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技術を発掘し、アイディアを形にする。試験研究で「新しい価値」を生み出す技術検証グループ

モビリティ関連の新サービスや新技術を用いた試験研究に関わる技術開発に従事する、技術検証グループ。トヨタコネクティッドが3~5年先に展開する「新規事業」に活用できる可能性のある技術の発掘、開発、検証を実施し、手の内化することをミッションに掲げています。トヨタコネクティッドでは試験研究エンジニアがどんなプロジェクトに携わり、どんなマインドで取り組んでいるか、先行企画部技術企画室技術検証グループの木村俊範(写真・右)、カプラン・オラル(写真・左)に話を聞きました。

「ゲームエンジンを利用した車に関わる研究開発がしたい」明確な想いを持ってトヨタコネクティッドに入社

——はじめに、二人のこれまでのキャリアや、トヨタコネクティッドに参画した経緯について教えてください。

木村: 私は2000年代初頭に広告エージェントを起業して、受託のWebサイトや広告コンテンツの開発をしていました。その後、UI設計や実装に関する技術を磨きたいと考え、東京のデザイン会社に参画します。そこからスタートアップの会社に参加して、CTOの立場でWebサービスの開発に携わり、2018年頃、機会学習などの研究開発をしていた頃にトヨタコネクティッドのメンバーと知り合って先行企画部に参画することになりました。

カプラン:私は大学でHCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)とAR(拡張現実)の研究をしていました。大学では主にゲームエンジンを利用してスポーツ向けのARアプリの開発に力を入れていました。卒業後はヤマハモーターロボティクスに就職し、半導体装置のUI開発に携わっていました。その後、車に関わる研究開発がしたいと思い、2021年8月にトヨタコネクティッドに入社しました。

木村:カプランの入社面談は私が担当しました。当初、カプランは次世代HMI開発プロジェクトの開発メンバーに応募していました。実際に話してみると、人間的にも経歴的にも優秀な方で、彼に合ったポジションを用意したいと感じました。当時、トヨタコネクティッドには技術検証グループはありませんでしたが、試験研究の必要性を感じていたこともあり、いまのポジションを用意しました。

カプラン: 研究開発の魅力は、ゼロの状態から知識を作りあげていくところにあります。あるアイディアを証明するために何らかの開発をして研究を進め、実験をしてみた結果、そのアイディアが実際に使えるものなのか、そうでないのかを証明する。

研究開発は通常の開発とは異なる能力が必要とされますが、私自身は研究開発のほうが得意です。入社面談で、できれば研究開発に携わりたいと伝えたところ、私に合うポジションを勧めてくれました。

研究開発や新規事業のPoCを横串で行う技術検証グループ

——現在、技術検証グループでは、どのような業務を担っているのでしょうか。

木村:新しい技術のリサーチ、まさにリサーチ&ディベロップメントですね。新しい技術があったとして、その技術を使えばこんなことができるのではないか、というアイディアをもとに開発を試みています。要素技術を開発するというよりは、応用技術の研究ですね。もう1つ、部内の別の組織で新規事業の検証を実施したいと言われたときに、PoC開発を行うなど横串で動くこともあります。

——技術検証グループでは、「技術の発掘、開発、検証を実施し、手の内化する」ことをミッションに掲げていますが、具体的にどのようなプロジェクトに取り組んでいますか?

