来月9月18日、待ちに待った『踊る大捜査線 N.E.W.』が公開されます。今からとても楽しみにしています。
そう言っておきながら、「#11:“こうせい”をかける-1.0」でお伝えした『ゴジラ-1.0』のように、楽しみでわくわくしている時間をなるべく長く味わいたいと思うあまり、観る機会を逃してしまうことがあります。
好きな食べ物を後で食べようと残しておいたら、賞味期限が切れてしまったり、誰かに食べられてしまったりするパターンと同じですね。
『踊る大捜査線』再始動プロジェクトの『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』も、結局は劇場で観ることができませんでした。
仕方なくNetflixで配信されるのを待っていたのですが、たまたま目にした「映画化がっかりドラマランキング」という記事に、『室井慎次』のネタバレが書かれていたのです。「ネタバレ注意」とも書かれていなかったのに。
だから『批評家はいらない』のだ。
「#13:批評家はいらない」では、次のように書きました。
「社長に就任して4年。幾度となく耳に入る批判がありました。その批評に惑わされず、信じた道を進み、ロジカルな対応を心がけ、結果を残してきたと自負しています」
批判に惑わされず進めてこれたと、ポジティブにとらえられる文ですが、これを読まれた方には、「人の言うことに耳を貸さないのかな」と思われたかもしれません。
確かに、人から言われたことに対して、自分の判断や行動のロジックを改めて点検し、それでも間違っていないと思えば、そのまま自分のやり方で進めます。
一方で、なるほどと思ったことは素直に取り入れます。
むしろ、自分の行動を振り返ってみると、人の意見をかなり気にしてきたなと思います。
特に、女性から言われると弱い。昔、飲み会で焼き鳥を頼んだ際に私が「タレで」と言うと、「塩にしろよ」と言われたことがありました。「タレは子どもっぽいのかな」と反省しました。それ以来その一言がいつも頭に残り、焼き鳥は塩一辺倒になりました。
そんな些細な出来事からも分かるように、私は少し臆病な性格なのだと思います。
スポーツライターの山際淳司さんの代表作に「江夏の21球」があります。
1979年、プロ野球の日本一を決める日本シリーズ第7戦。近鉄対広島の最終戦で、広島が4対3と1点リードして迎えた9回裏、マウンドに立っていたのは、抑えの切り札・江夏豊投手でした。
百戦錬磨の江夏投手でも日本シリーズとなると緊張するのか、ヒット、四球、敬遠で無死満塁としてしまいました。1人でも生還すれば同点、ヒットなら逆転サヨナラ。優勝目前で優勝を逃してしまうという絶体絶命の場面です。
江夏投手は、この局面でスクイズ(バットを振らずに当てて弱い球を転がし、三塁走者をホームに進めて1点を獲る)が来るかもしれないと警戒していました。
そして2球目。カーブでストライクを取るつもりで投球動作に入りながら、まさにボールが江夏投手の手から離れようとした瞬間。『ビクッ』と来たのかカーブの握りのまま外す球(バントができないようなコースに投げるボール)を投げました。結果、スクイズは空振り。スタートを切っていた三塁走者は本塁でタッチアウトとなり、最大のピンチを切り抜けたのです。
画像:Chris Moore / Unsplash
私は「臆病」という言葉を考えるたびに、この「江夏の21球」を思い出します。
往年の大投手に対して失礼かもしれませんが、あの強面の江夏投手でさえ、常に「怖さ」を持っていたからこそ、大きなリスクを回避できたのではないでしょうか。
社長に就任してから5年半が過ぎました。
業績は右肩上がりですし、会社も良い方向へ発展してきています。これはひとえに社員をはじめ、当社に関わってくださった皆さまのおかげです。
ただ振り返ってみると、私自身が「臆病」だったことも、多少は役立っていたのではないかと思います。
「石橋を叩いて渡るね」と言われたことがありますが、無理な挑戦や過度なリスクを避けてきたことで、大きな失敗を防げたのかもしれません。
「臆病」は、リスクが近づいていることを知らせるシグナルです。
だからこそ、そのシグナルを感じたら早めに回避策を講じるようにしてきました。
例えば、「#38:ショックを受けて健康推進」で書いたように、私は社員が健康で幸せに働けるかどうかを常に気にしています。その不安があったからこそ、健康経営を推進してきました。
また、自分自身についても、年齢とともに体力が衰えることが怖くて、毎日2万歩を歩いたり、トレーニングに励んだりしています。
おかげさまで、今のところ何とか体力は維持できています。
こうして考えてみると、「怖い」「不安だ」という臆病な気持ちがあるからこそ、「何とかしよう」と行動できるのかもしれません。
臆病は決してネガティブなものではありません。
むしろ、ピンチを切り抜ける力の源になることもあるのです。
このコラムのシリーズも自信満々で書いているように感じられるかもしれませんが、実は毎回評判が気になっています。何回も何回も直しながら恐る恐る書いています。閲覧数が少ないと落ち込むこともありますので、ぜひ多くの方に読んでいただけるとうれしいですし、いいねは大歓迎です。
再び野球の話になりますが、イチローさんがアメリカ野球殿堂入りに選ばれた際、満票ではなく1票足りなかったそうです。
そのことについてイチローさんは、
「すごくよかったと思う。生きていく上で、不完全だからこそ進もうとできる」
と語っています。
あの完璧に見えるイチローさんでさえ、自分を「不完全」だと考えているのです。
だからこそ、日々のルーティンを大切にし、偉大な成績を積み重ねることができたのでしょう。
皆さんも、「怖い」「不安だ」という気持ちを必要以上にネガティブに捉えていないでしょうか。
どんなに強そうに見える人でも、完璧に見える人でも、必ず怖いものや不安なことがあります。
「弱み」はあっていいのです。むしろ、その「弱み」を「強み」に変えてしまえばよいのです。
私はこれからも、「臆病が強み」と考え、その不安を行動の力に変えていきたいと思います。
皆さんも、自分の弱みを責めるのではなく、強みに変えるきっかけとして捉えてみてはいかがでしょうか。
※次号は8月24日(月)リリース予定です。