MODEは、現場のリアルタイムデータや既存システムのデータを一元的に統合し、業務効率化や安全性向上を実現する「BizStack」を開発・提供する、シリコンバレー発のスタートアップ企業です。日々新しい挑戦に満ちたフィールドで、私たちは「次世代の社会を支える力」になりたいと願っています。
今回は、展示会やイベントの企画・運営を担当する傍ら、BizStack Experience Center(以下、BEC) のセンター長を務める田中 奈津子さんにお話を伺いました。
目次
2回の『MODE CHANGE』が教えてくれた、イベント運営のリアル
— 普段のお仕事について教えてください。
— イベントの中で特に印象に残っているものはありますか。
「やったことないけど、やってみよう」—“社内の夢”を形にしたショールーム立ち上げの舞台裏
— BECセンター長を担当することになった経緯について教えてください。
— 立ち上げにあたって、何から着手されたんですか?
— 立ち上げフェーズで、大変だった思い出はありますか?
— オペレーション部分で工夫されていることはありますか?
— 「BizStackを体験できる施設」へとコンセプトを変える中で、どんな苦労がありましたか?
— BECの展示物について教えてください。
「できないかも」から始まった挑戦。信頼が育てた、BECセンター長としてのわたし
— カルチャー面での周囲の支えや、背中を押されたエピソードがあれば教えてください。
— チームや上司とのやり取りの中で、印象に残っていることはありますか?
— BECを、今後どのような場所にしていきたいですか?
— ご自身の中で、BECセンター長の経験はどんな意味を持つと感じていますか?
— 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
— ありがとうございました!
2回の『MODE CHANGE』が教えてくれた、イベント運営のリアル
— 普段のお仕事について教えてください。
田中:私は普段、展示会やオフラインイベントの企画・運営を担当しています。
広報・マーケティングディレクターの粟津 和也さんから「この展示会に出展しよう」「こんなイベントを開こう」といった大まかな方向性をもらい、そこから当日までの準備を具体化していくのが私の役割です。
展示会ではまず出展枠を確保し、その後「どんなお客様に来てほしいか」「どんな体験を届けたいか」をKazuyaさんや営業のメンバーと相談しながら展示内容を考えます。
決まった内容をもとに、展示物やノベルティ、パネル・チラシの制作を進め、デザイン会社と一緒にブース全体のレイアウトを整えていきます。
最終的に製品が並び、配布物が揃い、お客様をご案内できる導線まで整った状態で本番を迎える。そんな一連の流れを担っています。
— イベントの中で特に印象に残っているものはありますか。
田中:自社開催イベントの「MODE CHANGE」がすごく印象に残っています。2022年と2024年に2回開催したんですが、どちらも忘れられない経験です。
まず2022年の開催は、私が入社してまだ2ヶ月というタイミングでした。そもそも展示会やBtoBイベントに関わったことが全くありませんでした。また、当時はMODEのことも、BizStackのこともしっかり理解できていない上、パートナー企業のことになると知識はゼロレベルの状態で…。全体像のイメージもあやふやなまま、目の前のタスクをひたすら処理して、なんとか形にしたという感じでした。今思い返しても「あれ、よく開催できたな…!」って思いますね。
一方、2024年の開催では、Kazuyaさんというマーケティングのプロが加わってくれたこともあり「こういうイベントを目指したい」というビジョンが最初から明確でした。
加えて、前回の経験もあったので、イベント全体を通して“何を伝えたいのか”を自分の中でちゃんと理解した上で準備に取り組めたと思います。全体を俯瞰しながら、自分の役割をしっかり捉えて動けた実感があり、確実に自分の成長を感じたイベントでした。
「やったことないけど、やってみよう」—“社内の夢”を形にしたショールーム立ち上げの舞台裏
— BECセンター長を担当することになった経緯について教えてください。
田中:以前のオフィスには小さいながらもセンサー展示のスペースがありました。でも新しいオフィスに移転した際にそれがなくなり、ビジネスチームから「やっぱり常設の展示場所がほしいよね」という声がずっと上がっていたんです。
ショールームを持つのは、ある意味“社内の夢”のようなものでした。「いつかは実現したい」と思いつつ、なかなか形にできなかったんですよね。そんな中でオフィス1階にショールームを作ることになったんです。そして突然、Kazuyaさんから「ナツコさん、やってみませんか?」とご指名をいただきました。
私は正直、新しいことに飛び込むのがあまり得意ではなくて、そのときも最初は尻込みしていたんです。でもKazuyaさんが背中を押してくださって、最終的に「挑戦してみよう」という気持ちで引き受けました。
当時、BizStackはすでに50〜60社のセンサーとつながっていて、それらのデータをまとめて可視化できるのが大きな強みでした。だからまずは、実際にセンサーを並べて見てもらえるショールームをつくるところからスタートしました。
— 立ち上げにあたって、何から着手されたんですか?
