こんにちは!Contrea株式会社のMedicalチームでインターンをしているMinorinです。
コントレアメンバー一人ひとりの歩みを紐解くインタビュー連載。第2回は、大学生での起業、ヤフーでの金融システム開発を経て、現在はVPoP兼VPoEとしてプロダクトと技術組織の両輪を担うHiryuさんです。
一人のエンジニアの覚悟が詰まったインタビュー、ぜひ最後までお読みください!
これまでのご経歴と、現在のContreaでの役割を教えてください。
エンジニアとしてのキャリアは、大学時代に父と一緒に医療系のソフトウェア会社を立ち上げたところから始まりました。父が医療系の営業を長くしており、私の大学入学を機に「2人で事業をやらないか」と誘ってくれたのがきっかけです。当時情報学部の大学生だった私が、プログラミング未経験ながら一緒に、病理医向けの業務改善ソフトを作り始めました。最初は学会に出しても全く売れず、先生方から「精度が低い」「スピードが遅い」と厳しい言葉をいただき、ものすごく落ち込んだのを覚えています。それが悔しくて、半年間コツコツと改良を続けました。続けていくと徐々にファンが増えていき、そこから少しずつ売れるようになりました。
このまま卒業してからも事業に参加することも考えたのですが、自分の中で一度外の世界に出たいと思っていて。当時自分の仮説として、インターネットは、エンタメから本や衣服、食べ物といった「命から遠い領域」から順々にデジタル化していき、インターネットの信頼度が上がるにつれて、より重要性の高い、価値のある領域へと浸透していくのではないかと考えていました。2018年当時、生活のほぼ全ての領域がインターネットを中心のスタイルに置き換わる中で、残された重たい領域が金融と医療でした。医療とインターネットが融合するのはまだ先だと思っていたので、まずは金融領域で世界が変わる瞬間を見てみたいと思っていました。大学卒業後、金融領域でチャレンジできることと技術を身につけるために、日本最大級のネット企業であるヤフーに就職しました。
ヤフーでは、新規事業立ち上げと既存ユーザーの移行プロジェクトを扱いました。一瞬のミスが社会的な信用問題に直結する環境で、安定稼働させるための試行錯誤を経験したことでシステムの奥深さを感じました。ヤフーでの仕事も刺激的でしたが、次第に「自分の作ったものを、自分でお客さんに届けて喜んでもらう」という、あの原点の感覚をもう一度味わいたいと思うようになりました。
その後、MediOSで同意書をゼロから作るという大きな挑戦が始まるタイミングで、正社員として入社しました。最初の1年は開発に没頭し、その後は開発責任者としてチームのマネジメントやロードマップの策定を担ってきました。昨年11月からは、VPoP(プロダクト責任者)兼 VPoE(エンジニアリング責任者)という立場で、プロダクトと組織の両面から支えています。
インターネットの便利さが届かない、医療業界の特異性
大学生で医療分野で起業した際、医療はどういう風に見えていましたか?
正直に言うと、インターネットの最大の魅力である「いつでもどこでも情報が届き、それによって人の行動が変わる」という仕組みが、医療の世界ではまだ到達していないもどかしさを感じていました。当時の一般企業では、すでにGoogle WorkspaceやクラウドのSaaSを使って業務改善をするのが当たり前になり始めていた時期です。しかし、病院に一歩足を踏み入れると、基本的にはオンプレミス(インターネットに繋がらない自社運用環境)が主流で、インターネットがもたらすはずの便利さが、病院の中だけはあまり影響のないことのように見えていました。
なぜ医療業界は他業界と比べてクラウド化が進んでいなかったんでしょうか?
元々のアセットや、必要性とリスクの天秤が他業界と違うのではないかと考えています。例えば、私が経験した金融業界はお金を生む世界です。いつでもどこでも送金できるようになれば、それは複利的なビジネスチャンスの拡大に繋がります。だからこそ、リスクをとってでも、大きなお金を投じてでも、インターネットと融合させるニーズが生まれやすい。一方で、医療機関は病院の中で安全に完結することが前提です。情報を外に出したり、外からアクセスできるようにしたりすることのメリットよりも、情報漏洩などのリスクの方が遥かに大きいと判断されます。構造そのものが、インターネットとの融合の優先度が上がりづらい壁になっているのではないかと感じていました。
一度医療分野から離れ、金融分野で働いていた際、外から見て、医療業界の特異性や可能性をどう感じましたか?
