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リクルートから上席執行役員として日本M&Aセンターに参画した仲川薫さんが成し遂げたいことに迫る

リクルートのマーケティング局長などでキャリアを築き、2023年3月、上席執行役員として日本M&Aセンターに参画した仲川 薫さん。
なぜ入社し、何を成し遂げたいのか。そこには「日本を課題解決先進国にしたい」という強い思いがありました。


イノベーションやムーブメントを起こす
キャリアの土台を築いた5年間

キャリアのスタートは、自動車メーカーのデザインチームが立ち上げたベンチャーでした。自動車や携帯電話、ウェブサイトなどのデザインのコンサルティングを行っていました。ユーザーの声を反映したデザインや製品開発のための定量調査・インタビュー調査を行い、コンセプトやデザインについてユーザビリティ(今でいうUIUX)の観点から改善提案する仕事で、自らをユーザーの声をクライアントに伝える”翻訳家”と位置づけていました。今では当たり前のUIUXですが、2000年代初頭、デザイン業界には、ユーザビリティというコンセプトは浸透していませんでした。そこでまずは、海外からコンセプトを輸入し、企業と共同研究した成果を論文にまとめ、学会で発表するなどして、業界の土台づくりから始めました。徐々に企業やデザイナーにユーザビリティの考え方が浸透し、ちょうどデザイン先行型のモノが売れなくなってきている時代のニーズにも合致したことで、事業は急成長していきました。

このときの経験から、「時流にあったよいコンセプト」「成功事例」「プロモーション」が揃えば、イノベーションやムーブメントが起こるという仮説を持つようになりました。当然のように思いますが、なかなかタイミングが揃わないのです。ちなみに当時書いた論文は最新の論文にも引用され、一過性のムーブメントで終わらず、考え方が浸透していることをうれしく思います。

「役に立てている」自負はあったものの、同時に葛藤もありました。コンサルタントという仕事においては、自分が提案したものが実現するかどうかはクライアントの判断次第。確約はありません。「これではユーザーの声を聞いた責任が果たせない」と感じ、ならばと、”自分で決める”ために、別の道を歩むことを決意しリクルートに転職しました。

業界ナンバーワンのリクルートでルールメイカーになる
挑戦し続けたからこそ見えてきたもの

リクルートでは、インターネットマーケティング局という小さなチームに配属されました。ちょうど、フリーペーパーや雑誌など紙のビジネスからインターネットビジネスに転換するタイミングでした。紙の情報を転載しただけのインターネットメディアを使いやすくするため、ほぼすべての事業部のメディアのリニューアルをしました。まずは会社の役に立つために、前職での知識・経験を使って、圧倒的なバリューを出すよう努力しました。入社2年目の時に、全社でイノベーションを起こした人を表彰する「ARINA(アリーナ:ALL RECRUIT INNOVATION AWARD)」という賞を受賞しました。その時経営陣を前にしたスピーチを今でも覚えています。

「今までのリクルートは、みんなホームランバッターばかりでした。みんながエースだから、自由に仕事をして成果を出して、そういう人がフォーカスされる。でもこれからのネットの時代の戦い方は、小さなチャレンジを繰り返して、確率を上げていく。送りバントをたくさんして1点を積み重ねていく。インターネットのビジネスにおいては、この考え方にチェンジできなければリクルートは負ける」
いまだったら言えません(笑)。それでも賛同してくれる人も多く、事業の方向性を決めたという意味で「自分で決める」という思いがひとつ叶った瞬間でした。

イノベーションは、「新規性」に加えて「汎用性」「再現性」が重要です。コンセプトをつくるだけでなく、他部署でも展開できるところまで落とし込んでいくことで影響範囲が広がり、ムーブメントが普遍的なものへと変化する。これがイノベーションだと考えています。日々の仕事の中で、業務改善でも組織運営でも小さなイノベーションを繰り返していくことが重要です。リクルートのインターネットビジネスへの転換の成功体験を引っ提げ、求人情報サービス業界でナンバーワンブランドだった「タウンワーク」に携わることになりました。業界ナンバーワンということは、自分たちが市場を切り開き、戦い方のルールを決めてきた歴史があります。ただ、時間が経つにつれて、自分たちが作ったルールに縛られていることが課題になってもいました。そこで、慢心せずに思考をめぐらせて、“自分たちで作ってきたルールを自ら壊して再構築する”ことにチャレンジしました。ビジネスの必勝法の一つは自分でルールを作ることです。ルールメイキングはとても困難ですが、志が高く、優秀なチームメンバーがいたからこそ、数々の困難も乗り越えられました。矛盾や葛藤の中で生み出した成果は、顧客指標、ビジネス指標のどちらにおいても圧倒的No.1でした。

