日本の大企業には、基幹システムもクラウドもデータセンターも揃っている。システム投資は着実に進んできた。にもかかわらず、UIは大きく変わらないまま、現場では「使いづらい」という声が絶えない。投資をしたはずなのに、なぜか不便さが残っている──。
「システム投資と効果の不均衡」── この課題に真正面から挑んでいるのが、株式会社FAKEです。
いまや、こうした課題に取り組む会社は、FAKEだけではありません。総合コンサルティングファームも、SIerも、続々と同じ領域に参入しています。では、それらとFAKEは何が異なるのか。
一言で言えば、それは、「デザインドリブン®」。戦略の絵を描くだけでも、決まった仕様をただ実装するだけでもなく、構想と実行のあいだを何度も行き来しながら、本当に使われるシステムを形にしていく。AIによって「あるべき姿」そのものが猛スピードで動くいまの時代だからこそ、「デザインドリブン®」が求められている──FAKEはそう考えています。
今回は、FAKEで執行役員を務める杉ノ内 萌さんに、FAKEの急成長の背景、執行役員としての取り組みについてお話を伺いました。
提案から実行、そして仲間集めまで。ビジネスサイドを全面的に担う執行役員|杉ノ内 萌さん
── FAKEではどのような役割を担っていますか?
現在、執行役員を務めています。主な役割は、システム開発やサービスの提案活動と、提案した後の実行部分を全面的に俯瞰し、プロジェクトの成功までモニタリングすることです。いまは組織の拡大フェーズなので、一緒に、FAKEの取り組みに参画してくれる仲間を集める採用も担当しています。
業界・産業領域としては、製造業や物流、不動産など、いわゆる重厚長大と言われる業界のお客様と多く関わっています。
これまでの職場で感じた「専門性が違う人たちが、力を合わせられない」という組織の壁
── どのような経緯で、FAKEに参画されたのでしょうか。
もともとの自分の専門領域としては、スタートアップの事業拡大、事業会社での事業開発です。
東京大学発のスタートアップに2人目の取締役として参画し、事業の拡大を経験させてもらいました。手がけていたのは、日本の製造業、製薬や化学メーカーのR&D設備をレンタルするプラットフォームの構築です。研究はプロジェクトベースで動きますが、研究の予算は年度単位で動くため、そこに大きな歪みがありました。そこで、設備の貸し借り、業務委託を可能にして、差分を埋めていくマッチングサービスを立ち上げました。
このとき、メーカーからITのプロダクトマネージャーに転向した方や、もともと財務をやっていた方など、いろんなメンバーと一緒にサービスを作っていきました。「貸し借り」と言うと簡単に聞こえますが、価格はどうするのか、本当にやりたい研究ができるのか、バイオや化学の分野は危険を伴うのでレギュレーションはどうするのか――当事者同士で認識を合わせなければいけないし、自治体や行政との調整も必要になる。ひとつの事業なのに、いろんな専門性を持ったチームで取り組む必要がありました。この中で、専門性の異なるチームで協力することの難しさを感じて、これが大きな原体験になりました。
── 専門性の違う人たちが力を合わせるのは難しい。具体的にはどんなところで感じたのでしょうか。
例えば科学に秀でた研究者の方と、事業の運営を多く経験されてきた方とでは、思考のベクトルがかなり違うんです。
財務の出身で、事業の運営が得意な人は、まず「何に投資をするのか」という結論から話し始めます。そして、なぜそこに投資するのか、財務リスクはどうか、回収にどれくらいかかるのか――そういう話が最後に来る。一方で、研究者やエンジニア、ものづくりに向き合っている人は、「自分のリソースをどれだけ投下できるか」から考えることが多い。他の人が作れないものをどう作るか、自分の課題意識や「この技術が面白い」というプロダクトに向き合うところから話し始めるんです。
話す順番が逆なんです。
1時間くらいかけて話せば会話は成立するのですが、ビジネスの打ち合わせは30分・15分。自分が話せるのは5分くらいのもので、その中で情報交換して、合意点や共通のゴールを見出し、次のアクションを決めていく。この形式の中では、「話の順番が逆」がかなりクリティカルに効いてくる。それを痛感しました。
日本のソフトウェア産業の「憺たる状況」と、その根幹にあるもの
── そうしたベクトルの違いは、日本の企業でも起きていると感じますか。
はい。その点は、まさにいまFAKEが取り組んでいる「システム投資と効果の不均衡」に現れていると思います。
日本のソフトウェア産業の大きな特徴として、まず、ITエンジニアのほとんどがベンダーやコンサル側にいて、事業会社の中にソフトウェアの技術者がいない。そして基本的には「後発」であり、海外のソフトウェアを導入する「フォロワー」の立場を取っています。
