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コロナ禍でも急成長するShiftmation。10を超える事業の試行錯誤から手にした「自分にしかできないこと」その道のりをCEOが語る

8月はアクシバースにとって記念すべき月です。2018年8月22日、勤務シフト自動作成サービス「Shiftmation」の正式版をリリースしました。そのサービス開始から4年。コロナ禍を支える医療や介護分野をはじめ、昨年からは他業種の契約も相次ぎ、事業拡大に伴う採用活動を現在、積極的に進めています。スタートアップ企業は創業者=会社であり、社長の志や人柄が会社の成長やカルチャーを形づくります。では、アクシバースの能塚正基CEOとはいったいどんな人なのか。この会社に興味をもっていただいた方に向けて、CEO・能塚に迫るインタビューを試みました。

高2で決断、医師ではなくビジネスで困っている人を助けたい

━━能塚さんがどんな思いからアクシバースを創業し、Shiftmation事業に行き着いたのか、今回じっくり伺ってみたいと思います。まずは、自分で事業を興したいと考えたきっかけから教えてください。

きっかけは高校生の頃にさかのぼります。父親は医師で、大きな病院の院長職を務めた後に医院を開業しました。そんな父親への憧れもあって、幼い頃から自分も医師になろうと思っていました。転機は高校2年生で進路を決めるときです。父親のどういった姿に憧れているのかを考えたことがありました。医師としての父の背中、クリニック経営者としての父の背中、その両方が見えました。大きな病院の院長として、何百人ものスタッフをまとめ、一から経営を学び、経営改善をしていきました。開業医になってからも全責任を負って、地域の人たちに愛されるクリニックにしようと努めていたそのプロセスに、大きな憧れを抱いていることがわかって、父親に将来は医師ではなく、ビジネスをやってみたいと話しました。

━━医師を目指していた息子の転向にお父さんは何とおっしゃいましたか?

応援すると言ってくれました。ただ一つ、はっきりと覚えているのが「絶対に手抜きをするな」と言われたことです。本当にやりたいのであれば、どんなに大変なことがあっても、逃げずに向き合っていくんだぞという、父からのメッセージだったのだと思います。

━━その頃はどんなビジネスをしたいと思っていたのですか。

実はこういう事業をしたいといったプランはありませんでした。ただ思っていたのは、医師は病に苦しむ人を助ける尊い仕事だけれど、一生かけても助けられる人の数には限りがある。自分が創り出した事業であれば、直接対面しない世界まで幅広く役に立つことができる、そんなことを考えていました。母も薬剤師なので医療関係の家庭で育ち、「困っている人を助けるんだよ」と教えられてきました。人を助ける、人の役に立つということを重視するのは、子どものころからの影響ですね。


東大に進学、才能ある友人に「かなわない」と思ったことが出発点に

━━それで東京大学に進学されました。でもなぜ東大だったのですか。

事業のテーマは決まっていなかったものの、会社を興すには法律を学んでおくべきだろうと考えて東大法学部を選びました。でもそこには父親に言われた「手抜きをするな」という言葉も影響しましたね。高校の勉強では一切手を抜かないようにしようと思って受験しましたから。

━━思いを貫く強さを感じます。東大法学部は弁護士や官僚を目指す学生が多い印象があります。起業家を目指す能塚さんは、ちょっと変わった存在だったのでは。

法科大学院への進学や国家公務員志望が多くて、1クラス約20人いるなかで、民間企業に就職したのが私ともう1人だけでした。といっても、ごく普通の学生でしたよ。授業を受けてゼミもやり、音楽系のサークル活動もして。大学では、これはかなわないなという人たちに出会えたことが自分にとって一番大きかったです。

━━それはどういうことですか。

法曹の道、国家公務員、それぞれに進む友人の頭の回転の速さや信念、尖った感性がありました。その友人たちと対比したときに、自分が持っているもの、自分が一番得意な領域は一体何だろうと、ずっと考えていました。そこから自分にしかできないことに取り組みたいという思いが強くなりましたし、それは今も頭の中で考えていることです。


事業が実らずに自問自答した福岡の4年間

━━大学を卒業されてNTTドコモで5年半勤務された後、ITコンサルティング会社を経て、クリニックの経営立て直しでしばらく実家に戻られた。このあたりは先に掲載されたnote(https://note.com/axiverse/n/ne313ae2b11de)に詳しく書かれています。今回はそこでは語られなかったアクシバース創業時のお話を伺います。いろいろな事業にチャレンジされたそうですね。

福岡で創業したのですが、東京に出るまでの約4年間で構想も含めると、事業数は10を超えます。最初はフィンランドの企業が開発した睡眠管理をするIoTデバイスの輸入販売でした。敷布団の下に置いたベルト状の装置が、寝返りや目覚めを検知して睡眠の質をスコア化し、スマホのアプリに通知するヘルスケアサービスです。

━━それを始められた理由は。

福岡のシェアオフィスで交流のあった方と、協同で日本での販売代理をやらないか、と話が盛り上がったのがきっかけでした。NTTドコモに勤めて、デバイス系が好きなこともあって、趣味と実益を兼ねたスタートでしたが、途中で撤退しました。

━━どうしてですか。

当時、高速バスの運転手の居眠り事故が社会問題になっていたので、デバイスを販売しながら、睡眠データを活用した法人向けの睡眠管理サービスをつくろうと取り組み始めたところで、製造元の会社がAppleに買収されたんです。その機能は今、Apple Watch内にあります。残念でしたが、着眼点は悪くなかったのかなと今も思っています。


━━10を超える事業でほかにはどんなものが?

