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大手電器メーカーを辞めて、スポーツ×ビジネスの世界に飛び込んで得たこと

満岡英生

学校法人五大経営企画部部長/株式会社GODAIスポーツエンターテイメント取締役/GODAIスポーツアカデミー校長/(公財)日本テニス協会戦略室副室長/テニス環境等調査委員会委員

GODAIグループの新規事業を次々と生み出している経営企画部の部長・満岡英生さん。伊達公子さんが監修したスポル品川大井町のテニスコート、シニア世代を中心にプレーを楽しむ人が増えているスポンジテニスも、満岡さんが仕掛け人です。ヒントを得て、アイデアを企画に変え、企画をカタチにしていくため、事業として成功させるために、日常的にどんなことを考え、何をしているのか。聞いてみました。



スポーツの力ってすごいな

――以前は大手電器メーカーに勤務されていたということですが。

満岡/長年、営業や企画業務に携わり、販促企画、事業企画を手がけてきました。学生時代からずっとテニスを続けてきたこともあり、社内のテニス部のマネジメントをやり、会社全体の事業改革も推進していました。転職する理由もなく、周りからは定年まで辞めることなく働き続けるだろうと見られていたようです。だから退社することがわかると、社内では「まさか!」と。まあ、自分にしても、決断は意外だったのですが。

――転職するつもりはなかった?

満岡/母校である慶應義塾大学の体育会庭球部の監督を務める坂井利彰さんからの紹介で、GODAIグループの経営陣と知り合ったことが、今につながります。お世話になったテニスに恩返しがしたい。自分に貢献できることがあれば、土日のボランティアでもいいので何かやってみたい、と。それだけの思いでした。

――テニスへの恩返しですか。

満岡/高校、大学とテニスで鍛えられて、人間力が磨かれ、高められた。そう感じています。個人では勝てなくてもチームなら勝てる。ひとりではがんばれなくても、仲間と一緒ならがんばれる。スポーツの力ってすごいな、と。前職のテニス部でも、プレーの調子が良いと仕事の調子も良かったし、仕事が充実していて忙しいときほど、テニスの試合でも結果が出たりしました。正直な話、会社勤めをするなかで、もう辞めてやろうと思ったときも何度かありました。しかし、そのときに踏みとどまれたのもテニス部があったから。とはいえ、いくらテニスが好きでも、テニスそのものに関わる仕事をすることはないだろう。そう思っていました。

大企業と比べて意思決定のスピードが違う

――それがGODAIグループに転職して、今では前職でのキャリアとテニスに打ち込んできた経験を、両方活かせる仕事をされています。転職の決断はどうやって?

満岡/会長、理事長をはじめ、GODAIの経営陣と食事をする機会があり、そこでみんな、目を輝かせて、楽しそうに事業の夢を話していました。その光景を目の当たりにして「こういうの良いなぁ」と。そう思っていたら、少しお手伝いするくらいのつもりだったのが「うちに来ない?」と誘われて、入社後の待遇も一切聞かずに「行きます!」と即答していました。それが6年ほど前。40歳での転職でした。帰宅して、転職することを妻に話したら、面食らって言葉を失っていましたが(笑)。

――電器メーカーとGODAIグループでは事業形態、ビジネスモデルが大きく異なります。事業企画を手がけるにあたっても当然違いがあるでしょう。その点はどう感じましたか?

満岡/前職は電器製品を売る会社ではありましたが、それだけではいけない、目に見えないサービスの提供を充実させていかなければいけないと考えて、ソリューション営業部を立ち上げた経験がありましたので、商材の違いに戸惑うことはありませんでした。大きく異なっていて驚いたのは、組織としての意思決定のはやさ。決裁のスピード感です。前の会社だったら数ヵ月はかかっていた決裁が、GODAIでは数日。提案当日の即決も珍しくありません。

