──「福祉」という場所に、今どんな可能性を感じていますか?
「以前の私は“守り”の仕事だと思っていましたが、今は人が自立していくポジティブなプロセスだと感じています」と、医療ソーシャルワーカー出身の吉野さん。
「デザインが誰かの人生を変える武器になる。そんな意外な力が発揮できる場所です」と、エンタメ業界出身の大多和さん。
「僕は、利用者としてここで元気をもらった。だから次は、僕が誰かを元気にする番なんです」と、元ユーザーの大畑さん。
埼玉県川口市にあるオフィスTOBIRA──ここは、障がいや難病を抱える人々がスキルを磨く就労継続支援A型事業所です。そこで働く職業指導員たちは、単なる支援員ではありません。「福祉は人生のゴールではなく、一般企業へ羽ばたくための通過点」その信念を形にするため、現場で共に汗をかき、事業を推進するチームリーダーのような存在です。
今回は、異なる背景を持ち、多様なキャリアを歩んできた3人の職業指導員による座談会の様子をお届けします。これまでの経験が、TOBIRAの使命である「社会を競争から共走へ」という変革にどう繋がっているのか。そのリアルについて語っていただきました!
左から、吉野さん、大畑さん、大多和さん
吉野 綾(サービス管理責任者)
2022年9月中途入社。TOBIRAの立ち上げ期から組織を支える。前職は在宅診療のソーシャルワーカー。現在はサービス管理責任者として、行政連携から書類作成、利用者の自立支援計画までを統括する。趣味はゲーム。
大畑 実朗(物流・FBAチーム)
2024年8月中途入社。ソフトバンクショップ店長などを経て、心身の健康を最優先に考える時間を持ち、TOBIRAの利用者に。1年の利用期間を経て、利用者から職員となり、現在は物流チームのリーダーを務める。趣味はDJ。
大多和 優花(グラフィックデザイン担当)
2024年11月中途入社。エンタメ系事務所のインハウスデザイナーやフリーランスを経て、福祉×デザインの可能性に惹かれTOBIRAへ。ECサイトの画像制作指導や、チラシ・名刺などのデザインディレクションを担う。趣味は音楽鑑賞。
ソーシャルワーカー、デザイナー、そして元利用者。私たちがここに集った理由
ーー皆さんの経歴は本当にバラバラですよね。まずは、今までのキャリアとTOBIRAに入社を決めた理由を教えてください。
吉野さん:
私は大学卒業後、医療系の会社でソーシャルワーカーとして働いていました。医師の在宅診療に同行したり、薬局やケアマネジャーさんと連携したりするのが主な仕事でした。
医療の現場って基本的には「今の生活をいかに維持するか」や「最期をどう迎えるか」という終わりを見据えた支援が中心になりがちなんです。そんな中、事故で一時的に体が動かなくなった40代の男性を担当したのですが、退院して終わりではなく、「障がい福祉」という支援を使って再び社会へ戻っていくプロセスがあることを初めて知ったんです。
人を救うのは医療だけじゃない。もっとポジティブに、人が自立していくプロセスに携わりたい。そう考えていた時に、立ち上げ直後のTOBIRAに出会いました。
大多和さん:
前職ではエンタメ系の事務所でインハウスデザイナーをしていました。退職後、しばらくフリーランスでデザインの仕事を続けていたのですが、ハローワークでTOBIRAの求人を見つけて。「福祉×デザイン」という組み合わせが純粋に面白そうだと思ったんです。
家族が福祉の仕事をしていたので身近に感じていましたし、何より自分のデザイン技術を誰かに教えることに、ワクワクしたことを覚えています。
大畑さん:
僕は、3人の中で唯一、TOBIRAに戻ってきた経歴を持っています。というのも、以前は携帯ショップの店長を務めていましたが、心身のバランスを整えるために一度キャリアに区切りをつけたんです。
その後、ハローワークでA型のTOBIRAを紹介していただき、まずは「利用者」として1年ほど物流の仕事をしていました。
ーー利用者から正社員になったんですね。そのきっかけは何だったんですか?