エストニアの蜂蜜や食品の輸入販売も考えましたし、CtoCのマッチングサービスも小規模に検証をしていました。経営状況を管理するダッシュボードの開発を考えた時期もありましたね。その一方で、企業向けのコンサルティングやウェブ制作の事業もあり、会社は黒字だったので、生きていくための事業とチャレンジする事業を並走させていました。

━━その4年間は能塚さんにとってどんな時間でしたか。

もがき続けた4年間でした。睡眠管理のIoTデバイスも趣味の領域で楽しかったのですが、そのジャンルに自分がすごく長けているかといったらそうではない。ましてや蜂蜜の輸入販売なんて、もっと詳しい人や熱意をもった人はたくさんいるわけです。なぜ自分がこの事業をやるのかという強い意味を見いだせないから、事業が大きくなる姿も描けない。起業を志したときに思い描いた、多くの人を助ける事業にはつながらないと感じて苦しんだ時期です。

一定の黒字が出ていたので、福岡に家でも買ってのんびりと過ごそうかと一瞬思ったときがありました。そんなことを考えた自分がすごく嫌になって、福岡のオフィスを引き払って、東京での再出発を決めました。

━━そこが転機になったのですね。そういうときは誰かに相談するタイプですか。

自問自答して決めるタイプですね。クロスバイクに乗って、福岡市内にある大濠公園をグルグル周回しながら自分の考えを整理していました。普段と景色が変わる中で、答えが出ずとも色々なことを同時に考える。その後に、紙に書きながら思考を整理するのが定番です。創業以来の書き込みをしたノートは25冊をこえました。


きっかけはシフト作成に1週間費やしていた副店長の嘆き

━━東京に出られて、いよいよShiftmationの開発に入るわけですね。

勤務シフト自動作成サービスを開発しようと決めたのは、携帯電話ショップ関連の仕事で、副店長に勤務表を見せてもらったときでした。その副店長は異動してきたばかりで、最初の仕事がスタッフ約50人の勤務表づくりで、その人数の多さに愕然としていると話されていました。

翌月、副店長に「勤務表づくりはどうでしたか」と尋ねたら、作成中に声をかけられると集中できないから、別店舗の会議室を1週間借りてようやく完成したと。副店長が1週間もの間その作業にかかりっきりで、本来は困りごとがあって副店長を頼ろうとしたスタッフの方は孤立してしまう。この状況は絶対におかしいだろうと思いました。私がNTTドコモ勤務時代、新宿・池袋エリアの店舗統括をしていたときに見ていたシフトも、当たり前のようにExcelで作成されていました。それから10年近く経っても状況は変わっていなかったんです。

━━そこからどういう行動に移されたのですか。

ほかの事業者もシフト作成で苦労しているのかを確かめようと、近隣の病院などにヒアリングに行ったのですが、100人規模の看護師が働く病院では、看護師長がシフト作成にほぼ1カ月間を使い、出来上がった翌日から翌月のシフトづくりを始めていると聞かされて驚きました。見せてもらったシフト表は夜勤などの勤務形態に多少の違いはあっても、ドコモショップとほぼ変わらないフォーマットでした。

私は医療機関と、広く小売業である携帯電話ショップ両方の経験があります。加えて、NTTドコモの次に入ったITコンサルティング会社では、UI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の法人向けコンサルティングをし、ビジネス成果につながる画面の改善提案などをしていました。それらをすべてつなげると、この課題を解消できるのは自分しかいない。これは自分がやる意味のある事業ではないかと思ったんです。

━━やっと見つけたという感じでしたか。

はい。ただし、サービス化するまでにはいくつかハードルがあります。どのような要件が必要か、そして本当に強いニーズがあるのかを検証するために、シフト作成の代行業をやりました。自分でExcelを使って作成して、納品して、代行費用をお支払いいただく。お金を払ってでも解消したいペインがあることも分かり、実際に自分が作るときに必要だった機能をまとめて要件定義し、この事業でいくぞ、と決めて開発に入りました。

今とはだいぶ変わっていますが、最初はパワーポイントで画面案も作っていましたね。


自分で調べて自分で試す、その慎重さが成功を生む

━━自分で調べて試してみる、というのが基本姿勢なんですね。

裏を返すと、それをしないと怖いです。自分の残りの人生をかける事業にすると決めたので、本当に多くの人に必要とされるのか、この課題を解決する価値があるのかと自問自答しながら進めました。

