こんにちは!Contrea株式会社のMedicalチームでインターンをしているMinorinです。
今回から、コントレアメンバー一人ひとりにフォーカスしたインタビュー連載をスタートします。初回は、米国での挑戦、外資大手でのキャリア、そして起業を経てコントレアにたどり着いた経験を持つ、専門役員VPoCustomerのKawakatsuさんです。
「身体は内なる小宇宙」と語るKawakatsuさんが、なぜ今「ペイシェントエンゲージメント」という難題に挑んでいるのか。個人の歩みと、医療の社会課題、そしてコントレアの使命。その3つが重なり合う結節点を紐解きました。
Kawakatsuさんの深い洞察と熱い想いが詰まったインタビュー、ぜひ最後までお読みください!
まず、これまでのご経歴を教えて下さい。
高校で野球を頑張っていて、大学に行くときに「アメリカで野球を極めたい」と思って渡米しました。途中で紆余曲折あり、野球は辞めたのですが、学業に専念させてもらうことができて、ボストン大学を卒業しました。そのまま、カリフォルニアへ移動して、インターンから就職しました。当時、まだ「スタートアップ」という言葉がそんなに知られてなかった頃で、いわゆる医療機器開発を手掛けるベンチャー企業に携わらせてもらったのが最初の就職です。当時、そこの医療機器がちょうどFDA(米国食品医薬品局)の承認を得たところだったんです。他のエリアに展開する話になり、アジアや日本向けに輸出する事業が立ち上がりました。私が日本に戻りたかったのもあって、その事業を担う形で、同じ会社の日本法人に戻ってきたという流れです。新しい医療機器の日本での市場開拓に取り組んでいました。その後、製薬会社のアボットに移り、糖尿病や栄養剤などを担当し、さらにジョンソン・エンド・ジョンソンに転職して医療機器を扱いました。そして、2020年2月に起業しました。
実は、コントレアの創業が2020年1月23日なので、川端さんとは起業の同期なんです。当時から、私も川端さんも「ペイシェントエンゲージメント(Patient Engagement)」のようなソフトウェアの分野をやっていこうとしていて、似た分野をやっているということで切磋琢磨していました。2022年頃、川端さんから「もう少し頑張って売っていきたい」という話があって。私の方は起業したものの、外から出資を受けずに自分のペースでやっていくスモールビジネス型を重んじていたので、業務委託という形でコントレアのサポートをし始めたのが関わりの始まりです。その後、正式に「一緒にやろうか」と言って、合流したというのが今になります。
医療という「小宇宙」の探求から、現場の「構造的な負」への目覚め
新卒から医療業界に身を置かれていると思いますが、医療に関わる仕事をしようと思ったきっかけや原動力はありますか?
もともと野球をやっていて、当時から「身体」のことにはすごく興味があったんですよ。なんで怪我をするんだろうとか、どうして身体はこう動くんだろうとか。運動生理学的なサイエンスへの興味が、まず最初の最初ですね。スポーツを極めようとすると、「なぜあの人にはできて、自分にはできないのか」といった壁にたくさんぶつかります。そういう悩みの中で、自然と体の仕組みへと意識が向いていったんだと思います。アメリカはスポーツが生活文化に馴染んでいて、体の動きや医療に近いものが身近な存在になっていきました。
最初の就職先に医療ベンチャーを選んだのも、そうした根源的な好奇心に一番フィットしたからです。自分にとって、医療はすごく「壮大」なものなんですよね。宇宙が外側に広がる神秘だとしたら、人間の体は内側に広がる神秘。複雑なシステムが関わり合って一人の人間が生きているというのが、まるで「小宇宙」のように思えて、ずっと追求しがいがある。だから、医療という分野自体には、ずっと飽きることがないんです。
ただ、一つの分野を3年、5年と突き詰めていくと、だんだんその治療分野や臓器が見えてきて「少し他の分野もやってみたい」と、時々飽きがくることもある(笑)。だから、同じ医療の中で違う領域を求めて転職を重ねてきた、という背景があります。
人間の体が壮大、というお話が印象的です。一方で、医療の社会的側面への興味も、当初から持たれていたのでしょうか?
