富山県高岡市で地域おこし協力隊として活動する佐藤順さん。愛知県から移住し、持ち前の行動力と地域への愛で、高岡市の魅力を内外に発信しています。なぜ高岡市を選んだのか、現在の活動内容、そして今後の展望についてお話を伺いました。
話し手:佐藤 順
愛知県から富山県高岡市へ移住し、地域おこし協力隊として活動。ものづくりや歴史、食といった高岡の魅力に惹かれ、観光振興や文化伝承、お祭りへの参加など、地域を愛し精力的に活動の幅を広げている。
聞き手:田中 伸弥
目次
高岡市との出会い:ものづくりと歴史、そして「食」が繋いだ縁
愛知から高岡へ:都会の喧騒を離れて感じたこと
地域おこし協力隊としての今:好きなことを仕事にする喜びと挑戦
地域に溶け込む秘訣:挨拶と積極的な関わり
高岡の魅力を形に:お土産開発と万葉集の魅力発信
高岡と共に生きる:移住への想いと未来への展望
地域おこし協力隊に興味を持っている方へのメッセージ
高岡市との出会い:ものづくりと歴史、そして「食」が繋いだ縁
田中: 佐藤さんは2022年に高岡市に移住される前は愛知県にお住まいだったそうですが、以前はどのようなお仕事をされていたのですか?
佐藤さん: はい、愛知県ではBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の会社で9年間働いていました。主にコールセンターやヘルプデスクの管理業務に携わっていました。
田中: その頃から地方への移住に興味があったのでしょうか?
佐藤さん: 地方というか、もう「富山に住みたい」「高岡がいい」という気持ちが強かったんです。もともとものづくりが好きで、高岡のイベントに参加したことがありました。また、大学では歴史を専攻していて、特に奈良時代の文化が大好きなんです。高岡には万葉集ゆかりの地「万葉の里」があり、博物館や万葉歴史館もある。そういった歴史的な背景にも惹かれました。そして何より、富山はご飯が本当に美味しいんです!
田中: ものづくりから歴史、そして食へと興味が繋がっていったのですね。特に感動した食べ物はありますか?
佐藤さん: やはり魚ですね!お寿司は今まで食べたことがないくらい美味しかったです。名古屋の高級店で出てくるようなお刺身が、こちらではスーパーで手軽に味わえるんですよ。魚だけでなく、お米も野菜も本当に美味しくて、富山に来て7kgも太ってしまいました(笑)。
愛知から高岡へ:都会の喧騒を離れて感じたこと
田中: 愛知県での生活と比べて、高岡市での生活はいかがですか?
佐藤さん: 愛知では、朝の通勤ラッシュが本当に大変でした。始発から数駅なのに満員電車で、毎日どうやって乗り込もうかと考えていました。高岡に来てからは、そういったストレスがなくなりましたね。
田中: お仕事の面での大変さはいかがでしたか?
佐藤さん: 前職では、お客様と自社の上司との板挟みになることもあり、精神的に大変な時期もありました。でもそれは、名古屋だからとか富山だからというより、その時の仕事内容によるものだったと思います。
地域おこし協力隊としての今:好きなことを仕事にする喜びと挑戦
田中: 現在の地域おこし協力隊としての活動はいかがですか?
佐藤さん: 今は本当に好きなことしかやっていないんです。もちろん、報告書作成など事務的な作業もありますが、やりたいこと、好きなことが仕事になっているので、以前のような「仕事に行きたくない」という気持ちは全くありません。ただ、やりたいことが多すぎて、自分で仕事を抱え込み、気づいたら肩書きがたくさん増えていて、常に何かに追われているような状況ではあります(笑)。でも、毎日が本当に楽しいです。
田中: 具体的な活動内容を教えていただけますか?
