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プロフィール
小幡 洋一(おばた よういち)pickupon株式会社 代表取締役メーカーの商品企画、広告デザイン等に携わった後、2013年情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に入学。修了後はWEBシステム制作会社のディレクターとして官公庁のCGMシステムやPRのアナリティクスサービス(SaaS)開発に従事。IAMAS時代からの友人であるカンパニャと本業の傍ら進めていたプロジェクトがopen network labの第16期プログラムに採択され、2018年2月pickupon株式会社を設立。
新たにテクノロジーや概念、世界の見え方への興味
手の位置から視覚情報取得する際に使う疑似三半規管のプロトタイプ
——起業までの経歴を教えてください。
もともとメーカーや制作会社でデザインや企画を手掛けていました。その傍ら、非商業的な作品の制作、モノづくりも行っていました。モノづくりが好き……というよりは、新たにテクノロジーや概念、世界の見え方を考える、リサーチとしてモノをつくる。知りたい答えにたどり着くための手段として手を動かす、という感覚。どんな分野について考えるにせよ、作るということを通して知見を深めてきました。
見たことのないコンセプトが機能するかどうか確かめるためには作るしかない。ある時その中のひとつ(※プラキシノスコープの構造を利用した視覚メディア)をグラフィティ文化の研究家で美術家の大山エンリコイサムさんに見てもらいディスカッションする機会がありました。
その時に見せたものは人の視野角を越える風景を人の視野角で見るという視覚メディアでしたが、「IAMASって知ってる?そこ、向いていると思う」と大山さんに言われ、調べ、自分の興味のある分野を研究できる可能性あるなと感じ、会社を辞めてIAMAS(情報科学芸術大学院大学)に進学しました。
IAMASの研究制作スペース、ロフトの風景。泊まり込みで研究制作をしていた。
IAMASは変わった所で、もともとは1996年に設立された公立の専修学校で、当時は各大学院を出て、大垣にメディア・アートを実践するために入学するといった人が多かったと聞いています。今、IAMASで教員をしているクワクボリョウタさん(僕の主査でした)も筑波の修士を修了し、IAMASに来たと言っていました。
大垣の片田舎にあるのですが、アルス・エレクトロニカという国際的な祭典にバシバシ入選する作品を生み出す知る人ぞ知る研究・教育機関でした。僕が入学したのは、2001年に設立された大学院の方(名称はダブルミーニングでどちらもIAMAS)でしたが、専修学校(通称アカデミー)から引き継いだ独特の色は強く残っていたと思います。
創業メンバーでCTOのカンパニャともIAMASで知り合いました。そこではHCI、メディア論、メディアアート、メディア考古学など、領域横断的なアプローチで、人間の身体では不可能な360度の視野角を実現するような視覚メディアをopenFrameworksというC++のフレームワークをつかって開発し、人が非人間的な視覚体験した時、何を感じるのか研究していました。
カンパニャはその時、まさにフィジカルコンピューティング、jsの変数と構文をフィジカルにブロック化しブロックでjsを書ける装置の開発・研究をデザインの文脈からしていましたね。その後WEBシステム制作会社に入社。引き続き、同僚になったカンパニャとプライベートで進めていたプロジェクトがopen network labに採択され、起業へと至りました。
Open Network Labへ採択、そして起業
Open Network Spaceの風景
——起業することは以前から考えていましたか?
