中川翔子さんと特別授業を実施
中川翔子さんと不登校ジャーナリストの石井しこうさんが立ち上げたプロジェクト「卒業式をもう一度」は、3日間限定のフリースクールを開校し、不登校などの事情で「卒業式をやり直したい」という思いを抱える人などが全国から集まり、オンライン授業の活動を通じて人生を振り返りながら、人生の一区切りをつけるものです。
SOZOWスクールはその実行委員会に加わり、中川さんが校長を務める「空色スクール」のオンライン授業の提供を行わせていただきました。今回は、その授業内容をレポートします!
今回の授業テーマは「人生を振り返る」こと。「生き方ライブ」と「人生紙芝居ワークショップ」の2本立てで構成されました。
目次
中川翔子さんと特別授業を実施
SOZOWスクールとは?
「宝探ししてくれてありがとう」—— 辛かった10代の自分へ届けたい言葉 中川翔子さんが人生を振り返るライブ授業
波乱に満ちた子ども時代
不登校、そしてアニメ・漫画との出会い
人生グラフが急上昇し始めた出来事
10代の自分と向き合えた、今。
たった一つの人生のストーリーをシェアし、学び合う。人生紙芝居ワークショップ
ワークショップの流れ
授業を終えて〜中川翔子さんインタビュー〜
SOZOWスクールが届ける学び
SOZOWスクールとは?
SOZOWスクールは、「好きを学びに。未来を自在に」をコンセプトにしたオンラインフリースクール。小学4年生から中学3年生を対象に、マインクラフトや動画制作、イラストなど、自分の「好き」を深める学びの場を提供しています。全国の仲間とつながりながら、興味や関心を自由に探究できるのが特徴です。
また、一人ひとりに担当メンターがつき、学びや悩みを気軽に相談できるサポート体制も充実。e-スポーツ大会や特別授業、交流イベントも多数開催し、学校とは違う形で、自分らしい学びを見つけられる場所です。
SOZOWスクールの「生き方ライブ」は、多様な人生を歩むゲスト講師を迎え、インタラクティブに人生のストーリーを紐解くプログラム。夢中になれるものとの出会いや人生の転換点を共有し、「正解のない時代」に自分らしい生き方を考える機会を提供します。
「宝探ししてくれてありがとう」—— 辛かった10代の自分へ届けたい言葉 中川翔子さんが人生を振り返るライブ授業
ライブ授業配信を行うSOZOWのスタジオの様子。
実際の配信画面。
「生き方ライブ」では、ゲストが自分だけの「人生グラフ」をもとに、自らの転機や大切にしている価値観を振り返ります。今回、進行を務めるのはSOZOWの「かじー」。SOZOWらしく、『しょこたん』と親しみを込めたニックネームで呼びながら、人生を深掘りしていきます。
波乱に満ちた子ども時代
「家族に愛され、幸せな子ども時代でした。でも、小学3年生で父が亡くなり、それが人生で初めての大きな衝撃でした。」
「小学6年生のとき、担任の先生が“神”で、それぞれの個性に寄り添ってくれる方でした。できないことがあっても、その子の良いところを深く掘り下げて褒めてくれたんです。私も悩みが多い子どもでしたが、絵を描くことに関しては信じて任せてくれて、そのおかげで小学校生活が楽しくなりました。卒業のとき、『あなたは絵を描き続けなさい』と言ってもらえたことが、その後の自信につながっています。」
ところが、中学校に入ると状況が一変。
「今の時代では信じられないかもしれませんが、当時は”オタク”に対する偏見が強く、私はクラスに馴染めませんでした。何をしても陰で悪口を言われ、『どうして私はこんなに人に嫌われる星の下に生まれてしまったのか』と、つらい日々を過ごしました。」
不登校、そしてアニメ・漫画との出会い
中学3年生で不登校に。
家にこもるなかで、アニメソングや特撮、漫画、イラストの世界にのめり込んでいきました。「人生終わった」と思っていた10代前半の人生グラフは、まさにどん底。
そんななか、最初の転機となったのは、母と訪れた香港旅行。そこで、憧れのジャッキー・チェンと偶然出会うという奇跡が起こります。
「世界のスターであるジャッキーが、見知らぬ日本人親子に信じられないほど優しく接してくれて、言葉にならない感動を覚えました。『いつかまたジャッキーに会って、ありがとうを伝えられる人になろう。だから、死なないで生きよう』と思ったんです。」
しかし、その後ジャッキーの事務所に所属したものの、クビになってしまうというショッキングな出来事が。
「本当に、人生の波がすごかったですね。」
ここから、人生グラフはどう展開していくのでしょうか——。
