2026年3月19日にdotD noteに投稿された記事です。
こんにちは。dotDの小野田です。
AI活用日記の第4回をお届けします。
IT業界に身を置いていると、避けては通れないのが「PowerPoint(以下、PPT)」作成です。
私たちの会社、dotDの社内コミュニケーションはNotion、Slack、Miroでほぼ完結しています。しかし、一歩外に出てお客様やパートナー企業とのやり取りとなると、話は別。世の中の多くの組織では、依然として「Windows + Office(PPT)」が標準言語です。
マイクロソフトのEA契約により、OSとOfficeは「水道・ガス」のようなインフラとして全員が使える状態にあります。一方で、それ以外のツールに1万人規模のライセンスを付与しようとすると、コストは膨大。結果として、多くの日本企業においてPPTは「共通言語」としての地位を揺るがないものにしています。
そんな背景もあり、我々dotDでも毎週数百枚規模のスライドが生産されています。仮に50人の社員が月に100枚ずつ作っているとすれば、月間で5,000枚。もちろん標準化は進めていますが、これだけの量を人間が作り続けるのは、正直「無駄」ではないか?と思うのです。AIの時代、この労力はもっと削減できるはずです。
そこで今回、AIエージェント「Cowork」を相棒に、PPT作成の完全自動化に挑戦してみました。
目次
- 1. デザインシステムを「AIの言語」に翻訳する
- 2. ルーティン化した「ステコミ資料」を自動化する
- 3. 「文字だらけの壁」と、テンプレートの活用
- 4. 直面した「ライセンス」という新たな課題
- 5. パワポ職人のこれから
1. デザインシステムを「AIの言語」に翻訳する
まず着手したのは、土台となる「標準テンプレート」の定義です。 幸いなことに、dotDにはデザイナーの思考を理解するエンジニアがいます。彼らが自発的に作ってくれていた、デザインシステム的な定義ファイルを「.md(マークダウン)ファイル」に変換。これをAIが読み取れる形式として拝借しました。
この定義ファイルをCoworkに読み込ませ、「Skills」として機能を定義します。これでAIは「dotDらしいスライドのルール」を理解した状態になります。
2. ルーティン化した「ステコミ資料」を自動化する
実験台に選んだのは、私が定期的に行っている「ステアリングコミッティ(ステコミ)」の報告資料です。これまでは、以下のようなフローで作成していました。
- Slackで依頼: 「A、B、C、F、Gプロジェクトの状況をスレッドに書いて」とメンバーに依頼
- 情報収集: 各メンバーからテキストやリンクで報告が集まる
- 手作業で構成: 私がそれを1時間ほどかけてPPTにまとめる
私は昔からPPT作りが得意なので、ほぼ無意識に、ルーティンワークとしてこなしていました。しかし、これをAIに任せるとどうなるか。
1番と2番のプロセスはそのままに、3番の「作成」を自動化します。Coworkにこう指示を出しました。
「〇〇さんとのステコミ資料を作って。日程はGoogleカレンダーから取得。dotDのテンプレートを読み込んで、みんなの報告が終わったらスライド化して。説明は10分。本編は5枚。1枚目に定量・定性のエグゼクティブサマリーを入れて。詳細は質疑応答で出せるように用意して」
3. 「文字だらけの壁」と、テンプレートの活用
数分後、資料が完成。しかし、画面を見たらちょっと残念。
「文字ばかりで、全然ダメだこりゃ……」
論理構成は正しいのですが、視覚的な説得力が皆無。非常にわかりにくいものでした。そこで、かつて「Infograpia」というサービスで購入した高品質なPPT図版テンプレートを活用してみることにしました。数千枚あるスライドの中から、汎用性の高そうな50枚を抜粋してAIに学習させ、再度実行しました。
すると、どうでしょう。
「おおお!!すごい!!」
思わず声が出るほど、洗練されたグラフィカルなスライドが出来上がりました。もちろん内容は顧客情報を含むため伏せますが、そのクオリティは「そのまま使える」レベル。
顕在化していてそれなりに上手く進んでいるところが水面の上にいて、顧客の内部調整に戸惑っていてまだ顕在化してないけど将来的には大きな問題になりそうだというのをアイスバーグで表現するのはなかなかいいセンスです。最終的に私が文字の微調整(魂を込める作業)を行うだけで、実作業時間はわずか"10分"に短縮されました。
4. 直面した「ライセンス」という新たな課題
「これはすごい!すぐに全社標準化しよう!」と息巻いた私ですが、ここで一つの大きな懸念にぶつかりました。
Geminiに相談してみたところ、ライセンス面での指摘を受けたのです。 今回使用したInfograpiaのテンプレートは、あくまで少人数での利用契約。これをAIに読み込ませ、商用利用として全社展開することは、ライセンスの「再配布禁止」条項に抵触する恐れがあるというのです。
AIで効率化すること自体はツールの目的に合致していますが、「テンプレートそのものをAI側のサーバーや共有ライブラリに学習させて、不特定多数が生成できるようにする」のはNG。AI時代の著作権とライセンスの難しさを痛感した瞬間でした。
5. パワポ職人のこれから
今回の実験を経て、私は「パワポ作成」の未来を確信しました。
現在はまだライセンスの制約があるため、全社展開に向けては、dotDのデザイナーチームに「AI生成用の内製テンプレート」を新たに作ってもらう計画を進めています。自社で権利を持つデザイン資産を使えば、法的な懸念なく、全社員が「10分で高品質なスライド」を作れるようになります。
かつて、1スライドずつ丁寧に図形を並べていた「パワポ職人」だった私が、AIにその座を譲る日が来るとは思ってもみませんでした。しかし、浮いた時間は「より良い意思決定」や「クリエイティブな構想」に充てることができます。
パワポ作りをAI化して「AIパワポ職人」になる。これは単なる手抜きではなく、私たちが本来向き合うべき仕事に集中するための、ポジティブな進化なのです。
引き続き、アップデートがあれば報告します。
それでは、また。