あなたのスマホ画面のなかに、ゲームアプリはいくつ入っていますか?
世はスマホゲーム戦国時代。
国内の市場規模は年々拡大しており、2017年度には、1兆円の大台を突破しました。
ただ、市場の成長とともに競争も激化。
近年は既存の有力タイトルが人気上位で安定する傾向があるうえ、「荒野行動」をはじめとした中国や韓国など海外メーカーの参入、もう少し広い「ゲーム」という分野ではニンテンドースイッチの大ヒットなど、新規タイトルをヒットさせる難易度は、急激に上がっています。
そんななか、社員10名未満の少数精鋭チームで行う、スマホゲーム開発の陣頭指揮をとるのが、株式会社JOROの代表取締役社長・松田 晃佑(まつだ こうすけ)。
ある程度市場が成熟したこのタイミングで、新規のスマホゲームを開発することのチャレンジングさ、そのなかで松田が見出すJOROの勝機、そして起業の経緯などたっぷりと語ってもらいました。
ゲーム開発の魅力
──改めて、いまこの2020年のタイミングで、創業したて且つ社員数が一桁のベンチャーが、新たにスマホゲーム市場に参入することは、けっこう珍しいことなんですか?
松田:自分でも言うのもなんですけど、かなり頭はおかしいと思います(笑)。スマホゲームのリッチ化が進む上で開発費が高騰していますし、さらに競合となるタイトル数も多い。仮にリリースできたとしてもヒットするかどうかは博打的な要素も強いので、リスクが大きいんですよね。
──かなりレッドオーシャンな市場なんですね。
松田:いままでは半年とか1年とかに1,2本、注目の新規タイトルが市場に出るっていうくらいのペースだったんですけど、いまはもう競合が増えすぎて、3ヶ月に数本はすごく力の入ったタイトルが出てきているって感じです。あと「パズドラ」や「モンスト」のときのような一強状態ではなくて、面白いゲームが多いので人気が分散しているような状態です。
──それくらい競争の激しい市場なのに、松田さんがこうしてゲームを開発されているのは、どうしてなんですか?
松田:やっぱり一番は、スマホゲームの開発や運営って楽しいんですよね。エンジニアやイラストレーター、プランナーなど全く職能も強みも考え方も違う人達とみんなで、一つの作品を作る。一人じゃ何もできないけど、チームだと何でもできる気分になる。チームスポーツの部活っぽい感じが好きです。あと、自分たちの作ったものをすぐ何万人、何十万人っていうたくさんの人に届けられて、そして直接反応が返ってくるものも、なかなかないのかなと思います。
──たしかに、その相互性はゲームの魅力のひとつかもしれないですね。
松田:前職時代に開発したゲームでは、ユーザーさんとオフ会などで会うこともあったんですけど、たとえばユーザーさん同士で結婚することになりましたとか、いまでもそのときに出会った友だちと、毎週のように遊んでますとかって報告をもらうことがあるんですよ。本当に多くの感謝の気持ちをもらったんですけど、その時の感動が忘れられなくて。
──ゲーム開発含めて、toCの事業はユーザーさんの顔が直接見えるっていうのが、やっぱり大きいですよね。
松田:そうなんです。なので、そういう意味ではゲームそのものにこだわっているわけではないというか、いま自分ができるもののなかで、最大限、人に喜んだり楽しんでもらえたりするものがゲームってだけなので、手段のひとつとして、いまこうしてゲームを作っているって感覚が強いかもしれません。
スモールチームの強み
──新作ゲームの開発って、だいたい1年半から2年くらいかかるって伺ったんですけど、松田さんが新卒で入社されたサイバーエージェントが扱う「web広告」って、逆に秒単位で金額が動く世界ですよね。そこの時間軸の長さのギャップ、みたいなものは感じますか?
松田:それはめちゃくちゃありますね。タイトルが完成してリリースさえできてしまえば、さっき言ったようにユーザーさんの声が聞けるので、それが楽しさにつながるんです。ただ開発期間中は、いま作ってるものが、合っているのか合っていないのか分からない。暗闇の中を潜り続ける時期がずっと続くので、モチベーションを保つのが難しかったりします。
──そういう開発中のもどかしさに対しては、なにか対応策ってあるんですか?
