【推し活×通信インフラ】「つながらない」を起点に、通信の当たり前を動かす。ON BOARDとOshicocoが描く、通信品質の新しい評価軸
「推し活の悩みが、通信インフラの未来を変えるかもしれない」
2026年、ON BOARDは、推し活専門メディア「Oshicoco」と共同で、「大規模イベント時における通信利用実態に関する調査」を実施しました。
共同調査プロジェクトにおいて、ON BOARDが担った役割は、単なるデータ収集に留まりません。推し活当事者が日常で感じている「繋がらない」という体験を調査データとして可視化し、キャリアや通信業界が動くための根拠をつくること。それこそが、今回のプロジェクトにおけるON BOARDの価値だったと言えます。
ジャンルを横断しながら、社会の仕組みへ働きかけていくことが、ON BOARDの使命であり仕事です。では、通信の専門知識だけでは辿り着けないユーザーの悩みに対して、ON BOARDはどのように踏み込み、そして紐解いていったのでしょう。
株式会社Oshicocoの広報室長の岡田京依さんとマーケティングプランナーの布施希乃美さん、そしてON BOARDの大山八尋さんにプロジェクトの全容を聞きました。
「ライブ会場で通信がつながらない」ON BOARDが推し活に注目した理由
── Oshicocoとのプロジェクトを始動した経緯を聞かせてください。
大山:もともと、「ミリ波」という次世代通信技術と推し活をテーマにしたプロジェクトを社内で進めていました。通信環境を最も切実に必要としているユーザーは誰かを考えたとき、推し活をしている人たちが浮かび上がってきたんです。
それと同じタイミングで、通信関連の仕事もされている推し活当事者の方が、Oshicocoさんを引き合わせてくださいました。Oshicocoさんにユーザーへのパネル調査を依頼するかたちでプロジェクトが始まりました。
── 実際に推し活をしていて、通信で不便を感じることはありますか?
布施:しょっちゅうあります。コンサートの入場時は人が集まりすぎて電子チケットが開かなかったり、電車の中で推し動画を見ようとしても、リロードが止まらなかったりします。先着順のチケット争奪戦に備えて通信が安定したネットカフェに行く人もいるくらいで、みんな”つながるため”に必死に工夫しているんです。
推し活している人たちの間では、会場ごとに「あそこは電波が悪いから30分早く着いておこう」「あの会場は新しいからネットもサクサク動く」という情報が共有されているくらいです。もはや推し活をするにあたって、十分な通信環境は必要不可欠だと思っています。
── 依頼を受けたOshicocoとしては、ON BOARDをどのような会社だと感じましたか。
岡田:正直、最初は通信会社が推し活の領域に入ってくることに驚きました。でも話を聞いていくうちに、ユーザーが困っていることに本気で向き合おうとしているんだと伝わってきました。
私たちが当たり前のように感じてきた不便さを、専門的な技術や知識を持った人たちが一緒に考えてくれる。それだけで、通信キャリアに対して私たちだけが声を上げても解決しない問題が、もしかしたら解決するかもしれないという希望も見えました。
推し活当事者の言葉を“技術”に翻訳する、ON BOARDの橋渡し力
── 専門性がまったく異なる者同士が組むうえで、コミュニケーションはどのように工夫されましたか。
岡田:たとえばレポートの中に、「推し活用語」の解説スライドを挿入させていただきました。私たちにとっては当たり前の言葉でも、推し活が身近ではない人にとっては意味不明なものが多いためです。また、メールだけでは伝えにくいことは、積極的に電話やオンライン会議で伝えるようにしていました。
── 逆にON BOARDから技術の話を聞いて、わかりやすいと感じた場面はありましたか。
布施:ミリ波の説明が、すごくわかりやすかったです。「5Gよりさらに上の技術がある」というところから始まり、「日本のiPhoneには搭載されていないけれど、アメリカ版iPhoneには入っている」という話をしてくれて。
難しい技術の話は分からなくても、自分の手元のスマホの話になった瞬間に納得できました。専門用語を使わずに伝えようとしてくれているのが、やり取りを通じてずっと伝わってきました。
── ON BOARDの仕事は、パートナーとしてどう映りましたか。