木村:近年、車載器のUI開発にゲームエンジンが使われるようになってきています。そこで、2021年8月頃から、ゲーム開発のプラットフォームを使って車載器のプロトタイプを作るプロジェクトに取り組んでいます。

カプラン:ゲームエンジンを使うと、3Dグラフィックスやオーディオ、触覚フィードバックなどさまざまな要素のソフトウェアをまとめて、1つのソフトウェア環境だけでゲームを開発することができます。アメリカでは、ゲームエンジンを使って車載器開発に取り組んでいる会社が数社あります。

ゲームエンジンで車載器を開発するメリットは大きく2つあります。1つは、開発プロセスのムダが省ける点です。たとえば、デザイナーがプロトタイプを作る際、最終的に車載器に搭載することができないものまで作る必要が生じています。ゲームエンジンで車載器開発をすれば、そのムダを省くことができます。

また、3Dグラフィックスの作成においてもプロセスを短縮できます。映画などで3Dグラフィックスを作るときには、表示したいものをモデリングして、シーンを作成し、それをもとに映像データを計算して出力しています。ですが、ゲームエンジンは3Dグラフィックスをリアルタイムで動かすことができます。

もう1つのメリットは、ユーザーにリッチコンテンツを届けられる点です。ゲームエンジンを使うことでリッチなコンテンツを素早く作ることができるので、ほかにもさまざまな価値があるのではないかと考え、検証しているところです。

——このプロジェクトは、どういった人たちと連携して、どのようなプロセスで取り組んでいるのでしょう。

木村:先行企画部にはXD室(ユーザーエクスペリエンスデザイングループ)といって、デザイナーが多く所属する部署があります。 私たち技術検証グループは、主に技術的評価を実施しています。同時に、XD室と共同で、デザインへのフィードバックをいかに早く得られるかなど、開発プロセスの改善や体制に関わる評価をしています。

今回ゲームエンジンを使った研究開発をしてみて、こうしたプラットフォームを使うとなると、デザイナーも開発者も、既存のメンバーとは違ったスキルを持った人材が必要なのではないかという仮説が見えてきました。このように、新しい技術を用いた際のメリット・デメリットを明らかにして、実際に導入するかどうかの判断ができるよう情報をまとめるところも私たちの仕事です。

カプラン:ゲームエンジンを用いることについては、プラスもありますがマイナスもありますね。それらをまとめたうえで、使うか・使わないか、どちらを採るかの判断材料を用意します。その結果、ゲームエンジンを使う意味があると判断したら、従来のパイプラインの構造を大きく変える必要があります。

研究開発に不可欠なのは、すべての可能性をやり切るまであきらめない姿勢

——このプロジェクトを進めるうえで、どういった苦労や課題がありましたか?

木村:今回のプロジェクトでは、たくさんあるゲームエンジンの中から、もっとも車載器のHMI開発の実績があると公表されているゲームエンジンを採用しました。

事前の調査では、採用したエンジンでも我々がやろうとしていることが実現できそうだと考えていたのですが、実際に使ってみるとできないことがあったりと、マイナスに評価される部分もありました。ただ、研究開発をしてみたからこそ見つけられたこともたくさんあったので、このプロジェクトを遂行したことのメリットは大きかったと思っています

昨今のゲームエンジンだと、いわゆるビジュアルスクリプト、コードを書かずに開発ができる機能がありますが、今回のプロジェクトでも結構なところまでプログラムを書かずに画面やUIを構成できることがわかりました。そんな収穫もありましたね。

カプラン:ゲームエンジンについては、インターネットで調べようと思っても、当然ながらほとんどがゲーム開発向けの情報ばかりです。クルマの開発やUIデザインの領域でゲームエンジンをどう使うか、ネット上の情報の信頼性を判断するのが困難でした。

ゲームを作るうえでは、3Dや2Dのアニメーションのコントロールと、その辺の使いやすさが重要視されます。ですが、クルマになると、たとえば2DのUIのボタンが重要になるなど、条件が変わってきます。その点で、ゲームエンジンでのUI作りと、デザイナーがふだん使っているデザインソフトでのUI作りが大きく異なってしまって、うまくいかなかった部分もありました。

木村:今回のプロジェクトにはプロトタイピングまでのプロセスの確認も含まれていたので、実際にユーザーテストをするところまで試験研究で行ったのです。そこに至る過程でいろんなトラブルに見舞われまして……。もともとデプロイしようと思っていた端末に、実装内容の都合でデプロイできないということがテスト1週間前に発覚して、別の端末でテストをすることになったり、別の端末にデプロイしてみたら想定外の挙動をしたり、「魔法のツールはないな」と感じましたね。