PDCAを回す忍耐強さが求められる

――すごいですね。そのぶん、的外れな企画も動いてしまって、結果として失敗となるリスクもありそうですが。

満岡/そのために、とにかくPDCAを回します。失敗の芽があれば、できるだけ早めに摘み取る。つまづきがあれば、その原因は何か、すぐにチェックする。「このやり方で良いんだな」と思えるまで、コツコツ地道に粘り強く取り組みます。失敗したら、それを忘れるのではなく成功の糧となるように、きちんと次に活かせる経験にします。忍耐強さが求められる仕事です。

――企画に取り組むにあたって、入社後にはスクール運営も経験されたとか。

満岡/現場を知り、深く理解するために、半年間スクールの支配人をしました。コーチ出身ではない支配人は私がはじめてだったそうです。

――スクールで感じたことは?

満岡/どうしたら客数を増やせるか。どうやって客足を伸ばすか。そのためのマーケティングやプロモーション戦略について考えることはもちろん、もっとも力を入れて、継続的に取り組んでいかなければならないと感じたのは、人材の教育と育成、そしてチームビルディングです。やはり、ここがGODAIのスポーツ健康事業を支えている、もっとも大切な部分なのだと、あらためて思いましたね。優秀で質の高い人材が揃っていることが、私たちの大きな強みであり、優位性につながっている。そう確信できましたから、

IMGアカデミーとコラボ

――人材が強みなのですね。何か具体的なエピソードはありますか。

満岡/数年前、米国フロリダのIMGアカデミーからテニスコーチやメンタルトレーナーを招いて、日本に住む小学3年生から中学3年生までのジュニアが指導を受けられる体験プログラムをTBSが開催し、その協力を求められたことがありました。オンコートでのコーチングをGODAIのコーチがサポートしたのですが、求められる動きを瞬時に判断して、指示を受ける前にさっと動いてくれるということで、IMGアカデミーもすごく驚かれていました。「こんなに対応力が高いコーチは、ほかにはいないのでは」と。

――IMGアカデミーテニスキャンプの日本正規代理店として、国内のテニススクールで初めてIMGアカデミーテニスキャンプの日本正規代理店となる契約も結ばれています。

満岡/コラボレーションして何か事業をやりたいとは、GODAIに転職した時点からずっと考えていました。この事業もなかなか芽が出ずに苦労しましたが、少しずつ参加者が増えてきています。

伊達公子さんのこだわり

――スポル品川大井町のテニスコートも手がけられたそうですね。

満岡/伊達公子さんと組みたいので、間に入ってくれないか。最初はそういう依頼でした。テニスに関することなので「GODAIなら何とかやってくれるだろう」と。企画を持ちかけられて、伊達さんに監修していただく交渉、全体のコンセプトと詳細の設計、運営まで、すべてに関わっています。世界のトッププロが満足できるよう、天井やスペースに余裕があり、ケガをするリスクが少ないコートをつくる。そんな伊達さんのこだわりを、建築基準法にふれること以外は、すべて満たして実現しました。

――手間もコストも相当かかったのでは?

満岡/理想とするコートをつくりたい。伊達さんの思いは強く、そのおかげで、覚悟を決められた。大変ではありましたが、運営は順調で投資コストもしっかりと回収できる見込みです。それでも最初は苦戦していました。平均客単価6000円で40~50%の稼働を見込んでいたのが、最初の1~2ヵは20~30%の状態。上層部には3ヵ月間は黙って様子を見てもらえるようにお願いして、その間、ひたすらPDCAを回し続けました。現場からの気付きを集めて、料金を見直し、できることとできないことを整理してイベント、キャンペーン、テニス以外の利用にも貸し出すことにもしました。コートが空いている時間をできるだけ減らして、何とかやりくりしてしのぐなかで、テニスでご利用いただいた人から高い評価を獲得することができ、現在は客単価8000円、80~90%の稼働率で落ち着いています。

「楽しい!」が事業化のポイント

――スポンジテニスを事業化するにあたっては、どんな考え方を?

