彼と話していると、その穏やかな語り口の奥に、強い意志が感じられます。幼い頃に抱いた夢から、キャリアの道を自ら切り拓き、今、日本の「ものづくり」の未来に新たな道を築こうとしている。株式会社WOGOの創業メンバーの一人、澤田 悠太郎は、そんな挑戦者の顔を持っていました。
株式会社WOGO COO
澤田 悠太郎
東京大学 工学部電子情報工学科卒業
弁護士を夢見ていた少年が、なぜテクノロジーの世界で起業の道を選んだのか。彼の言葉から見えてきたのは、ひとつの場所に留まらず、常に新しい学びや経験を求め続ける、飽くなき探求心でした。彼のキャリアの軌跡は、まさに彼が好きな魯迅の言葉のように、「歩く人が多くなれば、それが道になる」という信念を体現しているかのようです。これは、彼がWOGOで成し遂げようとしている「ものづくり」の未来そのものなのかもしれません。
──弁護士から経済、そしてテクノロジーへ──
異色のキャリアパスが示す「探求心」
私は、幼い頃から弁護士になることを夢見ていました。幼稚園の卒園文集に将来の夢は「べんごし」と書くほど、その思いは幼い頃から変わりませんでした。困っている人の役に立ちたいという気持ちが強く、勉強も好きだったので、地元 愛知県の進学校から東京大学へ進み、弁護士になる。それが、描いていたキャリアプランでした。
しかし、高校2年で1年間アメリカに留学したことが、私の価値観を大きく変えました。特に大きな影響を受けたのは、ホームステイ先のホストファミリーとの出会いです。ホストマザーは2014年以前からテレワークで働きながら、シングルマザーとして家庭を切り盛りしていました。また、彼女の兄が退役軍人の制度を活用して大学に入り直し、学んでいる姿も目の当たりにしました。社会人になってから大学院で学び直したり、軍でのキャリアを経て大学に入り直したりと、一つの職業に固執しない多様な働き方を目の当たりにしたのです。それがきっかけで、弁護士を目指し続けていくべきなのか、別の道があるのではないかと考えるようになりました。
また、それまでは漠然と「海外でも活躍したい」と感じていましたが、自身の学力や言語が変わってもジョークを飛ばせる明るいパーソナリティ、単身で留学にきた勇気などは日本と変わらずアメリカでも評価される。「海外で活躍すること」を目指すよりも「海外でも通用する強みを持つ」ことの方が大切だと身をもって実感した瞬間でした。
実際にWOGOの最初のプロダクトであるWIDARが全世界で150万DLを突破しAppleのWWDCでも紹介され、特定の市場で世界的な認知を得たことはまさに上記の体現だと思っています。
また、現在WOGOが取り組んでいるソリューションについても、課題としてグローバルなものは海外での展開も見据えて着々と準備を行なっていることにも繋がっています。
メキシコ・スイス・ブラジル・フィンランドの仲間たち
帰国後、様々な本を読み漁る中で、経済学に興味を持ち、東大の経済系に進み、「面白い人たちがたくさんいるだろう」と期待して入学したのですが、現実は違いました。冷めていて、「なんでそんなに頑張るの?」というような雰囲気を持つ人が多く、ショックを受けました。「このままではいけない」と直感し、わずか2週間で東大の制度を活用して理系へと転向することを決意しました。また、当時流行り始めていたAIやブロックチェーンといった、よく分からないけれどワクワクする新しい技術についても大学で学びたいと思うようになりました。この決断が、私のキャリアを大きくテクノロジーへと向かわせるきっかけとなりました。
──「受託開発」という新たな道──
泥臭さの中から生まれた、本質的な「ものづくり」
大学時代、私は将来的にビジネスをやってみたいと考えていましたが、その前にまず自分自身で開発スキルを身につけたいと思っていました。当時、学生の間ではウェブメディアを立ち上げて、事業売却で成功を収めることが流行っていましたが、私はそこに本質的な価値を見出せませんでした。
そんな中で出会ったのが、後にWOGOを共に創業する秦です。彼は、学生の身でありながら、早い段階から受託開発で資金を作っていて、その泥臭さと地に足の着いた姿勢が、他の起業家志向の学生たちとは一味違うと感じました。彼らのように、目先の成功を追うのではなく、中長期的に何を生み出していくか、どのように本質的な価値を出すかを重視する姿勢に強く惹かれました。