その要因は、「デザイン」と「アーキテクチャ」が弱いことだと思っています。そもそも全体像をどうしたいのか、それをどうシステムに落とすのか、いまの技術ならどうあるべきで、今後の技術発展も踏まえてどこまでデザインするべきか。業務をシステムに合わせるのか、システムを業務に合わせるのか。海外のコンサルティングファームがものすごいスピードで台頭する環境も考慮した上でシステム・業務の全体像を構想する――そういう視点が、特にソフトウェアに対しては弱かった。
日本の企業が全くこのような考え方をできないわけではありません。半導体産業は中間部材が強く、シリコンウェハーで勝っている。iPhoneが売れるほど、そこに使われる部材が売れる。そういうニッチな局所戦に勝つことは他の産業でもできています。ただ、ソフトウェアにおいては、そこが非常に弱かったと思っています。
── 「あるべき姿を描いて現場まで落とす」ができていないのは、人材がいないからなのか、それとも全体像を考える人と作る人がつながっていないからなのか。どこに課題があると思いますか。
構造的に不利だった面は否めないと思います。製造業は地政学的にも日本に追い風だった。一方でソフトウェア産業は、日本語で環境を作ってもユーザーのパイが小さく、英語で最初から作らないと勝てないという問題がある。
ただその点よりもむしろ、「ソフトウェアのデザインやアーキテクチャを考える人材がチームにいなければいけない」という認識、そしてそれが必要な投資であるという認識が、薄かったことになるのではないかと思っています。
たとえば、家を建てるとき、インテリアデザイナーの費用が高いからと言って「不要です」とは言わないですよね。導線をちゃんと設計しないと生活でストレスが溜まってしまう。だからその設計をしっかりした方が良い、というのはみんなが合意できることだと思います。ソフトウェアでも本来は同じはずなんです。日本でも電子化がすすみ、行政システムなどは相当便利にはなってきました。それでも、ユーザーは「なんだか不便だ」と感じながら使っています。やはり、デザインとアーキテクチャの視点が薄いことが課題になっていると感じます。
「システムの導入は終わった。しかし、不便である。」
── そうした課題に対して、FAKEはどんな価値を提供しようとしているのでしょうか。
一貫してFAKEの強い部分は、「最適な開発投資を支援できること」だと思います。
デザインやアーキテクチャを決めながら、高品質に、かつ早く。そうしたチーム体制を、仕組みとして担保できている。FAKEは創業6年目の会社ですが、創業当初は大企業からの相談が多かったのは、やはりこうした背景があったからだと思います。
いま私が手がけている「インダストリー」と呼んでいる分野――製造業などのお客様と一緒にシステム開発をしていく領域では、業務システムの相談をいただくことが多いです。
元々、私が参画する前から代表の高橋が「システムデザイン」という構想を持っていました。多くの日本の大企業には、SAPのような基幹システムや、オラクルのデータベースが導入されており、データセンターもクラウドもある。インフラは整っているが、「ハウルの動く城*」のような状態になってしまっていて、使うのが難しい状態なんです。
(※映画「ハウルの動く城」では、主人公は、家屋、鉄板、大砲、足、プロペラ、魔法の扉など、さまざまな物が、継ぎ接ぎされて建築された動く城を拠点としている)
私自身、大手企業に勤めていたときも、スタートアップをやっていたときも、備品管理のソフトウェアなどを利用していましたが、本当にUI・UXが悪くて苦労しました。1990年代に、図書館で本を検索していたシステムのような、どのように扱ったらいいかの判断に時間がかかるものでした。毎回それを業務で使うために、従業員はストレスを溜めていて、結局3人くらいで会議室に集まって、画面を見せながらみんなでシステムを使っている――そんな実態が、意外にも存在している。
このような状態では、システムを導入して、ペーパーレスにする、と言っていても効果が得られない。
法人のお客様においては、システムの「お買い物」は概ね完了してきています。でも、お買い物したのになんだか不便になった。おかしいと思っている。そういう状況が往々にしてあります。
そこに対して、様々な基幹システムをつなぐシステム開発をしたり、昨今ではひとつのAIを導入して、そのAIが様々なシステム群を操作・連結するサービスが台頭してきました。もともとFAKEが「デザインドリブン®」でやってきたことが、いままさに、多くの企業で求められている。
お客様からもこのようなお声やご相談を多くいただき、今日のプロジェクトにつながっています。
システムを直した先に生まれる、2つの価値
── 「使いにくいシステム」を直していったとき、何が実現できそうですか。
2つあると思っています。