松田:そこに関しては、ぼくたちの強みにもなってくるところなんですけど、少人数でやっていてチーム内のコミュニケーションが密なのは大きいですね。それで開発中のストレスが完全になくなるってわけではないんですけど、みんなで作っている感があるので、多少の軽減にはなっているかなと思います。
──開発後だけじゃなくて、その過程も一緒に作っている人たちと、楽しむってことですね。
松田:あと他に、スモールチームのメリットとしては、「スピード感」と「やりがいの大きさ」があります。たとえば、大手のゲーム会社さんだと、ひとつのタイトルを作るのに、50人くらいのチームで動くことも珍しくないんですよ。そうなると、仕様をひとつ変えるだけでもたくさんの人が関わるので、どうしてもスピード感は落ちてしまいます。それに「あなたの開発領域はここだけ」って、最初から決められた範囲だけをやるよりも、みんなが開発全体に関われたほうが、一人ひとりのやりがいは絶対に大きいと思います。あと、人が多くなればなるほど全員の目線を合わせるのが難しくなるので…。
──たしかに、チームにいるメンバーそれぞれの距離の近さやスピード感、やりがいの大きさは小さいチームならではの強みですね。
松田:みんな「自分がやりたいからやっている」っていう当事者意識が強いです。自分のために好きなようにやることが、いいものにもなるしチームのためにもなると考えていますし、当社の強みともいえると思います。
新しい人たちにチャンスの場を提供したい
──ではここからは、松田さんがJOROを立ち上げるまでの経緯を伺っていきたいんですけど、新卒でサイバーエージェントに入社されたあと、2013年に京都のゲーム会社であるHappy Elements(ハッピーエレメンツ)へ転職されたんですよね?
松田:そうですね。だから、Happy Elementsへ来たときは、最初すごい浮きました(笑)。サイバーエージェントっていう、日本一パリピな会社から、日本一オタクな会社へ転職したようなものなので。当時いた人たちからしてみれば「なんか東京から来た、横文字めっちゃ使うヤバイやつ」みたいな感じだったと思います。
──そこからどうやって、会社に溶け込んだんですか?
松田:ぼくも小さいときから漫画やアニメが大好きだったので、そこを突破口にコミュニケーションをとっていたら、「けっこう知ってるやん」って、認めていってもらいましたね。両極端な会社を経験したことは色んなタイプの方と一緒に仕事をするゲーム開発の場では活きている気がしますし、JOROでも多様性を尊重することはいつも心がけています。
──いろんなタイプの方とスムーズに意思疎通をはかれるのは、たしかに大きな強みですね。その転職されたHappy Elementsでは、いろんなタイトルのマーケティングを担当されたり、プロデュースしたスマホゲームがテレビアニメ化されたりと、順風満帆な日々を過ごされていたのかなと思うんですけど、そこから独立して起業しようと思ったタイミングはいつだったんですか?
松田:自分がやりたいと思っていたことを、全部やれたときですかね。本当に色んなことを経験させていただいた会社でしたし、とても成長させていただきました。6年間があっという間に感じるくらい充実していたと思います。勝手なことばかりして、困らせていたとは思いますが(笑)
──当初の目標を叶えることができて、その次のステップとして起業を選ばれたんですね。
松田:そうですね。あと、新しい人たちにチャンスの場を与えたいと思ったのもありました。たとえばアニメ化したタイトルの場合だと、開発に2年、リリースしてからの運用で2年くらい関わっていて、合計するともう4年になるんですね。その間に仮に新しい人が入ってくれたとしても、方向性を決めるプロデューサーがずっと同じままだったら、チームの中が大きく変わることも難しい気がしたのもありました。
──大きな枠組みが一緒だったら、それに従ってできることも限られてきますもんね...。
松田:ただ、自分もチャンスをもらって、いろんな経験をさせてもらったので、今度はこのチャンスを次の人に渡さないとなと思って退職することにしました。それで次はなにしようかなーと考えるなかで、一番大変でワクワクする道を選んで今があります。
──じゃあ、学生時代から起業を志してというよりは、事の成り行きで自然と作ることにしたって感じなんですかね。
松田:これまでの自分はやりたいことをやってきましたが、完全にゼロからと言われるとそうではなく、いわゆるヒト・モノ・カネなど必要なものは会社から与えていただいていました。そこをもう一度、理想とする少数精鋭のチームを、ゼロから作ってゲームを開発するために京都から東京に出てきて、いまのJOROを創業しました。
まずは作っている自分たちが楽しむ
──では最後に、これからJOROが事業を進めていくなかで、こういう方と一緒に働きたい!というものがあれば、教えてください。
松田:「面白いことをしたい!」とか「今よりももっともっとやりたい!」とかって思っているような方と、一緒に働いていきたいですね。あとは、一緒に高め合いながら成長でき、互いに足りない部分は助け合うことができる人です。少数精鋭といっていますが、各自が勝手にやるのではなく、足りない部分はみんなで補うことが大切なので、チームワークを大事にできる方ですかね。逆にもしかしたら、「与えられたことだけをやる」みたいなタイプの方は、いまのうちの会社のフェーズには合わないかもしれないです。
──組織もプロダクトもまだまだ未完成で決まってないことも多い分、一緒に成長していける人が合っているのかもということですね。
松田:そうですね。特にぼくたちは「ゲーム」というエンタメ領域をやっているので、まずは提供する側ではある自分たちが、楽しむこと、熱中することが大事だと思ってます。「会社に行きたいな」と毎日メンバー全員に思ってもらえるような会社を、作っていきたいですね。
──たしかに「まずは作っている側は楽しむ」っていうのは、めっちゃ大事だと思います。
松田:いま、本当に面白くてインパクトあるゲームを仕込んでいます。初期段階から携わっていただくことができるので、少しでも興味を持ってもらえたらまずは気軽に連絡をいただけたらなと思ってます。