最近、私の会社でも採用を強化しているのですが、その中でもある顕著なトレンドを肌で感じています。それは、「現在フリーランスとして働いているが、正社員に戻りたい」という、いわゆる社員に出戻りを希望する方が急増していることです。
コロナ禍以降、リモートワークの普及や世の中の副業ブームに乗って、多くの人が「会社に縛られない自由な働き方」を求めてフリーランスとして独立していきました。
しかし今、そのトレンドが逆回転し始めています。
「このままフリーランスを続けていても、先が見えない」
「仕事が減ってきて、将来が不安だ」
「働き方が自由になったところで、本当の自由は得られない」
などと焦りを感じ、安全な船に戻ろうとする人が増えているのです。
ではなぜ、フリーランスの出戻りが加速しているのでしょうか。そして、実際に正社員に戻ろうとしたとき、「すんなり戻れる人」と「どこにも採用されない人」の違いはどこにあるのか。
今回は、経営者であり採用担当でもある私の視点から、フリーランスの厳しい現実と、これからの時代を生き抜くための「出戻り生存戦略」についてお話したいと思います。
目次
- なぜ今、フリーランスの仕事が激減しているのか?
- ①フリーランスの「民主化」による全体の質低下
- ②AIの台頭による「BPO業務」の代替
- 「1〜2年選手」と「10年選手」の残酷な格差
- 【フリーランス歴1〜2年】 ほぼノーダメージ
- 【フリーランス歴5~10年】 出戻りがかなり厳しい
- 受け皿になりやすい企業、なりにくい企業
- 「お試し業務委託」からの正社員復帰
- 手遅れになる前に、組織で「総合力」を身につける
- キャリアの参考になるコンテンツ
なぜ今、フリーランスの仕事が激減しているのか?
結論から言うと、企業側が「フリーランスって使いづらいね」と気づき始めたことが最大の要因だと思っています。その背景には、大きく分けて2つの理由があります。
①フリーランスの「民主化」による全体の質低下
ひと昔前まで、フリーランスといえば「特定の領域で圧倒的な実績とスキルを持ち、会社に頼らなくても仕事が舞い込んでくる40〜50代のベテラン」がなるものでした。アナウンサーが実力をつけて「フリーアナウンサー」になるのと同じ構造です。
しかし、一部のビジネスインフルエンサーによる「若手・新卒でもフリーランスで稼げる!」といった過剰な啓蒙活動とコロナ禍によるリモートワークの普及により、フリーランスという働き方が一気に「民主化」しました。
その結果どうなったか。
本来なら独立するレベルに達していない、実力不足での独立をチャレンジと勘違いした人たちが大量増殖してしまったのです。
これまでの経験とスキルを切り売りするフリーランスが、チャレンジの対象になった(※差し替え予定)
これは、「インターンシップの民主化」とよく似ています。昔のインターンは、限られた優秀な学生が、サークルの先輩のツテなどを頼って「修行させてください」と飛び込むものでした。紹介から成り立つクローズドな世界だったため、簡単には辞めないし、働く学生の質も高かった。
しかし今や、オンラインで誰もが簡単にインターンに応募できるようになった結果、「居酒屋のバイト感覚」で応募してきて、すぐに飛んでしまう学生が増えました。コロナ禍の大学生が大学にいけず、飲食店などの店舗ビジネスでアルバイトできなかったことも、インターンの民主化を加速させた要因だと思っています。
フリーランス市場でも、これと全く同じことが起きています。
「実力は伴っていないのに、権利や自由だけを主張するフリーランス」が増えすぎた結果、企業側は「誰が本当に優秀なのか見極めるのが面倒くさい」「ハズレを引くリスクが高い」と感じるようになり、フリーランスへの外注自体を敬遠するようになってしまったのです。
企業にお願いするよりは安いけど、目利きが大変で失敗のリスクを負ってもいいという発注者はそんなにいないわけです。
②AIの台頭による「BPO業務」の代替
そんな状況に追い打ちをかけたのが、生成AIの台頭です。
フリーランスの多くは、1社から月に100万円の案件を受注しているわけではありません。そんな高単価案件を獲得できるのはごく一部のトップ層だけです。多くのフリーランスは、1社から10〜20万円の案件を3~5社ほど掛け持ちして、生計を立てています。
そして、この「月10〜20万円の仕事」というのは、記事のライティング、バナー制作、動画編集といった「業務として切り出しやすい作業=BPO
業務」であることがほとんどです。これらはまさに、AIが最も得意とし、真っ先に代替している領域なのです。
企業からすれば、「わざわざ質の見極めが難しいフリーランスに毎月20万円払わなくても、AIを使えば社内の若手で十分回せるじゃないか」となります。
コミュニケーションコストの高い、職人のようなフリーランスから淘汰されていくことに
こうして、下位レイヤーの業務から順に仕事が消滅し、「このままでは食えなくなる」と危機感を抱いた人たちが、慌てて正社員に戻ろうとしているのが現在の状況です。
「1〜2年選手」と「10年選手」の残酷な格差
では、いざフリーランスが正社員に戻ろうとしたとき、すんなり戻れるのでしょうか。実はここで、「フリーランス歴」による格差が生まれます。
【フリーランス歴1〜2年】 ほぼノーダメージ
ここ1〜2年、コロナ禍のノリで「ちょっと自分の力を試してみたい」とフリーランスになった人は、比較的すんなりと前職と同等レベルの待遇で戻れることが多いです。期間が短いため、特定のスキルに固執しすぎておらず、「他の業務にも柔軟に対応できるだろう(小回りが利くだろう)」と企業側に判断されやすいからです。
つまり「スキルの切り売り期間が短いので、年齢(希望年収)の割に仕事ができないというリスクが低い」と見られているのです。
