本日は8月31日です。
私が子供のころは本日が夏休み最終日でした。
夏休みは日が暮れるまで夢中で遊んでいたものです。
今から思えば、日が暮れるまで夢中で遊んでいました。しかし8月も後半になると、宿題のことが頭にちらつき始めます。それでもなかなか手をつけず、最終日がカオスになるという毎年の繰り返しでした。
創意工夫の宿題を8月31日だけで完成させたことがあります。ところが、その作品が市のコンクールで入賞してしまいました。「締め切りが迫っても最後に何とかなる」という自信がついたのもこのことがきっかけでした。しかしながら、小学生の私にとっては宿題を後回しにする傾向に拍車をかける結果となってしまいました。
本日が夏休み最終日のお子さんをお持ちのご家庭では、
今日はなかなか大変な一日かもしれません。朝から「宿題は終わったの?」という声が飛び交っているのではないでしょうか。
そんな頭を悩ませた宿題の一つに「読書感想文」がありました。皆さんも書き方を人に聞いたり、お手本を参考にしたりしながら、何とか提出した経験があるのではないでしょうか。
近年は、LINEやメールなど、いわゆる「話し言葉」に近い文章を書く機会が増えています。その一方で、しっかりとした文章を書く機会は減っているように感じます。
そのため、「どうすれば分かりやすい文章が書けるのだろう」と悩む方も多いのではないでしょうか。毎週このコラムを書いていることもあり、「どうすれば社長コラムのような文章が書けるのですか」と尋ねられることがあります。
プレゼンテーションについては「#10:伝える力が未来を拓く ~プレゼンテーション 主役はあなた~」「#32:常日頃から考えを整理しよう」「#44:伝え方を再考する」「#45:プレゼン資料はシンプルに」を参考にしていただければと思います。これらコラムには、文章を書く際にも応用できる考え方が含まれています。
文章については人に教えられるほど得意なわけではありません。しかし、私が長年参考にしてきたバイブルがあります。
本多勝一氏の『日本語の作文技術』です。
本多氏は朝日新聞記者を経て、同社の編集委員を務められた方です。
本書の冒頭には、
「文学的」な文章のための作文は、ここでは考えない。
「事実的」文章のための作文だけを対象とする。
とあります。
そのため、小説やエッセーを書く人向けではありませんが、論文やレポートなど、人に正確に伝える文章を書くためのヒントが数多く詰まっています。
本の帯には「これを読んで文章がうまくならなかった人を知らない」と書いてあります。ぜひ一読をお勧めします。
本書から学んだ内容の中で、私が今でも特に意識しているポイントを二つご紹介します。
1.修飾する言葉とされる言葉を離さない
本書では、文章の分かりやすさは言葉同士の位置関係で大きく左右されると説明されています。例を見てみましょう。
例文1
私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った。
例文2
鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私が思った。
例文1では、「誰が死んだのか」「誰が証言したのか」「誰が思ったのか」が分かりにくくなっています。
一方、例文2では、「死んだのは鈴木」「証言したのは小林」「思ったのは私」であることが比較的明確です。
ポイントは、「主語」と「述語」、「修飾する言葉」と「修飾される言葉」をできるだけ近づけることです。言葉同士が離れるほど、読み手は理解しづらくなります。
(ちなみに「主語」も「述語の修飾語」だそうです。なるほど!)
2.テンの打ち方を考える
本書には、「、」(テン)をむやみに打たない」と書かれています。
私たちは息継ぎをするような感覚で読点を打ちがちですが、本来の目的は文章を区切ることではなく、意味を正しく伝えることです。例えば、
例文3
渡辺刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた。
この文章では、血まみれなのが渡辺刑事なのか、賊なのかが分かりません。
例文4
渡辺刑事は血まみれになって、逃げ出した賊を追いかけた。
例文5
渡辺刑事は、血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた。
例文4では渡辺刑事が、例文5では賊が血まみれになっているのが明確になります。
つまり、読点一つで意味が変わるのです。
ちなみに例文4はテンを使わずに、「逃げ出した賊を渡辺刑事は血まみれになって追いかけた」としても明確になります。
なお、息をつくところでテンを打つ癖があると、
例文6
渡辺刑事は、血まみれになって、逃げ出した賊を追いかけた。
とすると、再びどちらが血まみれなのか曖昧になります。
また、言葉を並列する場合にも注意が必要です。
例えば、
「今年の売上、利益の確保」
と書くと、「今年の売上」と「利益の確保」という二つの要素に読めます。
一方で、
「今年の売上・利益の確保」
と「・」(ナカテン)を用いて表現すれば今年の「売上と利益」の両方を確保したいという意図がより明確に伝わります。
その他、日本では万単位で数字を表すので区切りは4桁単位にする方がわかりやすい(10,000→1,0000)とか、そもそも漢数字で表すべきだという主張も記載されていました。確かにわかりやすくなる面はあるのですが、必ずしも一般的とは言えないため私は取り入れていません。
また、外国人名は中点ではなくイコールでつなぐ(ハリソン・フォード→ハリソン=フォード)といったことも記載されていました。単語を羅列するナカテンと混同してしまうので一般的ではありませんが私はたまに取り入れています。
以上説明したように、本多勝一さんの『日本語の作文技術』は「正確に」「わかりやすく」伝えるという哲学で貫かれています。この本の教えを実行していくことで伝わりやすい文を書く力がついたと考えています。
そして私は、文章を書く際にもう一つ大切にしていることがあります。それが文章の構造、いわゆるストラクチャーです。
論文や報告書を書く際にはまず全体の骨格を考えます。起承転結でも構いませんし問題提起から結論へ至る流れでも構いません。
まずは各段落の要点を一文で書き出しそれらが論理的につながっているかを確認します。
この作業をせずに書き始めると話が前後したり文章が冗長になったり結局何を伝えたいのか分からなくなったりします。
相手に何かを伝える際には表情や声の抑揚といったノンバーバルな要素も重要です。
LINEの絵文字やスタンプはその役割を補ってくれます。しかしビジネスの場で使う正式な文書ではそうした手段に頼ることはできません。
だからこそ日頃から論理的に考え伝え方や話し方を意識することが大切だと思います。その積み重ねが、相手に伝わる文章を書く力につながるのではないでしょうか。
伝わる文章は一日で身につくものではありません。しかし、相手に伝わることを意識し続ければ、必ず上達します。私自身もまだ勉強中ですが、これからも伝わる文章を目指してコラムを書き続けたいと思います。
ここまで偉そうなことを書いてきましたが、このコラムの内容はきちんと伝わったでしょうか。筆者としては少し気になるところです(笑)。
追伸1 最後の「(笑)」でノンバーバルな要素を伝えてみました。
追伸2 本多勝一氏の教えに従い、このコラムでもできるだけ読点を減らしてみました。
※次号は9月7日(月)リリース予定です。