先週のコラムで『踊る大捜査線 N.E.W.』の話をしました。映画『踊る大捜査線』は今回で5作目ですが、その間にもさまざまなスピンオフ作品が制作されています。『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』を経て、今度の『踊る大捜査線 N.E.W.』へと物語がつながっています。ほかにも『容疑者 室井慎次』や『交渉人 真下正義』など、準主役級の登場人物を主人公に据えたスピンオフ作品が制作されました。
私も『踊る大捜査線』に倣うことにします。
『#18:ラジオなんですけど(上)』『#19:ラジオなんですけど(下)』では、導入として、中学生の頃に夢中になったBCLの話を書きました。実は懐かしさもあって、つい筆が進み、かなりの長文になってしまいました。さすがに前置きとしては長すぎると思い、泣く泣く大幅に削りました。
しかし未練が残ったので、泣く泣く削った部分を「ラジオなんですけど」シリーズの「スピンオフ」として掲載させていただきます。
先のコラムでも触れましたが、中学生の頃の私の趣味はBCLでした。
BCLとはBroadcast Listeningの略で、「海外の短波放送を受信する趣味」のことです。国内のラジオ局で使われる中波(AM放送)や超短波(FM放送)に比べて、短波は特に夜間に遠くまで届くため、国外向け放送によく利用されていました。
当時は英語を聞いてもほとんど理解できませんでしたので、日本語放送を頼りに聴いていました。中国、韓国、北朝鮮、台湾、スリランカ、ベトナム、エクアドル、アルゼンチン、オーストラリア、ロシア、ドイツ、イギリス、そしてバチカン市国。
海外旅行など夢のまた夢だった子どもの頃の私にとって、短波ラジオはまさに世界への扉でした。今ではさまざまな国を訪れる機会に恵まれていますが、「中学生の頃、この国の放送を聴いたな」と思うと感慨深いものがあります。
初めてローマを訪れた際には、よく聴いていたバチカン放送が醸し出していた雰囲気そのものが目の前に広がっているように感じました。
画像:Arpit Rastogi / Unsplash
放送を聴いた後、受信状態や番組内容・感想などを書いた受信報告書を放送局へ送ると、ベリカード(Verification Card:受信確認証)という絵葉書が送られてきます。ベリカード集めはBCLの大きな楽しみの一つで、これを集めたくて放送を聴いていたと言っても過言ではありません。
ベリカードを送ってもらうためには、受信報告書に国際返信切手券(IRC)を同封することが多く、私はよく郵便局へ買いに行っていました。中学生で国際返信切手券を買う人も珍しかったので、郵便局の方にも顔を覚えられ、「今日はよく聴けたか?」などと声を掛けてもらったものです。
そんなことを続けながら、先ほど挙げた国々の放送局のベリカードはほぼすべて集めることができました。
ただし、日本語放送を行っていた局の中で、一局だけどうしても入手できなかったものがありました。アルゼンチンです。
地球の裏側ということもあり、ラジオ本体だけでは受信はほとんど絶望的で、自宅の外に本格的なアンテナを設置した人がかろうじて受信できるかどうかというレベルでした。もしアルゼンチン放送のベリカードを持っていたら、BCL少年たちの間ではまさにヒーローでした。
放送を聴くためには短波専用の受信機が必要です。
当時の人気機種はNational(現Panasonic)のCougarでした。Cougarに限らず、多くの短波受信機は周波数ダイヤルを回して大まかな周波数を合わせ、その後さらに微調整を繰り返しながら目当ての放送局を探し当てる仕組みでした。そこがBCLの腕の見せ所でもありました。
ところが、私が購入したのは周波数をデジタル表示する受信機であったNationalのProceedでした。デジタル表示器のある受信機は当時は珍しく、お目当ての放送局を一発でチューニングできます。今から思うと、CougarとProceedは、なかなか絶妙なネーミングですね。
当時のBCL仲間からは、「苦労してチューニングしながら局を探すのがBCLの醍醐味なのに、デジタル表示じゃつまらないじゃん」と散々言われました。
確かにその通りです。しかし、自分が納得していれば人から何を言われても新しい技術を取り入れようとするところは昔から変わっていないようです。
ちなみに、その頃購入した腕時計はセイコーの「チェックメイト」。セイコーの2代目電卓付き腕時計でした。
「時計に電卓なんて必要ないだろう」とさんざん言われました。しかしながら映画『007』シリーズに熱中していた私は、『007/ムーンレイカー』でジェームズ・ボンドが着用していたことに影響され思わず買ってしまいました。その後、試験会場への電卓付き腕時計の持ち込みが禁止されたのは言うまでもありません。
最後は時計の話になってしまいましたが、それだけラジオには思い入れがあります。そのため、ラジオ出演のお話をいただいた時は本当にうれしく思いました。
ラジオ出演の感想などについては、『#18:ラジオなんですけど(上)』『#19:ラジオなんですけど(下)』の本編に譲るとして、このスピンオフ企画はこれにて終了とさせていただきます。
最後に告知です。9月13日(日)9:00~9:30、FM NIIGATA『ART MIX JAPAN RADIO』にゲスト出演します。
パーソナリティは、「にいがた総おどり」の創設者の能登剛史さんです。「#02:熱量を持って行こう」で書いたように昨年から「にいがた総おどり」に出演しました。今年は9月19日(土)~23日(水・祝)に開催され、私は今年も出演します。ラジオでは、踊り、文化、新潟、そして会社のことについて語らせていただきます。
お時間がありましたら、ぜひお聴きください。
※次号は8月31日(月)リリース予定です