納品した後のことを、どれだけ知っていますか
受託開発をやっていると、一度は経験すると思います。
要件どおりに作った。テストも通した。納品して検収も通った。そして半年後、現場に行ったら誰も使っていない。
私たちも、他社が作ったシステムが放置されている現場を何度も見てきました。作りが悪いわけではありません。むしろ丁寧に作られている。それでも使われていない。
この状態を「お客様のITリテラシーの問題」で片付けることもできます。実際そう説明されることも多い。でも、それを何回も見ているうちに、問題は作る側の前提にあるのではないかと考えるようになりました。
「DXしたのに使われていない」には理由がある
私たちが中小企業の現場を回って整理した、使われなくなる理由は4つです。
覚えるコストが高すぎる。 新しい操作画面、新しい用語、新しいフロー。人員が限られる会社で全員が習得するのは、そもそも現実的ではありません。
現場の仕事に合っていない。 汎用パッケージは多業種対応であるがゆえに、その会社独自の手順や例外処理に対応できない。「うちのやり方だとこれができない」が積み重なります。
導入後のサポートが薄い。 大手SaaSは導入後は自己解決が基本です。「使い方が分からない」で止まったまま、誰も聞ける相手がいない。
コストが見合わない。 月額数万〜数十万円が発生し続ける一方で、改善効果が数字で見えない。稟議が通らなくなり、更新されない。
並べてみると分かるのですが、4つとも「機能が足りない」という話ではありません。 むしろ機能が多いほど、最初の3つは悪化します。
高機能であることが、そのまま使われない理由になっている。 これが、私たちが現場で見た結論でした。
だったら、新しいシステムを入れなければいい
そこで私たちが選んだ方針は、逆張りといえば逆張りです。
新しいシステムを導入しない。今の手順のまま、面倒な部分だけをAIに肩代わりさせる。
具体的にはこうなります。
Before: メールで注文を受け取る → 注文内容を手でExcelに転記 → 顧客台帳で手動検索 → 発注書をWordで作成して送付
After: メールを受け取る
→ AIが解析・転記・検索・発注書作成 → ボタン1つで送付完了
お客様側の操作は「メールを受け取る」だけです。新しい画面はありません。ログインするツールも増えません。研修も要りません。
建設業の案件では、職人さんがスマートフォンのメモと写真をメールで送るという既存の運用をそのまま残し、届いた後の処理だけを置き換えました。日報作成にかかる事務工数は1現場90分から5分以下になっています。
現場の操作変更はゼロです。
この方針は、作る側にとってはやりにくい
正直に書きますが、この作り方は開発者にとって面白い部分が減ります。
きれいな画面を設計する機会はありません。モダンなフレームワークで作り込む対象もない。やることは、既存のメールやExcel、kintoneやfreeeといった他人が作ったものの隙間を埋める仕事です。
技術的な難所も、アーキテクチャではなく現場の泥臭さの側にあります。
職人さんが送ってくるメモは、書き方が人によってバラバラです。箇条書きの人もいれば一文で全部書く人もいる。略語も飛び交う。写真だけ送って本文が「完了」の一言、ということもある。
決まったフォーマットで入力させれば、この問題は消えます。 でもそれをやった瞬間に、さっきの「使われないシステム」に戻ります。
だから受け取る側で吸収する。表現の揺れを、こちら側で引き受ける。 ここが設計の中心になります。
見えている範囲が広くなる
やりにくさの一方で、この作り方には受託開発として明確な利点があります。
まず、成果が数字で出ます。
「日報作成 90分 → 5分」「受注処理 3時間 → 20分」「仕訳入力 70%削減」「議事録作成 2時間 → 10分」。
置き換えた対象が具体的な手作業なので、効果がそのまま時間で測れます。「導入したけど効果が分からない」が起きにくい。 これは提案する側としても、納品後の説明がしやすいということです。
次に、案件が短い。
2週間〜1.5ヶ月程度、費用は8万円〜35万円。大規模な要件定義から入る案件と違い、作ったものが現場で使われるまでを短いサイクルで見届けられます。 使われなければ、その理由もすぐ返ってくる。
そして、業務そのものを設計します。
「どこまでAIに任せて、どこから人が判断するか」の線引きが仕事の中心です。誤ってメールが顧客に飛べば信用問題になる。仕訳を間違えれば会計事故になる。だからAIが下書きを作り、人が承認する形を標準にしています。
この線引きは、技術だけでは決められません。その業務の重みを理解して初めて引ける線です。要件を渡されて作るのではなく、要件そのものを一緒に決める仕事になります。
14業種でやってきました
建設業、医療、製造業、小売、士業、物流、教育、人材派遣、農業、総務・人事——これまで14業種に導入してきました。
共通しているのは、どこも情シスがいないことです。相談は「日報の作成に時間がかかっている」「電話が鳴り止まなくて受付が回らない」というレベルから始まります。要件定義書は出てきません。
だからこそ、何を作らないかを決める判断が仕事の質を決めます。ここを外部に切り出さず、自分たちで持っているのが私たちのやり方です。
こういう仕事に興味がある方へ
新しい技術で作り込むより、現場で本当に使われるものを作りたい。要件を渡されるより、要件から一緒に決めたい。作ったものが使われたかどうかを、自分の目で確かめたい。
そう思う方には、面白い環境だと思います。
滋賀県草津市の小さな会社ですが、フルリモートで参加いただけます。Webエンジニア、AIエンジニア、そして要件定義から運用まで通しで見るPMを募集しています。
まずは話を聞きに来ていただくだけでも構いません。「作ったのに使われなかった」経験がある方となら、話が早いと思います。