「エンジニアの背中を押すのが、私の役割」——非エンジニアの視点が、技術組織の熱量を最大化させる理由
トヨタグループの内製開発組織として、多様なプロダクト開発に取り組むKINTOテクノロジーズ。(以下、KTC)
その技術発信を支える「技術広報グループ」は、職種の垣根を越えたメンバーが、それぞれの強みを活かしながらゼロからつくり上げてきました。
今回は、立ち上げ期からチームを支えてきた村山さんにインタビュー。
非エンジニアとしての葛藤、AIツールを活用したWeb制作への挑戦、そして仲間とともにつくってきた「KTCらしい発信文化」の舞台裏を聞きました。
▍村山 結香 技術広報部
旅行業界で旅行事務を経験後、IT業界に転身。KTCでは副社長秘書・経理を担当し、その後テックブログプロジェクトを経て 現・技術広報部 に参画。
「村山さんに合っているんじゃない?」周囲の後押しで踏み出した、新しいキャリア
竹野:KTCに入社された経緯を教えてください。
村山: 一社目は旅行業界で事務をしていましたが、コロナ禍で業界全体が打撃を受け、先行きに不安を感じてIT業界への転身を決めました。二社目では総務事務を経験し、その実務経験を活かせる場としてKTCを選びました。
竹野: そこから、なぜ「技術広報」に関わることになったのでしょうか?
村山: 実は、きっかけは「社内の飲み会」なんです(笑)。普段から会社の飲み会で幹事をすることが多くて、当時有志で立ち上がったばかりの「テックブログプロジェクト」のメンバーとも仲が良かったんですよね。そうしたつながりの中で、イベント運営などでも関わるようになり、「村山さんが入ると、プロジェクトがよりスムーズになりそう」と声をかけてもらったんです。ただ、本来の業務がある中で実際に踏み出せたのは、当時私が秘書を担当していた副社長の後押しが大きかったんです。私の性格をよく理解してくれていて、「村山さんに合っているんじゃない?」と快く背中を押してくれました。そうした後押しもあって、最初は兼務で、業務の20%ほどを広報に充てるところからスタートしました。
竹野: 社内でのつながりと、周囲の方々の後押しが、今の仕事につながっていったんですね。自然な流れのようでいて、すごく面白いきっかけです。
手探りから始まった、技術広報部の立ち上げ
竹野: 当時は「技術広報」という明確な組織だったのでしょうか?
村山: いえ、最初はあくまで「テックブログを運営するプロジェクト」でした。当時は誰も答えを持っていない中で、「とりあえずエンジニアのアウトプットを増やそう」と手探りで動いていました。
活動を続けていくうちに、どうやら私たちがやっていることは、世の中では「技術広報」と呼ばれるらしいと後から気づいたくらいで(笑)。
有志のプロジェクトが、「技術広報グループ」となり、今の「技術広報部」という組織へと成長していきました。
竹野: 最初から完成された形があったわけではなく、実践しながら輪郭ができていったんですね。立ち上げ期らしさが伝わってきます。とはいえ知識ゼロからのスタートで、どのようにノウハウをキャッチアップしていったんですか?
村山: まさに体当たりでした。カンファレンスのスポンサーブースを端から全部回って、必要な知見を得るために他社の技術広報担当の方々に積極的に相談していました。そこで出会った方々と直接コミュニケーションをとり、実務の相談に乗ってもらったり、壁打ち相手になっていただいたりしながら、情報収集して色々試していったんです。 最初は必死でしたが、繋がりが増えるにつれて、単なる「業界の知り合い」というより「仲間」が増えていくような感覚になって。気づけば、カンファレンスに参加すること自体がどんどん楽しくなっていきましたね。技術広報同士の飲み会や、勉強会などでもそうした「仲間」に会えることが、今もモチベーションになっています!
竹野: 自ら足を運んで繋がりを作っていく行動力、本当にすごいですね!私も社外の方とコミュニケーションをとるのがすごく好きなので、どんどん楽しくなっていく感覚、めちゃくちゃわかります!(笑)
ちなみに、外部発信などで仕組みとして整えてきたことはありますか?
村山: まずは「0から1をつくる部分」として、イベントブース運営やハイブリッド配信の「型」を作ってきたことです。もちろん私一人ではなく、みんなの協力を受けながらですが、何もなかったところから色々な対応をしてきました! 例えば社外発信にあたる自社イベントスペースのハイブリッド配信設定は、社内の有識者に協力してもらい、いつでも対応ができる状態に整えました。私、機材とかすごく苦手なんですが(笑)、必死に向き合っているうちに自然と知識も増えましたね。 どんなことも、仕組みがわかると面白いですね!
