や時間帯に販売員を増やせば売上増につながるのはわかっているのですが、特定時間のみの勤務スタッフを確保するのは難しく、ジレンマを感じていました。


ストアの課題 - MESHWell 営業資料より


米国で目にしたのは、フリーランスとして働くミレニアル世代の販売員の姿

そんな課題を体感する中で窪田はMBA取得のため、米国の経営大学院に留学します。そこで目にしたのは、フリーランスの販売員として働くミレニアル世代の姿でした。当時米国では、雇用関係を結ばずに単発・短時間で働く「ギグワーク」が広がりつつあったのです。


米国・ボストンにて。博物館に飾られたアメリカ国旗(著者撮影)


この時、「販売職が好きなのにキャリアを諦めざるをえない人材」「店舗側のジレンマ」「硬直的な働き方が主流ゆえのミスマッチ」という3つの要素を俯瞰して、日本でもこれまでとはまったく違う働き方があってもいいのではないかと着想したのが、MESHWellだったのです。

 


「新たな働き方で社会に笑顔をもたらす」ソーシャルインフラとしてのMESHWellの誕生

米国から帰国した窪田は早速、MESHWellの開発に取り掛かります。この時は所属していた大手アパレル小売企業の新規事業として立ち上げる前提だったため、経営陣への説明が必要でした。


そこで窪田は私費を投入して、MESHWellのプロトタイプ(試作版)をつくります。それはEC事業拡大時、新しい取り組みに対する経営陣からの抵抗に苦慮した経験があったため、実際に動くものを見せた方がよいだろうという判断からでした。しかし周到に準備したにも関わらず、一向に意思決定がなされません。


「アパレル業界にはレガシーな感覚が根付いています。データに基づいた改善案やロジカルな成長戦略を取り入れる感覚が乏しく、過去の成功体験と勘に頼りがちなのです。今後人口が減少していく日本で、これまでと同じやり方で伸びていくわけがありません。アパレル業界は慣習に捕らわれず、変化に対してもっと柔軟で俊敏な対応を取っていくべきだと強く感じました」。窪田は当時を振り返ります。


2018年秋頃、プロトタイプを開発したメンバーとランチ(著者撮影)


MESHWellの構想に賛同したエンジニア・森の参画

アパレル業界全体の意思決定スピードに疑問を感じ始めた窪田の元に、ECプロジェクトを離れフリーランスエンジニアとして活動していた森から連絡が入ります。


窪田は森にMESHWellの構想を話しました。この時、森は「面白そうだと思った」と言います。


アパレル業界はサプライチェーンがしっかりと作り上げられているため、参入障壁が高いとされています。その中でECはサプライチェーンへの“アドオン”であったため、成功できたと森は分析しています。“働き方”でアプローチするMESHWellはまさにアドオンであり、成功確度が高いと感じたのです。

 

この頃の窪田はアジリティが高い環境の中で、「多くの人の役に立ち、その人はもちろん、その家族や周囲にいる大切な人も喜ぶサービスを作りたい」という気持ちが強まっていました。

 

アパレル事業における豊富な経験を持ち、業界の構造と課題を知り尽くす窪田。窪田の構想を深く理解し、形にするエンジニアリングスキルとテクノロジーの知見を持つ森。互いの得意分野を掛け合わせ、「ホスピタリティに溢れた人材が、短時間でも最高の接客サービスを提供できるソーシャルインフラを構築しよう」というゴールを確認し合いました。


こうして窪田は大手アパレル小売企業から独立して、株式会社メッシュウェルを設立。合流した森と、公私に渡りパートナーの伊藤と共にMESHWellの開発に本格的に着手します。


2018年11月に掲載頂いた記事 - Yahoo! ニュースより


MESHWellのデザイン:法的コンプライアンスとユーザーフレンドリーなUI/UXのバランスを重視

開発にあたり最も気を使ったのは、法律に抵触しないシンプルな仕組みづくりでした。

MESHWellのコンセプトは柔軟に働きたい個人と、必要な時間や期間だけ販売の即戦力がほしい店舗とのマッチングで、この働き方は業務委託にあたります。業務委託は委託者と受託者が対等な関係であり、委託者は業務の進め方や働き方に指示は出せません。

 

そのためMESHWellはタレントの業務を「お客様に声をかける」「コーディネート提案やニーズへの提案などの接客を行う」「商品をたたむ」と限定し、レジ会計や在庫管理などの店舗業務を行わないことを明示しました。タレント側が店舗側の指示や説明を受けることなく仕事を進めるための設計です。


タレントに依頼可能な業務 - MESHWell 営業資料より


窪田は「時給という言葉を使ったり交通費の支払いが発生したりすると、業務委託の概念から外れます。そのため“単価”という言い方を使ったり、双方の合意の後に契約に至るステップにしたりなど、弁護士への相談も含めてひとつひとつ注意を払いながら進めていきました」と話します。

 

森は「一般的には募集側が条件を提示して応募を募りますが、MESHWellはタレント側が働く条件を決めます。働きたいエリアと日時、報酬を登録し、それを見て条件に合うと判断した店舗側がオファーし、タレントが受理すればマッチング成立。タレントは当日そのまま店に行って仕事をするという流れです。ここは当初から崩していない部分であり、MESHWellならではの特徴です」と続けます。


