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東北大学教授が主催。高校生から社会人まで、量子技術の応用事例を発表し、未来を語り尽くした!

量子技術の応用事例を、高校生、大学生、大学院生、社会人が発表し、参加者同士の交流も深めるリアルイベント「Quantum meeting for you(QM4U)」。東北大学教授であり、シグマアイ代表の大関真之が中心となり、3月28日に開催しました。オフラインとオンラインの当時配信で、13本の量子技術に関するプレゼンテーションを実施したこのイベントは、どのような目的で開催され、どのような成果を生み出したのでしょうか?シグマアイのキーパーソン4名に聞きました。

▼当日のプログラムはこちら
https://altema.is.tohoku.ac.jp/QM4U/

▼YouTubeのアーカイブはこちら
https://www.youtube.com/watch?v=aGdRs0RrStU

<プロフィール>

大関真之(おおぜき・まさゆき)
シグマアイ代表取締役CEO。東北大学大学院 情報科学研究科 情報基礎科学専攻・教授

羽田 成宏(はねだ・なりひろ)
シグマアイ 事業開発マネジャー
東北大学量子コンピューティング共同研究講座客員准教授
女子美術大学非常勤講師

丸山 尚貴(まるやま・なおき) 
シグマアイ 研究・開発担当
東北大学大学院 情報科学研究科 情報基礎科学専攻 博士後期課程 在籍

鹿内 怜央(しかない・れお)
シグマアイ 開発担当
東北大学大学院 情報科学研究科 応用情報科学専攻 博士前期課程 在籍

未来を担う、高校生の活動を世に見せたい。学生や社会人研究者との交流から、何かを生み出したい


▲高校生による発表の事例「量子・古典ハイブリッド方式のMNIST画像解析」「組合せ最適化問題における量子アニーリング方式と量子ゲート方式の比較」

ー「QM4U」の開催にいたった背景を教えてください。

大関:これまでも幾つかの量子技術関連のイベントを主催してきました。第1回では、500名の参加者を集め、250名でグループワークを行った「Quantum Annealing for You」、量子コンピュータのプログラミング演習を提供した「Quantum Computing for You」がそれに当たります。大学生だけではなく、高校生の方にも多く参加いただきました。

これらのイベントを通じて生まれた研究成果や応用事例を、対外的に発表する機会を設けようと思ったのが、「QM4U」を開催したきっかけです。既存の学会での成果発表も考えたのですが、なかなかマッチするイベントがなかったので、自分たちで立ち上げようと。量子技術はまだまだ黎明期にあるので、その技術をリードする東北大学としても、シグマアイとしても意味のあるイベントになると考えました。

未来の研究活動を担う高校生たちを世に出したい、という想いがあったので、まずは高校生の登壇者を募りました。そのプログラムが固まってきたところで、大学生や社会人によるパートを用意して、最後に東北大学量子コンピューティング共同研究講座が主催するコーナーを作りました。全体としては、前半は学生が発表するパートで、後半は社会人が登壇する流れです。

高校生や大学生だけの会にしなかったのは、彼ら彼女らに今後のキャリアを意識してもらいたかったから。量子技術を扱う先輩たちが、どのような研究をしていて、どのように喜びを感じていて、どのような苦労をしているのか。その生の姿を見て欲しかったんですよ。そのリアルをこのタイミングで知ることは、若い人たちのキャリアをより良い方向に導くことにつながるだろうと。一方で、大学や企業の研究者やエンジニアが、有能な学生と接点を取れば、新たな機会につながるかもしれない。この取り組みを継続することで、何らかの化学反応が生まれてくると思っています。

普通の学会のようにはしたくなかった。オープンで奨励する場に

ーイベントの中身として、大関さんがこだわったことはありますか?

大関:いわゆる「学会」にはしたくなかったんですよ。発表を申し込んで、短い時間プレゼンテーションを行って、その道のプロや、様々な分野の先生方から様々な指摘を受けつつ、それっきりで終わってしまう。オフィシャルにはここまで。休憩時間に会話をしたり、その後の議論を積極的にするチャンスがあれば、という感じで。研究内容を磨いていくには必要なプロセスかもしれませんが、発表する側としてはなんだか寂しいことも多いんですよ。発表者中心のイベントにもう少し工夫できないかな、と。その発表に至るまでのチャレンジをもっと奨励してもいいと思うのです。そういう空気感をこのイベントでは作りたかった。

そこで、発表自体はオフラインで行いながら、同時にYouTubeで配信する形にしました。質疑応答をオンラインで受け付けることで、様々な議論ができますし、オープンな雰囲気が生まれます。さらに、私とQC4Uの受講者であり卒業生でもある人にお願いして司会者を2人体制で行いました。発表内容について随時コメントをもらうのですが、卒業生といえど研究者ではない方でしたので、一般の人たちの目線で様々な興味や疑問、気持ちを代弁してもらいました。「この研究のこの部分が面白い!」「こんなことに着眼点を持つんだ!」「研究者の人ってこんなことを考えているんだ!」のように、素朴な反応を持ち込むことができた。そうして、このイベントをマニアックになりすぎないようにすることで、多くの方に発表者の頑張りをストレートに届けることができたと思っています。

