マイクラを使った課題発見・解決型プログラム「コラボクリエイト」とは?
「セキュリティー性が高くて和風な家をつくるのはどう?」
「いいね!他の人はどう思う?しゃべるのがいやだったら、チャットかスタンプでリアクションしてみて!」
真剣な表情で、週に一度のオンラインプログラムに参加するのは、7人の子どもたち。
対話を重ねたあとは、マインクラフトでそのアイデアを形にしていきます。
彼らが取り組んでいるのは、SOZOWが提供するオンラインプログラム「ソゾクラ コラボクリエイト」です。
「コラボクリエイト(以下、コラクリ)」のテーマは「協働」。
子どもたちは話し合いながら、マインクラフトの世界の中で力を合わせて作品をつくり上げていきます。
コラクリのゴールは、「ともに価値を創り出し、それを発信すること」。
1年を通して、7つのテーマの創作活動に取り組みます。
前半の半年は、家や遊園地、世界の建築物など、子どもたちに身近なテーマを題材に作品を制作。制作の過程では、チームで話し合いを重ね、協力しながら共同作業で一つの作品を作り出すことで、協働の難しさ、面白さを学びます。
後半の半年は少し難しいテーマに挑みます。それは、「SDGs」。チームごとに課題を決め、その解決方法を考えてマイクラで表現します。
7回のテーマ活動ごとに、完成した作品をプレゼンテーションしあう機会があり、発信するためのスキルも磨いていきます。プレゼンに向き合う際は、「ただ発表すること」ではなく「誰かに思いを伝え、行動の変化を生むこと」まで意識して取り組むのです。
2025年3月には、全13チーム 約90名の子どもたちがSDGsをテーマにプレゼンテーションを繰り広げる大会「SOZOW CUP」が開催されました。 本記事では、このプログラムの中で、どんな学びが生まれ、どのようなスキルがはぐぐまれたのか、その全貌をお伝えします。
目次
- マイクラを使った課題発見・解決型プログラム「コラボクリエイト」とは?
- たった2つのルール「らしクリ」と「コラクリ」
- 「実はね…」ここなら、何でも言えると思った
- 1年間の集大成「SOZOW CUP」開催!
- 大人が気づかされる、子どもたちの成長
- コラクリのこれから
たった2つのルール「らしクリ」と「コラクリ」
コラクリでは、毎週確認する2つの大切なルールがあります。
それが「らしクリ(自分らしくあること)」と「コラクリ(協力すること)」。
子どもたちは、ありのままの自分でいながら、仲間と協力して価値を生み出すことの大切さを学びます。
毎週、活動に取り組むまえに全員で2つのルールを確認します。
自分らしく参加してほしいからこそ、SOZOWのオンラインプログラムは、参加方法が自由。
顔を見せたくない人は、画面をオフにして参加してもかまいません。しゃべるのが苦手な子どもたちはチャット機能を使って、テキストで話し合いに参加します。
顔出しや声出しの強制がないからこそ、自分らしいスタイルで安心して参加できるのです。
カリキュラム開発者でSOZOWスタッフの「りっきー」は、こう語ります。
「AIやテクノロジーが進化するこれからの時代、人と同じことをしていても意味がなくなってきます。むしろ、個性こそが価値になる時代です。SOZOWでは、これまでも『人と違って良い、違うから良い』というメッセージを伝え、子どもたちの『自分らしさ』を伸ばすことを重視してきました。
一方で、社会を生きていくうえで“協調性”も欠かせません。選択的不登校のように、自分に合う場所を選べる時代ですが、すべての人や場所を閉ざし一人でいることは、せっかくの可能性を閉ざしてしまうことにもなりかねません。誰しも、出会うべき人と出会うことができれば、手を取り合い、より大きな力を発揮できるはずです。
だからこそ、個性を消して“空気を読む”のではなく、個性を活かしながら協調していける力を育てる——。それが『コラボレーション(協力)』、つまり全く異なる者同士が新しい価値を『クリエイト(創造)』するという考え方です。」
「実はね…」ここなら、何でも言えると思った
社会問題について議論し、課題を設定し、解決策を考えることは、大人でも簡単ではありません。
コラクリに参加する子どもたちも、課題を決めるまでに何度も話し合いを重ねていきます。
プリズマリンチームでは、教育問題かフードロスか、どちらをテーマにするかで議論が起こっていました。
SDGsのさまざまな目標をならべ、関心のあるテーマについて対話していきます。(個人情報保護の観点から、一部加工し掲載)
そんな中、ひとりがこう問いかけます。
「言いづらかったらいいんだけど……今、学校に行けてない人っている?」
その質問に反応したのは、チーム内で「神絵師」と呼ばれる、絵が得意な男の子。
「ぼく、学校に行ってないよ」
彼がなぜ不登校を選んだのか、今どう感じているのか。はじめて、みんながその話を聞きました。
スタッフが声をかけようとしたその時——
「そうなんだ。不登校の人が周りにいなかったから、気持ちを初めて知ったよ。話してくれてありがとう」
そう伝えたのは、同じチームの子でした。
チームの誰もが、彼の勇気ある告白をしっかり受け止め、感謝の言葉を送りました。
後日、「どうして話してくれたの?」と聞くと、彼はこう答えました。
「SOZOWでは、みんながぼくの絵を褒めてくれるし、認めてくれる。ここなら何でも言えると思ったんだ」
この出来事をきっかけに、チームでは「どちらの問題も考えてみたい」という思いが生まれ、2つの意見をかけあわせることに。「教育」と「フードロス」、両方の問題について考えることができる「食育」をテーマにすることを決めました。
ラピスラズリチームでは、ある男の子が日常の体験をシェアします。
「女の子の服やピンク色が好きなんだけど、からかわれることがある」
その一言で、チームが団結しました。
「言ってくれてありがとう!」
「好きなことを好きって言える社会にしよう!」
実際の体験をもとに子どもたちが作成し、発表した資料。
このように、子どもたち自身の経験がきっかけとなり、テーマを身近なものとして捉えるチームも多くありました。
また、普段は話すことが苦手な子が、ふとチャットで気持ちを伝えるようになったり、少しずつ言葉を交わすようになる様子も。
「どんな形でも、自分を出していいんだ」と感じられる安心感が、子どもたちの心を開いていくのです。
1年間の集大成「SOZOW CUP」開催!