田中:まずはお客様に何を体験してほしいのかを社内でしっかりと話し合いました。そして手をつけたのは空間デザインです。「BizStackの展示」と「ミーティング」の2つの機能を両立させる必要があり、BizDevのAkitoさんのご紹介で空間デザイナーの方と一緒に設計を進めました。
細長いフロアをゾーニングし、必要な設備や構成をゼロから考えていきました。元々セットアップオフィスだったので、カフェっぽい家具が最初から置いてあったんです。ただ、それらはショールームには合わなかったので、使わない家具はすべて倉庫に保管して、空間を一旦まっさらな状態にしてからプランニングし直すことにしました。
ショールームとしてお客様をお迎えできる状態にするまでに、大きくリニューアルを行ったのが2点あります。
1つ目は、いかにわかりやすくBizStackを見ていただくかという点です。BizStackを体験していただくために、まずは前提となる説明をしっかりとする必要があります。しかし実際に説明の流れをしてみると社内会議用のプロジェクターでは不鮮明で説明が伝わりにくいところがありました。そこで、プロジェクターは全面的に入れ替えることにして、天井にすっきり設置できる新しいのを導入しました。
2つ目は導線設計です。当初はメインの入り口から入ってという流れを想定していましたが、セキュリティの関係で適した流れにできませんでした。開放的なガラス張りの構造は魅力的でしたが、外からの視線や光の入りすぎで、打ち合わせや映像投影に支障がありました。そこで思い切って入口を閉じ、代わりにガラス面にMODEのロゴを掲示して存在感を出しました。
— 立ち上げフェーズで、大変だった思い出はありますか?
田中:ちょっとした裏話なんですが、「椅子問題」と「水問題」というのがありました(笑)。
打ち合わせスペースに使える椅子が、最初は4脚しかなかったんです。オープン当初は10人とか12人といった大人数のお客様がいらっしゃることも多くて、急いで8脚追加購入しました。でも予算の都合もあって比較的安価な椅子を選んだら、想像以上に早くガタがきてしまって…。毎日のように「またネジが外れました」と連絡が入るので、その度に締め直すんですが、すぐ緩んでしまう。長時間のミーティングでは椅子が座りにくいと集中力が落ちてしまって結果的にお客様の貴重な時間を無駄にしてしまう。そこで、しっかりした椅子に買い替え、今はそれを使っています。
もう一つは「水問題」です。お客様にお出しするペットボトルのお水ですね。
在庫の確認や補充が思うように回らず、私が出社したときに冷蔵庫をチェックして、自分で発注したり補充したりしていました。ただ、私の出社頻度よりもお客様がいらっしゃる頻度の方がずっと多くて、毎日水が足りているか心配で、本当に気を揉んでいました。SlackのBECチャンネルにメッセージが届く度に「水がない連絡か...」とドキドキしていました。
今は、総務メンバーが加わって、毎日出社する勤務スタイルだったので、安心してお願いできるようになりました。おかげで、以前は毎日水の在庫を気にしていたのが、ぐっと楽になったんです。今では社内全体でBECを運営できる体制が整い、本当に心強いですし、助け合う会社の文化を身をもって感じました。
— オペレーション部分で工夫されていることはありますか?