竹野: 「仕組みがわかると面白い」という言葉、すごく素敵ですね!苦手なことでも周りを巻き込んで、最後には「楽しさ」に変えてしまう村山さんのポジティブなパワーを感じます。そして、困った時に有識者の方がサッと協力してくれるのも、KTCならではの温かいカルチャーですね。
村山: まだまだ整えたいことも、新たに挑戦したいこともたくさんあります。最近、5人のエンジニアが技術広報を兼務してくれて一緒に動けるメンバーが増えたので、今はまさに、これまでの仕組みをベースにして「1を10にしていくフェーズ」にチャレンジしている最中なんですよ! ベースとなる運営はみんなでスムーズに回せるようにして、これからはイベントに参加してくださる方にもっと楽しんでもらう工夫や、いま私が個人的に情熱を注いで全社に広めようとしている「アクセシビリティ」の啓発など、チームでもっとワクワクするような次のステップに時間を使っていきたいです。
竹野: 運営の土台ができたからこそ、次はもっとワクワクするフェーズに進んでいくんですね。
エンジニアが表に出やすい環境をつくる
竹野: エンジニア中心の組織で、非エンジニアとして動く難しさはありますか?
村山: 技術的なことはわからないので、エンジニアの共通言語や技術トレンドを彼らと同じ粒度で理解するのは、やはり難しいです。 でも、だからこそ私は、エンジニアとは違う「パッション」という軸で勝負しようと思っているんです。
技術理解の深さだけでなく、関係者の温度感をそろえたり、動きやすい環境を整えたりすることが、自分の強みだと考えています。単に事務的な準備や調整といった「手間のかかること」を引き受けるだけではなくて、メンバー一人ひとりの「個性」を引き出すことを大切にしています。 例えば、社内の飲み会である「BeerBash」や様々なイベントを企画して、普段の業務とは違うラフなコミュニケーションが生まれる場を作ったり。日頃からSlackのTimesをチェックして「これ登壇テーマになりそう!」と声をかけたりもしています。 そうした関わりの中で、エンジニアの皆さんが新しいことに挑戦する「きっかけを与えられる存在」でありたいんです。そうやって一歩踏み出した先で、KTCで働く人たちが一つでも多くの「楽しい」を見つけられるといいな、というのが私の根本にある想い(=パッション)です。
竹野: パッション!すごく素敵ですね。裏方として支えるだけでなく、皆さんの魅力を引き出しているんですね。技術を直接語るだけが技術広報ではなく、社内の雰囲気づくりを通じて新しいきっかけを生み出すことにも、大きな価値があるのだと感じました。「前に出やすい環境をつくる」というのは、まさに村山さんらしい関わり方ですね。そうした環境をつくる中で、特に「KTCらしいな」と感じた出来事はありますか?
村山: 「やりたい!」と思ったことを、自分たちでどんどん推進していく習慣が根付いているところですかね。例えば、自発的に勉強会を開催するメンバーが本当にたくさんいるんです。 有志で運営グループを立ち上げて勉強会を開催しているものや、各グループ主体でも様々な勉強会が開かれています。具体的には、横のつながりや情報共有を目的とした合同勉強会、AI活用推進の勉強会などが頻繁に開催されていますし、大阪拠点では「大阪を盛り上げたい!」と有志のメンバーで大阪イベント運営事務局を立ち上げて、内部向けにも外部向けにも勉強会を定期的に開催していたりもします。
竹野: たしかに、社内外の勉強会もすごく活発ですよね!
村山: はい!勉強会だけじゃなくて「部活」もめちゃくちゃたくさんあります(笑)。なんでも部として立ち上げて、誰かしらがしっかり指揮をとって盛り上げているのを見ると、「楽しいことを自分たちで生み出す」のが得意な人たちばかりなんだな〜と思います。 あと、「TURTLE」というトヨタグループ75社が参加するコミュニティも、実はKTC主催の勉強会がきっかけで誕生したものなんです!グループ間交流、情報共有を目的にいろいろな分科会があるんですが、そこにもKTCのメンバーが運営としてがっつり入っていて。 そうやって新しい挑戦や熱量が自然に生まれて、どんどん広がっていくところは、本当にKTCらしいなと思います。
竹野: 有志の勉強会から、トヨタグループ75社を巻き込むコミュニティまで生まれちゃうなんて、スケールが大きくてすごいですね!「楽しいことを自分たちで生み出す」という言葉、まさにKTCのカルチャーそのものだと感じます。現場の熱量がそのまま形になっている感じがしますね。 村山さんが皆さんの背中を押すだけでなく、逆に周りのメンバーが村山さんの挑戦を後押ししてくれたような、職種を越えた協力のエピソードはありますか?