ひとつは、本来のシステム導入効果を取り戻すこと。使いにくくて現場ではあまり使われていない、でも経営企画は「(なんとなく)人員を削減できた!」と思っている。そういうギャップをなくしていくことができると思います。日本では、これまで残業で、不便さや非効率を吸収してきたわけですが、近年の労務コンプライアンスの意識の高まりによって、このような構造は限界を迎えています。残業代というかたちで企画側にもコストが見える化され、経営者も課題意識を持ってきた。だから、システムの導入による効果をきちんと出していくこと、これが重要だと考えています。
もうひとつは、AIを導入して様々な基幹システムをつなぐと、その組織らしい業務プロセスや、いわば組織の「秘伝のタレ」のような考え方、業務知見、ナレッジが、システムの中に蓄積されていく。それが、将来の企業の競争優位性になっていくと考えています。
── たとえば製造業なら、どのような変化が起きるでしょうか。
車で考えるとわかりやすいと思います。仮にお金が無限にあれば、「良い車」はいくらでも作れますが、自動車産業も成熟してきて、コストとパフォーマンスのバランスが重要になってきています。
「トヨタらしい車づくり」「ホンダらしい車づくり」を、コストとパフォーマンスのバランスを意識しながら、時代に合わせて実現していけるか。
これを実現するヒントは、実は業務システムの中に蓄積されています。システムがシームレスに連携し、AIが、蓄積された知見や意思決定を汲み取り、「〇〇らしい」次の戦略を考える。このような変化が、あらゆる企業で発生すると考えています。
「Palantir」が先行する中で、FAKEが求められる理由
── AI導入の領域には、いろんな企業が新規参入している印象があります。その中で競合が多い中でFAKEが急成長をしているのは、なぜなのでしょうか。
正直に言えば、この業界は、すでにPalantirというグローバルな先行者がいるので、事実としては、FAKEはフォロワーです。ただ、それでも市場から求められる理由、競合他社の中でも尖っている部分は、お客様に向き合って、ちゃんとものづくりをして"動くシステム"を納品してきた蓄積にあると思っています。
Palantirという単語も、一般的なビジネスパーソンでも知っているくらい有名になってきました。この業界に注目が集まる中で、いろんな企業が「Palantirムーブ」とでも言うべき動きを取っています。パターンは3つあると思います。
ひとつは、コンサルティングファームが、クライアントに対してエンジニアを派遣できるサービスを始めるパターン。これは、経営戦略や経営陣がやりたいことを実現する手段として提供しているものです。
2つ目は、SIerのような、これまでパッケージを導入してきた会社が、よりコンサルティングの領域に踏み出していくパターン。売るべきパッケージは売れてきたから、その活用を広げたい、という動きですね。
3つ目が、FAKEのような、スタートアップが、エンタープライズの歪みに事業機会を見出してチャレンジしているパターン。この3つ目の大きな特徴は、既存のしがらみがないことです。
── しがらみがない、というのは重要なのでしょうか。
かなり重要だと思っています。
特にAIは、変化が本当に速い。今年の1月頃は「Anthropicって大丈夫なんだっけ」とみんな思っていたのが、3月頃から評価が一転し、「開発ならClaudeだよね」という空気になり、かと思えば「エンジニアはCodexを使っている」と言われ、最近は先駆的なビジネスパーソンが「ChatGPTも結構いい」と揺り戻したり。Googleが競争から一歩引いたように見えたり――去年は「Googleがすごい」という雰囲気だったのに。
まったく意図しない展開が続いています。
特定の製品に依存すると、こうした変化に取り残されるリスクが高くなります。とあるベンダーと深くお付き合いをしている場合、既存のパッケージソフトウェアへの知見が豊富で、様々な業務提携もしている。その代わりに、パッケージの変更に対するしがらみも多くなります。
もちろん既存のベンダーが悪いということではありません。これからは、ベンダーの役割も次第に変化してくると思います。私たちFAKEが導入するようなAIに対して、既存システムをどのように連携させていくか。一つのソフトウェアに対して高い専門性を有しているからこそ、さらなる活躍の場があると思います。
FAKEに参画いただくメリットは、「AI導入・実装」といういままさに注目されている領域で、中心に立ち、勝ちにいく体験ができることだと考えています。もちろん、大変で、チャレンジも多いですが。
DX投資が「コスト」から「成長投資」に変わった
── 大企業はシステムやAIを「業務にどうフィットさせるか」という発想が強いように思います。FAKEはそこと大きく異なる動きをしていると思うのですが、多くの企業からFAKEが受け入れられているのはなぜでしょうか。
