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表層の人気と、本質的な評価は違う
最近、海外のスーパーやカフェに行くと、至るところで“MATCHA”という文字を目にするようになった。
- Matcha Latte
- Matcha Cookie
- Matcha Donut
- Matcha Protein Shake…
数年前なら考えられなかったような場面で、**“抹茶風味”**の商品が大量に並ぶ。
「日本の抹茶が世界中で愛されてるなんて、誇らしいよね」と、思う人も多いかもしれない。
でも、私は少し違和感を覚えてしまう。
それは本当に「日本の抹茶」が評価されているのだろうか?
むしろ、危機が潜んでいるようにも感じている。
今日は、“Matchaブーム”を通じて、「本当に日本文化は評価されているのか?」について自分なりの意見をまとめてみたい。
ほりのぶゆきの漫画『東京お侍ランド』(ウェブ漫画サイト『モバMAN』連載。最近連載が終了した)の「千利休 リキュバ遺文」という回の1コマである。このコマが確かに面白いのだが、このコマだけが一人歩きしているのを見ると「これだけだと『茶人千利休がまっ茶ラテを作るよう命令された』って認識されるのでは…?」とモヤモヤするので、このコマのある『東京お侍ランド』「千利休 リキュバ遺文」の話の流れを箇条書きで説明してみた。
と言うのを紹介するブログを見つけた。
https://niguruta.hatenablog.com/entry/20150422/1429674277 ぜひ
“マッチャ”は「文化」か「マーケティング記号」か
抹茶とは本来、栽培・製法・点て方・所作までを含んだ、極めて深い日本文化の一部だ。
たとえば、
- 覆い下で育てる「碾茶(てんちゃ)」という葉、
- 石臼で丁寧に挽く粉、
- 湯温や泡立て方で変わる味と香り。
その一つ一つに、職人たちの技と美意識が詰まっている。
しかし、世界で流通している“MATCHA”の大半は、
- 産地が日本ではない
- 品質も定義されていない
- 味よりも「緑の粉」「それっぽい風味」だけが重視されている
つまり、「文化としての抹茶」ではなく、「マーケティング記号としてのMATCHA」が流通しているのが実態なのではないか。
ただ、「日本の抹茶が人気」なのではなく、正確には「日本風のMATCHAが安く大量に記号として売られている」なのではないか。
中身を知らないまま、記号としての“日本”が消費され、それが本物と区別されない未来。。。
私はこの、文化資産(BS)を毀損しながらPLを立てている構造が、めちゃくちゃ危ないように思う。
高校の同級生でもあり、私が初めて創業した会社の相棒だった友人が独立し経営するお茶の店
行って欲しいなー。最高だぜー。
https://www.yugen-kyoto.com/?srsltid=AfmBOoqGXXdBlckwYKEKbq3Pk4DFyNjlvysH23fOUdRxQ53WlJlMDgi1
経営者の視点からの警鐘
PL(損益)を作ることは、経営者にとって当然の使命。
だがその前提には、目に見えない **BS(資産)**がある。
経営者は、BSを使って、PLを産む、そしてそれがBSに移り、さらにPLを産むサイクルを作る。
素晴らしい経営者はこのサイクルが非常に美しく、常にBSとPLの関係性を上手に操り、PLの為にもBSをより良い状態でいることに気を遣う。
私たちの仕事においては、人的資本経営も、SDGsも、全てこの為に存在します。
(人を大事にするっていいよねー、魚がずっと海にいてくれるっていいよねーではなく、戦争なんです。PL(利益)を生み出すためのBS(資産)なんです。)
このBSを食いつぶす形でのPL達成には、一時的な利益があっても、長期的な価値創造はあり得ないはずです。
なので、私は社会的なBSを使って利益を得ているなら、次世代にそれを“増やして返す”のが我々現役世代の責任でもあると思うんです。
価格弾力性とこだわりの難しさ
さらに、いかに抹茶を使おうとも、お菓子や飲み物のような低価格帯の商品では、価格弾力性が極めて低い。
ということも触れておこうと思います。
- 100〜300円の価格帯で買えるのが普通。「プレミアム」を提供しても、払ってくれる層は限られる
- 消費者の期待値や体験の幅も狭く、「こだわり」は回収しづらい
つまり、このような日常利用が前提の市場では、高単価高付加価値にて差別化すること自体が構造的に難しいんです。
外食などと違い、“一食500円と5000円”のような価格弾力性が働きにくい。
なので、安易に長い時間をかけて先人たちが作ってきてくれたJAPANブランドを簡単に毀損させるわけにはいかないんです。
これを続けてしまうと、簡単に価格競争の末に表層だけを真似した商品が増え、“中身”の差別化がどんどん困難になっていく未来が訪れます。