村山: たっくさんあります!たとえば最近は、非エンジニアの私自身がWebサイト制作に挑戦しました。技術広報のメンバーが手厚く協力してくれたからこそ完成しましたし、あとは年1回の全社イベント「超本部会」も、400人規模ながら外注なしで内製しています。いろんな部署から協力者が集まって、職種や立場を越えてイベントを作り上げているの、すごいことだと思います!
竹野: 非エンジニアの方がWebサイト制作に踏み出せること自体、周囲の支え合いの強さを感じますね。400人規模のイベントを内製しているというのも、すごいですよね。私は参加者として毎回感動させられっぱなしです(笑)。
AIと仲間の力で踏み出した、Web制作の一歩
竹野: 先ほどエピソードに出して頂いた、Webサイト制作は私もとても印象に残っています。挑戦したきっかけは何でしたか?
村山: テックブログ運営で少しGitHubは使っていたんですが、ある時うまく動かなくなって。相談したら「AIツールを活用すれば、非エンジニアでも実装の一部を担える」と教えてもらったんです。とやり方を教えてもらったんです。実はKTCって、非エンジニアであっても「挑戦したい」と手を挙げれば、必要なAIツールのライセンスを付与してもらえる環境なんですよ。もちろん、ツールさえあれば何でも一人でできるわけではなくて、日頃の業務で身につけた段取り力や情報整理力を活かしながら、エンジニアのメンバーにも相談して少しずつできることを増やしていきました。そうやって職種に関係なく学びの機会をもらえたことで、小さな成功体験を積ませてもらえたのが大きなきっかけでした。イベント運営の中で「SNS情報を集約したページが欲しい」とずっと思っていて、これなら私でも作れるかも!と思いました。
竹野: 私も社内でAIツールを使っているので、必要なときに挑戦しやすい環境があるのは心強いなと感じています!
一度「できた」という感覚を持てたことが、大きな後押しになったんですね。具体的には、どのように制作を進めたんですか?
村山: まず頭の中のイメージを画像として整理して、それをもとにDevinに指示しました。制作して、フィードバックして、イメージ通りになるまで修正を繰り返す感じです。SNSページは53コミットしてました(笑)。
竹野: 53コミット、すごいですね(笑)。でも、それだけ試行錯誤しながら形にしていったことがよく分かります。 頭の中のイメージをきちんと言語化・可視化して進めていったのが印象的です。難しかった点と、乗り越えられた理由を教えてください。
村山: 生成AIに慣れていなくて、プロンプトもよく分からなかったですし、公開時に何を気にすべきかも分かりませんでした。でも、困ったらすぐ助けてくれる仲間がいて、「非エンジニアの村山さんが新しいことに挑戦している!」と、エンジニアのみんなが食い気味にフォローして手厚くレビューしてくれたんです(笑)。 また、私自身「アクセシビリティ」にすごく興味があったので、せっかく作るならそこもこだわりたい!と思って。公開前には視覚障害のある社員の辻さんにも協力してもらって、実際に辻さんのスクリーンリーダーではどう読み上げられるのか確認させてもらいながら、一緒にアクセシビリティ面での改修も進めたんです。 自分一人では気づけない視点をもらって改善できたことは、すごく大きな経験でした。そうした多様なメンバーの手厚いサポートがあったからこそ、スピード感を持って公開できたんだと思います。
竹野: エンジニアの皆さんが食い気味に(笑)、背中を押してくれたんですね!単にページを完成させるだけでなく、村山さんの興味や想いを形にした行動力、本当に素晴らしいです。ツールがあれば何でも一人でできる、という話ではなくて、やはり最後は仲間の支えや、さまざまな視点を取り入れるチームワークが大きかったのですね。KTCらしい挑戦の仕方が、ここにも表れている気がします。
今後の展望
竹野: 最後に、今後の目標と読者へのメッセージをお願いします。
村山: エンジニアの世界は、成長の喜びや純粋な好奇心が満たされる瞬間がたくさんある素敵な場所だと思っています。KTCは「大企業グループ」の安定感がありながら、事業会社ならではの圧倒的なスピード感もあり、どんどんチャレンジもさせてもらえる環境です。 だからこそ、「指示待ちではなく、自らアイデアを出して主体的に動きたい人」や、「互いの職種をリスペクトし合い、チームで大きな成果を出したい人」が、すごく楽しく活躍できる場所だと思います。 技術広報として、そうした皆さんの挑戦を全力で支援していきたいです。一緒に一歩踏み出す仲間になりませんか。
竹野: 村山さんのお話を通じて、職種に関係なく挑戦を後押しし合うKTCの文化がよく伝わってきました。 技術広報という仕事の魅力だけでなく、その背景にある人や組織のあたたかさも感じられる時間でした。ありがとうございました!