DX投資が「コスト」から「成長投資」に変わってきたことが大きいと思います。
マクロな環境も影響しています。日本企業はここ数年、コーポレートガバナンス・コードの改定、円安、利上げといった環境変化の中で、短期的に成果を出すことがかなり求められてきています。もちろん素晴らしい中長期ビジョンを持った経営者もいますが、全体としては「なんとなくシステムを入れて、なんとなく少しずつ良くなろう」から、「ちゃんと狙ってホームランを打つ」という空気に変わってきている。
業務を自動化すると言ったら、本当に自動化させる。そういう考え方に変わってきていると感じます。「本当にできるんですか」と言われることもあるような、比較的まだFAKEのことをご存知ないお客様からも、ご用命をいただける背景はここにあると思います。
カルチャーショック──「具体と抽象の行き来が、半端なく速い人たち」
── FAKEに参画して、「ここはすごい」と思ったところは何ですか。
FAKEは、プロダクトマネジメントに向き合ってきたデザインメンバー、開発メンバーが在籍しており、「何を作るか」に向き合ってきた人が多いです。具体と抽象の行き来が半端なく速い人が多いので、その点は驚きましたし、ユニークだと思いました。
「ものづくりの品質を最適化する」という共通の目的があり、そのために何でもやろうとする姿勢がある会社です。FAKEも大企業になれば政治的な面が出てくるかもしれませんが、いまは組織規模が100名くらい。だからこそ、率直に、「いいものを作るためにはどうしたらいいか」を全員が追求できる。FAKEはそのような会社です。
FAKEのPMに求めるのは、「多様な制約の中で、プロジェクトの成功確率を高める力」
── プロダクトそのものを良くしていく動きには、全体像を考え、ビジョンに合うシステムを作る観点が必要になりそうです。いまFAKEがPM採用に力を入れているのも、そこが理由でしょうか。
そうですね。
FAKEの開発側のPMは、多様なシステムの開発を提案し、実行していきます。ただ、エンタープライズのお客様はステークホルダーの数が非常に多く、コミュニケーションの順番や頻度も限られています。そういう多様な制約がある中で、プロジェクトの成功確率を高めることにコミットしてくれるメンバーを求めています。
コンサルティングは、本質的にはそういう仕事だと思うんです。AIも導入しようとしているけれど、そのバージョンもどんどん変化していく。AIがエンタープライズのお客様のセキュリティ要件にどう合うのか、合い続けるのかも考えなくてはいけない。そうした難易度の高い議論を支援し、牽引していく必要がある。だからこそ、コンサルティングの能力・知見を持ったメンバーにどんどん参画してほしい。
そして、「自分は製造業に詳しい」「自分は金融に詳しい」といった、自分なりのエキスパティーズや、やっていきたい領域があるメンバーに、より参画していただきたいと思っています。
FAKEと大手総合コンサルの違いは、「構想と実行を、行き来できること」
── FAKEでは「構想からROIの算定まで一気通貫でやる」と聞いています。総合コンサルファームでもよく聞く言葉ですが、FAKEの違いは、どこにあるのでしょうか。
やはり、具体と抽象の行き来が強いことだと思います。
これまでは、たとえばSAPのバージョンが変わっても、基本的に「外見」は変わらなかった。オンプレがクラウドになる程度で、技術の進歩がそこまで速くなかったんです。でもAIによって、ソフトウェアが全部AIネイティブに変わらなければいけないとか、各社横並びだったものを「無駄やムラが多いから減らしていこう」という大潮流が起きている。ここから、あるべき姿(to be)が大きく動くと思っています。
そうなったとき、「構想から実行へ」と一方向に進むのではなく、構想と実行を行き来しなければいけない。そしてそれを速攻で進められる尖ったメンバーが、FAKEには多い。
もちろん、会計システムのように構想と実行を往復したくない領域や、業務そのものが変わるものは、既存のコンサルファームが強みとする領域だと思います。でも、事業戦略に紐づいて本当に業務で使うシステム――たとえば企業がM&Aで統合したとき「to beをどうするか」といった難度の高い課題に対しては、FAKEが価値を提供できる点がかなり多いのではないかと思っています。
日本の企業が抱える、「システム投資と成果の不均衡」。それは、単なる使い勝手の問題ではなく、ソフトウェア産業の構造的な課題と関係しています。
その課題に、構想と実行を往復するアプローチ「デザインドリブン®」で挑む――FAKEには、そんな挑戦の場があります。
「自分の知見を武器に、企業の変革に本気で向き合いたい」。そう思う方がいたら、ぜひ一度、話を聞きにきてください。