大畑さん:
当時は、一般企業への就職を目指せるほど回復するなんて夢のまた夢だと思っていました。ただ、TOBIRAに通ううちに、少しずつ元気を取り戻せたんです。ここはスタッフがみんな優しくて、まさに「パワースポット」のような場所でした。
約1年利用し、体調が整ったタイミングで「次は僕がスタッフとして、悩んでいる人たちに元気を与える側になりたい」と志願し、スタッフとして迎え入れていただきました。
福祉を「ビジネス」で動かす。EC・物流・デザインの最前線で、職業指導員たちが担う役割
ーー現在、TOBIRAにはどれくらいの利用者とスタッフの方がいらっしゃるんですか?
吉野さん:
運営側には現在、私を含めて7名のスタッフが在籍し、利用者さんは45名ほど登録されています。就労継続支援A型事業所としてのルールで1日の定員は20名と定められているので、毎日オフィスで活動する20名のほかに、協力企業さんへの通所や自社農園での作業など、「施設外就労」という形で別の現場へ行っているメンバーもいます。
代表やスタッフ、そして利用者さんをすべて合わせると、組織全体では総勢50〜60名規模の活気ある体制になっていますね。
ーーTOBIRAでは、EC・物流やデザインなど様々な事業を展開していますが、皆さんの業務内容について教えてください!
大多和さん:
私はグラフィックデザイン部門の職業指導員として、主に自社ECサイト「UQQA(ウッカ)」の画像作成や、チラシ・名刺といった印刷物のデザイン制作を行っています。実務においては自分が直接制作するだけでなく、デザイン事務所のディレクターのような立場で、利用者さんが作成した成果物のチェックや修正指示、アドバイスといった指導業務が中心です。
▼大多和さんがデザインディレクションされた制作物はこちら!
大畑さん:
僕は物流チームのリーダーとして、Amazonへの納品作業であるFBA業務を統括しています。具体的には、お客様からお預かりした商品を検品し、ラベルの貼り間違いがないよう、徹底して二重チェックを行いながら発送を進める仕事です。
吉野さん:
私は現在、サービス管理責任者という立場で、主に利用者一人ひとりの個別支援計画の作成や、市役所など行政機関との連携・書類提出といった運営全般を担っています。
また、現場の職業指導員としても、画像作成の初期段階にある方へのアドバイスや、Amazonでの販売管理業務で困っている方への実務的なフォロー、円滑な運営のための職員同士のコミュニケーションなど、多岐にわたる業務を行っています。
ーー利用者の方への接し方で意識していることはありますか?
大畑さん:
僕は利用者側の気持ちも分かるので、コミュニケーションには特に気を使っています。
例えば、後ろから突然声をかけない。必ず横や前から、目を見て話しかける。これだけで、相手の緊張感は全く変わります。リラックスできる環境があってこそ、コミュニケーションも活発になり、業務の質も上がっていくと考えていますね。
吉野さん:
「いかに前向きに考えてもらえるか」を大切に、言葉選びには細心の注意を払っています。日々さまざまな課題に直面しますが、できない理由を探すのではなく「どうすればできるか」というポジティブな解決策を一緒に見つけ出せるようなアプローチですね。
ただ、私たちの役割は優しく接することだけではありません。TOBIRAは一般企業へ羽ばたくための「通過点」です。そのため、時には自責の意識を持って行動することの重要性を伝え、社会に出るためのマインドセットを促すことも、本人の将来のために欠かせない接し方だと考えています。
「できない」が「やってみたい」に変わる。自信を取り戻す瞬間に立ち会える誇り
ーーTOBIRAで働く中で、やりがいを感じる瞬間はいつですか?