【フリーランス歴5~10年】 出戻りがかなり厳しい
一方で、10年単位でフリーランスを続けてきた人は、正社員に戻るハードルが絶望的に高くなります。先日、ABEMA Primeの番組で「10年間フリーでライターをやっていたが、正社員に戻ろうとしてもどこにも採用されない」という方の特集を見ましたが、まさにこれが現実です。
彼らは10年間、「ライティングだけ」「デザインだけ」という一つのスキルを磨き続けて生計を立ててきました。しかし、その唯一の武器がAIによって陳腐化しつつある。いわば、「10年間毎日研ぎ澄ませてきた剣が、むしろサビだらけで全く斬れなくなっていた」という状態です。
そして、スキル面だけでなく
「今さら組織のルールに適応できるのか?」
「ライティング以外の雑務もやってくれるのか?」
「すぐに退職しないかな?」
など、スタンスや価値観の面を警戒するのです。
このような「長期フリーランス」が正社員に戻るには、大幅な年収ダウンを受け入れ、過去のプライドと生活の自由を捨てる覚悟がなければ難しいです。そして何より、個人の生活や自由よりも、組織貢献の気持ちを思い出さないといけないのです。
受け皿になりやすい企業、なりにくい企業
では、会社員への出戻りを決意したとして、どのような企業を狙うべきなのか。企業のタイプによって、フリーランスを受け入れやすいかどうかの相性が明確に存在します。
まず、JTCやプロパー文化(新卒文化)が強い企業には戻りづらいです。
多様な働き方への理解が乏しく、というより規律を重んじるからです。そして「フリーランス=組織に馴染めない人」という偏見を持たれがちだからです。なので狙うなら、代表や経営層が20〜30代で比較的若く、リモートワークやフレックス制度など、多様な働き方に寛容なベンチャー・スタートアップが現実的です。
さらに「業態」で言うと、事業会社よりも支援会社(広告代理店、デザイン会社、コンサルなど)の方が圧倒的に入りやすいです。
なぜなら、事業会社における「特定のスキル」の業務量は、会社全体の仕事の20%程度しかないからです。「デザインだけじゃなくて、残りの80%の時間はディレクションや企画、社内調整もやってね」と求められます。特定のスキルしかないフリーランスだと、ここでミスマッチが起きます。
一方、支援会社は「労働集約型」のビジネスモデルです。労働力の投下が、そのまま売上に直結します。「これまで業務委託として週に30%のリソースを割いてくれていた人が、正社員になって100%コミットしてくれます」となれば、会社側は「じゃあ、その分案件をたくさん振るから、しっかり売上を作ってね」と歓迎しやすいのです。
専門スキルを伸ばしてきたフリーランスは、専門業務の多い支援会社と相性が良い
ビジネスモデルの構造上、専門スキルは支援会社との相性が良くなりやすいのです。正社員への出戻りを検討しているフリーランスの方は、ぜひ覚えておきましょう。
支援会社であるunnameでも、フリーランスの出戻り採用を始めましたので、ぜひ興味がある方はこちらをご覧ください。
「お試し業務委託」からの正社員復帰
いきなり中途採用の面接を受けて「正社員に復帰したいです」と言うのは、企業側はなかなか受け入れづらいという現実があります。
そこでおすすめなのが、お試し業務委託です。つまり「まずは業務委託としてプロジェクトに入り、お互い見極め期間を経てから正社員になる」というルートです。自分も多少リスクを取ることで、採用企業側のリスクを低減してあげるという方法になります。
もしあなたが「今すぐ正社員にならなければ明日食べるものがない」という状況でないのであれば、半年から1年ほど支援会社の仕事を手伝ってみてください。その中で、「この会社のカルチャーとは合うか」「仕事の進め方にストレスはないか」を確認し、企業側にも「この人なら組織のメンバーとしてやっていけそうだ」と認められたタイミングで正社員化を打診する。これが最も安全で合理的な出戻りルートです。
昨今のフリーランスからの出戻りの流れを見て、弊社unnameでもこのような「フリーランスからの出戻り・業務委託からの正社員化」の実施に踏み切りました。
ただし、誰もがOKというわけではありません。
・絶対にフルリモートじゃなきゃ嫌だ
・フリーランス時代の給与水準は譲れない
・自分さえ成果を出していれば、組織や他のメンバーはどうでもいい
という考えを持っている方は、弊社のカルチャーには合わないのでお断りしています。
逆に、「一度はフリーランスで特定のスキルを磨いたけれど、これからは社会との繋がりを持ち、事業や組織全体を動かせる総合力を伸ばしたい」という強い意志を持っている方であれば、最高の環境を提供できると自負しています。
手遅れになる前に、組織で「総合力」を身につける
厳しいことを言いますが、年齢を重ねてから「やっぱり正社員に戻りたい」と思っても、選択肢はどんどん狭まっていきます。40代、50代になって転職サイトに登録しても、企業側からは「この年齢でフリーランスとして食えていないということは、その程度の実力なんだな」とシビアに見られてしまいます。
AIが進化し、変化の激しいこれからの時代において、特定の専門スキル「だけ」で一生戦い抜くのは極めてハイリスクです。20代、30代のうちに一度組織に戻り、人間関係を構築する力、チームで大きな成果を上げる力、そして「社会資本」を蓄積しておくこと。それが結果的に、あなたのキャリアを守る最強の防具となります。
もし今、「このままフリーランスを続けていて大丈夫だろうか?」と少しでも不安を感じている方がいれば、手遅れになる前に、ぜひunnameの採用サイトを覗いてみてください。
まずはカジュアル面談で、これからのキャリアについてフラットにお話ししましょう!