AIによる最適化や低コスト化が進む中で、消費者はますます「手軽で、それっぽい」選択をするようになる。
- コンビニで“なんとなく和風”を選ぶ
- SNS映えで“なんとなく日本っぽい”を選ぶ
そうなると、メイドインジャパンの「中身」よりも**「外装」だけが勝負**の世界になってしまう。
メイドインジャパンというシール(記号)だけが先行し、品質や哲学が伴わない輸出は、むしろ“文化資産の毀損”に繋がる。
ここまで書くと、なんとなく私が思う課題感が伝わるでしょうか。
暴利なビジネスをしたい。
ではなく、BSを意識した経営意識を日本全体が持つことの大事さ、経営者は社会的なBSを活用することの責任を果たすことの大事さ、これを伝えたいと思っているんです。
文化的価値は「守る意志」がなければ消える
文化資産を毀損し、二度と取り戻せなくなった例──バリ島の乱開発
以前も触れましたが、再掲。
かつて「神々の住む島」と称されたバリ島。
ヒンドゥー文化と自然が織りなすスピリチュアルな楽園は、世界中の観光客を魅了しました。
しかし、観光ブームに伴う急激な経済合理化の波が、バリ島の文化を蝕んでいきました。
- 伝統舞踊は日常の祈りから切り離され、観光客向けのショーに変貌。
- 聖域である寺院の周囲にはリゾートホテルが立ち並び、信仰の場が商業エリアへ。
- 地元の生活文化よりも、「短期的な観光収益」が優先され、
- 気づけば“どこにでもあるリゾート地”へと姿を変えました。
これは、文化資産の短期換金による典型的な失敗例です。
一度壊れた「バリらしさ」は、取り戻そうとしてももう遅い。
文化は「守る意志」があって初めて未来に残るのです。
日本の食文化は“持ち出せる資産”だからこそ危険
街並みや建築は簡単に模倣できません。
しかし、日本の食文化は違います。
- 寿司
- 抹茶
- 和菓子
これらは地理に依存しない文化資産であり、
だからこそ、世界中で“なんちゃって”が生まれやすい。
アメリカの寿司チェーンでは、
「日本に行ったことがないスタッフが握る寿司」が“寿司”として受け入れられている現実。
この状況は、グローバル化における成功と言えるか。
文化の記号化=消費されるだけの存在になっている危険な状態だと捉えるべきなんじゃないでしょうか。
京都のお茶の写真がなくなったから記念日に妻がご馳走してくれたレストランの写真にしよ
美味しかったです、ありがとう!
韓国に学ぶ「文化IP戦略」──本物と記号を区別せよ
韓国は、自国文化を守るために極めて戦略的です。
- 焼酎の緑ボトル・赤キャップの統一
- キムチの表記基準の国際標準化
- 輸出時のデザイン・仕様の厳格管理
彼らは「韓国風」が広がることを許容しつつも、
- 「韓国産としての本物」は徹底的に守る仕組みを構築しています。
これが、文化を“使われる側”に回らないための国家戦略です。
日本の食文化に対しても、
「どこまでOKで、どこからNGか」を定義し、守るべきです。
マチオカのようなモデルが氾濫すればするほど、“日本風”が安売りされるリスクが高まり、「本物」が戦う土壌はどんどん厳しくなっていきます。
ちなみにこの料理が一番美味しかった。
経営者としての責任─PLではなくBSを見る
日本が持つ文化資産は、企業で言えばBSです。
我々は、先人たちが積み上げたBSの上で事業(PL)を営んでいる要素が多分にあります。
短期的な売上のために、このBSを削り続けたらどうなるか?
未来は枯渇し、次世代には何も残りません。
だからこそ、経営者・ブランドに求められるのは、
「BSを守り、育て、次世代に渡すこと」。
これが、本質的な価値創造であり、現役世代の私たちが意識すべき重要な視点だと考えます。
私たちthe kindestは、「安く広がること」を成功と呼びません。
「長く愛される文化」を目指し、ビジネスを通して未来により良い日本を残していく。
離乳食から始めた私たちの挑戦は、子供たちの未来を憂う世代であれば、こんな話にも興味を持ってもらえる可能性があるんじゃないかという賭けでした。
ぜひ応援してくださると嬉しいです。
人数増えました!
- “共に悩む”という体験価値のデザインに挑戦する
- 商品開発とブランド体験をあえてごちゃっと混ぜる
- AI時代における“人にしかできない価値”を問う
- お客様と真っ直ぐ向き合える組織文化とチーム
the kindest というブランドは、子育てをしている親御さんの隣に立ち、
「あなたの選択は、きっと正しい」と伝えられるブランドでありたい。
もし、そんな未来を一緒につくってみたいと思ってくださった方がいたら、
ぜひ一度、MiLの採用ページをのぞいてみてください。
“何を選ぶか”ではなく、“悩み選ぶプロセスを共にする”。
そんな価値観で仕事をしたい方、ご応募お待ちしております。