人生グラフが急上昇し始めた出来事
「13歳の頃、楳図かずお先生の作品に夢中になり、ひたすら絵を模写していました。模写している間は、辛いことを忘れられたんです。
そして18歳くらいの頃。仕事を辞めようかと考えていたとき、まさかの奇跡が起こりました。私にとって神様のような存在である楳図先生と、お仕事をご一緒する機会をいただいたんです。もうこれが最後の仕事になるかもしれない、と考えながら向かった現場。そこにいた先生は、とにかく優しくて、私の面倒くさい質問にも一つひとつ丁寧に答えてくれました。帰り際、先生がわざわざ私のところへ来て、こう言ってくれたんです。
『翔子ちゃん、またね。』
その言葉が、当時の私には燦然と輝く3文字に感じられました。絶望の中にいた私にとって、”またね”の三文字が、『生きて頑張っていたら、また会えるかもしれない』という希望の言葉に思えたんです。」
「その頃、ブログを始めました。好きなことを書き残しておこう、そんな気持ちで。それまで口にできなかった『アニメが好き』『コスプレが好き』そんな思いをどんどん綴っていきました。そうすると、まるで言霊に引っ張られるように、楽しくなって、いろんなことが叶っていったんです。
『実は私も好きなんです』——そんな共感の声が届くようになりました。
18歳までに見つけた”好きなこと”を、ブログに全部書きました。そのおかげで今年”レベル40”になる今も、好きなことが花として咲き続けているんです。」
そこから、一気に人生グラフが上向きになっていきます。さらに、夢だった「ポケモンのお姉さん」になることができました。
10代の自分と向き合えた、今。
「アニメソングを歌う人になりたい。そう思い続けていたら、本当にその仕事ができるようになりました。楽しいことがどんどん叶っていく。紅白に出場したときは、おじいちゃん・おばあちゃんにその姿を見せることができて、本当に嬉しかったです。でも、その幸せを噛みしめていた矢先、大好きだったおじいちゃんが亡くなりました。
その直後、武道館ライブが控えていました。こんなに辛いのに、ステージでは笑わなきゃいけない。それが本当に苦しくて、芸能界を続けていくのは無理かもしれないと思いました。」
その後、母と旅行に行ったハワイで元気を取り戻したり、人生グラフは激しく上がり下がりを繰り返します。そんな中で、たくさんのアニソンを歌うことができ、思い描いた夢がいくつも叶っていきました。
「過去の時代は黒歴史として封印してて、それを塗り替えたいという気持ちでお仕事をしていました。でも、むしろそんな引きこもっていた時代に、ポケモンとか、一生ものの大事にしたいことを見つけて、それが積み上がって今がある——やっと気づいたんです。
30代になって、やっと過去を受け入れられた。
そして、『生きててよかった』が、心の口癖になっていきました。」
「そんな思いを込めて、『死ぬんじゃねーぞ!!』という本を書きました。
悩んでいる人のそばに寄り添える大人になりたい。
10代の子や、不登校で悩んだことのある人の力になりたい。
それがライフワークになり、今回の空色スクールでそれが実現したことが、本当に嬉しいです。
これからも、人生にはいろんなことがあると思います。
でも、10代の頃にたくさん傷ついた自分が、今もそばにいてくれている気がします。
『子どもの頃、ポケモン見てました!』
そんなふうに声をかけてもらうたび、楽しそうな背中を見せられる大人でありたいと思うんです。
だからこそ、『自分も幸せになる』ことを、これからも大切にしたいです。」
進行を務めるガイドの「かじー」が、こうコメントしました。
「ジャッキーや楳図先生との出会いが、今のしょこたんにつながっている。そして今回の空色スクールのような場で、今度はしょこたんが誰かにとっての楳図先生のような存在になっていくんでしょうね。」
「学校に行かなかった時間は、自分だけの大切なものを見つける時間だったなと思います。」と、しょこたん。
18歳までに”好きなもの”を見つける時間。
今なら、当時の自分にこう言いたい。
「生きていて、宝探しをしてくれて、ありがとう。」
最後に、かじーがこう締めくくります。
「多感な時期だからこそ、好きなものに手を伸ばせたのは素敵なことですね。皆さんには、どんな経験があったのか——この後のワークショップで、ぜひ聞かせてもらえればと思います。」
ここで、参加者からの質問やコメントタイムです。目で追い切れないほどチャット欄にメッセージが送られてきます。
ーー社会に出てから理不尽なことにあったとき、どのように対応していますか?
