こんにちは。リアルアキバ・コミュニケーションズ(RACZ)の倉光一輝です。
連載第4回のテーマは 「イベント」 です。
ステージの照明、物販に並ぶ列、終演後のSNSに流れる「最高だった」の声。イベントの華やかな瞬間は、いつも「当日」にあります。でも、現場を経験した人間として断言できることがあります。
イベントの成否は、当日を迎える前に9割決まっています。
今回は、普段あまり表に出ない「残りの9割」——つまり準備の裏側について、僕の目線で書いてみます。
当日の僕は、実はほとんど「暇」でいたい
いきなり変なことを言いますが、僕にとって理想の当日は「やることがない状態」です。
当日にバタバタ走り回っているプロデューサーは、一見頑張っているように見えて、実は準備で詰め切れなかった穴を体力で埋めているだけなんですよね。昔の僕がまさにそれでした。開場30分前に足りない備品を買いに走り、演者さんへの伝達が漏れ、頭を下げながら幕を開ける。お客さんには見えないところで、ずっと綱渡りをしていました。
ある時から考え方を変えました。当日の自分を「トラブル対応専用の予備人員」として空けておく。 そのために、決められることは全部、前日までに決め切る。この切り替えをしてから、イベントの質が目に見えて変わりました。
当日に空いている人間がいるチームは強いです。想定外は必ず起きるので、それを受け止める「余白」こそが、実は最大の準備なんです。
準備とは「当日を先にフィクションとして生きること」
じゃあ準備で何をしているのかというと、僕の場合は脳内で当日を最初から最後まで通しで再生することに一番時間を使います。
お客さんが会場の最寄り駅に着くところから始めます。駅からの道は迷わないか。入口の看板は視界に入るか。開場列はどこで折り返すか。物販で一番人気が集中する卓はどこで、そこの列が伸びたら何にぶつかるか。終演後、全員が一斉にスマホを開いた瞬間、何をポストしてほしいか。
この脳内再生を、スタッフ、お客さん、演者さん、会場さん—立場を変えて何周も頭の中でシュミレーションする。
すると「あれ、ここで詰まるな」という引っかかりが必ず出てきます。その引っかかりを一つずつ台本と進行表と配置図に落とし込んでいく。これが僕にとっての準備です。
エンタメの仕事って、想像力の仕事だとよく言われます。それは企画だけの話じゃなくて、準備こそ想像力の総力戦なんですよ。まだ存在しない一日を、どれだけ解像度高く先に生きられるか。
「9割」の中身は、実は3つしかない
準備が9割と言うと途方もなく聞こえますが、分解すると僕がやっていることは3つだけです。
1つ目は「逆算」。 本番の理想の瞬間——たとえば「終演後にお客さんが物販に走る」——を先に決めて、そこから時間を巻き戻して段取りを引く。順算で積み上げると、大事なことほど後回しになって時間切れになります。
2つ目は「共有」。 進行表は作った時点では0点で、関係者全員の頭に入って初めて100点です。僕は「この資料、読まなくても現場が回るか?」を自分に問います。答えがNOなら、資料が悪い。人は当日、資料を読む余裕なんてないですから。
3つ目は「捨てる勇気」。 準備の終盤に必ず「あれもできるかも」という誘惑が来ます。でも直前に足した要素は、テストされていない爆弾です。当日の変更は原則しない。やりたくなったら次回のネタ帳に書く。この我慢が、結果的にお客さんの体験を守ります。
それでも当日にしか、ないものがある
ここまで散々「準備が9割」と言ってきましたが、最後の1割の話もさせてください。
どれだけ脳内で再生しても、お客さんの歓声だけは再生できないんです。開演の瞬間、客席の空気がふっと変わるあの感じ。準備した側だけが味わえる「答え合わせ」の瞬間。達成感は計り知れないものとなります。
準備の9割は、正直言って地味です。進行表とにらめっこして、備品リストを数えて、雨天時の動線を考える。でもその地味さの先にしか、あの1割の熱狂はない。準備とは、まだ見ぬお客さんへの一番長いファンサービスだと僕は思っています。
おわりに—一緒にイベント制作を面白がれる人へ
イベントの仕事に憧れる人の多くは、当日の華やかさに惹かれてこの世界に来ます。それでいいんです。僕もそうでした。
ただ、続けていくうちに気づくはずです。本当に面白いのは、準備の9割のほうだと。パズルのピースが埋まっていく快感、脳内再生と現実がぴたりと重なった瞬間の鳥肌。あれは準備した人間だけのご褒美です。
RACZでは、イベントの企画から当日の運営まで、丸ごと経験できる現場があります。「地味な9割を一緒に面白がれる人」を、僕たちは探しています。
まずは気軽に、話を聞きに来てください。あなたの初めての進行表、一緒に作りましょう。
次回 Vol.05 もお楽しみに。