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天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。
天地人のエンジニア組織に、新しくVPoE(Vice President of Engineering)という役職が生まれました。就任したのは白井さんと高瀬さんの2名です。衛星、AI、リモートセンシングなど専門分野が広い会社で、2人のVPoEは何を目指すのか。就任の背景とこれからを聞きました。
VPoEプロフィール
・白井 康雄 / 福島県出身
小学生でプログラミングを始める。高校生の頃にApple製品の背後にある哲学に感動し、真に使いやすいソフトウェアの探求をキャリアの軸とすることを決意。新卒で入社した株式会社ビービットではWeb広告管理システムの開発や新サービスの立ち上げに従事。弁護士ドットコム株式会社ではUXエンジニアとしてユーザーリサーチやコード品質改善に関わる。医療系企業を経て、2024年7月に天地人に入社。
・高瀬 賢二 / 東京都出身
Jazzギタリスト、 ボウリング場社員といった20代を経て、30代で医学系翻訳会社に入社。法人営業を経験後、社内SE(開発 & 情シス)となりエンジニアとしてのキャリアに転向。2019年より株式会社レトリバに入社。「分析AI YOSHINA」の立ち上げから開発メンバーとして参加し、v1.0リリース後はインフラチームを立ち上げ、サービスの成長を支える。地球環境やサステナブルな社会に向けた取り組みに惹かれ、2024年3月に天地人に入社。
エンジニアの技術スタックが多様な天地人。その中でのVPoEの役割とは
―― そもそもVPoEとはどういう役割なのでしょうか。
高瀬:
一般的な棲み分けでいうと、CTOは技術特化で、どういう技術を使っていくか、ロードマップをどう描くかといった部分を担当します。一方、VPoEはエンジニアリング組織のピープルマネジメントなどを担うというのが、特に日本のベンチャーでは多いイメージがありますね。
白井:
天地人の文脈でお話しすると、マネジメント責任者であることは変わりないのですが、専門性が多岐に渡る組織なので、方向性を揃えながら各領域をつなぐ動きが不可欠になります。技術戦略も担いますし、現場を引っ張るという両方の役割を担っていきます。
―― 天地人の場合は技術スタックが非常に多様ですよね。
白井:
そうですね。天地人が特殊な点として、Web技術だけでなく、リモートセンシングやGIS(地理情報システム)、AI、さらには人工衛星と、専門性がエンジニアにより様々です。
CTOというと「いちばん技術がわかる人」というイメージがありますが、僕らは衛星については宇宙ファンレベルの知識しかなく、実際に作れるわけではありません。そういう意味で、CTOを立てるのが難しい会社なんです。
ですから、天地人のVPoEは、組織マネジメントをしっかりやっていくことと、CTOがいない分、技術の方向性をつけていくという役割を担っています。
多様な専門性を束ねて、持続可能なプロダクト開発へ
―― 天地人のエンジニア組織はどのような組織ですか?
高瀬:
白井さんもおっしゃるように、ひと口に「エンジニア」といっても一枚岩では括れません。なのでお互いの価値観も全然違うんです。
様々な技術を組み合わせて保守性の高いコードを書くことが重要な工学寄りの価値観に重きを置く人と、自然現象の理解やデータの裏にある因果関係の説明の方が重要な理学寄りな価値観に重きを置く人がいます。その両者の特性を理解した上で、エンジニアリング組織としてまとめていくことが重要だと考えています。
―― 現在感じている組織的な課題感は?
高瀬:
ビジネスチーム、専門家チーム、製品開発チーム、3つのチーム間のコラボレーションは本当に難しいと感じています。それぞれのコラボレーションをもっと磨いて、製品・サービスにうまく流せるような仕組みを作っていきたいです。
白井:
僕も今いちばんの課題はそこだと感じています。現在、宇宙水道局がビジネスの主軸となっていますが、まだまだ発展途中です。第2、第3の柱を作っていく必要があります。
天地人はこれまでPoCをたくさんやってきました。ビジネスサイドは強くて、いろんなところにコネクションを持っているのですが、それがプロダクトにつながるかというと、難しい部分があります。
ビジネスと技術のバランスをうまく取りながら、エンジニアが引っ張りだこになって疲弊しないようなプロセスを作る。卵をひよこに、ひよこをニワトリに育てていくような仕組みをうまく作っていかなければなりません。
ーー VPoEとして、他にどんなことをやっていきたいですか?
白井:
一人一人のエンジニアが楽しく働ける組織であり続けたいです。
ある程度会社が大きくなると売上など目標数値の話ばかりになりがちですが、天地人にはボトムアップで「これがもしかしたら何か役に立つんじゃないか」という一人一人の気づきや「やってみよう」という力が大きい、研究所的な雰囲気があります。
そこを変に一般的な会社色に染めたくないんです。一人一人の発想が自由にできることと、社会課題の解決に役立つことの、うまいバランスを保ちたいと考えています。
櫻庭さん(※天地人代表取締役社長・CEO)もよく言っていますが、みんなが楽しく、のびのびと働けることが、良い仕事につながります。決してゆるくやるということではありませんが、そのバランスをしっかり見つけて、交通整理をしていくのが私たちの役割だと思っています。
ーー 高瀬さんはいかがですか?