━━若い企業にありがちな、ノリと勢いではないんですね。

これまでにうまく行かなかった事業は、それこそノリと勢いでした。ちょっと興味がある、いまこの領域が流行っている、とかです。本気でやろうと思うものほど慎重になります。Shiftmationは構想からプロトタイプ作成、本格的な開発に至るまで1年弱をかけています。

━━Shiftmationは開発力も大きなポイントです。同種のサービスよりも高速で精度が高く、アップデートも早いと、他社サービスを試された利用者からも評価の声が聞かれます。

エンジニアの方々が優秀で、出会えて本当に幸運でした。誇れる開発力を3つ挙げるとすると、1つ目は、言われたものをただつくるのではなく、将来的な影響も考えたうえでの全体設計ができる点です。2つ目はシフト作成という答えがない領域で、自動化アルゴリズムを顧客の声も採り入れて実装していく力があること。そして3つ目はその開発とサービスの改善速度がとても早いことです。

数千人、1万人規模の企業へも導入が進む

━━2018年8月にShiftmationがリリースされ、その約1年半後に新型コロナウイルス感染が広がりました。コロナ禍でのShiftmationのサービスの変化、社会的意義についてどのように感じていますか。

Shiftmationは医療機関や介護施設を中心に利用され、エッセンシャルワーカーと言われる方々の働き方を下支えするサービスです。コロナ禍でその働き方は大きく変わりました。勤務時間の急な変更や、スタッフに陽性者が出てシフトの組み替えも頻発しました。

そうした事態に対応して、月の途中でも残期間の特定チームのシフトを自動で組み直せる機能や、翌日の勤務変更を、関係するグループのリーダーやスタッフにそれぞれ通知するメール配信機能を実装するなど、必要とされる機能のアップデートを重ねてきました。コロナ禍でシフトづくりが難しくなったからこそ、私たちが取り組むサービスの社会的意義や価値を高めているところです。


━━Shiftmation事業は今どういうフェーズにありますか。

拡大のフェーズに入ったところです。最初は数十人規模の法人様に利用いただいていたところが、数百人、数千人と増え、今年は1万人規模の会社に導入をいただきました。医療や介護を中心としてはいますが、広く専門職領域で複雑なシフト作成のご支援をしています。

その法人様でも、従来のシフト作成ツールは使い勝手が悪く、会社全体の人事制度を見直すなかでShiftmationを知ってご連絡をいただき、プロダクトとCSチームの体制を評価してくださって導入に至りました。Shiftmationのサービスが幅広い業種に広がる可能性を私たちも自覚できた出来事でした。直近半年間の契約継続率は99%を超えています。サービスの優位性とお客様に対応するカスタマーサクセスの充実が、こうした評価に現れてきていると思います。

アクシバースと自分は一体、サービスの精度と納得感をさらに高めたい

━━世の中で「これはいらない」と思うものはありますか?

楽しいとは思えない単純作業の繰り返しです。そういったものは何かしらで自動化したいと思っています。掃除にはルンバ、皿洗いは食洗器を一人暮らしのころから使っていました。自動化が好きというのは、Shiftmationにつながるところがありますね。

━━「いらない」とは逆に、生きるうえで大切にしていることは何でしょう。

人とのコミュニケーションです。先ほど話しましたが、以前は自問自答することが多かったんです。それが結婚してから大きく変わりました。考えていることを妻に話して、その会話から何かを引き出してもらったり、考えが深まったりすることがあるので、人とのコミュニケーションを大事にするようになりました。

━━身近な相談者の奥様から、どんな人だと言われますか。

良い面から先に言っておくと、まじめに誠実に生きていると言われます。悪い面として言われるのは、自分の思ったことをストレートに言うから傷つくことがある、もうちょっと相手の気持ちを考えてと言われます。それは無駄だよねとか、結構ストレートに言ってしまうことがあって、それは自分でも直さなきゃいけないと思っています。



━━これまでに出会った人で反面教師にしているのはどんなタイプですか。

数字やデータばかりを見て、現場やプロダクト・サービスを見ていない人ですね。数字は結果であって、そこに至った取り組み一つひとつをつぶさに見ることこそ意味があると思っています。数字の裏側に何があるのかということを、実感値をもって知ることの大切さを忘れないようにしています。

━━最後に、アクシバースや自身の今後の目標を教えてください。

まずは、Shiftmationを多くの方に利用いただいて、アナログ的につくっていたシフト作成を自動化、効率化することで生まれる時間を、スタッフやお客様に向き合う時間に充てていただきたいです。最近は他社のサービスから切り替えられるお客様が増えています。シフト作成の精度、納得感、運用定着までのサポート体制をさらに高めていきたいと思います。

アクシバース、Shiftmationは自分と一体です。高校生の頃に思い描いた「より多くの人たちを助け、良い影響を与えられる存在になりたい」という夢を、この事業を通じて実現していきたいと思っています。

<後文>
事業拡大のフェーズにある株式会社アクシバースは現在、中途採用者を積極的に迎え入れています。コロナ禍にあって社会貢献度の高い事業を展開する同社や能塚CEOの思いに共感された方からのエントリーを、社員一同お待ちしています。

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