「無限に上を目指す方が人生楽しい」六本木のスタバで朝4時まで本を読み続けた日々を経て、CyXen執行役員CMOが語る"楽をするための本質追求"とは
キーエンスで鬱状態、退職後は毎日朝4時までビジネス書を読み漁る。複数の起業と失敗を経験した男が、なぜ介護業界の変革に挑むのか
はじめに
「だらけたいし、楽をしたいんです」
そう笑いながら話すのは、株式会社CyXen(サイゼン)で執行役員CMOを務める吉田敬悟さんだ。一見すると怠惰に聞こえるこの言葉。しかし、その真意を聞くと、そこには「無駄なことに時間を使わず、本当に解くべき課題に集中したい」という強い信念があった。
サラリーマンのトップ層だと思って入社したキーエンスでの挫折、六本木のスタバで朝4時まで本を読み続けた半年間、そして複数の起業と失敗。波乱万丈のキャリアを歩んできた吉田さんが、今、介護・医療・福祉業界の変革に挑む理由とは。
「仕事は楽しいからやるんじゃない」キーエンスでの挫折と、六本木での再生
━━ まずは大学卒業以降の経歴を教えてください。キーエンスへの入社は、どんな思いがあったのでしょうか?
新卒でキーエンスに入社しました。サラリーマンのトップ層だと思って入ったんです。画像システム事業部で、工場の生産ラインで使う画像センサーの営業をしていました。でも、マイクロマネジメント文化が自分に合わなくて、多分ほぼ鬱だったと思います。約1年で辞めました。
特に印象的だったのは、上司が毎日暗い顔をしていたこと。「仕事は楽しいからやるんじゃない、やらなきゃいけないからやるんだ」という上司の発言は今でも頭に残っています。これが良い悪いは人によると思いますが、自分には合わなかった。
━━ 退職後はどう過ごされたんですか?
退職後の半年間は、六本木のスタバに通って毎日朝4時までビジネス書を読み漁っていました。それまで読書なんてほとんどしたことなかったんですが、自分を見つめ直すタイミングで初めて膨大な本を読みました。
ビジネス書の中の人は全員前向きなので(笑)、それで精神を保っていたんです。
━━ その時期に何か転機があったのでしょうか?
外部のつながりで、医者で起業家の人と、芸能人を相手に不動産売買をやっている人、それぞれ40歳くらいの人たちにかわいがってもらって、ほぼ毎日飲み会に誘ってもらう時期がありました。
現実離れした世界に混乱しましたね。トップの世界だと思って入った会社の上司は暗い顔をしているのに、外の世界ではもっと生産性高く価値を生み出している人がいる。良い出会いだったのか、悪い出会いだったのかわかりませんが、独立の勇気をくれたのはこの経験かもしれません。
起業と失敗、そして営業の重要性への気づき
━━ その後、様々な事業にチャレンジされたそうですね。
大学の同期と一緒に営業代理店や飲食店の立ち上げをしたり、個人でHRメディア事業を運営したり。VCのツイートに反応したらDMが来て、2週間後にはドローンスタートアップに6人目の社員として入社していたこともありました(笑)。
その後、エンジェル投資家から千万円単位の資金調達をして、転職側のHRメディアで起業しました。でも、事業選定が時流に合わなくて失敗。投資家の方々には今でも申し訳なく思っています。ただ、今でも個人の事業にもチャレンジしていて、まだ恩返しすることを諦めていません。チャレンジを支えてもらったことには本当に感謝しています。
━━ 様々な経験を経て、なぜFor A-career(現CyXenの親会社)への入社を決めたのでしょうか?
いろいろな事業をやってみて分かったことがあります。結局、営業が強い会社が最後に勝つんです。勝つというより、死なないことが事業成功で何より重要だと感じました。
あと、自分は事業を作るのは好きだけど、社長としてチームを引っ張るのは性格上向いていないなと。コロナ禍で就活生向けのES添削サブスクサービスをやっていた時に手伝ってもらった新原の紹介で、営業が強い浅尾さん(For A-career代表)のもとで事業開発にチャレンジし続けられる環境を選びました。
「ツクル」から「マーケティング」へ。分社化で見えてきた新たな可能性
━━ CyXenの前身であるmedicaでは、どんな役割を担ってきたのでしょうか?
