2026年8月1日、バイネームは5期目に入りました。
AIの普及が加速し、デザイン業界も変化の波を受けた4期目。制作プロセスが変わり、クライアントのニーズも変わり、求められるスキルも変わりつつあります。
「AIに振り回された1年でしたね」と笑いながら話す代表・井上さんに、4期の振り返りと5期に向けての展望を聞きました。
下期の失速と、業界の変化
── 4期目、どんな1年でしたか?
前半は去年と同じペースで進んでいたんですが、5〜7月がきつかったですね。そのあたりにAIの普及がすごく広まったと感じていて、クライアントさんの中でもAI活用による業務効率化に比重を置く会社が増えてきました。これまで相談をいただいていたところが縮小されていくのを感じましたね。
── UIデザインへの外注需要が減ってきていると感じますか?
デザインやデザインシステムに関わるところはだいぶ絞られてきている感覚があります。ただ、ある一定のラインからは引き戻しがあると思っています。デザイン文脈でのAI活用をやってみたけど思ったレベルに達しなかった、という話は出てくるはずなので。過去と比較すると絶対数としては少なくはなるんでしょうが。
── 前年度の売上は1億円突破しましたが、今期の売上の結果はいかがでしたか?
売上は去年度とほぼ同等ではあったのですが、最後の3ヶ月で少し勢いが落ちてしまい、結果としては前年比より5%ほど下がってしまいました。
そういった経緯もあり5月以降から営業代行を入れて販路開拓を動かし、本の出版にも新たに取り組みました。売上は若干下がりつつも、去年と比べると投資として使った費用の比重がすごく大きくなった1年でしたね。
── 取引先や案件の性質に変化はありましたか?
そこのブレはあんまりないですね。基本的にUI系の仕事が多いのは変わっていません。ただ、AIを使った案件は増えました。プロトタイピングをFigmaではなく、Claude Codeなど生成AIで生成したプロトタイプを見ながら仕様を詰める動きが、本当にここ半年で当たり前になってきた。業界を通してこういったやり方の浸透を感じます。我々もそういう動き方をしているので、それが受け入れられているという状況です。
── バイネームが運営するシーシャバー・MOCKにも変化はありましたか?
昨年までは赤字が続いていましたが、スタッフが5〜6名まで定着してきて、人件費と仕入れ費は賄えるくらいになってきました。スタッフはデザイナーだけでなく、スタートアップで働く人、建築家の卵、心理カウンセラーの個人事業主など多種多様です。以前より街に定着して、広がりが出てきた感じがあります。お店を完全に任せられるようになってきたのも、この1年の変化ですね。
Figmaが9割消えた——AIシフトの実態
── 制作プロセスで大きく変わったことはありますか?
Figmaを開く頻度が圧倒的に減りました。体感で9割くらい減ったんじゃないかと思います。UIのプロトタイプはAIベースで作って、挙動を確認したり、クライアントと要件を確認しながら仕様を詰めていきます。Figma自体はゼロになったわけではなく、デザインシステムをまとめたドキュメントやコンポーネントの保管先として使うことが多くなりました。
── Figmaで作っていたものをAIが担うことで、何が変わりましたか?
動きを見ながら仕様を決めていけるので、単純に精度が上がりましたね。プロトタイプって仕様確認のためのものなので、完璧である必要はないんですよ。それをAIがすぐ出してくれるようになったので、議論を進めるスピードが圧倒的に上がりましたね。合意を取るための往復が減って、だいぶ楽に完成まで持っていけるようになりました。
「誰でもUIが作れる時代」に何が残るか
── AIの普及で、デザイナーの価値はどう変わると見ていますか?
誰でもUIが作れるようになったからこそ、UXやデザインのリテラシーの価値が上がりそうだなと感じています。どういうアウトプットが良くてどう評価すればいいのか、その基準がまだ抜けているところが多い。ユーザーファーストの視点で判断できる人の価値は、高くなっていくと思います。
── 案件の入り方自体は変わりましたか?
元々バイネームにはUIだけを作るような仕事はそんなに多くなくて、要件整理からどのように機能とUIを作るかという、上流から入るのは変わっていません。
逆に感じているのは、ディレクターやPMが動くような上流の仕事を、デザイナーも求められる時代になってきているということです。予算・課題・スコープを整理しながら、ユーザー視点を保ったままアウトプットまでデリバリーできる人。PMの人がデザインを覚えるという方向もあるんですが、やっぱりデザイナーがやったアウトプットと比べると荒さがある。であれば、デザイナーがしっかり上流に入り込んだほうが相互理解が進んで、プロジェクトも進みやすくなる。「しっかりデザインができて、ちょっとディレクションもできる」ほうが、選ばれると思っています。
2人が自分で育った メンバーの1年
── 4期は山田さん、早川さんの入社がありましたが、彼らはどんな成長をされましたか?
もともとWebデザイナーだった山田さんは、持っている案件は一人で回せるようになってきた感覚です。AIも活用していて、バナーのサイズを指定すれば自動生成するプロンプトを作ったり、クライアントの案件でデザインシステムを運用し始めたりしています。現時点でも自走してバリバリ動けていて、今後は提案や上流視点などをさらに強化していく予定です。
もう一人、フロントエンドエンジニアの早川さんも調子が良くなってきた印象です。今までコーディングがメインの仕事だったこともあり実装の観点はすごくしっかりしているので、加えてビジネス観点やユーザー視点を努力してキャッチアップしています。ここから言語化スキルをさらに伸ばせれば、私がいなくてもどんどん案件を進められるようになるんじゃないかと思っています。
── 育成という観点ではどうでしたか?
育成した、という感覚はあんまりないんですよね。2人が自分でやることを拾っていってくれた感じです。現場で僕がフォローする場面を見てもらいながら、こういう観点が必要なんだと自分で学んでくれたので。自主的に育ってくれる2人でよかったと思っています。
5期の挑戦:上流人材の「OS」を作る
── 5期はどんなことに取り組みますか?
上流を担える人が足りていない、という点で、デザインコンサルのニーズはなくならないと思っています。ちゃんと要件を決めてリードができる人、何が良くて何は良くないかを判断して言える人のニーズは今後も続く。そう考えると、そういったスキルが社内においてまだまだなので、そこの「OS」を作るのが来期やらなければいけないことだと感じています。
チャレンジしたいのは、会社の文化や社員のナレッジを資産として会社に残していくことです。他社からのニーズとして高そうですし、自社でまず作って、導入支援という形で展開できればと思っています。
── AI活用という観点では?
AIを基軸にしたデザインプロセスが仕組みとして身についている会社になることが目標です。デザインの民主化が進めば進むほど、アウトプットの品質はばらけてしまう。そこに生まれてくるデザイン課題を一緒に解決できるパートナーとして入れる会社でいたい。デザインだけでなく、ユーザー視点や人間中心設計的な思考をより強みにして課題解決ができる会社になっていきたいと思っています。
── 最後に、来期に向けて一言お願いします。
本音は、3ヶ月くらい仕事を止めて休みたいですね(笑)。クライアントワークを中心に4年間走り続けてきたので、AI活用が軌道に乗ってきた今だからこそ、これまでやれなかったものを作る時間を持てたらいいなと。少しずつ社員に任せられることは増えてきているので、やってみたらなんとかなりそうです。なので、5期は、これまでやれなかったことを試していく1年にできたらと思っています。
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