田中:BECの予約は、私が窓口となって一元管理しています。
本当は会議室のように「空き状況を見て、誰でも自由に予約できる」仕組みが一番シンプルだと思うんです。でもそれだとダブルブッキングが起きる可能性があるんですよね。実際に、譲り合いのやり取りが発生しているのを見て、これはお客様からの信頼にも関わる部分だなと強く感じました。
他社の事例でも「ショールームの運営で一番もめるのが予約管理だった」という教訓があって、最終的にその会社では派遣スタッフを窓口に置いて予約を一本化したそうなんです。やっぱりそうなんだな、と納得したので、今は私が一本の窓口になって、すべての予約を集約しています。
— 「BizStackを体験できる施設」へとコンセプトを変える中で、どんな苦労がありましたか?
田中:一番大きかったのは、電源の確保ですね。
当初のBECは「センサーのショールーム」という位置づけで、センサーを静態展示するだけの想定でした。展示台も「大きな板の上にセンサーとネームプレートを並べられればいい」というシンプルな作りで、電源を使うことは想定していなかったんです。
でもBizStackが本格的にAIアプリケーションへと進化していく中で、BECも「実際に体験してもらえる施設」へと進化させていく必要が出てきました。そうなると、センサーを動かして見せる場面が増えてくる。結果、電源が足りず、コードがあちこちに伸びて見た目もごちゃごちゃ…という課題に直面しました。
そこで、展示台に直接コンセント穴を設け、下に受け口を設置して、複数の電源をすっきり接続できるようにしました。おかげで、見た目も整理されて「体験できる施設」としての完成度がぐっと上がったと思います。
— BECの展示物について教えてください。
田中:現在は、BizStackを実際に操作できる環境の他に、32種類のセンサーを展示しています。営業やビジネス企画のメンバーから「今度こういうお客様が来るから、このセンサーを置いてデモをしたい」といったリクエストを受けて新しいセンサーが追加されることも多いです。その際には、BizStackでのサポート状況や返却期限などを確認しながら、私が管理しています。
また、業務DXロボットのugoも展示しています。MODEでは広報とマーケティングが密に仕事をしていて、プレスリリースで発信した内容をすぐにショールームで体験できるようにスピード感を持ってコンテンツを追加しています。ビジネス提携のタイミングで依頼して貸していただいたのですが、BEC初の動的展示で、まさに“エクスペリエンス”な存在です。お帰りの際にugoが自動で記念撮影をしてくれるのも、人気の体験のひとつですね。
正直に言うと、最初は「ugoを借りたものの、どう展示すればいいんだろう?」と戸惑いました。ロボットを扱った経験なんてなかったので。でも、ロボティクス企業出身のYusukeさんがugoの動線を楽しそうに設定をしてくださって。そうして皆さんに支えられながら、今の展示を形にすることができています。
「できないかも」から始まった挑戦。信頼が育てた、BECセンター長としてのわたし
— カルチャー面での周囲の支えや、背中を押されたエピソードがあれば教えてください。
田中:今では「イベントといえばNatsukoさん」というイメージを持ってもらえていると思うんですが、実は入社した当初は、展示会やイベントの経験なんてまったくなかったんです。だからこそ、社内の人が私の過去を知らないくらい自然に「イベントの人」として見てもらえているのは、自分にとって大きな変化だなと感じます。
背中を押してもらったエピソードは、本当にたくさんありますね。たとえば「やってみたらいいじゃん」とすぐに言ってもらえること。あの一言があるだけで、挑戦するハードルがぐっと下がるんです。
入社した当初は、広報スペシャリストのAkemiさんがバックオフィス全般を担当されていて、その中のSales Adminの仕事を引き継ぐつもりで入社しました。でも実際にやってみると、どうも自分には合わない部分があって。そんな時に「展示会やイベントの運営の方が向いてるんじゃない?」とキャリアチェンジさせてもらったんです。
当時はAkemiさんがカバーしていた領域が本当に広かったので、その一部を私が引き継ぐという流れでもありました。結果的に、より自分に合った役割を任せてもらえたことで、一気に仕事が楽しくなったんです。
— チームや上司とのやり取りの中で、印象に残っていることはありますか?