満岡/最初にこのスポンジテニスを知ったとき、シニア世代にうってつけで、広める価値があるということを強く感じました。年齢を重ねるうちに、テニスをすることが体力的につらくなり、スクールを退会するお客様が増えていたことも、我々テニススクールにおける課題のひとつと捉えていたので。
事業化のポイントは、まず稼働率を上げること。テニスコート1面をつかって会費1万円のレッスンを8人が受けるとすれば、3分の1の広さでプレーできるスポンジテニスならば会費5000円で16人が楽しめます。お手頃な料金ではじめていただける魅力がありながら、こちらもきちんと収益を確保できます。
もうひとつのポイントは、お客様に継続して来てもらうこと。そのためには当然ですが、何より「楽しい」と思ってもらうことが重要です。その点で、スポンジテニスは通常のテニスに比べて、初心者でもすぐにラリーがつながる。上級者とダブルスを組んでもそこそこ試合になるので後ろめたさを感じなくて済む。終わった後に仲間と屈託のない会話で盛り上がる。「楽しい」要素がふんだんにあるのです。だから、これはビジネスとして成立すると確信しました。

テニスで10年寿命が延びる?

――横浜市内の公立小学校と連携している「子どもの体力向上プロジェクト」では、慶應義塾大学(大学院健康マネジメント研究科)にも入ってもらっています。

満岡/アカデミックマーケティングの一環です。大学や研究機関など第三者機関で科学的に検証されたデータをもとに効果を訴求する手法を取り入れており、同大学にはプログラムの実施前・実施後の体力スコアを評価・分析していただいています。特に子どもの走力や投力において、著しいスコアの向上がみられるほか、「運動有能感(運動が好きという気持ち)」が維持される(※通常は年齢とともに低下)というエビデンスも得られています。

――科学的な裏付けがあれば、ブランディングの大きな武器になりますね。

満岡/デンマークのコペンハーゲン市が25年以上かけて集めた市民の生活習慣に関するデータを、イギリスの研究チームが分析したところ、ラケットをつかうスポーツをする人は健康寿命が長いという結果が出ました。1位がテニス。まったく運動をしない人と比べると寿命延長効果は9.7年。2位はバドミントンで6.2年。ちなみにジョギングは6位で3年程度だそうです。それでフィットネスクラブでのトレーニングなど、日頃の健康への取り組みをポイント化して保険料を割り引く健康増進型保険の対象となる運動メニューに、テニスを加えてもらえないかと働きかけています。高齢化が進むなか、健康保険制度の見直しも必要でしょう。国庫負担金の支出を抑えられるようなアイデアがあれば、厚生労働省など国を巻き込んだ動きにもなって、面白いですよね。

――大きな可能性を感じますね。

満岡/今、日本の人口は約1億2680万人。テニス人口はおよそ430万人。わずか3.4%です。これをどう見るか。まだ96%以上に広めるチャンスがある。テニスを楽しむ人の数を、まだまだ伸ばせる余地がある。私は、そう考えています。


事業企画
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「テニス」にまつわるビジネスと聞いて、あなたは何を連想しますか。 テニスコーチ。テニスショップの店員。ラケットやシューズのメーカーでの商品開発や営業に携わる仕事もあるでしょう。 その他に、次のようなビジネスがあるのをご存じでしょうか。 テニスを楽しみながら小学生の体力を向上するプログラムの推進。 シニア層の健康増進を実現する「スポンジテニス」の展開。 添田豪選手、マクラクラン勉選手などプロテニスプレーヤーのサポート。 錦織圭選手を輩出した「IMGアカデミー」と連携したユースキャンプの企画。 伊達公子さんが監修した「スポル品川大井町」インドアテニスコートの立ち上げと運営。 これらは、すべてGODAIが仕掛けている<テニス×ビジネス>のプロジェクト。 テニスというスポーツを、ビジネススキームをつくりながら普及・発展させていくのが、私たちGODAIの事業企画の仕事です。
株式会社 GODAIスポーツエンターテイメント
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