深夜まで日報を作っている事務担当者がいた
滋賀県内の電気工事会社さんから相談をいただいたとき、困っていたのは現場の職人さんではなく、事務担当の方でした。
流れはこうです。職人さんが退勤後、スマートフォンのメモや現場写真を本部にメールで送る。それを事務担当者が受け取り、内容を読み解いて、所定のフォーマットの日報PDFに整える。
1現場あたり30〜90分。複数の現場が重なる時期には、この作業だけで深夜になることもありました。
しかも書式が担当者ごとにバラバラで、後から工事を振り返ろうとしても探せない。日報が「作って終わり」の書類になっていました。
最初に決めたのは「何を作らないか」
こういう相談を受けたとき、いちばん簡単なのは現場管理アプリを提案することです。日報入力フォームがあって、写真も添付できて、そのままPDFが出る。世の中にたくさんあります。
でも私たちは、それを提案しませんでした。
理由は単純で、職人さんが使わないからです。
現場では、日中は手を動かしています。退勤後にアプリを開いて、項目を選んで、フォームを埋める——という操作が新しく増えた時点で、それは「余計な仕事」になります。最初の1週間は使われても、忙しくなれば元のメールに戻ります。
私たちはこれまで、他社が作ったシステムが誰にも使われずに放置されている現場を何度も見てきました。動くものを作ることと、使われるものを作ることは別の問題です。
だから、こう決めました。
職人さんの操作は1ミリも変えない。今まで通りメールを送ってもらう。
作ったのはシンプルなパイプラインです。
職人さんがメモと写真をメールで送る(← 今まで通り)
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Claude がメール本文と画像を解析
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作業内容・使用資材・工数・安全確認項目を抽出
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所定フォーマットの日報PDFを生成
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管理者へ自動転送
技術的には Claude と Python、そして Gmail です。目新しい構成ではありません。
難しかったのは技術ではなく、「職人さんの書き方」をどう受け止めるかでした。
メモの書き方は人それぞれです。箇条書きの人もいれば、一文で全部書く人もいる。専門用語の略語も飛び交います。写真だけ送って本文が「完了」の一言、ということもあります。
決まったフォーマットで入力させれば、この問題は消えます。でもそれをやった瞬間に「使われないシステム」に戻ってしまう。だから受け取る側で吸収する設計にしました。
結果:90分 → 5分、月40時間の残業が消えた
導入後、日報作成にかかる事務工数は1現場あたり90分から5分以下になりました。事務担当者の仕事は、生成された日報に目を通して確認するだけです。
月間で約40時間の残業が解消されました。
副次的な効果もありました。書式が統一されたことで、工事完了後の報告書作成が大幅に楽になった。さらに現場ごとの進捗データが蓄積されるようになり、次の案件の見積もり精度を上げるのにも使われています。
日報が「作って終わりの書類」から「使えるデータ」に変わった、ということです。
かかった費用は約10万円、期間は約3週間でした。
この仕事の面白いところ
派手な話ではないと思います。最先端のモデルを使ったわけでも、複雑なアーキテクチャを組んだわけでもありません。
でも私たちは、この種の仕事にこそ価値があると考えています。
技術的にできることと、現場で続くことの間には、いつも隔たりがあります。 そこを埋めるのは、賢いアルゴリズムではなく「職人さんに何も覚えてもらわない」という地味な設計判断でした。
同じ考え方で、これまで14業種の現場に導入してきました。領収書の仕分け、クリニックの予約受付、会議の議事録。どれも「今使っているものは変えない」という一点を守っています。
株式会社KUSANAでは、こうした現場の課題を一緒に解いてくれる仲間を探しています。要件が固まっていない状態から形にしていく仕事に興味がある方は、ぜひ一度話を聞きに来てください。