いよいよ、全13チームによるオンラインプレゼン大会「SOZOW CUP」が開幕。
この日は子どもたちの家族や友人も参加し、総勢120名以上が集いました。
全13チームのプレゼンテーマ。どのチームも個性が光っています。
アメジストチームのプレゼンでは、こんな問いかけが。
「みなさん、“SDGsウォッシュ”って知っていますか?」
“SDGsウォッシュ”とは、SDGsに取り組んでいるように見せかけながら、実際には貢献していない状態のこと。
彼らはこの問題をゲームにして、マインクラフト上で体験できる仕掛けを作りました。
SDGsウォッシュを体験するゲーム。クリアをするともらえる免許証もマイクラで作成。
見かけは環境に良さそうでも、裏側には問題がある——
そんな“リアル”な気づきを、ユーモアと説得力を持って伝えました。
一方、スカルクチームのテーマはなんと、「牛丼で戦争を解決!?」
「みんなで牛丼を食べて幸せになれば、争いなんて起きないよ!」
そんなピュアで愛のあるアイデアに、参加者の心がほっこり。
「夜ご飯、牛丼にします!」
そんなコメントがチャットに並びました。
男の子の告白をきっかけに「食育」をテーマに設定したプリズマリンチームは「新しい学校給食のかたち」を提案。
苦手なものを減らす“セレクト給食”や、食材の生産体験を通じて食の大切さを学ぶ仕組みを発表し、チャットには感嘆のコメントが溢れました。
大人が気づかされる、子どもたちの成長
どのチームも素晴らしい発表を行いましたが、見事優勝を果たしたのは「SDGsウォッシュ」を取り上げたアメジストチーム。
本質的にSDGsに貢献できているかは、自分で考え確かめるべき、というまっすぐな訴え、そしてこの問題をゲームによって解決させるというエンターテイメント性にも溢れたプレゼンテーションに、参加者一同が納得させられた結果となりました。
担当スタッフのたくちゃんは、こう振り返ります。
「3ヶ月間、難しいテーマに全員で向き合いました。最初は発言が少なかった子も、だんだん自信を持って発言していく姿はかっこよかった。これからも本当のSDGsについて、考え続けてほしいです」
SOZOWスタッフ・たくちゃん。子どもたちに「正解のない問い」を投げかけ、共にプレゼンテーションを創りました。
SOZOW CUP終了後、参加した子どもたちの保護者からは、喜びと感動の声が多数寄せられました。
「一人一人の個性を見ながら、無理なく、少しでも挑戦できるような声かけや取り組みをしてくださっている姿から、子どもも思いやりの心が育まれたことを感じます。」
「ただマイクラをやりたいという気持ちから始めましたが、他の人の意見を大事にしながら自分の気持ちをしっかり伝えるということが、すごく成長したなと感じています。」
「オンラインであることで、住んでいる場所や年齢等、自分とは違う環境の友達とも触れ合うことが出来る、子供にとって大切な場所でした。」
これらの言葉は、子どもたちが、他者との関わりを通して、自己肯定感を高め、社会性を育んでいることを物語っています。
コラクリのこれから
プログラムを終え、カリキュラム開発者・りっきーはこう語ります。
「何かを“消費するだけ”の存在ではなく、自分らしく価値を生み出せる人になってほしい。
好きなことや好奇心を出発点に、楽しみながら価値をつくれる社会を目指して、これからも挑戦を続けていきたいです」
コラボクリエイトコースは、現在2期生、3期生のクラスを開講中。今後は、リアルのイベント等でも展開予定です。
マインクラフトが好き、家や学校とはまた違った場所で何かに挑戦してみたいというお子さま、ぜひ一緒にチャレンジしてみませんか?
「好き!」という好奇心を起点に、自分らしい未来を創造する第一歩を踏み出しましょう!