突然ですが、皆さんはバラエティ番組をご覧になりますか?
私は普段あまりテレビを見ないのですが、楽しみにしている番組があります。テレビ東京の太川陽介さんによる「バス乗り継ぎ旅」です。
あっ!テレビ『東京』の番組だから、新潟では見られないのか!当社の社員には申し訳ない話題ですね。新潟にいても私は『TVer』や『ネットもテレ東』で視聴しています。
この番組は、路線バスだけを乗り継いで目的地を目指すというシンプルな旅番組です。バスだけではつながらない区間もあるため、そこは徒歩で移動するか、1万5000円以内であればタクシーを使うこともできます。
バス運転手の不足により路線の廃止や減便が進んでいると最近のニュースで報じられています。この番組の存続も危ぶまれており、ファンとしては終わってほしくないと願っています。AIによる自動運転などを活用して、なんとか路線バスを維持してほしいものです。
めずらしい新潟駅のスイッチバック式バスターミナル。残念ながら2024年3月に閉鎖となりました。新潟でも路線バスの減便が相次いでいます。
当初は、ただ路線バスを乗り継ぐ旅でしたが、現在は「バスvs鉄道」「陣取り合戦」「鬼ごっこ」など、対決形式の旅が主流となり、バリエーションも豊かです。
特に私は「バスvs鉄道」が好きです。バスチームも歩きますが、鉄道チームはチェックポイントの近くに駅がないことが多く、歩く距離が半端ではありません。リーダーの村井美樹さんの“軍曹ぶり”もあって、10キロ・20キロは平気で歩きます。これでは「バスvs徒歩」ではないかと時にはつっこみを入れたくなります。
以前のコラムで「歩活」を紹介しましたが、その「歩活」で1日平均24,000歩を歩いたことがある鉄道オタの私としては、いつか村井美樹さんの鉄道チームに参加してこの試練を味わってみたいと思っています。
この旅ではスマフォを手放さなければなりません。情報収集は地図、バス停・駅の時刻表、そして人に聞くといったアナログな手段のみです。人間の本能を頼りに、乗り継ぎやタクシーの使いどころを判断する。それがこの番組の醍醐味です。
私が若い頃は、カーナビなどなく、紙の地図を見ながら運転していました。
いやいや、危ないですね。正確には、停車中に紙の地図でルートを確認し、記憶して運転していたものです。あるいは、助手席(Copilot?)の人に地図を見てもらい、ナビしてもらう。ドライブのパートナーには地図が読める“アナログナビ力”のある人が重宝された時代でした。今ではカーナビに目的地を入力すれば案内してくれるので、若い方にはピンとこないかもしれません。
電車で出かける際も、乗換案内アプリに出発地と目的地を入力すれば、最適な経路が表示されます。私もよく使いますが、気に入った経路にならないことが多々あります。
鉄オタ私は小さい頃、紙の路線図と時刻表を見ながら仮想旅行をよくしていました。その感覚があるので、出発駅と目的駅と時刻を入力して「検索」ボタンを押すだけというのには少し違和感があります。
乗換案内アプリよりも、紙の路線図と紙の時刻表があればいいのにと思うことが何度もあります。先日、秋田新幹線が熊にぶつかって、そのあおりで上越新幹線も途中で遅れたことがありました。最終新幹線で新潟を出発したので、遅れた時刻をもとに乗換案内アプリで再検索すると到着が翌日の朝以降というルートが出てきました。それでもあきらめられずに、自分の頭の中にある“アナログ鉄オタアプリ”を使ってルートを試したところ、無事当日中に予約した宿に着くことができました。
デジタルが示す直線的な答えに対して、アナログ的な思考で別のルートを二次元で描けるかどうか。そこに、デジタルに勝る要素があるのではないかと思います。
地図にはさまざまな情報が詰まっています。桜が満開の場所を通るルート、途中下車して立ち寄れるスポット、その駅でしか買えないものを手に入れるにはどのルートが良いかなど。西村京太郎さんのトラベルミステリーも、乗換案内アプリだけでは謎が解けないのではないかと思うほどです。
新津ー会津若松を走るSLばんえつ物語。アナログチック満載です。
前回のコラムでは、こう書きました。
「デジタル化の極みであるAIが席巻しているこの世の中で、今後どのようにビジネスを組み立てていったらよいのかを常に考えています」
AIを“デジタルの極み”と表現しましたが、実はAIにはアナログ的な側面もあります。チャットなどは、本当に人間と会話しているような感覚があり、アナログ的な対応とも言えるでしょう。
前回のコラムで触れたように、「人の動きや感情を丁寧に読み取り、それをもとにデジタル設計を行う」ことがAIには可能かもしれません。西村京太郎さんのミステリーの謎も、AIなら解けるかもしれません。
ただし、アナログ的に見えても、AIはやはりデジタル技術の極みです。チャットなどを完全なアナログと思い込むのは危険であり、そこは使い方をわきまえるべきです。
AIはあくまで「CoPilot(副操縦士)」であり、「Pilot(操縦士)」ではないのです。
4月16日の日経の記事で、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授は、AIの進化に対して「人間にしかできない仕事は何か?」という問いにこう答えています。
「12年前は『手先の器用さ』『創造性』『コミュニケーション力などの社会的知性』を挙げた。これは今も真実だ。看護師や美容師のように、AIやロボット工学が進歩しても、人間の指の熟練した器用さは機械では再現できない」
AIが席巻する時代において、どう勝つか。その具体的な方法はこれから模索していきますが、デジタルの根底にあるアナログに丁寧に向き合うことで、さまざまなアイデアが湧いてくるのではないかと思います。
IT企業の社長がこんなことを言うのもなんですが、たまにはデジタルをやめてみるのもよいと思う。アナログ時計で時間を見てみる。電卓ではなくそろばんで計算してみる。手書きの手紙を書いてみる。LINEではなく電話で話してみる。
そんなことを通じて、アナログ力の感性を鍛えることができると思います。皆さんも、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。バス乗り継ぎ旅のように、たまにはスマフォを手放して。
※次回は11月3日(月)にリリースします。