高瀬:
先ほど白井さんもおっしゃってましたが、PoCからサービス化の実現には大きな壁があります。チームをどう動かすか、どこを自動化すれば早くなるか、どこが将来的にボトルネックになるか。
そういった嗅覚は、ソフトウェア開発の経験から得られることが多いので、私が入社し、その後白井さんが入ってきて、2人とも現場を大きく改善してきました。
まず開発体制の足場をしっかり組むことができていなかったので、そこのノウハウをもっと育てていくことが大事だと考えています。
たとえば、データを扱うエンジニアはその分析のためだけに使い捨てのコードを書いてしまうことが多いです。それが一度きりならまだしも、1000回異なるデータに対して使い捨てのコードを作るのは効率的ではありません。
一方、Webエンジニアには業務を標準的なプロセスに落とし込み、保守性の高いソフトウェアを構築するスキルがあります。そのように、お互いの強みを活かしあう仕組みを作っていきたいですね。
この2人でのVPoEだからこそ、バランスのとれた組織体制
―― 高瀬さんは普段から、白井さんへの熱烈ともいえるリスペクトを率直に言葉にされていますよね。改めて、お互いにどんな期待を持っていますか?
高瀬:
白井さん、どうですか?高瀬にこうあってほしいとかありますか?
白井:
そうだなぁ、プレイングしながらマネジメントするのはやっぱり大変なので、ちょっとそこの視座をお互い上げていきたいですよね。
高瀬:
視座が高い仕事って、物事を深く考えて最適解を見つけられる能力が必要だと思うんですが、僕はあまりそういう能力がないんです。どちらかというと数打ちゃ当たる、運動量でカバーするタイプなので。
白井:
でも、すごい経営者も結構現場感を持って、とにかく打席に立って数打ちゃ当たりをたくさんしているから、その中で3割打者になっているイメージもありますよね。それはむしろ王道なんじゃないでしょうか。
高瀬:
なるほど。ただ白井さんって先を見据えた選定眼というか、今そこで骨を折ると先々でマイナスになるのでは?という考え方がすごい。僕はそこが足りていないと感じているので学んでいきたいんですよね。
白井:
僕は無駄なことをやるのが嫌いなんです。世の中の仕事って、なんとなく偉い人に言われたからやるとか、思いついたものを全部やるみたいなことがあるじゃないですか。エンジニアに対しても「こういうの作ってください」というオーダーはたくさん来るんですが、「それ本当に必要ですか?」と僕はまず確認してから進めたい。
いろんなアイデアの中から、より価値につながるものを見つけ出して、それをしっかり磨き込むことに時間をかけたい。とはいえ、磨く前から光っているものなんてないので、やってみることも大事だと思っていて。
高瀬さんのすごいところは、普通に「俺やりたくないな」と思うような仕事も積極的に進めてくれるんです。たとえば、製品の要件に合わせるために、過去案件のデータを全て遡って別の方法で処理しなおす、みたいな膨大な作業を、本当にやり切ってくれます。そういう馬力というか突破力がすごいんですよね。
高瀬:
僕は結構、リスクへの嗅覚がある方だと思っています。火の起こりそうな雰囲気を見つけて、消火器を持って突っ込んでいくような仕事の仕方をします。
宇宙水道局の、特定の機能を作るためのデータ加工くらいだったら、まだ自分の腕力で消火できるんですが、視座が高くなって抽象度の高い組織課題に向き合うような仕事になってくると、そう簡単に人を巻き込んで消火活動するわけにもいかなくなります。そういう意味で、白井さんの選定眼を学んでいきたいです。
白井:
いいアイデアを見つけるためには試行錯誤をしないといけないですよね。「やりません」ばかり言っていると、せっかくのアイデアの原石を育てるチャンスを逃してしまう。
「やりません」と「とにかくいっぱい試す」、そのバランスがすごく大事だと思っていて。私は「やりません」に振り切る人で、高瀬さんは「やります」に振り切る人だから、2人でちょうどいいバランスなんじゃないでしょうか。
―― ちょうどいいバランスのおふたりなんですね。仲がいいというか、お互いへのリスペクトをとても感じます。
白井:
実は私、今日が出社6回目くらいですが(※)、最近まで出社しても高瀬さんとあまり喋る機会がなかったんです。VPoEになってから初めて1on1を設定しましたね。
※白井さんは現在、福島在住でフルリモート
高瀬:
そうそう。これまでほとんどの開発業務はリモートでやってきましたが、心理的距離は遠くないですし、考え方がそんなに違わないので、何を話すにしても「そうですよね」という感じだったのであまり1on1の必要性がなかったんですよね。
フロントエンドとバックエンドとで方針をどう決めるか議論することもあっても、基本的な考え方がブレていないので、お互いオープンな姿勢で話せます。「こうしてほしい」と強く思うなら、「それはそうですね、じゃあ任せます」と引き合える、譲り合えるんです。
白井:
感情の対立は全然ないですね。技術的な意見の対立は少しありますが、それはフラットに話せばいいだけです。A案とB案のメリット・デメリットを比較して、「こっちだね」と決めて、デメリットは飲み込めばいい。すごく建設的に進められています。
お互い、これまでのキャリアの中でプロダクトの一生を見てきているんですよね。赤ちゃんの頃のプロダクトはこういう時に手がかかるとか、大人になるとこうなるとか。その感覚が共有できているのが大きいですね。
高瀬:
「ここ間違えるとプロダクト死ぬよね」みたいなね。そういう共通感覚があるから、信頼が根底に流れていて、安心して何でも建設的に話せるんだと思います。
二名体制のVPoEという新しい試み。それは、天地人の多様な技術領域と、自由な発想を大切にする組織文化を反映した選択です。
ビジネスと技術をつなぎ、一人一人のエンジニアが活躍できる環境を整えながら、持続可能なプロダクト開発の仕組みを作っていく。「やりません」と「やります」、異なるスタイルを持つ二人だからこそ生まれるバランス。2人のVPoEの挑戦は、これからが本番です。