新しいサービスを作りたいという考えは以前からありました。IAMASに入る前から構想はありました。ですが、起業したいとか会社を立ち上げたいと思ったことはなかったんです。そもそも起業の仕方やメリットについて何も知りませんでした。何かサービスを作るだけなら、勤めている会社でプロジェクトを立ち上げることでも叶えられますし。しかし、ある日とあるスタートアップのユーザーインタビューを受けた際、そのインタビュアーからYコンビネーターなどアクセラレーターの存在を聞き知りました。
それまで、事業それ自体についてはあまり興味はありませんでしたが、エンジニアリングしかできない大学生に少しの出資と知恵を与え事業化させるYコンのやり方に感銘を受けました。ある程度成熟した公平なマーケットをもった資本主義社会では、いかにリスクを最小化し取り続けられるかが重要です。そこで戦う方法として彼らのやり方は美しいと思いました。
調べるとDropboxやAirbnbなどユニコーンも排出しており、すごいなと…。冷静に考えると株式会社なんてコロンブスの時代、大航海時代からあった方法ではあるのですが、その時は感銘を受けました。と同時に、何か新しいサービスをつくるとしたら、エクイティを切ってリスクマネーを募りリスクを取って進める方法を取る方が断然早く、大きなビジネスを作り出せると直感的に感じました。
そして、僕のやりたいことを実現する一番の近道がopen network labのようなアクセラレータープログラムに採択され、起業する方法だと考え応募に至りました。もちろん、飛躍的な成長が求められるためリスクもあるとは思うのですが、僕は生きていくために、生活のために事業を起こしたいわけではないので、チャレンジする価値しかないと思いました。結果、採択されプログラムに参加することになりました。
open network labの最終面談はちょうどクリスマスの頃で、その面談の中で当時2歳の子供の未来のためにも、僕はやる必要があるといった事を伝え、その場でオファーをもらえた事を鮮明に覚えています。今考えると、アクセラレータープログラムに乗る以外の方法もあったと思いますが、今考えても、起業家コミュニティーに属していなかった僕が取れる方法としてはベストチョイスだったと思います。
open network lab 16th DemoDay
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人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー
——小幡さんが実現したかった「新しいサービス」とは?
僕が実現したい、作りたいのは「人類を進化させるテクノロジー」です。その中でも、僕が特に注目し、追い続け、興味を持っているのが「人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー」です。実はサービスである必要はないんですが、今、有効なそういったテクノロジーの多くはwebサービスです。
もし、「人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー」として「代議制民主主義による政治」という形式が有効だった時代であれば、僕は政治家を目指していたかもしれません。しかし、今の時代に最も有効な「人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー」の形式はサブスクリプション型のwebサービスだと僕は考えています。
「人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー」に僕がなぜ執拗に興味を持ち続けているのか?なぜ重要なのか?ですが、考えてみて下さい。例えば写真やレコードという複製技術、テクノロジーが生まれたことで、行ったことがない遠くの国の風景や会ったこともない人の姿を目にすることができるようになり、亡くなった人の声や演奏がいつでも聴けるようになった。
今となっては、レコードに音楽を録音し聞く事は当たり前の事ですが、ものすごいことなんです。それまでは、死者の声を聞くことなんてできなかった。それができるようになった。
蝋管式蓄音機 Norman Bruderhofer、www.cylinder.de
もっと遡ると、人類の進化って、新たなテクノロジーの発見、発明と共にあったと見ることはできませんか?言葉を扱えるようになり、チームで狩りができるようになり、神話を語り口承によって世代を個体を超えて子孫に情報を残すことができるようになり、文化ができた、概念や知識を蓄積する事ができるようになった。そして、文字が発明され、それは加速され、グーテンベルクによって活版印刷機が発明され、それまで手書きでしか複製できなかった書物を量産できるようになり、さらに情報の共有は縦にも横にも爆発的に広がり、社会はより複雑になっていき、科学が生まれる。
ちなみに、ココで僕が言っている「テクノロジー」の幅はかなり広く、文字から一神教の高神、蒸気機関車やガソリン車、神話、能のような伝統芸能や祭も含みます。そして、インターネットが誕生し、科学を支えた論文と参照の子供、googleの検索アルゴリズムの誕生によってそれまでは本を読んだり人に聞いたり時間をかけて調べたりしなければ得られなかった膨大な情報、一生かかっても読みきれないようなテキストの宇宙、その中から、簡単に誰もが一瞬で、必要な箇所を引き、共有できるようになった。かつて村の長老が偉かったのは時間をかけて知識を得た人が貴重だったからですが、それがひっくり返った。今は知識だけもっていても有効な武器にはならない。
テクノロジーによって相対的に行動範囲は広がり、何億行もあるテキストの中からピンポイントで必要な情報を引け、それによって、文化や科学、技術が100年前とは比べ物にならないスピードで進化し続ける。「人がそれまで扱うことのできなかった量・質の情報を扱うことができるテクノロジー」とともに、人は進化してきたとさえ思えませんか?僕自身が思う「新しいサービス」とは、まさにこういうもの。
今までになかったサービスを手に入れることによって人類は必ず進化し、世界は変わる。そんな「新しいサービス」がpickuponであり、pickuponという会社・事業、それ自体です。
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タチコマのように情報・体験・記憶を完全に共有できる世界
——pickuponは「新しいサービス」としての価値を実現するのでしょうか?