その後、LiDARスキャナがiPhoneに搭載され、モバイル3Dスキャンが身近になったことをきっかけに、秦や長谷川らとモバイルアプリを開発することになりました。私は別のチームでブロックチェーンのプロジェクトに取り組んでいましたが、技術的な面白さとは裏腹に、その市場や社会への貢献度に疑問を感じていたタイミングでした。そこで、サービスのインフラ・バックエンド側として彼らのチームにジョインすることを決めました。
──WOGOが創造する、持続可能な未来──
新たな道を拓く、「組織」と「文化」
私たちがWOGOで実現したいのは、数十年先まで残り、使われていくものを作ることです。それは、私たちが生み出すプロダクトだけでなく、組織や文化も含まれています。WOGOがあったからこそ生まれた発明や、どんなに小さな分野でも進歩したと言われるような足跡を残したいと考えています。
また、私たちはアイデアと泥臭さで新たなものを作り出せる人が、そのポテンシャルを最大限に活かせるような場所を作りたいと思っています。優秀な人材が、単に稼ぎが良いからという理由でモノを売る側に流れるのではなく、モノ作りで同等以上の競争力を生み出せることを示したいのです。
そして、自分たちと同質の人間だけではなく、多様な人が活躍できるような社会を作りたい。この点では、今の製造業はまさに私たちが貢献できる、非常に良い分野だと感じています。
──「Giver」が集う、最高の仲間たち──
本質的な課題に挑む、プロフェッショナルな集団
WOGOの最大の魅力は、徹底的に物事に取り組んで成果を出せるメンバーが集まっていることです。私たちは皆、目先の結果だけを追うのではなく、本質的な課題解決に長期的な目線で取り組んでいます。
メンバーの能力の高さには日々驚かされます。プログラミングコンテストやハッカソンで優勝したり、プロボクサー、ベンチプレス150kg、ロボコン出場者など、仕事以外でも非凡な才能を持つ人が集まっています。しかし、その能力に甘んじることなく、常に能力以上の結果を出そうと努力する姿勢があります。
そして何より、メンバーに「Giver」が多いことが素晴らしいと感じています。どんなことでも聞けば親切に答えてくれますし、それを伝えることに喜びを感じる人が多いです。技術的な知識から業界の知見まで、惜しみなく共有してくれる協力的な文化が、WOGOの強みだと思っています。
──未来への希望を信じて──
未知の道を切り拓く、新たな仲間たちへ
私が好きな魯迅の作品に、このような一節があります。
「思うに希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。」
私たちが取り組んでいる業界の変革や課題の解決は、決して一朝一夕で成せるようなものではありません。しかし、そこには明確な課題があり、それを解決した先には大きなイノベーションが存在すると確信しています。ありがたいことに、現在共に取り組んでいる企業は、私たちと同じような希望を持って共に道を歩んでくれるパートナーです。
この道は決して平坦で歩きやすいものではありませんが、それを共に楽しんでくれるような仲間になりたいです。もし、新しい道を自らの手で切り拓くことにわくわくする方がいれば、ぜひ一度お話ししましょう。
澤田の思いを聞いて感じたこと
彼が語る言葉は、一つひとつが彼のこれまでの経験と思考の軌跡をたどっているかのようでした。弁護士という安定した未来を捨ててまで、未知のテクノロジーの世界に飛び込んだ彼の決断は、新しい道を自ら創り出すという彼の信念に裏打ちされていたのです。
WOGOという会社は、単なるビジネスの場ではありません。それは、彼らが信じる「未来」を形にするための舞台であり、アイデアと泥臭さを武器に、本質的な課題解決に挑む仲間たちが集う場所なのです。澤田悠太郎は、その道を先頭で切り拓き、日本の「ものづくり」の未来に確かな足跡を残していくでしょう。これは確かな足跡が未来を照らす挑戦の物語だ。