佐藤さん: 主に太田雨晴観光協会に所属し、観光振興に携わっています。また、地域の子供たちに昔話や伝説を伝えたり、小学校で正月飾り作りを一緒に行ったり、近所の山に登ったりといった活動もしています。
田中: 地域の子供たちとの交流も深めていらっしゃるのですね。
佐藤さん: はい。ただ、最初は「地域おこし協力隊の佐藤さん」と少し警戒されていました。地域に溶け込むために、まずは「太田の佐藤さん」として認識してもらうことが大切だと感じ、最初の2年間は地域の方々と積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことに専念しました。
地域に溶け込む秘訣:挨拶と積極的な関わり
田中: 地域の方々と打ち解けるために工夫したことはありますか?
佐藤さん: とにかく、すれ違う人すべてに「おはようございます!」と挨拶するように心がけました。観光客の方かもしれない人にもです。最初は怪訝な顔をされることもありましたが、続けていくうちに徐々に反応が変わり、声をかけてくださる方が増えました。今では子供たちからも「あ、佐藤さんだ!」と声をかけてもらえるようになり、村の有名人(村の中だけですが)になれたかなと思っています(笑)。挨拶は本当に大切だと実感しています。
田中: 他にも活動はありますか?
佐藤さん: 実は富山はお祭りが盛んなんです。私自身、笛が吹けるので、獅子舞のお祭りなど、あちこちのお祭りに参加させてもらっています。一つのお祭りに行くと、「うちの祭りでも笛を吹いてくれないか」と声をかけていただき、気づけばたくさんのお祭りに関わるようになりました。お祭りの練習や本番で忙しい時期もありますが、それもまた楽しいです。もともと祭り好きというわけではなかったのですが、参加するうちにその魅力にすっかりハマってしまいました。年間で20~30くらいのお祭りを見に行ったり参加したりしています。
高岡の魅力を形に:お土産開発と万葉集の魅力発信
田中: 今後、取り組んでいきたい活動はありますか?
佐藤さん: 今、私が住んでいる雨晴地域ならではのお土産を作ろうと考えています。まだ具体的なものは少ないので、例えばガチャガチャで手軽に手に入れられるような、雨晴海岸で拾ったシーグラスを使ったものなどを考えています。また、万葉集の魅力を高岡だけでなく、もっと広く発信していきたいです。具体的には、奈良時代の衣装を着て雨晴海岸や周辺を散策してもらう体験を提供したり、万葉歴史館と連携してイベントを企画したりしたいと考えています。実は衣装もたくさん持っていて、近所の手芸上手なおばあちゃんたちと一緒に作ったんですよ。
高岡と共に生きる:移住への想いと未来への展望
田中: 地域おこし協力隊の任期は3年間と伺っていますが、その後も高岡市に住み続けるご予定ですか?
佐藤さん: はい、間違いありません!高岡市に住み続けたいという強い思いがあったからこそ、地域おこし協力隊という制度は私にとって本当にありがたいものでした。
田中: 最初に協力隊のお仕事内容はある程度決まっていたのですか?
佐藤さん: 「これをやってほしい」という具体的なミッションは特になく、市役所の方に色々な人や場所を紹介していただき、その中で自分が「面白そう!」と思ったことにどんどん首を突っ込んでいった感じです。最初は不安もありましたが、市役所の方々や地域の方々に本当に支えていただき、自由に活動させてもらっています。
地域おこし協力隊に興味を持っている方へのメッセージ
田中: 最後に、地域おこし協力隊に興味を持っている方へメッセージをお願いします。
佐藤さん: せっかく移住するのですから、その土地のことを骨の髄までしゃぶり尽くすくらい楽しんでほしいなって思います。そこから「あ、こんなことしたらいいんじゃないか」ってアイデアって後から湧いてくるかなと思うんですよね。自分の持ってきた「こんなことやりたい」ということはもちろんすごく大事だとは思うんですけれども、まずは地域にしっかり馴染んで地域の人になってね、楽しいこといっぱい見つけて楽しんでくださいって感じています。
田中: 佐藤さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています。
佐藤さん: ありがとうございました。