吉野さん:
私は、やっぱり卒業していく方の姿を間近で見届けられることですね。前職のソーシャルワーカーでは「看取り」が多く、救いがないと感じることもありました。でもTOBIRAでは、ここで身につけたスキルを武器に、一般企業へと巣立っていくポジティブな別れがあるんです。
卒業される時に「TOBIRAに来てよかった。おかげで自分に自信が持てました」と言っていただけると、本当に良かったと心から感じます。
大畑さん:
僕は、本音で向き合える関係性が築けた瞬間ですね。以前、利用者さんから「実は、数を数えるのが苦手で…途中で忘れちゃうんです」と打ち明けられたことがあったんです。
その「告白」がすごく嬉しかったんですよね。誰にも言えなかった恥ずかしいはずの欠点を、僕を信頼して話してくれた。「紙に書いてもいい、指を折ってもいい、自分のやり方で数えてみましょう」と伝えた時、その方の表情がパッと明るくなった。自分をさらけ出せる関係性を築けたことが、この仕事をしていて一番の誇りです。
大多和さん:
私は、利用者さんとスタッフという垣根を超えて、仲間になれたと感じるときです。最初は「自分にはデザインなんてできない」と自信を失っていた方が、日々のコミュニケーションを通じて少しずつ感性を磨き、やがて自ら複数のデザイン案を提案してくれるようになる。
対等な「仕事仲間」として議論を交わし、完成の喜びを分かち合えた時、大きなやりがいを実感します。
日本一、幸せな「卒業」を。仕組みと情熱で加速させる、TOBIRAの未来図
ーー皆さんの今後の展望、そしてTOBIRAをどんな組織にしていきたいですか?
吉野さん:
今はまだ、入り口(採用)から出口(就職)までのプロセスに曖昧な部分もあります。今後はもっと明確な卒業までのロードマップを設計し、誰が担当しても利用者さんが最短距離で成長できる仕組みを作りたいです。
そして埼玉県で、いや日本で一番、幸せな一般就職者を輩出する事業所にしたいですね。
大畑さん:
僕は店長時代の経験を活かして、拠点や店舗を増やしていきたいです。自分がそうだったように、心が折れそうな人が「ここに来れば変われる」と思える場所をもっと身近に作りたい。
そして、僕自身も吉野さんのようなサービス管理責任者の資格を取り、名実ともに組織を支える柱になりたいと思っています。
大多和さん:
デザインの力で、TOBIRAの事業をもっと多角化させたいです。今はECやチラシがメインですが、WEB制作全体や動画、さらにはもっと大規模なプロジェクトにも挑戦していきたい。
あとは、自分が「忙しそう」に見えて話しかけづらいオーラを出さないように(笑)、もっと利用者さんとのやり取りにエネルギーを注げる体制を作りたいです。
必要なのは、目の前の人の人生に本気で介入する覚悟
ーー最後に、TOBIRAにフィットする方の特徴や、求職者へのメッセージをお願いします。
大多和さん:
関わるすべての人とフラットに向き合える方にはマッチすると思います。
私たちは利用者さんの障がいそのものを支援しているのではなく、その先にある「可能性」に伴走しているんです。支援する・されるという垣根を超え、一人の人間として対等に接する姿勢を大切にしています。
そして、私たちの掲げる「共走」という未来に共感し、自分自身の情熱を注ぎ込める。そんな挑戦心あふれるあなたと一緒に走れる日を、現場のメンバー全員で待っています!
大畑さん:
職業指導員に必要なのは、利用者さんに「治るのは自分次第だ」という気づきを与えられる強さです。薬は立ち上がるための支えにはなりますが、歩き出すのは自分の意志でしかありません。
そのプロセスに責任を持ち、思いやりを持って接することができる方なら、これまでの経験は問いません。一人の人間として深く向き合い、共走したいという想いがある方と、切磋琢磨したいですね。
吉野さん:
目の前の人の人生に、本気で介入したいと思える方と働きたいです。TOBIRAは、ただの福祉施設ではなく、社会のルールを変えていく挑戦の場です。そして、私たちの使命は「社会を競争から共走へ変革する」こと。
福祉の枠にとらわれず、利用者さんの可能性を一緒に広げていきましょう。新しい風を吹き込んでくれる仲間を待っています!
=====
こちらも合わせてご覧ください!