法的な面以外でこだわったのは、タレントとストア双方が簡単に操作できることでした。


窪田:「例えば報酬の支払いひとつ取っても、タレント側が仕事のたびに請求書を作って送るのは現実的ではないですし、店舗側もひとりひとりに都度手続きをするのでは煩雑な作業を増やすだけ。そこで収納代行や支払代行の仕組みを取り入れて当社が報酬の支払いを行い、双方はワンクリックだけで手続きが済むようにしました」


森:「とにかく細々と直すところが多く、窪田と膝を突き合わせて話し合いながらつくり上げていきました」


法的な部分をクリアにしながら、面倒な操作を省くUI/UXの実現。それは容易ではなく、地道な作業が続きました。そんな2人を支えたのは「ファッションや接客が好きな人に“笑顔で働く”を諦めてほしくない」という想いと、「店舗側の売上をアップさせる新たな仕組みを提供し、アパレル業界の未来を明るいものにしたい」という願いでした。



ストア側UI - MESHWell 営業資料より


MESHWellの成長:コロナ禍を抜けてタレントによる接客販売実績がついに単月1億円を記録

試行錯誤を経て2019年2月ついにMESHWellをローンチし、本格稼働を開始します。

店舗側からは採用にかかる労力の軽減や、フレキシブルな人員調整が可能になったという喜びと共に、外部人材であるタレントによって刺激がもたらされ店舗が活性化したという声が届きました。

 

一方のタレント側からは都合に合わせて働ける上に、接客だけに集中できるスタイルで仕事を楽しめるという声が多く聞かれました。接客スキルを活かしたいフリーランスのみならず、家事や育児の合間を活用したい人やダブルワーカーにとっても、新たな選択肢となりました。


タレントによる接客風景 - 「 Fresh Faces 〜アタラシイヒト〜BS朝日 」 より


このようにMESHWellは順調なスタートを切ることができました。しかしその後、予想だにしないコロナ禍で買い物客が急激に減少し、MESHWellも苦境に立たされることになります。苦しい中、窪田と森は構想段階から持ち続けた信念を思い起こして気持ちを奮い立たせました。


2022年夏頃からは社会の働き方の多様化を受けてMESHWellに対する注目が高まり、成長の兆しが見えてきました。そして2023年春にはタレントによる接客販売実績がついに単月1億円を記録するまでに至ったのです。


窪田:「計画通りではありませんでしたが、それでも成長を続けてこれたのは苦しい状況下でも諦めず、サービスづくりに真摯に向き合ってきたからだと思っています。今も私たちはこの時を忘れず、常に「タレントと店舗の双方にとって本当に使いやすいサービス」であるように留意して、機能の改善を繰り返しています。」 


2020年1月頃、MESHWellメンバーと(著者撮影)


これからのMESHWell:0→1、1→10の段階を超えて10→100を目指すフェーズへ

窪田と森はMESHWellの今後について、「縦軸と横軸の二軸で成長させていきたい」と話します。


縦軸はプロダクトの深み。登録タレントのコミュニティを盛り上げる新サービスの構想や、タレントが持つスキルをコンテンツ(動画やプレゼンテーション)にして販売したり教育メニューとして提供したりといったプラットフォームとしての深化があります。


技術面でいえばアプリ版の開発や、交流の場としてバーチャル空間の活用などが考えられます。他にもエンタープライズ企業との業界の垣根を超えた連携による、新しい切り口のサービス企画も進んでいます。

 

横軸は別産業への展開です。アパレル業界と同様の悩みを抱える産業は多く、例えばコスメやジュエリー、家電など、販売時に説明が必要な店舗でMESHWellの需要があると見込んでいます。

 

新たな成長フェーズを迎えた私たちには、「ユーザーのため」を徹底するサービスづくりに熱い気持ちで挑む人材が必要です。

 

森:「ここまでは、やりたいことを企画し仕様に落とし込む上流を窪田と自分が行ってきました。ここからは他のメンバーのアイディアが入ることで、プロダクトがどう進化するかを見たい。多様なバックグラウンドを持つ人に加わってもらい、ディスカッションできるチームづくりを進めていきます」

 

窪田:「エンジニアやセールスはもとより、タレントをサポートするコミュニティマネージャーなど、さまざまなポジションで人材を求めています。一方で職種を限定せず、自分のキャリアは何かに活かせますか?というようなふわっとした問いかけでも構いません。当社のビジョンやサービスに共感があれば、ぜひ気軽に連絡してほしいです」

 

窪田と森の「個性を活かした働き方で、“プラスワン”の笑顔あふれる社会を創りたい」という想いから始まったMESHWellは、0→1、1→10の段階を超えて、10→100を目指すフェーズに入りました。


今後とも、「スキル販売人材」と「小売店」をつなぐマッチングプラットフォームMESHWellにご注目ください。



交流イベントにて。MESHWellメンバー(撮影:takayuki takeda)


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