1
/
5

綿三斤

今年のクリスマスは日本各地が寒波に見舞われているようだ。
お出掛けを予定している皆々様はどうか気を付けて素敵な聖夜を過ごしてほしい。

クリスマスとは、元々イエス・キリストの降誕祭であるはずだが、仏教徒が多い日本でも、もはや無くてはならない年末のイベントとなっている。
無いとなると、なんとも寂しい思いをする方が多いことだろう。
華道の世界においても、重要な表現の場となっており、クリスマスを意識した生け花をしばしば見かける。

さあ、青工逢山の令和6年クリスマスの作品をご覧あれ。
本作品の主は綿花である。
綿が枝に付いたままの状態を目にする機会は、少ないのではないだろうか。
この綿を贅沢にモミの樹に盛り付けた。
まっさらな雪で作った雪だるまのようなツリー作品をお楽しみいただけたら嬉しい。
作品には禅の教えを大いに盛り込んでおり、青工逢山らしい内容となっている。

綿三斤

作品名「綿三斤(めんさんきん)」とは、「仏とは何か」と弟子に問われた中国の洞山禅師が、偶然手元にあった麻を見て「麻三斤(まさんきん)」と答えた、という逸話から着想を得て命名した青工逢山の造語である。
「麻三斤」は僧衣一着を作るために必要な麻の量を指す。
禅師がこの言葉から弟子に伝えたかったことの一つは、仏はあらゆるもの、身近なものに宿っていること。
そしてもう一つは、麻はそれだけあっても役に立たないが、その材料を自分なりに工夫して
自分のもの、つまり自分の答えにせよ、ということを伝えたかったと云われる。
時に、答えを得ることは難しく、尚且つ一つの答えで満足しがちだが、探し続ける姿を洞山禅師は教えてくれている。

知恵の樹

本作品は僧衣ではなくクリスマスツリー作品ゆえ、麻ではなく綿を選んだ。ゆえに「綿三斤」。
クリスマスツリーの起源は、アダムとイブが禁断の果実をとって食べた知恵の樹であるという説がある。
蛇に唆されて神の教えに背き、禁断の果実を食したのち、蛇に騙されたことに気づき、その経験によって二人は善悪の知識をつけたそうな。
人間らしい失敗からの気づき、学びの経験ではなかろうか。
この由縁をもつツリーに、洞山禅師の教えを込めた綿を乗せた本作品を、皆々様に見ていただきたかった次第である。

おわりに

何にも染まっていない、まっさらな綿花は、あなた次第で何色にも染められることだろう。
気づき、学び、導き出す答えは幾千万。そんな想いを本作品に込めた。
メリークリスマス。


Invitation from 株式会社AINEXT
If this story triggered your interest, have a chat with the team?
株式会社AINEXT's job postings
1 Likes
1 Likes

Weekly ranking

Show other rankings
Like Jo Takemoto's Story
Let Jo Takemoto's company know you're interested in their content