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Fabが実現する新たな可能性~ソーシャルネットワーク型ものづくり時代の到来~

はじめに

近年、Fab(ファブ)というデジタルとモノづくりを融合させた新しいデザイン分野が注目されつつあります。

~Fabとは何か~

デジタルファブリケーションとは「デジタルデータをもとに創造物を制作する技術」を示します。具体的には自身のアイディアをデジタルデータとしてレーザーカッターなどのデジタル工作機械で読み込んで製造を行います。

今回は悠久会でも取り組んでいるFab事業の可能性をご紹介いたします。

Fabの可能性

日本のSDGsモデルではSociety 5.0と地方創生が重要な柱であり、社会課題を解決し豊かな社会を実現するためにイノベーションとまちづくりの観点が必要です。Fab分野の発展もビジネスのイノベーションと地域活性化に寄与する可能性を秘めています。

総務省においてはファブ社会推進戦略(digital society 3.0)を掲げ、“新素材とパーソナルファブリケーションによる「製造」(デジタル革命3.0)を経て到来する第3次デジタル社会であると位置づけています。”インターネットとデジタルファブリケーションの結合によって生まれる新たなものづくりの可能性を示唆するとともに新たに生まれる市場規模は10兆円を超えるとも言われています。(デジタル革命2.0は、携帯電話とインターネットによる「通信」です。)

大量生産大量消費モデルから多品種少量生産へとシフトしつつある今、モノづくりのパーソナル化を実現するFabは時代背景にマッチしており、さらにFabはデジタルを背景ともすることから、地域の垣根を超えてオープンな文化を生み出す土壌、共創(Co-Creation)を活発化させます。ソーシャルネットワーク型モノづくり時代の到来を告げているのです。

一部の先進地域ではファブタウン構想を掲げ、まちづくりや地方創生の戦略に組み込んでいます。都市部や大規模資本集積型を要件としないため、個人型デジタル工房のような小規模な形態でも工夫次第で運営可能です。チームや個人レベルで自由で独創性のある活動が期待できます。

<Society 5.0について>

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を示します。狩猟社会(Society 1.0)→農耕社会(Society 2.0)→工業社会(Society 3.0)→情報社会(Society 4.0)に続く、目指すべき新たな社会です。


ファブの代表的なデジタル工作機器であるレーザーカッター

Fab人材

デザイン力を基礎として、デジタルとモノづくりを融合させるプロダクトデザイン力が必要です。さらに事業を発展させるには共創(Co-Creation)に必要な越境する力、巻き込み力、ファシリテーション力等が必要でしょう。個人及び小規模ベースという特色があるのでソーシャルネットワークを起点とし様々な人とつながり、協働及びチームを組むことで大きなプロジェクトにも携わることができるかもしれません。比較的新しい分野であるので既存の発想や前例にとらわれない人材が望ましいでしょう。

Fabには様々な事業形態がありますが、商品受注のみでなくファブラボやファブカフェといった事業を行うならば、ワークショップ等を開催するので、企画力やファシリテーションスキル、他者の活動を支援するスキルも必要でしょう。コミュニティ構築力や運営力及び情報発信力も必要ですね。

決められたことをこなすというよりも、トライ&エラーの精神で新しいことのワクワクしながらチャレンジできることに楽しみを見出し、事業の持続可能性を担保するためマネタイズにもつなげることができる仕事観を持つ人が向いているでしょう。工房というくらいなので、個人主義かつ職人気質で没頭する仕事かと思いつつ事業を発展させるにはオープンマインドの精神で共創できる新しいタイプの職人像・ギルド像が求められているのではないでしょうか。

きらり作業所のレーザーカッターで文字入れ加工したコルクコースター

悠久会での取り組み

社会福祉法人 悠久会のきらり作業所では、Fab事業としてレーザーカッター、3Dウッドターニングマシンといったデジタル工作機械を活用したものづくりを行っています。企業のノベルティや記念品、レーザーによる刻印サービス等の製品やサービスを行い、素材も木材やアクリル、紙素材等の多種多様な素材に対応しています。

データさえあれば小ロットでも対応ができる小回りの良さも特徴的です。袋詰め等の関連作業は障がい者の方に依頼しダイバーシティ要素を持った事業運営を行っています。障がい者アートも盛り上がりを見せているので今後はデザインや企画等にも関わってもらい、より既存の発想にとらわれない面白いものを作ってみたいものです。


きらり作業所の3Dウッドターニングマシンで製作した木工製品

ファブタウン構想

近年ではファブタウンと称するファブを活かしたまちづくり構想が掲げられています。まずはオープンな場としてファブラボから文化を根付かせ、地域住民がデジタルファブリケーションに容易にアクセスできる環境を整え創造的生活者(Fab-Citizen)を育成します。そのような市民が共創していくことで地方独自の文化と素材をもとに独創性の高いものを生み出す、モノづくりの地産地消が実現したまち。それがファブタウンと呼べるまちの姿なのでしょう。

言いかえるならば、ファブタウン構想という共通の理念を基に、様々なモノづくりに関わるステークホルダーが共創(Co-Creation)することで地域の潜在的な芸術的感性や創造性を高め、地域経済やコミュニティが活性化するとともに、リアルやオンラインにおいても新しい分野の開拓者達との交流が生まれ、創造的市民が増えることで新しい文化と新しいスタイルのまちを創るといったイメージでしょうか。

まとめ

新しい分野なので実践事例は少ないですがモノづくりを取り巻く環境自体が変化を迎えつつあります。近年、情報発信もマスメディアを中心にしたものからSNSを活用することで「個」が流行を生み出すこともできる時代になりました。まさにモノづくり分野においても圧倒的「個」が存在感を生み出す時代を迎えるのかもしれません。

まちづくり分野では地域活性化の起爆剤となるポテンシャルがあり、SDGsやsociety5.0とも親和性の高い未来志向型のまちづくりとも位置付けられるでしょう。都市という限定された環境でなくても、ファブをやりたいという気持ちがあれば地方でも気軽に取り組めて、一人一人が自由な創造性を発揮することができるモノ・デジタルなローカルコミュニティの実現できる社会こそがまちづくりのひとつの進化系ではないでしょうか。

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