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新嘗祭
皆々様は今年もう新米を食しただろうか。
毎年11月23日、その年の収穫物を供え来年の豊饒を祈願する「新嘗祭」が、宮中をはじめ日本全国の神社で執り行われる。
この日宮中では、天皇陛下が新たに収穫された五穀を天と地の神々に供え、陛下自らも新穀を食べることにより、その年の収穫に感謝する。
一つ言及しておくと、神々に新穀を供えるまでは、新米を食べてはいけないと云われている。
これが、冒頭で皆様に新米をもう食べたかどうか問うた由縁である。
新嘗祭のしきたりについて触れたかった次第だ。
木守り柿
日本で大変馴染み深い柿の実。
懐かしく温かみのある柿の実に、郷愁を感じる方も多いのではなかろうか。
家の庭や畑に実った柿を全て収穫せず、傷の無いきれいなものを一部木に残し、来年の豊作を願う風習が日本にはある。これを「木守り柿」と云う。
豊作祈願の他にも、野生動物や旅人たちへのお裾分けとして、残しておくのである。
木守り柿は古式ゆかしい風習であると共に、人の粋な計らいを感じられるおもてなしではないだろうか。
古代米と柿
宮中や神社で神々に今年の豊饒を感謝し、来年の実りを祈願する新嘗祭。
一方、神への感謝と祈願という想いは同じでありつつ、それを家ごとに行い、さらには縁のある身近な人々と分かち合おうというのが木守り柿である。
この二つを結び合わせ、令和六年の新嘗祭、青工逢山の華道作品としてご紹介したい。
新嘗祭をもっと身近な祭りとして行いたいという想いを込めている。
使用した米は古代米と呼ばれる黒米を取り寄せた。
黒米の原産地は中国で、歴代の皇帝は黒米を縁起のよい出世米として、宮廷料理で食べていたそうな。
日本にも古くから伝わってきたが、収穫量が少なく栽培しにくい性質のため、明治時代以降はあまり栽培されなくなり、稀少性が高まっている。
本作品では黒米の黒と柿の橙色の対比が美しく照り映え、懐かしい秋の田園風景を思わせる。
古より連綿と受け継がれる宮中行事と、素朴でありながらも温かみのある日本の人々の心。そこに通じるものを見出し、此度の作品として表現した。
郷愁、詫び寂び、粋な風情を本作品から感じていただけたなら幸甚である。