初代事業部長として「medica事業部」の立ち上げを主導し、その後「ツクル事業部」というノーコード開発と事業開発コンサルティングをする部署を立ち上げました。初年度で1.3億円の売上を達成できたのは良い思い出です。medicaは今、4年目で11億円の売上を見込んでいます。
ただ、今振り返ると、当時のmedicaは営業が強い反面、データ整備やコンサルの質といった部分に課題がありました。私はずっと「役務の質を上げることやデータ基盤の整備が重要だ」と訴えていたんですが、当時は数字を上げることが優先されていて、なかなか理解されませんでした。
━━ それが今は執行役員CMOとして、マーケティング本部を統括されているんですよね。
去年、medicaが伸び悩んだことで、ようやく私が提案していたマーケティング、プロダクトマネジメント、技術開発、データ整備の重要性が認められるようになりました。CyXenの分社化により、これらに集中できる環境が整ったんです。
セールス、エンジニア、マーケティング、CRM、データなど幅広く経験したことで、事業開発や設計ができるようになった。トレースモデルの0→1の事業開発はあまり気分が乗らないんですが、ビジネスモデルを1から組み立てる事業開発やBizOpsが得意で、そこに一番やりがいを感じます。
介護・医療・福祉業界は「無限に上を目指せる」数少ない領域
━━ 吉田さんにとって「CyXen」はどんな事業・組織ですか?
技術と人を統合して、業界再編にチャレンジする企業です。そして、介護・福祉業界は日本で勝てて、世界に出られる可能性がある数少ない領域の一つだと思っています。
若手の起業家があまり参入していないし、参入障壁もある。だからこそチャンスがある。日本で勝つ、そして世界に出て行って名が知れる領域です。無限に上を目指す方が人生楽しいじゃないですか!
━━ 事業開発の方針について教えてください。
介護・医療・福祉の業界を変えるという最終目的のために、時には業界を問わず事業開発することもあります。業界変革には膨大な投資が必要で、その原資を作るために収益性の高い周辺事業も手がける。すべては最終目的への手段という考え方です。
━━ 介護業界の現状についてどう見ていますか?
介護業界は本当に危機的状況にあります。構造的に全ての事業者を救うことは既に不可能になっていて、政府も一部の事業者に対しては諦めを見せるような方針を出してきています。いよいよ民間から解決しに行かないときついんです。
高齢の経営者が多くて、20〜30年前の成功体験に固執している。根本的な改善の必要性を認識せず、何か魔法のような解決策を求める傾向があります。本当に経営体質を変える必要があると理解している人はまだ少ないのが現状です。
「死ぬ瞬間が美しく思える」そんな介護や医療の未来を作りたい
━━ CyXenで成し遂げたいことについて教えてください。
最終的には「死ぬ瞬間が美しく思える」「ここで最後を迎えられて良かった」と思えるような介護や医療の未来を作りたいです。
この業界にいて、この業界をよくしたい、利用者や患者や子どもたちのために自分が変わりたいと思う人たち(仲間も顧客も)と一緒にチャレンジを続けたい。日本の未来のために我々も選択と集中をしつつ、本当に変わりたいと思っているお客さんを優先的に支援していきたいんです。
━━ そのために今後どんなメンバーと働きたいですか?
視座高く、前向きで、知識欲があり、物事を長い目で見れる人たちと働きたいです。本当に難しい問題の解決には長い年月がかかるということを直感的に理解している人たち。
お金だけを稼ぎたいという昭和的な考えではなく、生きる意味や何に影響を与えられるかという存在意義を実感できる職場や業界にしていきたい。
「だらけたい」から本質を追求し、誰かの記憶に残る仕事を
━━ 最後に、吉田さんご自身のキャリアの展望を教えてください。
事業やサービスの名を通して、死んだ後も誰かに思い出されたいんです。個人的には多くの人に囲まれたいみたいな欲望は全くないけど、誰かの記憶には残りたい。
そのために事業開発やメンバーに対するキャリア形成の支援などに注力して、自分が関わった事業でより多くの課題を解決し、関わったメンバーが外でも活躍し良い人生を送れるようにキャリア支援もしていきたいです。
━━ 冒頭の「だらけたいから楽をしたい」という言葉の真意がよくわかりました。
本当に解くべき課題は何?解くべき課題を間違えない。だらけたいし楽をしたいからこそ、本質を追求するんです。無駄なことに時間を使いたくない。その分、本当に価値のあることに集中したいんです。
事業やサービスをどんどん生み出せるようにしていきたい。自分だけでなく、多くの人ができるようにノウハウややり方をCyXenで浸透させていくことが今後のテーマです。
━━ キーエンスでの挫折から始まった吉田さんのキャリア。今では介護・医療・福祉業界の変革という大きな挑戦に向かっているんですね。
あの時、六本木のスタバで朝4時まで本を読み続けた日々があったから、今の自分がある。失敗も挫折も全部糧になっています。無限に上を目指す方が人生楽しいですから。
CyXenでは、一緒に業界変革に挑む仲間を募集しています
「本当に解くべき課題は何?」を問い続け、長期的視点で介護・医療・福祉業界の変革に挑戦したい方、お待ちしています。挫折も失敗も糧にして、無限に上を目指す楽しさを一緒に体験しませんか?