「理不尽なことあるよね〜!でも大人って自分の好きなことやテンションが上がる方法も把握できていますよね。自分の稼いだお金で美味しいものを食べるとか、猫との時間に使うとか。攻撃してくる人には会わないとか。大人は責任と自由の羽がある!」
ーー生きるモチベーションってなんですか?
「生きていてよかったと思うことってきっと何回も訪れると思います、大小色々あるけれど。母のように、私が死んだら悲しむ人がいる。そして猫たちのためにも。まだまだ伝えたいことがあるから死なないです。」
ーー「大人の方たちがすごい自由で楽しそうにしててうらやましい✨」(10代の参加者のコメント)
「大人の責任は、子どもたちが『なんだ大人って楽しそうじゃん』って思える背中になること。楽しそうに過ごせるように努力して、子どもの希望になりたいですよね。」
最後にしょこたんからのメッセージです。
「今回、SOZOWスクールさんの協力のおかげで、一回しかない自分の人生を反芻する時間ができて楽しかったです。今日生きていたからみんなで会えた、これってミラクルだと思うんです。この世界で生きていると一人では生きられないからこそ、『なんでだよ』ってこともあるけれど、それ以上に『ああよかった』って思って幸せになることが、過去のそんな自分へのリベンジになる。
まだ食べたことがない美味しいものもある、見たことないキラキラした景色もある。私はまだまだ叶えたい夢があるから、一回しかない人生をいろんな空の色のようにカラフルにしたいです。みなさんも、死ぬんじゃねーぞ。ありがとうございます!」
参加者からはこんな感想が寄せられました。
「自分との共通点もあり、自分一人だけの悩みだと絶望していたことが、そうじゃないことが分かって嬉しかった。」
「しょこたんのお話を聞いて、当たり前だけど人生っていいこともあれば悪いこともあって、生きててよかったと思いました。生きててくれてありがとうございます。素敵な時間をありがとうございます。」
たった一つの人生のストーリーをシェアし、学び合う。人生紙芝居ワークショップ
「生き方ライブ」に続いて行われたのは、「人生紙芝居ワークショップ」。
このワークショップでは、参加者が自分の人生を振り返りそのストーリーを紙芝居の形で表現します。
ワークショップの流れ
- 中川翔子さんの生き方ライブを聞いて、共感したことや気づいたことをシェア
自分の人生の中で印象的な出来事や成長のきっかけを考えます。 - 自分の人生グラフを作る
- グループで人生グラフをシェアし合う
- 人生紙芝居のストーリーを構成する
人生グラフをもとにしながら、「当時の自分に届けたいメッセージ」を軸にエピソードを整理する - 完成した人生紙芝居を発表する
完成した紙芝居を発表し、他の参加者と感想を共有します。
中川翔子さんもワークショップに参加。参加者との対話に加わり、励ましのコメントやアドバイスを届けました。
壮絶な過去と向き合ってきた中川さんならではの言葉には、深い想いが込められており、オンライン授業の空間が温かい雰囲気に包まれました。中川さんとの対話を通じて、「やっぱり自分の夢はこれだ、と気づけました」と話す参加者も。人生の時計の針が動き出す瞬間でした。
今回のワークショップを監修し、進行を務めたSOZOWの「ひじ」に、授業を通じての手応えを聞きました。
SOZOWスクールのコンテンツ企画などを担当する「ひじ」。今回は10代から60代までの多様な参加者がいる授業に『ワクワクしている』と語っていました。
「嬉しい驚きだったのは、皆さんが自分の経験を積極的に共有してくれたことです。普段なら話しづらいような苦しい経験や人生の転機について語り、それを共有することで、新たな気づきを得ていました。
中川さんによる『生き方ライブ』から始まり、人生グラフの作成、グループワークと段階を踏んで進めることで、少しずつ心を開けるよう工夫したことが功を奏したと感じています。
特に印象的だったのは、幼少期に辛い状況を経験した方が、その実体験を語ってくれたことです。聞いているだけで胸が痛くなるような内容でしたが、そこに社会への恨みはなく、『同じ境遇の子どもたちの力になりたい』と、涙ながらに想いを語ってくれました。