カプラン:そうですね。インターネット上に載っているガイドやドキュメントの通りにはうまくいかない場合が多く、大変でしたね。

——そうした課題やトラブルに遭遇したとき、技術的・意識的にどんなことを大切にして臨んでいるのでしょう。

カプラン:技術的な点では、ソース管理ツールを使うことですね。たとえば、1日前の状態に戻す作業を2〜3クリックでできるようにして開発を進めなければ、失敗する可能性が高いです。今回はゲームエンジン専用のソース管理ツールを導入し、研究開発の中で使いながら、ツールの効果的な使い方を学習していきました。

木村:意識的な点では、とにかく可能性のあることはすべてやり切る姿勢で臨んでいます。私はインターネットが普及し始めた初期の頃にWeb業界に入りました。当時は「誰もやったことがないことに初めて挑戦する」ことだらけで、大学の研究論文などを読んでみて、そこから得たヒントを活用してみるなどの試行錯誤をしていました。

今回も、機能実装がうまくいかずに四苦八苦していましたが、カプランがゲームエンジンの開発元に問い合わせるなどしてできうる可能性をすべて試し、ギリギリまでトライアンドエラーを続けて問題を乗り越えましたね。

これから成長していく組織で、社会的インパクトの大きなプロジェクトに挑戦できる

——トヨタコネクティッドのR&Dだからこそできる経験やキャリア機会にはどのようなものがありますか?

カプラン:1つは、親会社である「トヨタ」という名前の影響力の強さですね。協力会社が探しやすい気がします。

木村:トヨタグループ内では街づくりなど大きなプロジェクトが多数あり、トヨタコネクティッドもそこに参画しているので、大きな事業に貢献できるチャンスがあります。社会課題を見つけてそれを解決する新規事業を興すことができれば、社会的インパクトが大きなプロジェクトに取り組むことができるかもしれません。

トヨタコネクティッドの技術検証グループは立ち上がったばかりの組織なので、これからどういった研究をしていくか、一緒に考えて組織を作っていける点も魅力ではないでしょうか。

——どんな方がトヨタコネクティッドとの親和性があると思われますか?

木村:先日カプランが、「試験開発のエンジニアはトライアスロンの選手だ」と言っていました。1つの技術に特化するのではなく、新しい技術についてキャッチして、それを開発に結びつけるという点で、何でもできなければいけないよねと。

カプラン:そうですね。ゲームエンジンの開発元のHMIチームの方と話してみても、最初にソフトウェア工学を学び、次にクルマの販売員を経験して、データ分析の経験を経てからUI開発をするようになったトライアスロン選手のような方がいて、いろんなスキルを身につけた学習能力の高い人が研究開発に向いているのではないかと思いました。

木村:もう1つ、スタートアップのような雰囲気の中で、プロフェッショナルとしての意識を持って働きたいという方も歓迎します。トヨタコネクティッドは硬そうな印象を持たれがちです。ですが、先行企画部は、カルチャーも含めカジュアルでフランクな雰囲気です。

スタートアップのように、自律自走しながら結果を出していく組織を目指していますので、そんな中で「研究材料自体も自分で考えたい」「こういった技術を使ってこんな新規事業を作りたい」といった意識を持った方と一緒に働きたいですね。

カプラン:私は出身がトルコで、日本に引っ越すまでにトルコで働いたこともありましたが、トヨタコネクティッドに入社して、いまが一番楽しく働いていると思っています。

仕事なのでうまくいかないこともありますが、失敗してもそれをマイナスと捉える雰囲気は、トヨタコネクティッドにはありません。失敗から学んで、次はこうしようと笑顔で言える。大きな目的にたどり着くために努力することを、心から楽しんでいますね。

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