写真:Tim Marshall/Unsplash
映画『MICHEL/マイケル』が6月12日から公開されました。歳がばれてしまいますが、大学時代によく聴いていました。というより“観て”いました。MTVが流行し始め、多くの楽曲でプロモーションビデオが制作されるようになった時代でした。
MUSICそのものがエンターテインメントであることは言うまでもありませんが、そこに映像が加わることで、エンターテインメント性はさらに高まったといえます。その時代を牽引していたのがマイケル・ジャクソンです。ポップな楽曲とともに繰り広げられるキレのあるダンスには釘付けになり、ムーンウォークもよく練習したものです。
映画を観れば、若い頃の気持ちに浸れるのではないかと、今から楽しみにしています。
コンテンツが良ければ、エンターテインメント化することでより楽しく伝えることができる――これは仕事にも当てはまるのではないかと思っています。
私はかつて無線通信技術の開発に携わっていました。ぱっと見は地味な分野ですが、実際には非常に高度な開発を行っており、いわばコンテンツとしての中身は優れたものでした。だからこそ、見せ方次第でその“地味さ”は十分に脱却できるのではないかと考えていました。
当時所属していた本部では、各製品に共通して使われる技術を開発していました。同じ本部の他部門では画像技術の開発も行っており、いわばキヤノンの本流ともいえる領域です。デモを行えば自然と人を惹きつける力がありました。高画質化の技術では、写真がより鮮明になり、被写体の質感まで再現されるなど、見た目にも非常にわかりやすいものでした。
それに比べると、私が担当していた無線技術はどうしても“地味さ”が際立ちます。カメラに無線機能を組み込み、パソコンから印刷するデモを行っても、もともとケーブル接続で実現できていたこともあり、「So What?(それで?)」という反応をされることも少なくありませんでした。
このまま“地味”なままでは悔しい。そう思い、まずは資料のビジュアル化から着手しました。ソフトウェアやハードウェアのモジュール構成、無線標準化の仕組み、品質への取り組みなどを、わかりやすく、そして視覚的に美しく整理していきました。いわゆる「おしゃれ化」の推進です。
当時はこのような形で資料の可視化にも取り組んでいました
最近でも私への説明の資料の中に「どこかで見たことがある図だな」と思うものが増えていきました。よくよく見ると、自分が原型を作成したものでした。15年経った今でもさまざまな場面で使われているのを見ると、感慨深いものがあります。
さらに、無線というテーマであってもどこかに“ウケどころ”はあるはずだと考え、ストーリーを丁寧に組み立てて発表に臨みました。
あるとき、日経の記事を見て「これは使える」と思い、一計を案じました。
ちょうど2010年頃、私は通信技術を開発するセンターに所属しており、技術発表を3テーマで行う機会がありました。当時は、5Gネットワークのバックボーンなどで使われる「ミリ波技術」や、現在のクラウドにつながる「仮想ネットワーク技術」など、先進的な開発に取り組んでいました。ただ、あまりに先進的すぎて、当時はなかなか広く理解されない側面もありました。
私は「標準無線技術」を担当し、トップバッターとして登壇しました。後には「ミリ波技術」と「仮想ネットワーク技術」の発表者が控えています。
日経の記事は「IT生活、わからないキーワード」という特集で、3位が「プラチナバンド」、2位が「3G・4G」、そして1位が「Wi-Fi」でした。今では広く知られている言葉ですが、2012年当時はまだ“よくわからない言葉”だったのです。
当時の日経記事「IT生活、わからないキーワード」のイメージ
私は標準無線技術の説明を一通り終えたあと、この新聞紙面を示しながら、「この3つのキーワード、実は私の発表の中にすべて出てきているんです。これらの言葉がメジャーになるよう、しっかり啓蒙していきたいと思います」とコメントしました。
さらに、「Wi-Fiですらまだよくわからない状況ですから、『ミリ波』や『仮想ネットワーク』は、もっとわかりにくいですよね」と付け加えると、会場は大きな笑いに包まれました。
今振り返ると、私の後に発表したメンバーはかなりやりにくかったのではないかと思います。この場を借りて、改めて反省しています。
こうした発表を繰り返しているうちに、「廣木さんの発表のときだけ起きていました」という“ありがたい声(?)”も聞こえるようになりました。
このようにして、“地味”この上ない「特許」や「無線」といった分野も、エンターテインメントとして伝えられるようになっていきました。
最近、社員との座談会などで話を聞くと、「会社が変わってきた」という声をいただくことがあります。特に、メディアを通じた広報活動に力を入れていることもあり、ご家族や知人から「テレビで会社のCM見たよ」と言われる機会が増えたという実感もあるようです。
キヤノンイメージングシステムズで行っている広報活動も、まさに「エンターテインメントにしてしまえ」という発想で続けてきたものです。
ただし、単に面白くするだけで中身が伴わなければ意味がありません。私が言うのも恐縮ですが、長嶋さんやマイケル・ジャクソンも、確かな実力があるからこそエンターテインメントとしてさらに価値が高まったのだと思います。
当社もエンジニアリング力や品質力という強みを持ちながら、それが十分に伝わっていない部分があるのではないか――そう感じ、広報活動を中心にさまざまな“エンターテインメント化”を進めてきました。その結果、「#15:魅了できたか?」のコラムで触れたとおり、少しずつ“魅せる”ことができるようになってきたと感じています。これも、確かな実力があってこそです。
当社の中には、まだまだ魅せられるコンテンツが数多く眠っているはずです。これからもエンターテインメント化を進めながら、楽しんで発信し続けていきたいと思います。
※本記事に掲載している画像の一部は、生成AIを用いて作成したものです。
※次号は7月6日(月)リリース予定です。
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