改めて医療の世界を俯瞰して感じたのは、インターネットを使って効率化したり、新しいビジネスチャンスを生み出したりできる余地が、他の業界よりも多く残っているということでした。まだ「食い荒らされてない」という感覚です。
例えば金融業界では、決済手段が現金からクレジットカード、そしてQRコードへと変化してきました。審査が必要なクレジットカードを持てない人でも決済ができるようになり、その決済データが積み上がることで、今度はそのデータをもとにお金を貸すという新しいビジネスが生まれます。新しい技術が入ると新しいビジネスがどんどん生まれていきます。これを医療に置き換えると、オンプレミスである病院が多いからこそ、クラウドに置き換わりデータがいつでもどこでも見られる状態になった瞬間、他の業界ですでに起きてきたようなビジネスチャンスが一気にこの領域でも爆発するはずです。レガシーな環境であればあるほど、新しい技術が入り込んだときのインパクトは大きく、描き出せる未来も無限にあると感じています。
現場の喜びを肌で感じる醍醐味
自分で作って自分で売りに行く魅力はどういうところにあるでしょうか?
既に多くのユーザーを抱え、組織として成熟している会社で働いていると、エンジニアが顧客へ直接要望を聞きに行く機会はほとんどありません。エンジニアは「コストが高い存在」と見なされることが多いため、効率を優先して「機能を考える人」と「作る人」が分業されてしまうからです。自分にとってのものづくりの原体験は、身近に困っている人がいたときに「こうすれば解決できるよ」と手を動かし、目の前で喜んでもらえる瞬間にあります。自分が作ったものが誰を喜ばせているのか、誰の課題を解決しているのかが見えない状態での開発は、私には面白くないと感じてしまったんです。だからこそ、あえてまだ成熟しきっていないチームに入り、プロダクトが誰かに届く面白さを自分もメンバーも感じ続けられる環境を作りたいと思い、コントレアを選びました。
また、自分で作ったものを自分で売りに行く魅力は、自分自身のモチベーションになることはもちろん、ものづくりにおいて言い訳ができない状況に身を置けることだと思っています。誰かに代わりに売ってもらって「うまく売れなかった」と報告を受けたとき、エンジニアは「売り方が悪かったんじゃないか」と考えることが出来てしまうじゃないですか。でも、自分で作って自分で売りに行けば、売れなかった理由は100%自分にあります。その潔さが、ものづくりにおいては非常に重要だと思っています。
(プロダクトチームが現場にこだわる理由についてはこちらをお読みください)
現場の複雑さを「型」で解き明かす
現場とのやりとりを通じて、現在の日本の医療現場はどのように映っていますか?
プロダクトチームとして現場に足を運ぶ中で、最初に感じたのは医療現場の複雑性です。関わる人も、システムも、やらなければならない業務も、複雑に絡み合いすぎていて、全体像を紐解くのが大変に見えました。
例えば、患者さんが紹介状を持って初診で病院を訪れるフローで考えると、まず紹介元の医療機関が紹介先の病院を予約をします。紹介状をもとに電子カルテに情報を入力し、空き状況を確認して予約をいれます。患者さんが来院すると、窓口で書類を書き、診療科の受付を通り、診察を受けます。検査になれば別の場所へ移動します。最後は会計のためにデータが送られ、精算し次の予約をして帰ります。これだけでも、一人の患者さんが一回病院に来て帰るまでに関わる医療者の人数が多いことがわかります。しかも、これはあくまで一例に過ぎません。患者さん一人ひとりに異なるパターンが何通りも存在し、それが病院内で同時並行的に動いています。これほど複雑だと、どこにボトルネックがあるのか、どうすればプロセスを改善できるのかが、非常に見えづらくなっているように感じました。
その医療の複雑さをプロダクトでどう解決できると考えていますか?
まず前提として、先人たちが作り上げた、電子カルテがなぜ複雑なのかを考える必要があります。電子カルテのUIが使いにくいと言われる最大の理由は、病院ごと、担当者ごとに異なる膨大な業務フローのすべてに応えようとした結果、画面にあらゆる機能を詰め込まざるを得なくなったからです。全員の要望を叶えようとしたことで、結果として誰にとっても使いにくいものになってしまった。これが医療システムの難しさの本質です。
MediOSのプロダクトは、「半分は自由だが、半分は自由ではない」という設計思想をとっています。説明動画や同意書といった機能は柔軟に組み込めるようにしていますが、現場のあらゆるフローに全て合わせることはしません。システム側に一定の「型」を持たせています。すべての個別性に適応させようとすれば、UIは崩壊し、結局は誰の役にも立たなくなってしまうからです。
では、何を「型」にするのか。病院の業務フローは千差万別ですが、患者さんが来院し病院内で移動し、情報を入力し、診察を受け、会計をして帰るという大きな流れは、どの病院でも共通しています。MediOSは患者さんに操作してもらうシステムだからこそ、この普遍的な患者さんの流れをUIの軸に据えています。
患者さんのフローに沿ってMediOSを操作していれば、次にやるべきことが自然とわかる。そして、そのデータを医療者がいつでも確認できる。システムを無理に現場の複雑なフローに合わせるのではなく、普遍的な患者さんの流れに沿って整流化していく。それが、プロダクトの力で医療現場をシンプルに変えていくための、今の自分の中での最適解です。
エンジニア自身が問いを立てる組織へ
これからの時代において、技術責任者は、コードを書くこと以外に何を担うべきだと考えていますか?