実は、最初は社会的なことには全然興味がなかったんです。この10年、20年で劇的に進化した科学技術を、最前線で見ていたんですよね。新しく発売された薬や医療機器が、患者さんの体を劇的に変えていく。手術に立ち会い、命が救われる瞬間に居合わせる、それは何物にも代えがたい畏敬の念を抱く体験でしたし、自分の好奇心も満たされました。一方で、ふと医療現場の実態に目を向けると、この10年、驚くほど何も変わっていなかったんです。いまだにFAXやPHSが当たり前で、若い研修医の先生が階段で上り下りして走り回っていたり、MRの方々が外でずっと待っていたり。「なんでこれだけ技術が進んでいるのに、現場は変わらないんだろう?」という疑問が湧き、調べていくうちに、制度上のしがらみや、とてつもなく大きな「構造上の負」があることに気づきました。「これをなんとかできるのかな」と思い始めたのが、起業する1年ほど前ですね。いろんな人に話を聞いて、自分にできることを模索し始めました。
知れば知るほど、医療現場の課題は白黒はっきりつけられるものではないと痛感します。本当はシンプルに整理したほうが楽ですが、実際には医師や看護師の教育、日本の財政、命の重さと倫理観、そして資本主義……。それらが複雑に絡み合った中に、人間の体を救う「医療」が存在している。考えれば考えるほど、この社会的な構造そのものもまた、ある種の「小宇宙」のような複雑な世界なんだなと。そこに対してもまた強い関心が出てきたことで、コントレアに辿り着いたのだと思います。
その医療に対する想いは外資、起業、スタートアップとキャリアを辿る中で、どのように変化し、深まっていったのでしょうか?
そうですね、医療という物事そのものから少し離れた視点にはなりますが、仕事に向き合うスタンスの変化は非常に大きいと感じています。これまで大企業にいた頃は、良くも悪くも「組織の論理」の中にいました。巨大な事業体のごく一部として、その枠組みの中での最適解を重んじ、調整を行いながら仕事をするのが、当然のスタイルとして染み付いていました。
しかし、いざ起業し、そして今のコントレアのようなスタートアップという環境に身を置いてみると、見える景色は全く違います。自分の今の行動一つひとつが、「社会的意義があるか」という問いに直結します。組織が大きければ、自分の発言はあくまで「組織の一部」としての言葉で済みますが、今の規模では、自分の発した一言が「会社のすべて」を象徴することになります。自由度が高まった分、その裏側にある責任の重みは、以前とは明らかに違うものだと実感しています。
Kawakatsuさん自身が「エンゲージメント」を強く意識されるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
何か一つの劇的な出来事があったわけではなく、起業前にいろいろと勉強したり、人との出会いを重ねる中で、徐々に自分の中にその思想が取り込まれていきました。私の中で「一人ひとりが0.1%でも、0.01%でも当事者意識を持てる環境を作ることができれば、世界は少しずつ影響し合って変わっていく」というふうに紐解いたんですよね。何かを「悪」として直すのではなく、人間一人ひとりが自分の体のことや医療、社会のことを考えて「エンゲージしよう」とすればするほど、医療を取り巻く環境は良くなるんじゃないかと思ったのがきっかけです。
(KawabataさんとKawakatsuさんのペイシェントエンゲージメントについての対談はぜひこちらをお読みください!)
その「個人が責任を持つ」という考え方は、アメリカでのご経験も影響しているのでしょうか。
あると思いますね。私自身の主義として、「個人がいかに責任を持っていくか」という意識が強いです。そこはもしかしたら、非常にアメリカっぽい思想なのかもしれません。
新しい「問い」を立て続けられる場所
ご自身のキャリアの中で、スタートアップという場所をどのように解釈していますか?
コントレアという場所に限らずスタートアップという組織は宗教にも近い性質があると思います。例えば、歴史上、人間が『サピエンス全史』にあるように「思想」を持ち始めたのだとしたら、その思想やナラティブを、人類はどんどん進化させてきたわけですよね。キリスト教が生まれても、その中でまたいろんなタイプのキリスト教が出てきた。仏教も同じで、いろんなタイプに分かれてきた。宗教の歴史を振り返ると、キリスト教や仏教といった大きな思想も、その時代の環境を取り込みながら進化し、枝分かれしてきました。これと同じことが、今の医療ビジネスにも言えると思うんです。今目の前では当たり前とされている「負」に対して新たなイデオロギーで価値を生み出そうとする、という行為は当たり前とされている社会や世界の見方を変えて、課題や問いを立てて覆していく、ということが宗教の起こりとも非常に近いものがあると思っています。
コントレアが数年前に「これが問題なんじゃないか」と世の中に問題を啓蒙して、その課題に対してMediOSというサービスを提供してきました。しかし、今また状況は刻々と変わっています。その変化の中で、再び新しい「思想」や「課題」を設定し、次の問いを立てて市場に投げかけていく。そして解決策を提示する。そのサイクルを、常に最先端で回し続けられる環境がコントレアなのだと感じています。
ただ単に一つのプロダクトを右から左へ拡大させるような、ドライなビジネスをしたいわけではありません。そういう最先端の思想とか自分たちの考え方とか市場に対する課題とかを解決しに行けるのが、ここにいる意義じゃないかなって思いますね。
「スタートアップだから」という側面も大きいのでしょうか? それとも「コントレアだからこそ」できることがあるのでしょうか。
それは「コントレアだから」という側面が、間違いなくあるんじゃないですかね。やっぱり、これまで積み上げてきた実績がそれなりにあるからです。それがないと、結局「この人たちが言っていることって、単なるポッと出の思いつきなんじゃないの?」と思われてしまう。でもコントレアには、これまで現場と向き合って積み上げてきたものや、すでにいただいているご評価がある。その土台があるからこそ、次に新しい思想を掲げたときにも、信頼を持って受け止めてもらえる。「この人たちの言うことなら」と思ってもらえる。そういう挑戦ができるのは、これまでの蓄積があるコントレアならではの強みだと思っています。
「就職したくない産業」にしないために
Kawakatsuさんが医療業界に入られてから今日まで、医療をとりまく環境で特に劇的に変わったと感じる点は何ですか?