田中:「大丈夫、Natsukoさんならできるよ」ですね。Kazuyaさんが「何かあってもフォローするから」と声をかけてくださったことが強く印象に残っています。
私はもともと大きな判断に尻込みしがちなんですが、その一言で「思い切ってやってみよう」と挑戦できるようになりました。フォローしてもらえる安心感があるからこそ、自然と一歩踏み出せたんです。
実際、Kazuyaさんの入社により本格的にマーケチームが組織化してからは、縦割りだった業務に横串が通り、全体像を理解できるようになりました。チーム内のフォロー体制も厚く、多少のミスがあっても誰かが支えてくれる。だからこそ「細かく確認しなくても大丈夫」と思えて、スピード感を持って進められるようになったと感じています。
— BECを、今後どのような場所にしていきたいですか?
田中:来てくださった方が「BizStackってすごい!」と実感できる場所にしていきたいと思っています。
現在は建設業界のお客様が多いですが、BizStack自体はどんな業界でも使えるソリューションです。ただ、口頭で「こういうことができます」と説明されても、なかなかイメージが湧かず、導入までに時間がかかってしまうこともあると思うんですよね。
だからこそ、BECでは実際に見て、触れて、体験できることが大切だと思っています。たとえ小さな体験でも、動いているデモを見てもらうことで「これって自分の業務にも応用できるかも」と想像を広げてもらえる。そういう場にしていきたいんです。
そして、そこでの体験がきっかけになって「導入までの一歩」が少しでも早く踏み出せるように。BECをそのための場所に育てていきたいなと思っています。
— ご自身の中で、BECセンター長の経験はどんな意味を持つと感じていますか?
田中:「センター長」という役割を任せてもらえたこと自体が、すごく大きな経験だと思っています。
もちろん、実際には展示内容や企画などは周りのメンバーに相談しまくりで、私ひとりで作り上げたわけではありません。でもそのうえで「責任者」として名前を出してもらい、意思決定の場面で「自分が判断する立場」として動けたことは、自分にとって大きな意味がありました。
責任を背負うからこそ、課題や改善点をちゃんと自分ごととして捉えられるようになったし、誰かに頼るだけじゃなく、自分で考えて動く力もついたと思います。振り返ってみると、「BECセンター長」という肩書きは、自分の成長を加速させるきっかけになったなと感じています。
— 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
田中:読者の中には少ないとは思うんですが...働くママに向けてのメッセージでもいいですか?
私がMODEに転職したのは、下の子がまだ2歳のときでした。子どもが小さいのに転職なんてとても無理だと思っていたんですが、ありがたいことに受け入れてくれる会社があって。
「できない」と思っているうちは何も変わらないけれど、一歩動いてみたら新しい経験につながることもある。今こうしてBECセンター長という役割を任せてもらえているのは、本当にありがたいなと思います。
だから、新しいことに挑戦したいけど不安を感じている人には、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。
それに、子育てを足かせに感じずに働けるのもMODEの大きな魅力です。働き方がとても柔軟で、「この時間だけ子どもを病院に連れて行く」とか「保育園や学校の面談に行く」といった調整ができます。半休を取るほどではない予定に合わせられるのは、本当に助かっています。
子どもがいると仕事に制限があるのも事実です。私も地方でのイベントや終了時間が遅いイベントは参加が難しく、心苦しさは感じています。でも、できないことを「できなくてすみません...」と言い続けて肩身が狭い思いをすることはなく、任された仕事をきちんとやっていれば自由に働ける。そういう環境だからこそ、精神的にもすごく健やかに働けていると感じています。