岡田:私たちだけでは絶対にできなかったことを実現させてくれました。ON BOARDさんは、レポートの報告会に通信キャリア関係者を呼んでくれて、私たちの言葉をさらに技術の文脈に落とし込んで説明してくれたのです。推し活当事者が抱えている悩みを社会に届ける場を作ってくれただけでなく、伝わりやすいよう翻訳もしてくれました。
これまでも別のシステム開発会社と仕事をしたことはあるんですが、私たちの悩みをちゃんと技術に落とし込んでくれる解像度の高さは、明らかに違いました。
数字になって初めて伝わった、推し活当事者の悩みとポテンシャル
── 実際に調査を行って、印象に残っている結果はありますか。
布施:イベント会場で通信トラブルを経験したことがあると答えた人が約7割もいたことです。「みんな困っている」という漠然と抱いていた感覚が、数字として裏付けられました。また、電波が速くなったら使いたいコンテンツについての質問に、みなさん思った以上に乗り気で答えてくれたんです。
会場限定の写真や動画が買えるとか、開演前の抽選に参加できるとか、2万円以上払うという回答も珍しくなかったです。通信の課題が解決されれば、エンタメ消費そのものが変わるんだという実感がありました。
── 調査を通じて、新たに気づいた構造的な問題はありましたか。
岡田:いくつかありました。なかでも印象的だったのは、コンサート会場での通信トラブルの原因が、私たちが思っていたのと違ったことです。
ユーザーはキャリアに不満を持っていますが、実際に原因になっていることが多いのは、会場周辺の基地局だったりするんです。ON BOARDさんとのやり取りの中でそれを知ったとき、ずっと持っていた固定観念が覆された感覚がありました。
それと同時に気づかされたのが、推し活をしている人たちは、通信会社にとっても実はとても大事なユーザー層だということです。ギガ数が命なので無制限プランを選ぶし、つながりにくいのが嫌だから格安SIMではなく大手キャリアを選ぶ。そういう人たちの声をちゃんと届けることが、通信業界全体にとっても意味のあることなんだと、このプロジェクトを通じて改めて実感しました。
通信に「ミシュランの星」をつける。その夢を一緒に追うパートナー
── 調査結果をもとに、ON BOARDはどのような展望を描いていますか。
大山:私たちが本当にやりたいのは、通信品質の新しい評価軸をつくることです。数値ではなく、ユーザーの体験をもとにした指標で評価する。ミシュランガイドのように、コンサート会場の通信品質に星がつくような仕組みができたらと考えています。
今は、キャリアが費用を負担して会場に基地局を置いている状態ですが、通信が快適かどうかで会場が選ばれるという認識が広まれば、会場側も自分たちで基地局を整備するようになるかもしれない。実際に検討会には、建設・会場業界の関係者も参加しており、業界をまたいだ動きが少しずつ始まっています。
── Oshicocoとしては、そのビジョンをどう受け止めていますか。
布施:とても共感しています。私たちが会社として目指しているのは、推し活をしている人たちの生活が豊かになること。好きという気持ちが、その人の人生を良くすることです。
ON BOARDさんが目指す通信の評価軸づくりは、まさにその社会実装の基盤になり得るものだと思っています。そして、私たちだけでは届かない場所、政府やキャリアのような社会の基盤に近い場所に、ON BOARDさんはつながっています。ON BOARDさんと一緒に活動することで、私たちだけではできなかったことが実現できるかも、という新たな希望が持てました。
── 最後に、パートナーのOshicocoさんから見て、ON BOARDという会社で働くのに向いているのは、どんな人だと思いますか。
岡田:ジャンルを問わず好奇心を持てる人だと思います。アイドルやスポーツ、街づくり。どんなテーマにも興味や好奇心を持って取り組める人が、この会社では活躍できるんじゃないかと感じています。今回のプロジェクトも、ON BOARDさんが推し活文化に興味を持って勉強し、伴走してくれたから実現しました。その姿勢は、プロジェクト問わず大事だと思います。
布施:あとは、自分の意見をちゃんと言える人です。忖度なく話してくれるメンバーがいてくれたから、このプロジェクトは前に進めました。会議はいつも和気あいあいとしていて、誰がどんな意見を言っても面白いですねと受け止めてもらえる雰囲気でした。どんな人が加わって、どんな景色を一緒に見られるのか、私自身も楽しみにしています。