今、日本は急激に働き手が減っていますよね。その中で、医療という産業は今、他の「人手不足の産業」との激しい人材の取り合いに巻き込まれているんです。10年ほど前なら、医療にはある種の「聖域」があって、そこまで外の市場を意識しなくても良かった。でも今は、職種を跨いだ転職も当たり前ですし、人手不足の深刻さのレベルが違います。さらに深刻なのは、医療の世界や「村」のあり方が、現代社会の一般的な感覚からすると10年、20年も遅れた考え方やシステムで成り立ってしまっていることです。これは良い悪いの話ではなく、環境要因によるものですが、ここをみんなで引き上げていかないと、医療自体が「就職したくない産業」になってしまう。社会の人口動態やインフラの変化に、医療現場が追いつけていないと思いますね。
ある意味、今の日本の医療は「かわいそう」な側面があるんです。日本は自由競争の資本主義社会ですが、病院の中は当然保険点数が決まっている「規制産業」です。「これはやっていい」「これはダメ」「こうすればこれだけの評価」と、すべてルールが決められている。自由競争社会とは違うルールで動かざるを得ないため、どうしても動き方が窮屈になりがちです。その制度が、医療業界にいる人の思考をある種規定してしまい、結果として成長を阻害したり、社会の変化に追いつけなくなったりしている部分がある。この構造をどうやって突破するかを医療全体で考えていかないと、人材も、考え方も、イノベーションも枯渇してしまう可能性があるという危機感を持っています。
ここ3年でコントレアとMediOSを取り巻く環境はどのように変化したと感じていますか?
最初は、私たちの考え方はほとんど見向きもされませんでした。「なんでICに動画を使うの?」という反応だったので、とにかく最初は啓蒙していましたね。「これから医療の働き手は少なくなりますよね」「人がやらなくてもいい仕事はやめて、医師にしかできないコア業務に集中できる環境を創りましょう」と、その意味や意義を説いて回る日々でした。でも今は、その啓蒙のフェーズが違うレベルに移ったので、かなり大きな変化かなと思います。
かつては「対面で説明するのが当たり前」で、現場にテクノロジーを挟むこと自体に抵抗感がありました。でも今は、通信環境などのインフラが整ったこともあり、テクノロジーの活用はもはや「当たり前」という前提になっています。その上で「どう課題を解決するか」という一歩先の議論ができるようになっています。
もちろん、私たちがいなかったとしても、歴史の流れとして同じ方向には進んでいたはずです。でも、そのうねりの中で、私たちが介在したことで変化のスピードが少し早まったり、内容がより洗練されたりしていてほしいと思っています。
点から面を支えるプロダクトへ
環境の変化を鑑みたときに、コントレアが解決すべき事業課題、あるいはMediOSのプロダクトとして磨き上げるべき点はどこだとお考えですか?
これからは、個別の病院の中だけでなく、地域医療のエコシステム全体の中で全体の改善ができるようなプロダクトへと磨き上げていかなければいけないと考えています。例えば、今提供している説明支援動画は、業務効率化によって「現場がどうハッピーになるか」が分かりやすいですよね。ソフトウェアの世界にはERP(企業資源計画)という考え方がありますが、巨大な企業があるシステムを導入した際、個別の業務が良くなるのはもちろん、それ以上に「全体の業務がどう改善されるか」が重要視されます。毎秒毎秒データが蓄積されていくことで、病院経営の視点、あるいは自治体の視点から見ても「ハッピーになる」と実感できる。そうした全体最適への貢献と実績を積んでいかないと、これからの時代は受け入れられなくなっていくと思いますし、我々が目指していくのは、まさにそこなんです。
コントレアが医療に対してアプローチできる独自の可能性や強みは、どのような点にあると考えていますか?