世の中にはさまざまな形の技術責任者がいますが、私が目指しているのはお客さんの業務フローに真にマッチしたシステムを作り続けられる開発体制を築くことです。従来のように「考える人」と「作る人」を分断するのではなく、エンジニアが常にユーザーを見ながら、自らシステムをブラッシュアップし続けられる体制を作ることが、これからの技術責任者に求められる役割だと考えています。生成AIの進化によって、コードを書くコストは下がっています。これまでは「どう作るか」に多くの時間が割かれてきましたが、これからは「どんな仕様にするのか」「どこまでをプロダクトのスコープとするのか」といった、設計の思想や判断こそがサービス間の違いを生むポイントになると考えています。
MediOSを作る上で、Hiryuさんが大切にしていることはありますか?
大切にしているのは、MediOSを通じてお互いの一歩を引き出すことです。医療現場では、医療者が患者さんにやっててほしいことと、患者さんが医療者に求めていることが、時にうまく噛み合わないことがあります。その重なり合う部分をMediOSが橋渡しすることで、双方が少しだけ考え方を変えたり、新しいアクションを起こせたりする。そんなふうに、お互いが求めていることが実現できている状態になっているか、という点は常に意識しています。
プロダクトで実現する「持続可能な医療」
今後、MediOSをどう進化させたいと考えていますか?
MediOSのプロダクトビジョンは医療者と患者さんのコミュニケーションプラットフォームになることです。患者さんにとっては、自ら医療に参画し、納得して意思決定するための情報を得られる場所。医療者にとっては、自分たちの持つ情報を適切に届け、患者さんの主体性を引き出すことで、結果として医療全体の効率化や社会の持続性を高めていくための道具。今ある機能に加えて、両者のニーズをより深く、よりスムーズに繋げるプラットフォームへと進化させていきたいと考えています。
チームとしては、どのような組織を築いていきたいですか?
「これを作ったら、ユーザーに喜んでもらえるかな」という問いに、ずっとワクワクし続けられるチームでありたいですね。自分たちで考え、作り、デリバリーし、現場からのフィードバックを直接受け取る。このサイクルを、組織が大きくなっても維持し続けたいと思っています。それが、ソフトウェア企業としての競合優位性に直結しますし、私たちが掲げるビジョンへ最短距離で向かうための方法だと信じているからです。
飛龍さんが実現したい理想の医療の未来について教えて下さい
私が実現したいのは、プロダクトの力によって「持続可能な医療」を支えていく未来です。 現場に足を運ぶたびに、医療従事者の皆さんがどれほど過酷で大変な仕事をこなし、命を支えてくださっているかを痛感します。患者さんと医療者にとってそれぞれの立場で歩み寄って欲しいと思っている領域をMediOSがサポートし、双方にとって持続可能な医療の方にに少しでもMediOSが貢献できたらと考えています。
これからどのような熱量を持ったエンジニアやメンバーと一緒に、コントレアを大きくしていきたいですか?
自分がコードを書き、プロダクトを作ることで「誰かの行動を変えたい」「誰かに喜んでもらいたい」という想いに熱意を燃やせる人と一緒に働きたいです。そんなメンバーが集まるチームであり続けたいですし、今のコントレアの仲間たちも、きっとそういう新しい出会いを心待ちにしているはずです。
次回はプロダクトチームメンバーのAmuさんにインタビューさせていただきます。Hiryuさんから見てAmuさんはどんな人ですか?他己紹介をお願いします!
Amuさんは、もともと薬剤師の背景を持ち、MR(医薬情報担当者)を経験しています。「医療現場を良くするためのプロダクトを作りたい」という想いで、エンジニア未経験からコントレアに飛び込んできてくださいました。「作るプロダクトが現場の人にどんな影響を与えるのか」という目線を一貫して持ち続けている、信頼できるエンジニアです。現場に足を運び、プロダクトのサイクルに回していくという役割を、最も体現してくれている心強い存在ですね。私もいつも新しい視点やアイデアを教えてもらっています。記事公開が楽しみです。
編集後記
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Hiryuさんのお話を伺い、医療の複雑さをプロダクトの力で解き明かし、「整流化」していく姿に強く励まされました。医療現場の内部だけでは解決が難しい課題も、外部からテクノロジーの力で支えていく。そのアプローチに、新しい医療の未来への希望を感じています。私自身も、Hiryuさんたちが描くそんなワクワクする未来の中で、これからの医療者として仕事をしていきたいと改めて強く思いました。
Hiryuさん、貴重なお話をありがとうございました! 次回は、プロダクトチームのAmuさんへのインタビュー記事をお届けします。どうぞお楽しみに!