音声認識の技術をつかい、通話内容を音声とテキストをブリッジさせ、活用可能なデータにする——これまで扱いにくかったものを自在に扱えるようにすることで、まるで「体験・記憶の共有」のようなことを可能にしたのがpickuponです。現在はAIクラウドIP電話として営業領域の体験を共有することを目的に開発・利用されていますが、将来的にはそこで経営基盤を作り、やがてあらゆるシーンの「体験・記憶」を“なめらかに共有・追体験する”ツール、サービスへと進化させていきたいと考えています。
それが、最終的には人を進化させ、世界を変えることにつながっていくと思います。体験を共有することによってどういった事が起こるのか、イメージしにくいと思うので、ガイドラインを引きます。攻殻機動隊というSF作品にタチコマというロボットが出てきます。タチコマは複数いて、それぞれのタチコマが見聞きした情報・体験・記憶を完全に共有しています。その状態って、チームとして最高だと思いませんか?PDCAが超高速で回せます。
もし、営業チームがタチコマのように完全な情報共有をできていたら、良い説明の仕方、製品・事業へのフィードバック等々めちゃくちゃ重要な情報がバシバシ集まり、どんどん改善していける、事業が高速で進んでいきます。pickuponではそれをやりたい。実はpickuponではタチコマを作ろうとしているのかもしれません。各営業の顧客とのやり取り・体験・記憶の効率的な共有を支援する「タチコマ」のようなもの。それがpickupon。
また、ココから先はpickuponでできるかはわかりませんが、タチコマたちはディスカッションをよくします。そして新しい考え方や概念も発見というか思考したりしているのですが、そういったもの、概念さえも瞬間的に共有する事ができる。もし、そんな事を人と人でできたら、つまり概念の共有が一瞬でできるような世界が実現できるとしたら、僕たちが9年という時間を費やしている「義務教育」すら必要なくなります。というか2〜3日で終わる。
僕はそういった世界はすぐに来ると思っています。人類が火星に行くより早く来ると思う。そういった世界を実現するために、まずは、体験・記憶ぐらいは自在に共有・追体験できるようになる世界を実現したい。それが僕の使命だと考え、pickuponを作っています。
ビジョンを共有できるチームを目指して
——どんな人と一緒に働きたいですか?
pickuponは2019年にリリースしたばかり。会社としても今が創業期といっていいのではないでしょうか。全てを一から作り上げていくことができるというフェーズで、創業メンバー、コアメンバーとして活躍できる。それが、まさに今です。pickuponが人の行動を変え世界を大きく前進させる、というヴィジョンに共感できる方、信じてくれる方であれば学歴や前職、年齢などには一切こだわりません。
IT関連の知識や技術がないとダメ、という条件的なものも一切ありません。pickuponは必ず人間の行動と歴史を変える、僕はそう信じています。ぜひ一緒に、世界をドライブさせましょう!
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