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プロ野球におけるデータの使用について

2月11日野球界に残念なニュースが流れてきました。名将・野村克也がお亡くなりになりました。野村氏と言えば”経験”や”勘”よりも”データ”を重視したID野球でを掲げてチームの改革を図り、長年にわたって負け越しが続いていたヤクルトスワローズを改革。2年目の1991年には3位に上がり、翌1992年にはセ・リーグで優勝、1993年にはついに日本一に輝きました。                         さらに、1995年、1997年にも日本シリーズを制し、ヤクルトは野村監督時代にリーグ優勝4回、日本一3回という強豪チームへと変貌を遂げていったのです。努力と根性が最優先され、技術も感覚に頼る傾向が少なからずあった日本野球界での本格的なデータ活用は30年前から始まっていたのでした。

さて、現代ではテクノロジーの進化により膨大なデータが容易に手に入るようになりました。球場に設置されたカメラやレーダーによって、起こることすべてが3次元で記録できる時代になってきています。 これまで扱ってきた統計学的な評価指標に加えて、物理学的な情報も含まれるようになり、テクノロジーの進歩によって統計学では予測がしにくい対象にまで言及できるようになってきています。

プロ野球におけるプレーデータの活用は大きく2つあり、データを統計学的見地から分析し選手の評価などに活用する”セイバーメトリクス”と呼ばれるチーム編成や戦術に生かすためのデータ活用と、数学や物理、解剖学を使って人間の身体の動きやボールの軌道を科学的に解明して個々のパフォーマンス向上を目指す”バイオメカニクス”領域でのデータ活用です。

セイバーメトリクスによる埋もれた選手の発掘やスコアラーによるその日の対戦相手の分析など、チーム編成での利用が中心でしたが、ここ最近は選手が自らの能力改善のために活用するケースが増えてきています。

例えば、投手がボールの回転数や軌道の変化量のデータをチェックして思い通りの球が投げられているかを確認したり、新しい変化球を試してみたり、打者は打球速度や打ち出し角度が分かるようになったりと新しい形でのデータ活用も増えてきました。

選手は実際にこれを数値や映像で見ることにより、その理由を体の感覚だけでなく頭でもしっかりと理解できるようになります。すると自分の課題が明確になり、トレーニングにも目的意識をもって取り組むことができるのです。自分がやっていることをきちんと納得することで、選手の力をより引き出すことにもつながっていきます。

一方、バイオメカニクス領域でのは科学的な視点からスポーツを分析するスポーツ科学という分野が確立し、アスリートの知識と経験を科学により裏付けることで、より客観的で効率的に習熟することが可能になりました。データが蓄積されたきたことにより個々の能力の違いや運動時の故障などにはすべて根拠や原因があることがわかると同時に、それに対する課題や解決法なども見えてくるようになってきています。

例えば、ボールを捕ってから返球するまでの速度や動作を映像で比較したところ、速度の速い・遅いの違いの原因のひとつは足の使い方にあることがわかりました。速い選手は軸足を前に出してボールを捕っていたので、そのままスムーズに投球動作に移ることができるのです。

スポーツバイオメカニクスによって動作を分析すると、うまい人がどのようにしてその動作を行っているのかが理論的に分かるようになり、その動作に到達できるような練習の提案ができるようになりました。

従来のような経験や感覚に委ねるだけでは、その動作が非効率であったり、身体への負荷が大きく怪我の原因になるなどの問題がありましたが、効率の良い正しい動作を取り入れることによって怪我を防ぎ、選手生命を伸ばすことに繋がっています。

スポーツである以上、精神論やファンの歓声といった不確定要素によって勝敗が決するケースがあるのは無視できません。また、ビッグデータ分析すらもねじ伏せるほどの絶対的なスター選手がいることも確かです。

野球に限らずスポーツの醍醐味や選手の魅力は数字だけで測れるものではありませんが、データをうまく活用することは我々ファンの側のとっても楽しみを一層増すことになると考えます。

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