「量子アニーリングを用いた交通の最適化」を社会人研究者と発表

▲鹿内さんによる「量子アニーリングを用いた交通の最適化」

ーでは、「量子アニーリングを用いた交通の最適化」の発表を行った鹿内さんに伺います。このイベントに参加した経緯や、発表後の感想を教えてください。

鹿内:私は、社会人のグエンさんと一緒に登壇しました。以前に行われたイベント「QA4U」で出会って、今回の登壇をお誘いしたのです。発表を申し込んだ時点では、前回のイベントから研究がほとんど進捗していませんでした。聴講する方は異なるので、前回のママで発表しようと思っていたのですが、イベント本番の日が近づくにつれて、大関さんの本気の想いに触れる機会が多くなった。「このままの状態で発表するのは、大関さんに失礼になる」との危機感が強くなって、ギリギリのスケジュールで新たな研究課題を見つけてアップデートを敢行したのです。本番当日は、出番の直前まで資料を作成していました。高校生の後輩たちにも恥ずかしいものを見せたくなかったので、必死に準備しました。その甲斐もあって、何とか聴講者の皆様に喜んでもらえました。

新規事業創出プラットフォームとモザイクアートの自動生成ツールをプレゼンテーション

▲Qatapult:シグマアイが開発中。量子技術を軸にした、新規事業開発のプラットフォーム

ーそして、羽田さんと丸山さんは、シグマアイの実績として、新規事業創出プラットフォーム「Qatapult」をプレゼンテーションしました。

羽田:この「QM4U」は東北大学が主催するイベントなのですが、シグマアイは東北大学と共同研究講座を持っていますし、個人的にも大関さんの想いに応えたかったので、シグマアイとしての実績をアピールしようと。事業開発のスタッフを代表して、私が登壇しました。

新規事業創出プラットフォーム「Qatapult」は、今後のシグマアイの事業開発のキーとなるものです。量子技術を活用した様々な取り組みが掲載されているデータベースで、研究者や企業の研究職や開発職の方に活用してもらうために拡充を進めています。このイベントでは、「QA4U」で最優秀賞を受賞した、丸山くんのチームが開発した「Phosaiq」と、仙台賞のColorfulチームの「Groupinq」の事例の詳細を紹介しました。

▲Phosaiq:量子アニーリングでモザイクアートを自動生成するプロダクト

▲Groupinq:量子コンピュータを活用して、最適なグループ分けを行う

丸山:私はシグマアイに入社して2年になります。これまでに幾つかのプロジェクトに関わってきましたが、開発したプロダクトやそこで得られた成果を、聴講者の前できちんとプレゼンテーションしたのは、今回がはじめてです。「Phosaiq」については、TV番組でも紹介されましたが、まだまだ改良の余地が大きなプロダクトです。正直に言いますと、専門家の皆さんを前にして大々的にプレゼンテーションをしたくはなかった。ただ、今回はそこに目をつぶって発表させていただいて、自分なりには大きな気付きがありました。

現地でのフィードバックでは次へのヒントをいただきましたし、YouTubeでのコメントからはこれからも頑張っていこうと勇気をもらうこともできました。また、高校生の皆さんに先輩がもがいている姿を見せることで、何らかの気付きを与えることができたとも感じています。今後は、自分ができていないことも含めて、世の中に発信していきたい。この1回のイベントで、研究者としてのスタンスがガラリと変わりました。

いちいち上司や代表に許可を取らずに、成功も失敗もどんどん発信していく

ーシグマアイのメンバーの発表を受けて、大関さんとして何か感じることはありますか?

大関:これまでのシグマアイの露出は、私がそのほとんどを担ってきました。「毎回、代表の自分が表に出るのがいいのか?」「社員に出てもらった方がいいのでは?」と悩んでいた時期もあったのですが、はじめてメンバーが大々的にプレゼンテーションを行ってくれました。丸山君が言ってくれたとおり、シグマアイ全体としても「世の中に積極的に情報を開示していく」スタンスが強くなればいいなと。

シグマアイはスタートアップなので、自分で考えて動くことがメンバーには求められます。いちいち上司や代表の私に許可を取らずに、成功も失敗もどんどん発信して欲しい。そのような状態になれば、シグマアイはより面白くなる。個人がガンガン外に向けて攻めにいっても、組織としての秩序を失うことはないでしょう。「組織と個人のあるべき関係性って何だろう?」という問いに対する答えが、このイベントを通じて自分なりに見えました。そしてイベント以降は、メンバーの発信の動きがよりアグレッシブになったと感じています。

シグマアイのメンバーは、研究者でもなく、技術者でもなく、事業家でもなく、「表現者」

ー最後に今後の展望について、一言ずつお聞かせください。

鹿内:大学生だけではなく、高校生も一緒に発表しあって、何かを学べる機会はもっと増やしていけるといいなと。どんなに小さなイベントであっても、積極的に参加したいと思います。

羽田:上手くいっていることだけでなく、課題感も併せて発信してきたいですね。その方が自分らしさも伝わると思いますし、外部からの意見を聞きながら、事業をブラッシュアップできるので。そこから新しいシグマアイも見えてくるはずです。

丸山:大関さんに発表後にインタビューの時間を設けていただいて、そこで個としてのスタンスが伝えられたのが良かったです。今後は、単に研究成果を発信するだけでなく、そこに至るまでの自分自身の考え方も発信していきたいです。

大関:シグマアイのメンバーは、研究者でもなく、技術者でもなく、事業家でもなく、「表現者」だと思っています。アイデアや技術、プロダクトを顧客に提供するだけでなく、感動させる人でありたい。感動させるためには、個人としても、会社としても、何かを表現しなくてはならない。量子技術や事業アイデアはあくまでツールであり、それらを使いこなして相手を感動させることにこそ価値がある。その先に、クライアント企業や世の中の変革があるわけです。感動しないと、人や社会は変わらないですよ。「あなたは何を伝えたいですか?」という問いに対する答えが、シグマアイの一つひとつの仕事に宿ることで、世の中は少しずつ変わっていく。そう信じています。

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