やはり、患者さんのエンゲージメントを向上させられる点にあると思っています。なかなか患者さんを起点に考えることは難しいですが、その構造的難しさを真正面から解決し、プロダクトとして成立させたというのが、かなりユニークな点だと思います。
コントレアの一番のゴールは、患者さんにとってのエンゲージメントを向上させることができることです。我々は普段、生活者だと思うんですけど、その生活者が、何か困ったときに「患者さん」になる。そのときに、いかに主体的に自分の疾患や体のこととかに向き合えるかという環境を、割とダイレクトに近い形でソリューションを提供できるという点が、我々のかなりのユニークさですね。
業務改善は他にもいろいろあると思うんですよ。最近だと生成AIによる退院サマリーとか、AIによるレコメンデーションが出るというものとかですね。でも、これってどっちかというと今までの通り医療機関側に閉じているお話で、患者さんにとってはどのサービスを使っているか知らないし、あまり関係ないと思うんです。でも我々は、これまで「聖域」だと思われていた、医師と患者さんとの対話・説明のところにまで入っていける。その点が、他のサービスと似ているようで全然違うところなのかなと思います。
今後、Kawakatsuさんがコントレアを通して「どのような医療の未来を創りたい」と考えているか教えて下さい
あえて少し青臭いことを言わせてもらうと、患者さんが自分で自分のことを決めることができる、そんな状態を作りたいですね。医療というのは、病気になる前から「医療」であるべきだと思っています。予防医療も含めて、自分が食べているもの、生活習慣、あるいは遺伝情報もそうかもしれません。そういう意味での「ゆりかごから墓場まで」の広義の医療において、自分自身が責任を持って、患者としてのエンゲージメントが高い状態でいられる社会が理想ですよね。
今後、どのような人にコントレアにジョインしてほしいと考えていますか?
まずは、患者さんに対して良い影響を与えることを通じて、医療に貢献したいということに何かしら「こだわり」や「きっかけ」を持っている方ですね。例えば、過去に医療現場で働いていた方なら、患者さんとの出会いや衝撃的な出来事など、何らかの原体験があると思うんです。そういう想いを持った方と、ぜひお会いしたいですね。
医療の最前線というのは、決して病院の中や臨床の現場だけではありません。私たちのような事業者の場もまた、一つの最前線です。私たちはただ単にソリューションを提供しているだけではありません。日々試行錯誤し、時に苦悩しながら、「この社会をどうやって良くしていこうか」という問いに向き合い続けています。これまで病院や研究現場などで培ってきた経験を、今度は「社会への還元」という形で活かしていきたい。そんな志を持つ方がいれば、コントレアには同じような背景を持つメンバーがたくさんいますので、お互いに高め合い、切磋琢磨していけるかなと思います。
次回はプロダクトチームマネージャーのHiryuさんにインタビューさせていただきます。Kawakatsuさんから見たHiryuさんはどんな人ですか?他己紹介をお願いします!
Hiryuさんは、とにかく現場に足を運び、一次情報を知ることの大切さを心底理解している、ものづくり屋さんですね。
例えば病院で働く方々や、あるいは私たち一人ひとりの消費者もそうですが、本当に欲しいものや、心から困っていることって、実は自分たちでもうまく言語化できないことがたくさんあると思うんです。飛龍さんは、開発のための対話をするときにも、そうした言葉の裏側にある「真実」や「本質」をしっかり掴み取ろうとする。現場で起きていることを、プロダクトとしてどう調理すべきかを瞬時に判断できるエンジニアなので、とにかく話が早いですし、私自身めちゃくちゃ尊敬しています。彼は今もものすごいスピードで成長し続けているので、私も彼に負けないように、日々のキャッチアップを含めて常に自分をアップデートしていかなければならないなと思っています。切磋琢磨できる存在ですね。
編集後記
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!
Kawakatsuさんの語る「医療という名の小宇宙」や、その構造を問い直す真摯な姿勢がとても印象的なインタビューでした。
私自身、現在は病院実習の真っ最中です。日々医療現場を目の当たりにする中で、解決の難しい課題に直面し、もどかしさを感じることも少なくありません。そんな中で、Kawakatsuさんが掲げる「新しい医療の未来」や、0.01%の変革を積み重ねていく姿には、大きな感銘を受けました。
インタビュー中、その深い洞察と熱い想いに、思わず私自身がぐいぐいと引き込まれていくような感覚がありました。Kawakatsuさん、貴重なお話を本当にありがとうございました!
さて、次回はプロダクトチームマネージャーのHiryuさんにインタビューさせていただきます。現場の真実を掴む「ものづくり屋」が、どのような想いでコントレアのプロダクトに向き合っているのか。どうぞお楽しみに!