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データサイエンスの「過去・現在・未来」(前編)

データサイエンスの「過去・現在・未来」~技術ソリューション部長・中島貴之が語る

データ分析を通じて、いかに的確で素早い対策を講じていくか、すなわちデータサイエンスの活用が企業の命運を大きく分かつ時代となってきました。ではいったい、データサイエンスはこれまでどのような進展をし、そしていかなる将来を描き出していくのでしょうか?『データサイエンスの「過去・現在・未来」』(前編・後編)と題して、技術ソリューション部長・中島貴之が、その内実を詳しく語ります。

【前編】データサイエンスの変遷・仕事の変化

―― この20年あまりの中、データサイエンスの世界は大きく変化してきました。この間の経緯について、中島氏は以下のように語ります。

●「ビッグデータ」により、データサイエンスの活用が一気に進む

データサイエンスは昔、「統計学」と呼ばれる数学の一学問の世界でした。回帰分析など、学術的に企業の持っているデータを分析するところからスタートしました。転換点となったのは、「ビッグデータ」の誕生です。ITシステム側が大きく発展したことで、大量のデータを企業が手に入れられるようになり、これが大きな変化をもたらしました。企業の行っているビジネス、特にお客様サイドの動向に関して、これまで数値化されていなかった世界が具体的な数値として記され、定量的に判断できるようになったことで、データサイエンスの世界が大きく進みました。時期的には2010年前後。「デジタルマーケティング」という言葉が使われるようになったのもこの頃です。

特に、お客様をたくさん抱えているB to Cの業界において、それまでお客様の状況が全然見えなかったものが、「ビッグデータ」を活用することで可視化され、利用動向の詳細が分かるようになりました。その結果、データサイエンスの活用が一気に進んだわけです。

その結果、今ではB to Cの業界においてデータサイエンスを活用していない企業はないように思います。さらに近年はB to Bの業界も含め、営業の世界や、あまり多くのお客様を抱えていない企業でも積極的にデータを活用し、客観的な視点の下、事業活動を進めていくようになっています。


●「機会学習」→「ディープラーニング」→「トランスフォーマー」へと進化

とはいえ、古典的な統計的な考え方は廃れるようなことはありません。今でもベーシックなものとして存在しています。その中で、技術的な面における転換点として挙げられるのが「機械学習」が出てきたことです。

「機械学習」は、結果とデータが行き来でない(イコールではない)近似値で計算を行います。ポイントは、近似値にしたことによって、難しい関数を解くことができるようになったこと。すると、予測という側面において、飛躍的な進歩が図られました。さらに最近では、近似値がほぼイコールとなったことで、ビジネスの世界では拡大解釈が進み、「機械学習」で得られた結果を意思決定の判断材料として使うケースが多くなっています。

また、「機械学習」の先の世界として、「ディープラーニング」と呼ばれる手法が出てきました。「機械学習」との相違点は、「機械学習」よりもさらに細かなパターンが認識できること。具体的には、1ピクセル単位の画像が認識できることにより、画像処理技術、特に人や物体の検知が一段と進歩しました。周知のように、昨今のトレンドのキーワードとして、大きく取り上げられるようになりました。その結果、4~5年前から画像処理自体は当たり前のように行われています。

次の転換点として上げられるのが、2017年にグーグルの研究者が発表した「トランスフォーマー」。なぜなら「ディープラーニング」をもってしても、人間の言語と同等レベルの文章や単語を生成することは困難でした。それを「トランスフォーマー」は可能としたのです。

「ディープラーニング」では、学習に時間が非常にかかる、また昔に学習した内容を反映できないということが起きておりました。しかし、「トランスフォーマー」は違います。昔のことを覚えた上で、正しくアウトプットできるようになりました。今話題となっている「ChatGPT」のベースとなっている技術であり、このような形で人間が使う言語を処理できるようになってきたのが、ここ2~3年前の状況です。

事実、この面での技術の進歩は目覚ましく、「ChatGPT」も現在3.5Versionとなり、実用化レベルに達してきました。ちなみに「ChatGPT」は論文発表から実用化まで約7年。当初、人間の言葉を「それらしく喋る」のはまだまだと言われましたが、それが現在、実用化のレベルにまで達したのは正直、驚きを覚えます。

●「ChatGPT」も、個人から企業への活用へ

「ディープラーニング」と「トランスフォーマー」が出てきたことによって、現在は音楽や画像を作成したり、言葉を喋るなど生成的なAIがトレンドとなっています。最近はアナウンサーもAIが使われています。今「ChatGPT」を使っている人はある程度いますが、まだまだ改良の余地はあります。精度が上がると共に、活用の仕方がいろいろと増えてくるように思います。

というのも現在、個人がWebの検索の代替として「ChatGPT」を使うことが多いですが、今後は、企業に特化したものが作られる作れると思います。例えば現在、データ抽出等に関してシステム部に依頼するケースが多いと思いますが、近い将来その部分について、「ChatGPT」が対応してくれるようになるかと思います。「ChatGPT」が言語を理解した上で、依頼者がこんなデータが欲しいと言えば、データベース言語を操り相応しいアウトプットを返答してくれるという形も夢ではないです。

「ChatGPT」がシステム部の代替をしてくれるだけでなく、最適な営業活動や人事施策の方向性なども示唆してくれるようになるなど、先々、企業活動における相応な部分が出来てしまうかもしれません。少なくとも、事務的な作業に当たる部分は十分に可能です。

さらに言えば、「ChatGPT」によってユーザーの目的の(欲しい)ものをドンピシャで引き出せるようになれば、それはある意味、コンサルティングができる状態。これが的確にできるようになったら、人間が太刀打ちできなくなります。

ただ現状では、そこまでは行っていません。例えば、携帯会社の対面の販売などを「ChatGPT」に代替させるのはまだ難しいかもしれません。流動的な状況下で、知識のない人をリードし、形作っていくのはなかなか厳しい。ただ、将来的にはその部分を代替できるようになる可能性は十分にあります。

むしろ、直近の可能性として大きいのは人の育成です。当社のような小規模な会社では、新人のフォローアップなどで手厚い対応が出来ない場合があります。このような時も、最近の新人はこれまで職場の先輩社員から教わっていた仕事の内容の一部を「ChatGPT」から学ぶなど、自然体で使いこなしています。ただその際、データや職務上の秘密事項に関しては「ChatGPT」に聞くことはできません。この点についての留意は必要です。

もちろん、先輩とのコミュニケーションが密でなくなったとしても、「ChatGPT」が全てではありません。「ChatGPT」がやれること、先輩社員がやるべきことをうまく使い分け、仕事がうまく進んでいけばいいのかな、と肯定的に私自身は見ています。なぜなら、最終的に人間が判断する部分は残るからです。

*「後編」の「今後、データサイエンティストに求められること」に続く

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