自分の経験を内に秘めるのではなく、誰かに届け、社会に活かそうとする姿勢が本当に素晴らしいと感じました。
SOZOWスクールとしても、子どもたちが自分を臆せず表現できる環境をつくること、そしてそれによってお互いに気づきや成長を促せることの大切さを改めて実感しました。」
今回のワークショップで制作した人生紙芝居をもとに、3月23日に行われる卒業を祝うセレモニーで、それぞれの人生へのメッセージを一人ひとりが発表します。参加者からは、次のような感想が寄せられました。
「ワークショップを通じて、ずっと自分の心の中に引っかかっていたことが何かに気づきました。」
「みなさんとお話しする中で、人生紙芝居を通して自分の過去を微笑みながら話せる自分を誇りに思えました。」
「他の人の経験を聴くことで、新たな発見があり、自分の将来のイメージを膨らませたりと充実した時間となりました。過去と向き合えただけでなく、未来の自分のキャリアについて考える機会にもなり、とても満足しています。」
授業を終えて〜中川翔子さんインタビュー〜
――今回の授業を振り返って、どのような感想を持ちましたか?
「皆さんの発表を聞いて、私自身もたくさんの学びや気づきがありました。特に、若い世代の“自分を見つけるスピードの速さ”には驚かされました。また、壮絶な経験をされた方が『自分が辛かったからこそ、人には優しくしたい』と語る姿にも胸を打たれました。
なかなか友達にも話せないような深い想いを共有できたのは、スタッフの皆さんが本音で向き合ってくれたからこそだと思います。この時間が、参加者全員にとって“一生もの”の経験になったのではないでしょうか。」
――生き方ライブの「人生グラフ」を通じて、どんなことを感じましたか?
「人生グラフって、シンプルだけど奥深いんですよね。同じ人生を歩む人は絶対にいない。改めて“人間って面白いな”と思いました。
傷ついた経験を持つ人も多かったけれど、そこで終わらずに必ずグラフは上がっていく。傷が完全に癒えなくても、その経験を活かして“人に寄り添う道”を選ぶ人の多さに励まされました。
中には、『この人についていきたい!』と思わせてくれるような人もいて、それだけお互いのことを掘り下げられる関係性が生まれたのも、人生グラフがあったからこそ。直接会っていなくても、オンラインでも、安心できる空間があれば、こんなに深い対話ができるんだと実感しました。皆さんから、本当に“厳選されたダイヤモンド”を見せてもらえた気がします。」
――今回の参加者の中には、SOZOWスクールの生徒もいましたね。SOZOWスクールに通う小中学生、高校生は、まさに中川さんの仰る「人生の宝探し」をしている期間だと思います。
「SOZOWスクールという場所が自分に合ってるって、自分で見つけられて、そこで好きなことや得意なことを見つけて、それを人とシェアする力も育まれている。本当に素晴らしいと思います。
SOZOWスクールさんの『無理しないでいいよ、自分のペースでいいよ』という接し方のおかげで、『途中だけど発表してもいいですか?』と、自分の気持ちが動いた瞬間にアクションを起こせる参加者さんがいたこと。完璧じゃなくてもいい、無理しなくていい、そんな安心感のある場所だからこそ、自分でエンジンをかけるタイミングを待つことができるんですよね。
今回、SOZOWスクールのオフィスにもお邪魔しましたが、まさに“最先端のフリースクール”だと感じました。ここは、無限の未来を掘り起こせる場所ですね!」
授業終了後に、中川さんとSOZOWスタッフで記念写真!
SOZOWスクールが届ける学び
今回のオンライン授業には、10代から60代まで、さまざまなバックグラウンドを持つ人々が集まりました。SOZOWスクールにとっても、世代を超えて共に学ぶ場を提供する新たな挑戦となりました。
授業後のアンケートでは、「自分の人生を振り返り、仲間と共有することで得られたものがあった」という声が多く寄せられ、オンラインであっても安心できる環境の中で深いつながりが生まれることが証明されました。
これからも、SOZOWスクールは、多くの人が“自分らしい未来”を描くきっかけを提供し続けていきます。