女性活躍は、効果を議論するフェーズは終了。
とにかく実行あるのみ

M&A業界での女性活躍は大きなテーマです。女性活躍の推進については、効果や是非についての議論に時間を使うフェーズは終わっていて、どう実現するかを考え、動きを加速するフェーズです。やってみて変えるところは変えて、うまくいったところは継続していくことが重要だと考えます。

リクルートは、約10年前に女性リーダー研修を始めました。当初は女性だけの研修に違和感もありましたが、経営トップのコミットメントがあり、私自身も経営の世界に足を踏み入れる覚悟が決まりました。それから約10年でリクルートは全く違う企業に変身を遂げました。企業がイノベーションを起こすためには、D&Iは絶対に必要なアクションです。私はリクルートでの体験を通じて実感しています。クオーター制についてもよくある議論ですが、私は必要だと考えています。私が会社の経営メンバーになる時に、私を含めて女性が2人いました。1人ではなく複数というのが重要で、もし女性が私だけだったら、その場のルールに飲み込まれて自由に発言ができず、パフォーマンスを出せていなかったかもしれないと思います。

世の中には難しい問題がたくさんありますが、本気で解決するためにはその問題にフォーカスした施策を実行しなければいけない。私自身、ポジティブ・アクションや特別枠などと言われると違和感はあります。しかし、それをやらないと結果が出ない。だからやるしかないと思っています。



日本を課題先進国から課題”解決”先進国へ
日本M&Aセンターのユニークネスを世界に発信

2か月間海外に留学する機会がありました。現地で、日本は赤字と負債の国、高齢者の国、少子化の国、日本語しか喋らない、ビジネスのチャンスなし、と言われました。悔しかったですね。この時の経験は、今の私の力になっていますし、日本を課題先進国から課題解決先進国にしたいと強く思いました。そう意気込んだ矢先に、階段から落ちて頭蓋骨を骨折してしまいました。幸い大事に至らなかったのですが、やっぱり人の時間は有限だなと、この時に改めて感じました。

日本を課題解決先進国にしたいのならば、もっと課題に構造的にアプローチしなければと思い、事業承継というテーマで、生産年齢人口の減少に取り組み、企業の存続と発展に貢献することを理念としている日本M&Aセンターに入社することを決めました。実際にお客様との面談に同席させてもらう中で、私の選択は間違っていないと確信し始めています。

M&A業界に入って数か月。見ている世界はまだまだ狭いので、あくまで一視点に過ぎないですが、M&Aプレイヤーの誕生と成長の速度がすごく速いと感じています。今後もプレイヤーの数はどんどん増えていくでしょう。M&Aプレイヤーに向けたサービスを作るサービサー、例えばM&A業界に特化したSaaS、クラウドサービスなども出てくるのではないでしょうか。こうしたサービスが市場に出てくるのは、業界がますます活況になるという1つの象徴だと思います。そうした時に、私たちが業界ナンバーワンであり続けるためには、常に付加価値を出し続けなければいけない。M&A業界のテクノロジーは今後どうなっていくのか、その時に我々はどういうポジションで何をしていくのか、トップスピードで考えていきたいです。

そうした中で、日本M&Aセンターで挑戦したいことが2つあります。

1つは「日本M&Aセンターのユニークネスを世界ブランドに押し上げたい」ということです。企業理念やパーパス、フィロソフィー、社員1人1人の振る舞いなどを見ていて、そのポテンシャルはあると感じています。成長し続ける日本企業として世界の企業から見習われるよう、ユニークネスを世界に発信していきたいと考えています。

2つ目は、「オープンイノベーション」です。

他者となめらかにつながるイノベーションを、業界全体で起こせたらいいなと。先にも述べたようにイノベーションは破壊から生まれると思っていて、業界をリードしている当社が自らの課題を自らで解決し、他社と協業するようなイノベーションが起こせたら日本の課題解決はより加速するでしょう。M&Aの歴史も人脈もない私ができることは限られていますが、チームでやればできることは多いはずです。時代や時流を読み取るのは、私より現場の社員のほうが鋭いでしょう。協力して推進していきたいと思います。
最後に、社内の研修で若手社員に送ったメッセージを掲載します。

先人の経験より新人の感覚。
「日本M&Aセンターをぶっ壊し、日本M&Aセンターを成長させよ」

経験はとても有用な武器ですが、成功体験が新しいことへのチャレンジを阻害することがあります。若い社員や中途入社の方には、謙虚でありながらも、恐れず意見をして、会社を変えていってほしいと思います。まだ数か月ですが、想いのあるチームと仕事ができています。さらなるチャレンジにワクワクしています!


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