【PR flix】第2回:日本のPR業界を紐といてみる(1/2)。
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アンティルの久井です。連載を名乗っておきながら第2回を書くまで4ヶ月を要するという遅筆ぶり。有言実行は大事。反省です。人事を担当してくれている皆さん、ごめんなさい。
さて、早速ですがここで問題です。現在、日本にはどれくらいの数のPR会社があるでしょうか。
正解は、・・・わかりません(笑)。ひとまず日本パブリックリレーションズ協会(以下、PRSJ)の会員企業は185社だそうですが、協会に所属していないPRを主業とする企業もおそらく数十社、さらに個人商店のPR会社は無数にあり、さらにさらにフリーランスまでを含めるともはや収拾がつかないわけです。そんなもん問題にするなや、などと無粋なことは言わないで、、、続きをお読みください。
そんな感じの日本のPR業界ですが、PRSJが隔年で行っている調査発表によると、2020年度のPR業全体の売上高は推計約1,111億円。2018年度の前回調査が1,290億円で、そこまでは右肩上がりで伸び続けていたので、ここにもコロナ禍による影響はみてとれます。2016年度は1,016億円ですから、4年前の規模に戻ってしまった感じですね。なお弊社アンティルを含むベクトルグループ全体の2021年2月期の売上高は372.7億円、2022年2月期の通期業績予想における売上高は455億円となっており、調査年度や範囲などで単純比較はできませんが、PR業全体の凡そ1/3程度にあたると言えます。
<PR業市場売上規模推計>
(PRSJ「2021年 PR業実態調査」より)
<ベクトル売上高(単位:百万円)>
株式会社ベクトル業績ハイライトより抜粋 https://vectorinc.co.jp/ir/highlight
一方で、電通が毎年発表している日本の総広告費を見てみると、2020年度は2019年度から大きく落ち込んで(6兆1,594億円←6兆9,381億円)、2015年度(6兆1,710億円)と同程度となっていましたが、先日発表された「2021年 日本の広告費」では2021年度は6兆7,998億円となり、2019年度と同程度に回復してきていることが分かります。
<日本の総広告費の推移>
(電通「調査レポート」より)
6兆数千億円の総広告費に対してPRの市場は1千数百億円程度と思うと余りに規模が小さくないかとお思いのあなた。おっしゃる通りで、1,111億円はあくまでPR業の「売上規模の推計値」。この数字イコール市場規模とは言い難いです。じゃあどれくらいなのよ、ということなんですが、PRSJが2015年に算出した「日本のPR市場」に関する数字があり、そこでは推計市場規模を4,351億円としています。ふむふむ。算出方法を「2015年 PR業実態調査報告書」から抜粋します。
イベント業界/WEB業界/出版業界(雑誌編集タイアップ領域)/リスクコンサルティング業界/広告代理店業界(行政広告領域)について、それぞれの業界団体ならびに大手企業へのヒアリングを実施。公開情報の分析と合わせて各市場において提供されているPR業務の売上高を算出し、当協会が実施しているPR業実態調査に基づく「PR業売上」の推計値に加算し積算することで、「日本のPR市場」の総売上高を推計した。
使用参考データ:経済産業省経済産業政策局監修のイベント業界データ/ミック経済研究所発行「ネット広告&Webインテグレーション市場の現状と展望」/電通「日本の広告費」など。
「2015年 PR業実態調査報告書」より筆者作成
ただこちらの数字、2015年のみの調査となっているので、直近の数字を非常に雑な計算で恐縮ですが推計してみます。PR業売上の948億円の部分が2020年度には1,111億円になっていることから、同様の割合(117%)を全体でも適用してみると、5,090億円。つまり、2020年前後のPR市場規模はざっくり5,000億円程度と推察して良さそうに見えます。しかしながら、この5年でPRを取り巻く環境はまたまた大きく変わっています。中でも上記調査のセグメントで決定的に不足しているのがソーシャルメディアに関わる部分です。WEB(におけるPR業務)の部分に含めて考えるものとは思いますが、2015年当時とは全く事情が異なるため、「5,000億+ソーシャルメディア関連でのPR業務分」がPR市場規模と考えると、そこそこの納得感は出てきますね。そしてその中で見ると、ベクトルグループの売上高も1割に満たないシェアになるので、そこには伸び代しかないと思えます。とはいえ、そもそもそうした捉え方でビジネスを行っているわけではなく、あくまでもクライアントニーズ、クライアント課題に沿ってサービスを展開しているだけですし、いい意味で自分たちをPR会社だと思っていない部分もあるので、PR市場の規模を意識することはそれほどないわけですが。
思考実験として、こうして俯瞰して見てみることや、視座を上げて物事を捉え直すこと、考えを深めてみることは、何をするにしても大事だと思えます。PR会社に限らずですが、就職・転職を検討している場合に、その業界が今後どうなっていくのか、一歩引いて(あるいは目線を上げて)考えてみることをオススメします。さて、話の主旨はとっ散らかっていますが、今回はこの辺りで終わりにします。え?前回の最後に書いていたベクトルの歴史の話はどうなったかって?・・・ベクトルの立ち上げからの詳細については、NewsPicks「シゴテツ」での西江会長連載(https://newspicks.com/book/2859)をご参照くださいー!